交通事故やスポーツなどによって起こる「指の靭帯損傷」。受傷直後は腫れや痛みに悩まされるものの、適切な治療を受ければ回復が見込めるケースも多いです。
一方、「いつまで痛みが続くのか」「リハビリをしても指が思うように動かない」といった不安を抱える方も少なくありません。
特に後遺症が残ってしまうと、日常生活や仕事に支障をきたすケースもあります。程度によっては、後遺障害等級の認定が関わってくることも。
本記事では、指の靭帯損傷の基礎知識から後遺症、後遺障害等級の詳細、適切なリハビリ方法まで網羅的に解説しています。
最終更新日: 2025/5/20
Table of Contents
指の靭帯損傷とは?
指の靭帯損傷の種類
側副靭帯損傷
指の関節の左右にある靭帯の損傷です。突き指などで起こりやすいです。
掌側板損傷
指の関節の掌側にある靭帯の損傷です。指が過度に反り返ることで起こることがあります。
指の靭帯損傷の症状
指の靭帯損傷は、指の骨と骨をつなぐ靭帯が外傷により損傷した状態です。主な症状には、指の痛み、腫れ、熱感があります。
指の靭帯損傷の検査
ストレス撮影
ストレス撮影は、関節に外力を加えた状態でレントゲン撮影を行い、靭帯の損傷や関節の不安定性を評価する検査です。
指の靭帯損傷が高度なケースでは、ストレス撮影を行うと、関節裂隙(関節のすきま)が、健側と比べて大きく開きします。
MRI検査
MRI検査は、磁気を利用して体内の断面画像を取得する検査で、靭帯や筋肉などの軟部組織の状態を詳細に確認できます。
指の靭帯損傷の治療
軽度(捻挫)
1. RICE処置
受傷直後の基本的な処置です。
- Rest(安静): 指を動かさないようにします
- Ice(冷却): 1回15~20分、1日に数回アイシングします
- Compression(圧迫): 弾性包帯などで圧迫して腫れを抑えます
- Elevation(挙上): 心臓より高い位置に保ち、腫れを抑えます
2. 鎮痛剤
痛みが強い場合は、市販または処方された鎮痛剤を使用します。
3. 固定
テーピング(バディテーピング:隣の指と一緒に固定する方法)や、指用サポーター、副子などで固定することがあります。
中度~重度(部分断裂、完全断裂)
1. 固定
より長期の期間、副子やギプスで固定が必要となる場合があります。
2. 手術
靭帯が完全に断裂している場合や、骨折を伴っている場合などには、手術が必要になることがあります。
指の靭帯損傷のリハビリテーション
リハビリテーションは、指の機能回復のために非常に重要です。医師や理学療法士の指示に従って、段階的に行います。
1. 初期(炎症期)
安静、アイシング、挙上を継続し、腫れと痛みの軽減を図ります。痛みのない範囲で、隣の関節や指の軽い運動を行います。
2. 中期(回復期)
徐々に指の関節を動かす練習を開始します。
他動運動: 別の手を使って、ゆっくりと指を曲げたり伸ばしたりします。
自動運動: 自分の力で、ゆっくりと指を曲げたり伸ばしたりします。握る、つまむなどの軽い運動も開始します。
3. 後期(機能回復期)
ストレッチや筋力トレーニングの強度を上げていきます。
指のストレッチ: 指を反らせたり、伸ばしたり、回したりします。
握力強化: ゴムボールを握る、タオルを絞るなどの運動を行います。
巧緻運動: 小さなものを拾う、ボタンを留めるなど、細かい作業の練習を行います。
指の靭帯損傷の後遺症
指の靭帯損傷後、適切な治療やリハビリを行わない場合、以下のような後遺症が残ることがあります。
関節の不安定性
靭帯が完全に断裂していると、指が左右に不安定になり、正常な動作が困難になることがあります。
可動域の制限
関節の拘縮や癒着により、指の曲げ伸ばしが制限され、日常生活に支障をきたす可能性があります。
慢性的な痛みや腫れ
損傷部位に慢性的な炎症が残り、痛みや腫れが長期間続くケースがあります。
変形
適切な治療が行われないと、指が変形して、見た目や機能に影響を及ぼす可能性があります。
指の靭帯損傷の後遺障害等級
指の機能障害
等級 | 認定基準 |
7級7号 | 1手の5の手指又はおや指を含み4の手指の用を廃したもの |
8級4号 | 1手のおや指を含み3の手指の用を廃したもの又はおや指以外の4の手指の用を廃したもの |
9級13号 | 1手のおや指を含み2の手指の用を廃したもの又はおや指以外の3の手指の用を廃したもの |
10級7号 | 1手のおや指又はおや指以外の2の手指の用を廃したもの |
12級10号 | 1手のひとさし指、なか指又はくすり指の用を廃したもの |
13級6号 | 1手のこ指の用を廃したもの |
MP関節(中手指節間関節)、PIP関節(近位指節間関節)、母指のIP関節(指節間関節)の可動域が健側可動域の1/2以下に制限されると、手指の用を廃したものとして後遺障害に認定されます。
<参考>
指が曲がらない後遺障害の認定条件と傷病名|交通事故、労災事故
指の神経障害
等級 | 認定基準 |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
MP関節(中手指節間関節)、PIP関節(近位指節間関節)、母指のIP関節(指節間関節)の可動域が、健側可動域の1/2以下まで制限されてない事案は、手指の用を廃したものとして後遺障害に認定されません。
一方、靭帯損傷のために関節の不安定性が残るケースでは、関節の痛みが後遺症として残ることが珍しくありません。このような事案では、指の神経障害に認定される可能性があります。
指の靭帯損傷の後遺障害認定ポイント【弁護士必見】
ストレス撮影で関節の不安定性を客観的に評価できるか
靭帯損傷による後遺症は、関節の可動域制限や痛みが一般的です。それらの後遺症の原因は、靭帯損傷による「関節の不安定性」です。
このため、ストレス撮影などで、客観的に靭帯損傷のために関節の不安定性が残っていることを証明する必要があります。
しかし、実臨床では、関節の不安手性の証明のためだけに、ストレス撮影を実施するケースは稀です。
主治医に、症状固定時期にストレス撮影を実施する目的と意義を十分に説明する必要があります。
弊社では、必要に応じて、主治医への依頼文の起草や校正等を実施しています。お困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
MRI検査も有用だが撮像法がポイントになる
ストレス撮影の代替え案として、MRI検査による靭帯の評価が挙げられます。しかし、指の靭帯損傷をMRI検査で証明するのは、意外に難しいです。
指の靭帯は、とても小さな組織です。このため、3テスラの高性能なMRI検査が望ましいです。また、靭帯損傷を客観的に証明するための撮像法にも、ある程度のポイントがあります。
手外科医による医師意見書も有用
指の靭帯損傷は、日常生活に支障をきたすことが多い割には、後遺障害に認定されにくいのが実情です。
このような事案では、手外科医師による医師意見書が有効であるケースが多いです。お困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
指の靭帯損傷の後遺障害認定で弊社ができること
弁護士の方へ
弊社では、指の靭帯損傷の後遺症が後遺障害に認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。
等級スクリーニング®
現在の状況で、後遺障害に認定されるために足りない要素を、後遺障害認定基準および医学的観点から、レポート形式でご報告するサービスです。
等級スクリーニング®は、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。
等級スクリーニング®の有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニング®を承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング®】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定
医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。
医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。
弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
交通事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
指の靭帯損傷の後遺障害認定でお悩みの被害者の方へ
弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。
また、弊社では交通事故業務に精通している全国の弁護士を紹介することができます。
もし、後遺障害認定で弁護士紹介を希望される被害者の方がいらっしゃれば、こちらのリンク先からお問い合わせください。
尚、弁護士紹介サービスは、あくまでもボランティアで行っています。このため、電話での弊社への問い合わせは、固くお断りしております。
弊社は、電話代行サービスを利用しているため、お電話いただいても弁護士紹介サービスをご提供できません。ご理解いただけますよう宜しくお願い申し上げます。
指の靭帯損傷でよくある質問
指の靭帯損傷は完治しますか?
指の靭帯損傷は、損傷の程度や治療方法によって回復の程度が異なります。軽度の損傷であれば、適切な治療とリハビリによって元の状態に近い機能を取り戻すことが可能です。
しかし、重度の損傷や治療が遅れた場合、靭帯が瘢痕組織で修復されるため、元の靭帯よりも柔軟性や強度が劣ることがあります。
その結果、関節の不安定性や可動域の制限が残ることもあります。早期の診断と適切な治療が完治への鍵となります。
指の側副靭帯損傷を放置するとどうなる?
側副靭帯損傷を放置すると、関節の不安定性が増して、日常生活やスポーツ活動に支障をきたす可能性があります。
また、関節の変形や慢性的な痛み、可動域の制限が生じることもあります。特に、完全断裂や他の組織の損傷を伴う場合、早期の診断と治療が重要です。
指の靭帯損傷は全治何ヶ月?
指の靭帯損傷の全治期間は、損傷の程度や治療方法によって異なります。一般的に、靭帯の機能は約4週間で回復し始めるとされていますが、完全な回復やスポーツ復帰までには数ヶ月を要することがあります。
軽度の損傷であれば、数週間から1ヶ月程度で日常生活に支障がなくなることもありますが、重度の損傷や手術が必要な場合は、リハビリを含めて数ヶ月の治療期間が必要となることがあります。
まとめ
指の靭帯損傷は、突き指や強く反らすなどの外傷で起こり、関節の安定を保つ靭帯が切れたり伸びたりする状態です。
主な症状は痛み、腫れ、熱感で、ストレス撮影やMRI検査で診断されます。治療はRICE処置や固定、重度の場合は手術が必要となることもあります。
回復にはリハビリテーションが重要で、動かす練習や筋力トレーニングを段階的に行います。適切な治療が行われないと、不安定性や変形、後遺障害が残る可能性もあります。
指の靭帯損傷では、手外科医師による医師意見書が有効であるケースが多いです。お困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
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