交通事故をきっかけに椎間板ヘルニアを発症して痛みやしびれが続いているのに、後遺障害認定では「非該当」となるケースは少なくありません。
自分の症状が軽く扱われたように感じて、納得できないまま途方に暮れてしまう方も多いでしょう。
しかし、椎間板ヘルニアは複数の認定基準が厳しくチェックされるため、ほんの少しの記載不足や医証の弱さで非該当になることがあります。
本記事では、椎間板ヘルニアが後遺障害に認定されない典型的な理由を整理して、具体的な対処法、異議申し立てのポイントを解説しています。
最終更新日: 2025/12/5
Table of Contents
- 1 椎間板ヘルニアの後遺障害が非該当になる7つの理由
- 2 椎間板ヘルニアが後遺障害に認定されない場合の対処法は?
- 3 椎間板ヘルニアが後遺障害に認定されるサポート
- 4 椎間板ヘルニアの後遺障害が非該当でよくある質問
- 4.1 異議申し立てでは、どのような追加資料を提出すれば認定されやすくなりますか?
- 4.2 MRIでヘルニアが写っているのに「他覚的所見なし」と判断されるのはなぜですか?
- 4.3 症状固定後も痛みやしびれが続いているのに、なぜ後遺障害とは認められないのですか?
- 4.4 椎間板ヘルニアの後遺障害として多い等級(12級・14級)はどんな状態なら認定されますか?
- 4.5 医師に追加でどんな検査や診断書の記載を依頼すればよいでしょうか?
- 4.6 事故前からのヘルニアや加齢性変化があると言われた場合でも、後遺障害は認められますか?
- 4.7 「事故前から椎間板ヘルニアがあったから素因減額される」と言われました。その場合でも認定を争えますか?
- 4.8 診断書に『因果関係は不明確』と書かれていますが、異議申し立てはできますか?
- 4.9 事故から3ヶ月で治療を打ち切られました。短期間での非該当は覆せますか?
- 4.10 MRI検査以外の検査方法を追加すれば、認定される可能性は高まりますか?
- 5 まとめ
- 6 関連ページ
- 7 資料・サンプルを無料ダウンロード
椎間板ヘルニアの後遺障害が非該当になる7つの理由
MRIの画像所見と神経学的所見が一致しない
椎間板ヘルニアの後遺障害認定(特に12級13号)では「医学的な証明」が求められます。
これは、MRI検査におけるヘルニアの高位と、痛みやしびれの発生箇所(右足の親指側など)が、医学的に矛盾なく一致している状態です。
画像検査において、異常所見と症状の部位がずれている場合、事故との因果関係が疑われて、非該当となる主要な原因となります。
事故後しばらく経ってから症状を訴え始めた
事故直後の診断書に腰痛や首の痛みの記載がなく、数週間〜数ヶ月経過してから初めて発症した場合、事故との因果関係が否定されます。
ヘルニアは加齢でも発症するため、事故から時間が空くと「事故とは無関係の私病」とみなされて、非該当と判断されるためです。
神経学的検査(スパーリングテストなど)が陽性でない
ジャクソンテストやスパーリングテスト(頚部)、SLRテスト(腰部)などの神経学的検査は、神経根への圧迫を確認する重要な手段です。
これらの神経学的検査が「陰性(反応なし)」の場合、神経症状の裏付けが弱いと判断されます。
また、深部腱反射の異常や筋力低下、筋萎縮といった他覚的所見が見られないことも、後遺障害認定において不利に働きます。

症状固定までの期間が短い
切断肢や遷延性意識障害などを除いて、後遺障害が認定されるには「最低6ヶ月以上」の治療期間が必要です。
事故から3〜4ヶ月で治療を終了(症状固定)してしまうと、将来にわたって残存する症状ではないと判断されて、非該当となります。
十分な治療期間を経ても、なお症状が残っていることが、後遺障害の前提となるためです。
通院頻度が少ない
通院期間が6ヶ月以上あっても、実際に通院した日数が「月に1回程度」など極端に少ない場合、症状は軽微であるとみなされます。
適切な治療頻度(週2〜3回など)で通院していないと、痛みの連続性や一貫性を証明できず、後遺障害に認定されない大きな要因となります。
事故規模(車両損傷)が軽微
事故による衝撃が非常に弱く、バンパーの擦り傷程度の場合、人体にヘルニアを発症させるほどの外力は加わっていないと判断されやすいです。
医学的所見があっても、事故の衝撃と怪我の程度が釣り合わないとされて、因果関係そのものが否定されて非該当になる傾向にあります。
後遺障害診断書の記載内容が認定基準を満たさない
医師が作成する後遺障害診断書に、「軽快する可能性あり」「雨の日に痛い」などのような記載があると、後遺障害に認定されません。
また、MRI検査の画像所見について「異常なし」と書かれてしまうと、審査側はそれを根拠に非該当とします。
椎間板ヘルニアが後遺障害に認定されない場合の対処法は?
椎間板ヘルニアの後遺障害が非該当になった原因を調べる
まず非該当通知書の理由欄を詳細に分析します。「画像所見がない」「治療状況から回復したとみなされる」など、非該当理由が記載されています。
非該当通知書の理由を正確に把握せず、やみくもに異議申し立てしても、認定結果は変わりません。
後遺障害認定基準の何が不足していたのか(画像所見か、症状の一貫性か)を特定することが第一歩です。
認定基準を満たすための医証を集める
後遺障害認定基準に不足している証拠を補うための医療資料(医証)を新たに収集します。
例えば、医療鑑定会社に医師意見書や画像鑑定報告書を依頼して、後遺症の存在や程度を医学的に証明してもらう等の方法があります。
単なる不満の訴えではなく、新たな医学的根拠を追加して論理的に後遺障害認定を主張することが不可欠です。
<参考>
自賠責保険に異議申し立てする
後遺障害認定結果に不服がある場合、自賠責保険に対して「異議申し立て」を行うことができます。
異議申し立ては何度でも可能ですが、単に「痛いから認めてほしい」と訴えるだけでは覆りません。
前述の新たな医証や、事故状況を証明する資料などを添付して、前回の審査結果が誤りであることを論理的・医学的に反論する必要があります。
尚、椎間板ヘルニアが後遺障害認定されるポイントは、こちらのコラム記事で詳しく紹介しています。是非、参照していただきたいと思います。
<参考>
腰椎椎間板ヘルニアの後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
椎間板ヘルニアが後遺障害に認定されるサポート
弁護士の方へのサポートサービス
弊社では、交通事故で受傷した椎間板ヘルニアの後遺症が、後遺障害に認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。
等級スクリーニング®
現在の状況で、後遺障害に認定されるために足りない要素を、後遺障害認定基準および医学的観点から、レポート形式でご報告するサービスです。
等級スクリーニング®は、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。
等級スクリーニング®の有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニング®を承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング®】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定

医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。
医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。
弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
被害者への弁護士紹介サービス【無料】
弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。
また、弊社では交通事故業務に精通している全国の弁護士を紹介することができます。
もし、後遺障害認定で弁護士紹介を希望される被害者の方がいらっしゃれば、こちらのリンク先からお問い合わせください。
尚、弁護士紹介サービスは、あくまでもボランティアで行っています。このため、電話での弊社への問い合わせは、固くお断りしております。
弊社は、電話代行サービスを利用しているため、お電話いただいても弁護士紹介サービスをご提供できません。ご理解いただけますよう宜しくお願い申し上げます。

椎間板ヘルニアの後遺障害が非該当でよくある質問
異議申し立てでは、どのような追加資料を提出すれば認定されやすくなりますか?
単なる嘆願書ではなく、客観的な医学的証拠が重要です。具体的には、新たな診断書や検査、専門医による医師意見書や画像鑑定などが有効です。
これらの新たな追加資料を用いて、非該当理由を一つずつ潰していく必要があります。
MRIでヘルニアが写っているのに「他覚的所見なし」と判断されるのはなぜですか?
MRI検査でヘルニアがあっても、それが神経を圧迫していないと判断されると、他覚的所見なしとされます。
また、画像所見の異常部位と症状の部位が一致していないと、医学的な証明にはならず、事故による後遺症とは認められません。
症状固定後も痛みやしびれが続いているのに、なぜ後遺障害とは認められないのですか?
後遺障害は「痛みがある」事実だけでなく、その痛みが「事故による医学的な異常の結果であること」の証明が必要です。
痛みが続いていても、レントゲンやMRIの裏付けがない、または通院実績が乏しく「我慢できる程度」とみなされると後遺障害に認定されません。
医学的に説明がつかない痛みは、残念ながら後遺障害認定の対象外となることが多いのです。
椎間板ヘルニアの後遺障害として多い等級(12級・14級)はどんな状態なら認定されますか?
14級9号は、画像上の異常が明確でなくても、事故態様や治療経過から「症状の存在が医学的に説明できる」場合に認定されます。
一方、12級13号は、MRI検査で神経圧迫が確認でき、かつ神経学的検査結果とも一致して、症状の存在が医学的に証明できる場合に認定されます。
医師に追加でどんな検査や診断書の記載を依頼すればよいでしょうか?
検査では、MRI検査に加えて、ジャクソン・スパーリングテスト、SLR・FNSテスト、深部腱反射、筋萎縮有無の確認などを依頼します。
診断書には「症状が事故直後から一貫して続いている」「将来的に回復困難である見込み」など、具体的に記載してもらいましょう。
事故前からのヘルニアや加齢性変化があると言われた場合でも、後遺障害は認められますか?
後遺障害が認められる可能性はあります。事故前に症状がなく、事故をきっかけに発症・悪化したことが明らかであれば認定対象になります。
ただし、元々の要因(素因)が影響しているとして、賠償額が一定割合減らされる「素因減額」が適用されることがあります。
後遺障害認定自体は目指せますが、全額の補償が得られない可能性がある点に注意が必要です。
「事故前から椎間板ヘルニアがあったから素因減額される」と言われました。その場合でも認定を争えますか?
認定を争うことは可能です。特に「事故前は全く痛みがなく、通院歴もなかった」場合は、事故による衝撃が主な原因であると主張できます。
既往症はあくまで「無症状の変性」に過ぎず、今回の事故によって初めて症状が出現したことを立証して、減額幅を縮小させる交渉を行います。
診断書に『因果関係は不明確』と書かれていますが、異議申し立てはできますか?
異議申し立て自体は可能ですが、後遺障害認定結果を覆すのは極めて困難です。主治医が因果関係に懐疑的な場合、審査機関もそれを重視します。
対処法としては、主治医に事故当初からの症状の推移を説明して、記載の訂正や補足を依頼する等の対策が必要です。
事故から3ヶ月で治療を打ち切られました。短期間での非該当は覆せますか?
治療期間が実質3ヶ月しかない場合、認定を覆すのは非常に困難です。後遺障害認定には原則6ヶ月以上の治療実績が求められるためです。
もし治療費打ち切りが3ヶ月目なら、自費や健康保険を使って通院を継続して、6ヶ月以上の実績を作ってから申請すると良いでしょう。
MRI検査以外の検査方法を追加すれば、認定される可能性は高まりますか?
基本はMRI検査が最重要ですが、補助的な検査も有効です。例えば、CT検査(骨の状態確認)や、神経伝導速度検査、筋電図検査などがあります。
MRI検査だけでは不足するケースにおいて、神経障害の客観的な証拠として有力な材料になる可能性があります。
まとめ
椎間板ヘルニアが後遺障害に認定されないのは、以下のような理由が重なるためです。
- 画像所見と症状の場所が一致しない
- 事故直後に症状の訴えがない
- 神経学的検査が陰性
- 治療期間が短い
- 通院頻度が少ない
- 事故の衝撃が軽微
- 診断書の記載が不十分
非該当だった場合は、まず通知書の理由を分析して、不足している医証を集め、医学的根拠を補強したうえで異議申し立てを行う必要があります。
医師意見書や画像鑑定など専門的な資料を追加することで、後遺障害認定の可能性を高めることができます。
椎間板ヘルニアの後遺障害認定でお困りなら、こちらからお問い合わせください。初回の法律事務所様は無料で等級スクリーニングを承ります。
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