交通事故後、強い痛みやしびれ、皮膚の変化や関節が動かせない状態が続き、CRPS(複合性局所疼痛症候群)と診断されるケースがあります。
強い症状が続いているにもかかわらず、自賠責保険の後遺障害認定では“非該当”と判断されるケースは少なくありません。
医師から診断を受けているのに、なぜ認定されないのか…。多くの被害者が疑問と不安を抱えて、異議申し立てを検討することになります。
実は、CRPSは診断基準と後遺障害認定基準の間に大きな差があり、単に症状を訴えるだけでは、後遺障害が認定されない特殊な傷病です。
本記事では、CRPSが後遺障害に認定されない理由を解説して、対処法や必要な医証、異議申し立てのポイントを具体的に紹介しています。
最終更新日: 2025/12/6
Table of Contents
CRPSの後遺障害が非該当になる5つの理由
CRPSの三要件を満たしていない(関節拘縮・骨萎縮・皮膚変化)
CRPSが後遺障害に認定されるには、以下の三要件すべてにおいて、健側と比較して明らかな差が他覚的に確認される必要があります。
- 関節拘縮
- 骨萎縮
- 皮膚変化(色調・温度・萎縮)
三要件のうち、どれか1つでも欠けると、専門医がCRPSと診断していても「後遺障害は非該当」と判断される点が最大のハードルです。
医学的診断基準しか満たしていない
臨床で使われるCRPS診断基準(IASPの診断基準など)は、自覚症状や身体所見を総合して診断しますが、骨萎縮を必須とはしていません。
一方、自賠責保険は三要件の客観的所見を厳格に要求しており、臨床的にはCRPSと診断されても、認定基準を満たさなければ非該当になります。
症状の一貫性がない
治療経過において、症状の訴えが途切れていたり、日によって部位や程度の説明が大きく異なると「症状が一貫していない」と評価されます。
特に、受傷直後から症状固定まで「途中であまり通院していない」「自覚症状の記録が乏しい」ケースでは、非該当となるリスクが高まります。

自覚症状のみで客観的所見がない
「とにかく痛い」「触れただけで激痛が走る」といった訴えだけでは、CRPSとしての後遺障害は原則認められません。
関節可動域測定、レントゲンでの骨萎縮、皮膚温の差・色調変化、サーモグラフィーなど、第三者が確認できる客観的データが求められます。
これらの検査や記録が不足していると、「単なる痛み」や「他覚的所見の無い疼痛」と評価されて、非該当の判断につながります。
CRPSの診断名が無い
診断書に「CRPS」「RSD」「カウザルギー」などの診断名が無いと、CRPSの後遺障害(7級4号・9級10号・12級13号)に認定されません。
ペインクリニック等の専門医を受診していないために、そもそもCRPSとして評価されず、非該当となる例も少なくありません。
CRPSが後遺障害に認定されない場合の対処法は?
後遺障害が非該当とされた理由を精査する
まず、自賠責保険の結果通知を入手して、CRPSの三要件のどこが不足と評価されたのかを具体的に整理することが重要です。
臨床的な診断基準は満たすが、後遺障害認定基準のどの要素が弱いのかを特定すると、異議申し立てで補強すべきポイントが明確になります。
CRPSの認定基準を満たすための医証を集める
不足している所見を補うため、関節可動域検査、レントゲン・CT・MRI、骨塩定量、サーモグラフィー、皮膚の写真記録などを追加で実施します。
その結果を診断書に反映してもらいます。特に、健側との比較データや、症状経過を説明するカルテ記載を整理して提出することが重要です。
医師意見書や画像鑑定報告書を医療鑑定会社に依頼して、CRPSとしての蓋然性を専門的に証明する方法も有効です。
<参考>
自賠責保険に異議申し立てを行う
非該当や低い等級に納得できない場合は、保険会社を通じて、または被害者請求の形で自賠責保険に対して異議申し立てを行います。
異議申立書には、新たにどのような検査・医証を追加したかを具体的に記載しなければ、等級が覆ることはほとんどありません。
異議申し立てでも認定されないケースでは、紛争処理機構への申請や訴訟を提起することで、CRPSが後遺障害に認定された例も存在します。
尚、CRPSが後遺障害に認定されるポイントは、こちらのコラム記事で詳しく紹介しています。是非、参照していただきたいと思います。
<参考>
CRPSの後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
CRPSが後遺障害に認定されるためのサポート
弁護士の方へのサポートサービス
弊社では、交通事故で受傷したCRPSの後遺症が、後遺障害に認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。
等級スクリーニング®
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等級スクリーニング®は、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。
等級スクリーニング®の有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニング®を承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング®】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定

医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。
医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。
弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
被害者への弁護士紹介サービス【無料】
弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。
また、弊社では交通事故業務に精通している全国の弁護士を紹介することができます。
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尚、弁護士紹介サービスは、あくまでもボランティアで行っています。このため、電話での弊社への問い合わせは、固くお断りしております。
弊社は、電話代行サービスを利用しているため、お電話いただいても弁護士紹介サービスをご提供できません。ご理解いただけますよう宜しくお願い申し上げます。

CRPSが後遺障害認定されないでよくある質問
主治医からはCRPSと診断されているのに、なぜ「非該当」になったのですか?
主治医は、厚生労働省研究班によるCRPSのための判定指標や、国際疼痛学会(IASP)の診断基準に基づいてCRPSと診断します。
一方、自賠責保険は「関節拘縮・骨萎縮・皮膚変化」の三要件が、すべて他覚的に認められなければ、CRPSとして後遺障害認定しません。
そのため、「臨床上はCRPSだが、自賠責保険の後遺障害認定基準を満たさない」という理由で、非該当とされるケースがよく見られます。
異議申し立てのために、具体的にどのような検査を追加すればいいですか?
基本は、自賠責保険の三要件を裏付ける検査を揃えることです。具体的な検査は以下のとおりです。
- 関節拘縮:健側と比較した可動域測定
- 骨萎縮:レントゲンや骨塩定量検査
- 皮膚変化:サーモグラフィー、マクロ画像
これらの検査に加えて、整形外科やペインクリニック専門医の医師意見書や画像鑑定報告書を添付して、症状との整合性を説明するのも有効です。
3要件(骨萎縮など)がすべて揃っていないと、絶対に認定されないのですか?
自賠責保険の実務では、三要件の全部が揃わないと「CRPSとしての7級・9級・12級」は原則認められません。
もっとも、裁判所は自賠責保険の認定基準に拘束されないため、骨萎縮が不十分でもCRPSを認めた事例もあります。
したがって、自賠責保険でCRPSが非該当でも、訴訟や別の評価枠組みで救済される余地はあります。
痛みがひどくて仕事ができないのに、画像に異常がないからといって諦めるしかありませんか?
画像所見が乏しいとCRPSとしては認定されませんが、他覚的な所見があれば、神経症状としての後遺障害が認定される可能性があります。
また、裁判は自賠責保険の認定基準に拘泥されません。痛みの程度や就労への影響を丁寧に立証することが重要です。
受傷から時間が経って症状が変わってきましたが、今の状態を見てもらえますか?
CRPSは、時間経過とともに症状が変化して、拘縮や萎縮が進行することもあれば、逆に所見が薄くなることもあります。
異議申し立てや訴訟では、「受傷直後から現在までの経過」と「現時点の他覚所見」を合わせて評価されます。
したがって、今の状態を専門医に診察してもらい、新たな検査結果や医師意見書を取得することは有効です。
CRPS診断基準と自賠責保険の認定基準の違いは?
厚生労働省研究班によるCRPSのための判定指標やIASPの診断基準は、症状と身体所見で診断するため、骨萎縮は必須ではありません。
一方、自賠責保険は「関節拘縮・骨萎縮・皮膚変化」という三要件に絞り込み、それぞれの客観的証拠が揃うかでCRPSか否かを判断します。
このため、臨床上はCRPSでも、自賠責保険では非該当となるギャップが生じやすいのです。
画像検査で異常が見つからない場合でも認められますか?
レントゲン検査で明らかな骨萎縮が見られない場合、自賠責保険のCRPS後遺障害認定基準を満たすのは非常に困難です。
ただし、皮膚温の左右差や色調変化、サーモグラフィーでの異常など、他の客観的所見があれば、裁判で後遺障害認定される余地があります。
症状の記録はどうすれば証拠として有効になりますか?
診察日ごとの痛みの程度、腫れや色の変化、日常生活・仕事への影響を、日記の形で継続的に記録しておくと、有力な補助資料になります。
スマートフォンで患部の色調・腫脹を撮影しておくことも、皮膚変化の推移を示すうえで有効です。
これらの記録は、カルテや検査所見と合わせて提出することで、「症状の一貫性」と「生活への支障」を具体的に裏付ける役割を果たします。
まとめ
CRPSが後遺障害で非該当になる理由は、「関節拘縮・骨萎縮・皮膚変化」の三要件を、健側と比べて明確に証明できないためです。
臨床的にCRPSと診断されても、自覚症状中心で客観的所見が不足したり、症状の一貫性がないと後遺障害に認定されません。
非該当の際には、等級通知書を精査して、不足する検査や画像データを追加して、異議申し立てを行う必要があります。
CRPSの後遺障害認定でお困りなら、こちらからお問い合わせください。尚、初回の法律事務所様は無料で等級スクリーニングを承ります。
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