腓骨骨折をすると、「いつになったら歩けるのか」「仕事や日常生活に戻れるのは何ヶ月後か」といった不安がつきまといます。
とくに交通事故などで突然骨折を負った場合、治療やリハビリの流れが分からず戸惑う方も多いでしょう。
本記事では、腓骨骨折の原因や治療法、全治までにかかる平均的な期間、リハビリの進め方、さらに後遺症に関する情報まで分かりやすく解説します。
腓骨骨折の回復の見通しを知ることで、適切な対応と心構えができるようサポートします。
最終更新日: 2025/7/8
Table of Contents
腓骨骨折とは
腓骨骨折の主な原因と発生しやすい状況
腓骨骨折は、足首の捻挫(内反捻挫)に伴う外果部の骨折、スポーツによる接触や衝突、交通事故、転倒・転落などが典型的な原因です。
骨自体が細いため弱く、高齢者や骨粗鬆症の患者はさらにリスクが高くなります。また、繰り返しの負荷で起こるストレス骨折もアスリートで見られることがあります。
どんな症状が現れるか
痛み、腫れ、内出血(あざ)が腓骨外側や足首に現れて、体重をかけると特に強い痛みが出ます。
外くるぶし周辺の圧痛や動かしにくさが特徴で、捻挫と紛らわしい場合があるため注意が必要です。
放置すると荷重バランスの崩れや変形性足関節症に進行しうるため、早期診断と治療が重要です。
診断方法と注意点
まず医師による視診・触診で圧痛や異常可動を確認して、レントゲン検査により骨折の有無・部位・ズレを評価します。
腓骨は脛骨の影に隠れることがあるため斜めからの角度での撮影も有用です。必要に応じてCT検査やMRI検査を施行します。
腓骨骨折の治療期間——全治まで何ヶ月かかるのか?
保存療法と手術療法、それぞれの全治期間
軽度の腓骨骨折では、ギプスや包帯による保存療法が選択されます。約6〜7週間で骨癒合して、12週前後で全治とみなされることが多いです。
一方、ズレがある骨折や複雑骨折では手術療法が必要となり、術後3週は免荷、その後部分荷重を開始して、通常12週ほどで全治に至るケースが一般的です。
歩けるまでの回復スケジュール
手術例では、術後約3週間は松葉杖等で非荷重生活を送り、4週前後から徐々に体重をかけ始めます。
保存療法でも最初の2〜3週間は荷重禁止、その後リハビリと並行して荷重を1/3→1/2→全面荷重へと段階的に進めます。
骨癒合の目安
腓骨骨折の骨癒合は、保存療法・手術療法とも、8~12週程度が一般的です。骨折の部位や年齢、全身状態によって前後します。
腓骨骨折のリハビリと日常生活への復帰
リハビリ開始のタイミングと内容
保存療法・手術療法ともに、ギプスや固定具装着中から足指の自動運動を開始して、血流維持と筋力低下予防を図ります。
非荷重期間中は松葉杖を使用して、3~4週後にX線で転位の有無を確認した上で、部分荷重歩行と可動域訓練、筋力強化を段階的に進めます。
日常生活・仕事・スポーツ復帰までの流れ
日常生活への復帰は、骨癒合が確認されてからが目安です。デスクワークなら2ヶ月前後、立ち仕事やスポーツ復帰は3~4ヶ月を要することが多いです。
腓骨骨折後に残りやすい後遺症
腓骨骨折では、骨癒合不全や偽関節、関節可動域制限、腓骨神経麻痺などの後遺症が残る可能性があります。
特に、神経障害や足首の可動域制限は、日常生活や仕事に長期的な影響を及ぼす場合があります。
腓骨骨折で考えられる後遺障害等級
機能障害
等級 | 認定基準 |
8級7号 | 足関節が強直したもの |
10級11号 | 足関節の関節可動域が、健側の1/2以下に制限されたもの |
12級7号 | 足関節の関節可動域が、健側の3/4以下に制限されたもの |
8級7号:1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの
足関節の可動域制限を残す場合があります。強直あるいは完全弛緩性麻痺かそれに近いものをいいます。
10級10号:1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
足関節の可動域が健側の可動域の1/2以下に制限されているものです。
12級7号:1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの
足関節の可動域が健側の可動域の3/4以下に制限されているものです。
神経障害
腓骨遠位端骨折の治療後に関節面の変形や段差が残存すると、足首の痛みの原因となることがあります。
等級 | 認定基準 |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
後遺障害12級13号:局部に頑固な神経症状を残すもの
レントゲン検査やCT検査で以下のような画像所見を確認できて、足首の痛みの原因を他覚的に証明できれば、12級13号に該当する可能性があります。
- 骨折部の変形
- 関節面の段差
- 関節裂隙の狭小化(関節の異常な摩耗)
後遺障害14級9号:局部に神経症状を残すもの
手術の有無、治療経過、通院頻度などの要素を総合的に判断した結果、痛みの原因が医学的に説明可能な場合には、14級9号に該当する可能性があります。
変形障害
等級 | 認定基準 |
7級10号 | 偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの |
8級9号 | 偽関節を残すもの |
12級8号 | 長管骨に変形を残すもの |
7級10号:1下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
要件として、「著しい運動障害を残すもの」とは常に硬性補装具を必要とするものを言います。
8級9号:1下肢に偽関節を残すもの
脛骨腓骨骨折に偽関節を残した症例で、常に硬性補装具を必要としないものが該当します。実臨床では、脛骨と腓骨が偽関節に至った症例でもっとも多いのはこのタイプの後遺障害です。
ロッキングプレートや髄内釘のおかげで硬性補装具無しで歩行可能なものの、骨癒合していない症例は稀ではありません。
12級8号:長管骨に変形を残すもの
腓骨の骨幹部のみに癒合不全を残すものはこれに該当します。
短縮障害
脛骨腓骨の骨癒合不全のために短縮の後遺障害が残ることがあります。
等級 | 認定基準 |
8級5号 | 1下肢を5センチメートル以上短縮したもの |
10級8号 | 1下肢を3センチメートル以上短縮したもの |
13級8号 | 1下肢を1センチメートル以上短縮したもの |
下肢の短縮の評価は、上前腸骨棘と下腿内果下端間の長さを健側と比較することによって行います。
<参考>
【医師が解説】脚長差(短縮障害)の評価はSMDが妥当?|交通事故
醜状障害
下腿の醜状に関しては、下記に詳しくまとめていますのでご参照ください。
<参考>
【医師が解説】醜状が後遺障害認定されるポイント|交通事故
腓骨骨折の後遺障害認定ポイント
腓骨骨折の中でも、特に後遺障害認定の対象になりやすいのは、足関節外果部(外くるぶし)での骨折です。
足関節外果部での腓骨骨折は、足関節脱臼骨折と呼ばれており、受傷時に瞬間的に距骨が脱臼して自然整復された病態です。
足関節脱臼骨折(足首骨折)の後遺障害認定ポイントは、こちらのコラム記事を参照してください。
<参照>
足首骨折(足関節脱臼骨折)の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故
腓骨骨折の後遺障害認定で弊社ができること
弁護士の方へ
弊社では、交通事故で受傷した、腓骨骨折の後遺症が、後遺障害に認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。
等級スクリーニング®
現在の状況で、後遺障害に認定されるために足りない要素を、後遺障害認定基準および医学的観点から、レポート形式でご報告するサービスです。
等級スクリーニング®は、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。
等級スクリーニング®の有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニング®を承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング®】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定
医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。
医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。
弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
労災事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
腓骨骨折の後遺障害認定でお悩みの患者さんへ
弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。
また、弊社では交通事故業務に精通している全国の弁護士を紹介することができます。
もし、後遺障害認定で弁護士紹介を希望される被害者の方がいらっしゃれば、こちらのリンク先からお問い合わせください。
尚、弁護士紹介サービスは、あくまでもボランティアで行っています。このため、電話での弊社への問い合わせは、固くお断りしております。
弊社は、電話代行サービスを利用しているため、お電話いただいても弁護士紹介サービスをご提供できません。ご理解いただけますよう宜しくお願い申し上げます。
腓骨骨折の全治期間でよくある質問
腓骨骨折はいつから歩ける?
腓骨骨折後の歩行再開時期は、骨折部位や重症度、治療法により異なります。
手術療法の場合、術後すぐに関節可動域訓練を始めて、約4週間後に部分荷重歩行、8週間ほどで全荷重が可能になります。
保存療法でも2~3週間は免荷して、その後は徐々に荷重をかけていき、6~8週間で松葉杖使用から通常歩行へ進むケースが多いです。
腓骨骨折がくっつくまでどのくらいかかりますか?
骨折の仮骨形成から強固な骨へと変わる癒合過程には個人差がありますが、一般的に2~3ヶ月かかるケースが多いです。
レントゲン検査で骨がついた(癒合した)と確認されるのは7〜12週程度で、その後も可動域や筋力を回復させるためのリハビリが必要です。
脛骨・腓骨骨折の治癒期間は?
脛骨と腓骨がともに骨折した場合、下肢への負荷が大きいため治癒にはより時間が必要です。
一般的に、脛骨・腓骨骨折では、保存療法・手術療法とも、3ヶ月以上かかるケースが多いです。
まとめ
腓骨骨折は、足首の捻挫や交通事故、スポーツ時の衝突などで起こりやすく、痛みや腫れ、歩行困難を伴います。
治療は保存療法か手術療法が選ばれ、骨癒合には約8〜12週かかります。リハビリは早期から始まり、仕事やスポーツ復帰には2〜4ヶ月が目安です。
後遺症として可動域制限や神経障害が残ることがあり、重度の場合は後遺障害等級の認定対象となります。
腓骨骨折の後遺障害認定でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。尚、初回の法律事務所様は無料で承ります。
関連ページ
資料・サンプルを無料ダウンロード
以下のフォームに入力完了後、資料ダウンロード用ページに移動します。