交通事故後に物忘れや注意力低下が続くとき、それが高次脳機能障害 後遺障害認定の対象になるのか、不安や疑問を抱く方は少なくありません。
画像所見が異常が乏しかったり、外見上は大きな後遺症が見えにくいと、後遺障害申請に踏み出せないケースも多いでしょう。
本記事では、高次脳機能障害が後遺障害認定されるための具体的な3条件、等級ごとの判断基準のポイントを分かりやすく解説しています。
さらに、ご家族の症状が認定基準に当てはまるかを確認する視点や、医療鑑定で重視される実務上のポイントも解説します。
最終更新日: 2026/2/23
Table of Contents
高次脳機能障害が後遺障害認定される3条件
高次脳機能障害が後遺障害に認定されるためには、以下の3つの条件をすべて満たす必要があります。
- 脳外傷の診断名がついている
- 症状固定時に脳損傷の画像所見が確認できる
- 受傷直後に意識障害があり一定期間持続している
1. 脳外傷の診断名がついている
脳挫傷、びまん性軸索損傷、急性硬膜下血腫、脳出血などの傷病名が、後遺障害診断書に記載されていることが求められます。
外傷性くも膜下出血や慢性硬膜下血腫は、後遺症を残さないケースが多いため注意が必要です。
2. 症状固定時に脳損傷の画像所見が確認できる
CT検査やMRI検査で、脳挫傷痕・脳萎縮・脳室拡大などの器質的な病変が確認されることが必須です。
急性期に目立った所見があっても、慢性期には消失している事案も多いため、経時的な画像検査が重要です。
3. 受傷直後に意識障害があり一定期間持続している
中等度以上の意識障害が6時間以上、もしくは健忘や軽度の意識障害が1週間以上続いたことが一つの基準です。
ただし、弊社の経験では、近年の傾向として意識障害は絶対的な条件ではなくなりつつあります。
意識障害がなくても、画像所見や神経心理学的検査、日常生活状況報告を総合的に判断して認定されたケースも経験しています。

高次脳機能障害の後遺障害認定基準
高次脳機能障害の後遺障害等級は、以下の4つの能力がどの程度失われているかで決まります。能力の喪失度合いに応じて、1~12級に分類されます。
- 意思疎通能力
- 問題解決能力
- 作業負荷に対する持続力と持久力
- 社会行動能力
1級1号(要介護)
重篤な高次脳機能障害のため、食事・入浴・用便・更衣等に常時介護が必要な状態です。高度認知症や情意荒廃で常時監視が必要な例もあります。
身体機能は残っていても、高度の認知障害のため生命維持に必要な身の回りの動作に全面的な介護が必要です。後遺障害慰謝料は約2800万円です。
2級1号(要介護)
重篤な高次脳機能障害のため、食事・入浴・用便・更衣等に随時介護を要する状態です。後遺障害慰謝料は約2370万円です。
認知症や情意の障害、幻覚、妄想、頻回の発作性意識障害等のために随時他人による監視が必要な場合も該当します。
自宅内の日常動作は一応できるものの、1人での外出が困難で、外出の際には付き添いが必要な状態です。
3級3号
生命維持に必要な身の回りの処理動作は自分でできるものの、高次脳機能障害のために労務に服することができない状態です。
具体的には、4つの能力のうち1つ以上が全部失われている、あるいは2つ以上の能力の大部分が失われている場合が該当します。
自宅周辺なら1人で外出でき日常動作も独力でできますが、記憶障害や注意障害のために就労が困難です。後遺障害慰謝料は約1990万円です。
5級2号
高次脳機能障害のため、きわめて軽易な労務のほかは服することができない状態です。後遺障害慰謝料は約1400万円です。
4つの能力のうち1つの大部分が失われている、あるいは2つ以上の能力の半分程度が失われている場合に該当します。
単純な繰り返し作業なら可能ですが、新しい作業の学習や環境変化への対応が難しく、職場の理解と援助がなければ就労を継続できません。
7級4号
高次脳機能障害のため、軽易な労務にしか服することができない状態です。後遺障害慰謝料は約1000万円です。
4つの能力のうち1つの半分程度が失われている、あるいは2つ以上の能力の相当程度が失われている場合に該当します。
一般就労はできても、作業の手順が悪い、約束したことを忘れる、ミスが多いなどの問題があり、一般の人と同等の作業は見込めません。
9級10号
通常の労務に服することはできるものの、就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限される状態です。後遺障害慰謝料は約690万円です。
4つの能力のうち1つの相当程度が失われている状態です。一般就労はできても、問題解決能力に障害があり、作業効率や持続力に問題が出ます。
12級13号
通常の労務に服することはできるが、高次脳機能障害のため多少の障害を残す状態です。4つの能力のうち1つ以上が多少失われています。
臨床的な症状が無くても、症状固定時のCTやMRIで脳挫傷痕や脳萎縮などの所見があれば認定されます。
実務上は、高次脳機能障害として認定される等級の下限は12級13号と言われています。後遺障害慰謝料は約290万円です。
家族の症状が認定基準に当てはまるかチェックする方法
高次脳機能障害は外見からは分かりにくく、本人に病識がないことも多いため、家族が気づくことが重要です。
以下の2つのポイントをチェックして、ご家族の症状が認定基準に当てはまるかを確認しましょう。
事故前と事故後の変化を観察する
高次脳機能障害の4大症状である記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害が、事故前とどう変化したかを具体的に把握してください。
「食事をしたこと自体を忘れる」「怒りっぽくなった」「段取りを立てられなくなった」など、日常の具体的なエピソードの記録が大切です。
4大症状ごとに整理する
記憶障害・注意障害・遂行機能障害・社会的行動障害の4つに分けて具体的な支障を記録しましょう。
高次脳機能障害の後遺障害認定ポイント【弁護士必見】
画像所見と意識障害のクリアが最初の関門
まず画像所見として、脳実質の損傷を示す脳挫傷痕・脳萎縮・脳室拡大などが認められる必要があります。
意識障害についても、受傷直後の評価記録(JCSやGCS)がカルテに残っていることが重要です。
ただし弊社の経験では、近年は意識障害がなくても認定されるケースが増えている印象があります。
6つの必要書類を過不足なく準備する
適切な後遺障害等級が認定されるには、以下の6つがそろっている必要があります。いずれかが不十分だと等級が低く評価される可能性があります。
- 後遺障害診断書
- 画像検査(CT・MRI)
- 神経心理学的検査
- 頭部外傷後の意識障害についての所見
- 神経系統の障害に関する医学的意見
- 日常生活状況報告
神経心理学的検査が争点になりやすい
高次脳機能障害の後遺障害等級の判定では、画像検査よりも神経心理学的検査の結果に重きが置かれます。
しかし、神経心理学的検査は主観性が強いため、訴訟では解釈をめぐって争いになることが多いです。
WAIS-Ⅳ(知能検査)、WMS-R(記憶検査)、BADS(遂行機能検査)などの適切な検査を受けているか確認しましょう。
主治医との信頼関係を構築する
リハビリテーション担当の主治医と日頃から信頼関係を築き、受傷後にどのようなことができなくなったかを詳しく伝えることが重要です。
後遺障害認定基準を熟知している医師はほとんど存在しないため、必要に応じて弊社のような鑑定会社の医師意見書を提出することも有効です。
日常生活状況報告書を丁寧に作成する
家族や近親者が作成する「日常生活状況報告」は、後遺障害認定審査で極めて重要な資料です。
日常生活状況報告の記載にあたっては、「神経心理学的検査」や「神経系統の障害に関する医学的意見」との整合性が重要です。
後遺症の程度を過大に「盛る」と、検査結果との整合性がなくなり、報告書の信憑性が損なわれてしまいます。
家族や近親者は、高次脳機能障害の認定基準を知らないため、弁護士が日常生活状況報告の記載内容をチェックする必要があります。
ただし、日常生活状況報告の記載内容の確認には、後遺障害認定基準と医学知識を、極めて高いレベルで理解している必要があります。
被害者家族が記載した日常生活状況報告の記載内容の確認に不安がある場合は、こちらからお気軽にご相談下さい。
高次脳機能障害の等級認定で弊社ができること
高次脳機能障害の後遺障害認定サポート
弊社では、交通事故で発症した高次脳機能障害が、後遺障害に認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。
等級スクリーニング®
現在の状況で、後遺障害に認定されるために足りない要素を、後遺障害認定基準および医学的観点から、レポート形式でご報告するサービスです。
等級スクリーニング®は、年間1000事案の圧倒的データ量をベースにしています。整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。
等級スクリーニング®の有用性を実感いただくため、初回事務所様は無料で承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング®】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定

医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した専門医が作成します。作成前に検討項目を共有して、クライアントと意見書の内容を擦り合わせます。
必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックで、意見書の質を担保しています。
弊社は、数千におよぶ医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例があります。是非、弊社の医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの画像検査や資料を精査して、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
弊社では、事案の分析から画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
高次脳機能障害の被害者向けサポート
弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。
また、弊社では交通事故業務に精通している全国の弁護士を紹介することができます。
もし、後遺障害認定で弁護士紹介を希望される被害者の方がいらっしゃれば、こちらのリンク先からお問い合わせください。
尚、弁護士紹介サービスは、あくまでもボランティアで行っています。このため、電話での弊社への問い合わせは、固くお断りしております。
弊社は、電話代行サービスを利用しているため、お電話いただいても弁護士紹介サービスをご提供できません。ご理解のほどお願いいたします。

高次脳機能障害の後遺障害認定でよくある質問
高次脳機能障害で画像所見がなくても認定されますか
原則として、高次脳機能障害の後遺障害認定では、CTやMRI検査で脳の器質的損傷が確認できることが重要視されます。
画像所見がない場合は認定が難しくなりますが、受傷状況や神経心理学的検査結果、診療経過を総合的に評価して認定されることもあります。
高次脳機能障害ではどの検査が重要ですか
WAIS-Ⅳ、WMS-R、遂行機能の行動評価法(BADS)、Trail Making Test(TMT)などの神経心理学的検査が重要です。
単なる自覚症状だけでなく、これらの客観的検査で機能低下が裏付けられることが、認定のポイントになります。
高次脳機能障害の等級はどのように決まりますか
まず、脳外傷の診断名・画像所見・意識障害の3条件を満たすと「高次脳機能障害」として認定されます。
その後、神経心理学的検査、神経系統の障害に関する医学的意見、日常生活状況報告を総合的に判断して、後遺障害等級が決定されます。
意思疎通能力・問題解決能力・作業負荷に対する持続力と持久力・社会行動能力の4つの能力の喪失度合いが評価基準です。
高次脳機能障害と事故との因果関係はどう判断されますか
事故直後の意識障害の有無と程度、症状固定時期の画像検査における脳損傷所見が判断材料となります。
高齢者では、事故前から認知機能低下がなかったかを確認する必要があります。事故前の画像があれば、脳萎縮の程度を比較することが重要です。
症状固定とは何ですか
症状固定とは、医学的にこれ以上の治療効果が期待できないと医師が判断した状態を指します。
高次脳機能障害の場合、受傷後1年~2年程度で症状固定と診断されることが多いです。
急性期は急速に回復して、その後は緩やかに回復する傾向があるため、経過観察が必要です。
不適切な時期に症状固定とされると、後遺障害等級に認定されない可能性が高くなるので注意が必要です。
医師意見書のポイントは何ですか
医師意見書では、診療録・画像検査・各種検査・後遺障害診断書などの事故関連資料をもとに、後遺障害の医学的蓋然性を総合的に主張します。
症状の具体的な内容、日常生活への影響、就労状況を詳細に記載して、後遺障害認定基準に合わせて説明することが重要です。
後遺障害認定基準に精通した専門医が作成して、必要に応じて医学文献を添付することで説得力が増します。
高次脳機能障害では家族の陳述書は有効ですか
高次脳機能障害は外見から分かりにくく、本人に病識がないため、家族による日常生活の変化の具体的な陳述は、重要な補強資料になります。
日常生活状況報告は、診断書と同列に扱われます。ただし、医療記録や検査結果との整合性が必要であり、過度な誇張は逆効果です。
仕事を続けていると後遺障害に認定されませんか
就労の有無だけで直ちに不利にはなりません。ただし、通常勤務が問題なく可能な場合は、障害の程度が軽いと判断される可能性があります。
就労を続けていても、作業ミスが多い、約束を忘れる、職場で配置転換を余儀なくされた事実があれば、日常生活状況報告に記載しましょう。
異議申し立てで逆転できますか
異議申し立てで認定が変わることはあります。新たな検査結果や医師意見書の追加提出で、判断が変更されたケースも報告されています。
成功率は約10%ですが、認定基準を満たしていない点を特定して、追加の神経心理学的検査を受けて不足する医証を補うことが鍵です。
実際に、初回の12級13号から、異議申し立てで7級4号に変更された事例もあります。
高次脳機能障害が軽度でも認定されますか
軽度でも認定される可能性はあります。画像検査で脳挫傷痕や脳萎縮が確認できれば、臨床症状がなくても12級13号が認定されます。
また、画像所見がなくても脳損傷が医学的に合理的に推測でき、わずかな能力喪失が認められれば14級9号に認定されることもあります。
軽度の高次脳機能障害であっても、適切な検査と書類を揃えることで、認定を受けられる可能性は十分あります。
まとめ
高次脳機能障害が後遺障害認定されるには、脳外傷の診断名、脳挫傷痕・脳萎縮などの画像所見、受傷直後の意識障害という3条件が基本です。
そのうえで、意思疎通能力・問題解決能力・持続力・社会行動能力の4能力の低下をもとに1級から12級まで等級が決まります。
後遺障害認定では、神経心理学的検査や医学的意見と日常生活状況報告の整合性が重要で、異議申し立てで等級が変更される可能性があります。
高次脳機能障害の後遺障害認定でお困りなら、こちらからお問い合わせください。初回の法律事務所様は無料で等級スクリーニングを承ります。
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