交通事故で手首を骨折(橈骨遠位端骨折)して、治療を続けたにもかかわらず「後遺障害は非該当」と判断された…。そんな結果に納得できない方は少なくありません。
痛みや可動域制限、しびれが残っているのに、なぜ認められないのか? このようなときにとれる手段のひとつが「異議申し立て」です。
とはいえ、認定基準や必要な書類、どのような医証をそろえるべきかなど、専門的な知識が求められるのも事実です。
本記事では、手首骨折(橈骨遠位端骨折)の異議申し立てについて、基礎から成功のポイント、実際の認定事例までをわかりやすく解説します。
不満の残る認定結果に対し、どう行動すべきか迷っている方は、ぜひ参考にしてください。
最終更新日: 2025/7/28
Table of Contents
手首骨折(橈骨遠位端骨折)で非該当になる理由
手首骨折の後遺障害認定基準
手首骨折(橈骨遠位端骨折)の後遺障害認定は、主に「機能障害」「神経症状」「変形障害」が基準です。
1. 神経障害(痛みやしびれ)
等級 | 認定基準 |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
手首の神経障害(痛みやしびれ)では、画像検査などで明確な異常が医学的に証明されると、12級13号に認定される可能性があります。
12級13号が認定されなくても、症状が医学的に痛みやしびれが説明可能であれば、14級9号に認定される可能性があります。
2. 機能障害(手首を動かしにくい)
等級 | 認定基準 |
8級6号 | 上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの |
10級10号 | 1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの |
12級6号 | 1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの |
手首の可動域が通常の4分の3以下なら12級6号、半分以下なら10級10号、10%以下やほぼ動かない場合は8級6号に認定される可能性があります。
3. 変形障害(骨の変形が確認されるもの)
手首骨折後の変形障害には、12級8号(長管骨に変形を残すもの)があります。
実臨床では、主に尺骨茎状突起に偽関節を残したものをいいます。稀に橈骨茎状突起に偽関節を残すものもあります。
非該当と判断されやすいケース
後遺障害で非該当にされやすいのは、骨癒合が良好で手関節面に転位(ずれ)を認めないケースが挙げられます。また、症状固定まで6ヶ月未満であれば、後遺障害に認定されません。
手首骨折の異議申し立て手順ガイド
異議申し立ての流れと必要書類
異議申し立てを行う際は、まず「異議申立書」を作成します。事故日や自賠責証明番号、異議の理由・要求する等級などを明記します。
証拠資料として、新たな医証(診断書、画像検査、医師意見書、画像鑑定報告書など)の添付が重要です。
異議申立書に特定の様式はなく、任意の書式で提出可能です。保険会社が参考様式を提供する場合もあります。
異議申し立ての申請先
初回申請で「事前認定」を選んだなら加害者側の任意保険会社へ、「被害者請求」なら加害者側の自賠責保険会社へ、異議申し立て書と追加資料を提出します。
書類はそれぞれの保険会社経由で損害保険料率算出機構に送付されて、審査が実施されます。
異議申し立ての費用と時間は?
異議申し立て自体に特別な費用は通常発生しませんが、新たな医療証明や診断書の取得費用は自己負担となります。
審査期間の目安は2~4ヶ月ほどで、内容や審査の混雑状況によっては半年以上かかることもあります。
異議申立てに回数制限はありませんが、損害賠償請求権には消滅時効(通常は事故から3年、遅くとも5年)があります。
効果的な異議申し立てのための準備
初回申請時の不認定理由や不足点を見直して、不足していた要素を補う新たな医証(診断書、画像検査、医師意見書など)をしっかり揃えることが認定成功のカギです。
手首骨折の異議申し立て成功のポイント【弁護士必見】
非該当の原因を分析
手首骨折で異議申し立てを成功させるには、まずなぜ非該当になったのかを正確に分析することが不可欠です。
主な理由は、後遺障害診断書の記載不足、治療日数や画像所見の不足、症状と事故との因果関係が認められない点です。
これらの要因を精査して、医学的証拠の再確認や不足資料の補強がポイントとなります。
<参考>
後遺障害の異議申し立て成功のポイント|交通事故の医療鑑定
手首骨折の後遺障害認定条件をクリア
認定条件を満たすためには、手関節の可動域制限や神経症状(痛みやしびれ)の存在を、画像検査などで客観的に示す必要があります。
「機能障害」は画像検査で明白な原因を特定できる必要があります。「神経障害」も画像所見があれば有利です。
異議申し立てでは新たな医証が必須
異議申し立てを成功させるためには、初回申請時には提出していなかった新しい医証(医師意見書、画像鑑定、画像検査、診断書など)が不可欠です。
非該当になった原因に応じた、再検査による画像や医師の追加診断書、医師意見書などを新たに用意します。
既存資料のみだと等級変更は難しいため、積極的に新しい証拠を補充して、症状や障害の客観的証明に努めましょう。
<参考>
手首骨折の後遺障害認定ポイント
手首骨折で後遺障害認定されるには、それぞれの後遺障害の認定基準をクリアする必要があります。
手首骨折の後遺症が後遺障害認定されるポイントは、こちらのコラム記事でも紹介しています。是非、参照していただきたいと思います。
<参考>
手首骨折(橈骨遠位端骨折)の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故
手首骨折の異議申し立て成功事例【12級7号】
事案サマリー
- 被害者:42歳
- 初回申請:非該当
- 異議申立て:12級13号(局部に頑固な神経症状を残すもの)
歩行中に自動車に衝突されて橈骨遠位端骨折を受傷しました。初回申請で非該当でしたが、手首の痛みが強く日常生活への影響が大きいため、弊社に相談がありました。
弊社の取り組み
手首の痛みを精査する目的で、3テスラのMRIを再施行しました。MRIでは、TFCC損傷の所見がありました。
手の外科専門医(整形外科専門医)による意見書を作成しました。自賠責保険は手関節のTFCC損傷の存在をみとめ、12級13号を認定しました。
手首骨折の後遺障害認定で弊社ができること
弁護士の方へ
弊社では、交通事故で残った手首骨折の後遺症が後遺障害に認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。
等級スクリーニング®
現在の状況で、後遺障害に認定されるために足りない要素を、後遺障害認定基準および医学的観点から、レポート形式でご報告するサービスです。
等級スクリーニング®は、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。
等級スクリーニング®の有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニング®を承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング®】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定
医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。
医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。
弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
交通事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
手首骨折の後遺障害認定でお悩みの被害者の方へ
弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。
また、弊社では交通事故業務に精通している全国の弁護士を紹介することができます。
もし、後遺障害認定で弁護士紹介を希望される被害者の方がいらっしゃれば、こちらのリンク先からお問い合わせください。
尚、弁護士紹介サービスは、あくまでもボランティアで行っています。このため、電話での弊社への問い合わせは、固くお断りしております。
弊社は、電話代行サービスを利用しているため、お電話いただいても弁護士紹介サービスをご提供できません。ご理解いただけますよう宜しくお願い申し上げます。
手首骨折の異議申し立てでよくある質問
後遺障害が「非該当」だったのはなぜですか?
後遺障害が非該当になる主な理由は、治療期間が短すぎることや、症状固定時に医学的な証拠(画像検査・診断書)が不足していることです。
また、可動域制限や痛み・しびれといった症状に対する客観的な裏付けや記載が不十分なだと認定されません。初回審査で説明資料や検査データが不十分だったケースも多いです。
どんな資料を追加すれば、等級認定されやすくなりますか?
主治医による新たな診断書、新たな画像検査、専門医による医師意見書などの医学的証拠資料を追加することが重要です。
特に、客観的に症状や後遺障害を裏付けできるものが効果的です。不足している医証を整理して、分かりやすく補強しましょう。
手首の可動域制限はどうやって計測されますか?
手首の可動域は「背屈(手の甲側へ)」と「掌屈(手のひら側へ)」の角度を、それぞれ角度計で測定します。
前腕から指先を一直線に伸ばした状態を基準(0°)とし、どこまで曲がるかを計測します。後遺障害は、正常値や健側と比較して、4分の3以下、半分以下など基準値に基づいて判定されます。
骨がズレたまま(変形癒合)になっています。等級の対象になりますか?
骨がズレた状態で癒合(変形癒合)が残ると、「長管骨に変形を残すもの」として後遺障害12級8号などの等級認定の対象となることがあります。
さらに後遺症が重いケースで偽関節や著しい運動障害が認められれば、上位等級となる可能性もあります。
しびれや握力低下も後遺障害に含まれますか?
手首骨折後のしびれや握力低下も、交通事故の影響による神経損傷などが医学的に証明できれば、後遺障害として認定対象になります。
まとめ
手首骨折(橈骨遠位端骨折)後に後遺障害が認定されるには、「機能障害」「神経症状」「変形障害」の基準を満たす必要があります。
可動域の制限や痛み・しびれなどが医学的に証明されれば、等級認定の可能性がありますが、治療期間が短かったり、画像所見などの証拠が不十分だと「非該当」になります。
異議申し立てでは、新たな診断書や画像検査、医師意見書、画像鑑定などの提出が認定成功の鍵となります。
手首骨折の後遺障害認定でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。尚、初回の法律事務所様は無料で承ります。
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