交通事故コラム詳細

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2025.11.22

神経損傷 頚椎

後縦靭帯骨化症(OPLL)の素因減額とは?示談や裁判を有利にするヒント|交通事故

交通事故に遭って症状が長引いたり悪化した時、大部分は既往症によるものだとして、保険会社から素因減額を主張されるケースがあります。

 

特に、後縦靭帯骨化症は加齢でも進行する疾患であるため、どこからが本人の素因と評価されるのかが争点になりやすいです。

 

しかし、減額幅は一律ではなく、事故の衝撃、既往症の進行度、事故前の症状の有無、医師意見書の内容など複数の要素を総合して判断されます。

 

そのため、適切な主張や医学的裏付けを行うことで、減額を抑えたり避けたりできる可能性もあります。

 

本記事では、後縦靭帯骨化症の素因減額の基本から、交通事故との関係、争点となるポイント、対策までを分かりやすく解説しています。

 

 

最終更新日: 2025/11/22

 

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Table of Contents

後縦靭帯骨化症(OPLL)の素因減額とは何か?

後縦靭帯骨化症の原因と症状

後縦靭帯骨化症(OPLL)は、脊椎の後縦靭帯が骨化することで、脊髄や神経根を圧迫して手足のしびれや麻痺、運動障害を引き起こす疾患です。

 

頚椎に最も多く発症して、進行して四肢麻痺になることもあります。原因は加齢、遺伝、代謝異常が考えられており、難病に指定されています。

 

初発症状は頚部痛や上肢のしびれ、痛みで始まることが多く、進行すると下肢のしびれや痛み、知覚鈍麻、筋力低下などが出現します。

 

50歳前後での発症が多く、男性に多いとされています。日本人のおよそ3%に発生すると言われていますが、実際に症状が出る人は少ないです。​

 

後縦靭帯の骨化は、その形態により「連続型」「分節型」「限局型」「混合型」「局所型」の5つに分類されます。

 

連続型は広範囲にわたって脊髄を圧迫するため、神経症状が重くなりやすい特徴があります。​

 

 

<参考>
後縦靭帯骨化症(OPLL)の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故

 

 

素因減額とは?法的視点から解説

素因減額とは、被害者の身体的または精神的な要因が、損害発生や拡大に寄与した場合、その寄与分を考慮して損害賠償額を減額する仕組みです。

 

この制度は、損害の公平な分担を実現するという観点から、民法722条2項の過失相殺の規定を類推適用して適用されます。​

 

素因減額には、「身体的素因による減額」と「心因的素因による減額」の2種類があります。

 

後縦靭帯骨化症は、身体的な既往症・疾患として素因減額の対象となることが多いです。​

 

重要なのは、被害者の身体的特徴が単なる「特徴」ではなく「疾患」に該当して、損害の発生や拡大に寄与していることが必要という点です。

 

最高裁判例では、平均的な体格と異なる身体的特徴(例:首が長い)があっても、それが疾患に当たらなければ素因減額できないとしています。

 

 

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交通事故が後縦靱帯骨化症に与える影響

 

後縦靭帯骨化症がある方は、軽微な外傷であっても重い麻痺症状が残る可能性があります。

 

これは、骨化のために脊柱管が高度に狭窄していると、軽度の外力でも脊髄症状が顕在化する可能性があるためです。​

 

事故前に無症状または軽度症状で経過していた後縦靭帯骨化症が、事故の衝撃で急激に症状が出現することがあります。

 

このようなケースでは、交通事故と後縦靱帯骨化症による症状の因果関係が争点になりやすいです。​

 

画像検査(レントゲンやCT)で後縦靭帯の骨化巣が確認されると、事故前からの疾患を否定することは難しいため、素因減額が想定されます。

 

 

<参考>
交通事故で悪化した既往症について回る「素因減額」とは?

 

 

 

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後縦靱帯骨化症と素因減額の考え方

素因減額が適用される条件

後縦靭帯骨化症による素因減額が適用されるには、以下の条件を満たす必要があります。​

 

 

(1)被害者の素因が「疾患」に該当すること

 

単なる身体的特徴ではなく、医学的に「疾患」と認められることが必要です。後縦靭帯骨化症は難病指定されている疾患であり、レントゲンやCTで骨化巣が確認される場合、疾患として認められます。​

 

 

(2)事故と素因が相まって損害が発生・拡大したこと

 

後縦靭帯骨化症が、交通事故による損害の発生や拡大に寄与していることが必要です。事故の衝撃の大きさ、骨化の進行度、脊柱管占拠率などが考慮されます。​

 

 

(3)素因減額をしなければ公平に反すること

 

損害のすべてを加害者に負担させると、公平性を欠く場合に素因減額が認められます。​

 

 

(4)事故前の症状の有無

 

最高裁判例では、「加害行為前に疾患に伴う症状が発現していたかどうか」は、素因減額の可否を左右するものではないとされています。つまり、事故前に無症状であっても素因減額される可能性があります。​

 

 

(5)事故の衝撃の大きさ

 

交通事故の衝撃が明らかに軽微な場合は、素因減額される可能性が高まり、減額される割合も大きくなります。

 

逆に、事故の衝撃が大きいほど、後縦靭帯骨化症がなくても脊髄損傷が生じた可能性が高まるため、素因減額がなされない可能性が高まります。​

 

 

(6)骨化の進行度と脊柱管占拠率

 

骨化による脊柱管内の占拠率が50%以上、特に60%を超えるような場合、素因減額が認められやすい傾向があります。骨化の型(連続型、分節型など)や範囲も考慮されます。

 

 

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素因減額を抑えるための対策

(1)事故との因果関係を立証する

 

事故前に無症状または軽度症状であったことを、医師意見書や本人上申書で立証することが重要です。

 

事故直後からの症状発現や、MRI検査で脊髄内に高信号領域が認められる場合は、事故との因果関係を主張できます。​

 

 

(2)医師意見書を活用する

 

脊椎外科専門医による医師意見書は、事故の寄与度を立証する強力な証拠となります。

 

医師意見書では、事故後の画像所見の変化や症状経過を専門的に評価して補足説明できます。​

 

 

(3)年齢相応の変性であることを主張する

 

後縦靭帯の骨化ではなく、年齢相応の変性が要因であることを明らかにできれば、既往歴ではないという方向に動きます。

 

年齢相応の変性であれば既往歴ではないとして、素因減額を避けられる可能性があります。

 

 

(4)事故の衝撃の大きさを立証する

 

事故の衝撃が軽微ではなかったことを、車両の損傷具合、事故現場の状況、損傷した衣服や備品などで立証します。

 

衝撃が大きければ、後縦靭帯骨化症がなくても同様の損害が発生した可能性を主張できます。​

 

 

(5)症状の変化率を重視する

 

軽度な衝撃であっても、骨化のため脊柱管が高度に狭窄していると、軽度の外力でも脊髄症状が顕在化する可能性があります。

 

事故の衝撃度だけではなく、麻痺やしびれなどの臨床症状の変化率が重視されます。​

 

 

(6)弁護士に早期に相談する

 

素因減額の主張を受けた際には、素因の具体的な内容を確認して、事故前の状態や事故後の症状についての証拠を整理することが重要です。

 

交通事故に精通した弁護士に相談することで、適切な反論や証拠収集が可能になります。

 

 

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後縦靱帯骨化症の素因減額で弊社ができること

弁護士向けのサービス一覧

弊社では、交通事故で受傷した、後縦靱帯骨化症の後遺症が、後遺障害に認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。

 

 

等級スクリーニング®

 

現在の状況で、後遺障害に認定されるために足りない要素を、後遺障害認定基準および医学的観点から、レポート形式でご報告するサービスです。

 

等級スクリーニング®は、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。

 

等級スクリーニング®の有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニング®を承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。

 

<参考>
【等級スクリーニング®】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定

 

 

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医師意見書

 

医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。

 

医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。

 

医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。

 

弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。

 

<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て

 

 

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画像鑑定報告書

 

事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。

 

画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。

 

画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。

 

弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。

 

<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て

 

 

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被害者への弁護士無料紹介サービス

弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。

 

また、弊社では交通事故業務に精通している全国の弁護士を紹介することができます。

 

もし、後遺障害認定で弁護士紹介を希望される被害者の方がいらっしゃれば、こちらのリンク先からお問い合わせください。

 

 

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尚、弁護士紹介サービスは、あくまでもボランティアで行っています。このため、電話での弊社への問い合わせは、固くお断りしております。

 

弊社は、電話代行サービスを利用しているため、お電話いただいても弁護士紹介サービスをご提供できません。ご理解いただけますよう宜しくお願い申し上げます。

 

 

 

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後縦靱帯骨化症の素因減額でよくある質問

後縦靱帯骨化症があると必ず素因減額されますか?

必ずしも素因減額されるわけではありません。後縦靭帯骨化症があっても事故との因果関係が明確なら、素因減額を避けられる可能性があります。

 

 

後縦靱帯骨化症と事故の症状の関係が弱ければ、減額されませんか?

後縦靱帯骨化症と症状の因果関係が弱い場合、減額される可能性は低くなります。ただし、医学的な根拠に基づいて主張する必要があります。

 

事故の衝撃が大きく、後縦靭帯骨化症がなくても同様の損害が発生した可能性が高い場合には、素因減額がなされない可能性が高まります。

 

 

後縦靱帯骨化症で症状が出ていなかった場合も減額されますか?

事故前に無症状であっても、素因減額される可能性があります。最高裁判例では、「加害行為前に疾患に伴う症状が発現していたかどうか」は、素因減額の可否を左右するものではないとされています。

 

無症状の後縦靭帯骨化症でも、事故後に症状が顕在化した場合、素因減額の対象となりえます。

 

 

後縦靱帯骨化症の進行度が大きいほど減額されやすいですか?

はい、一般的に骨化の進行度が大きいほど、素因減額される割合が大きくなる傾向があります。

 

骨化による脊柱管内の占拠率が50%以上、特に60%を超えるような場合、素因減額が認められやすくなります。

 

また、連続型のように広範囲にわたる骨化がある場合、減額割合が大きくなる可能性があります。

 

 

年齢が高いほど素因減額されやすいですか?

年齢が高いこと自体が直接的に素因減額の理由となるわけではありません。年齢相応の範囲を超えて初めて、素因減額の対象となりえます。

 

ただし、年齢相応の変性であることが認められる場合、逆に素因減額を避けられる可能性があります。

 

東京地裁でも「当該年齢の人間に通常みられる加齢性の変化」は素因減額の対象としていません。

 

 

事故前に後縦靱帯骨化症の治療歴があると減額されやすいですか?

事故前から後縦靭帯骨化症の症状があり、治療歴がある場合は、比較的大きな割合の素因減額が認められる傾向があります。

 

治療歴があることで、疾患による症状が事故前から存在していたことが明確になるためです。

 

ただし、治療歴があっても、事故による症状の悪化が明確であれば、減額割合を抑えられる可能性があります。

 

 

後遺障害等級は後縦靱帯骨化症の有無で下がることがありますか?

後縦靭帯骨化症があっても、後遺障害等級は下がりません。後遺障害等級は、事故によって残った症状の程度によって判断されます。

 

ただし、後縦靭帯骨化症があることで、事故との因果関係が争われやすく、因果関係が無いと判断されると、非該当になる可能性があります。

 

 

医師意見書があると後縦靱帯骨化症の素因減額を避けられますか?

医師意見書は、後縦靱帯骨化症の素因減額を避けるための有力な証拠となります。

 

脊椎外科専門医による医師意見書で、事故の寄与度や症状経過を専門的に評価して補足説明することで、素因減額の割合を抑えることが可能です。

 

ただし、医師意見書があれば必ず素因減額を避けられるわけではなく、事案の具体的な状況によって判断されます。

 

 

後縦靱帯骨化症が軽度でも素因減額されることがありますか?

軽度であっても素因減額される可能性があります。ただし、骨化の程度が軽度で脊柱管占拠率が低い場合、減額割合は小さくなる傾向があります。

 

 

後縦靱帯骨化症の素因減額が適切かどうかは誰が判断しますか?

素因減額が適切かどうかは、保険会社との話し合い(示談交渉)で決まり、最終的には裁判所が判断します。

 

素因減額の立証責任は加害者側にありますが、被害者側も「素因には該当しない」という主張と立証を行う必要があります。

 

後縦靭帯骨化症の素因減額については、一般的に20~30%、事案によっては50%程度まで認められる裁判例があります。

 

具体的な減額率は、骨化の進行度、脊柱管占拠率、事故前の症状の有無、事故の衝撃の大きさなど、個々の事案の状況によって異なります。

 

適切な賠償を受けるためには、交通事故に精通した弁護士に早期に相談して、医師意見書の準備や証拠の整理を行うことが重要です。

 

 

 

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まとめ

 

後縦靭帯骨化症(OPLL)は、脊椎の靭帯が骨化して神経を圧迫して、しびれや麻痺を引き起こす難病で、加齢や遺伝が原因とされています。

 

交通事故で症状が急激に悪化することがあり、この場合に争点となるのが「素因減額」です。

 

素因減額とは、被害者の疾患が損害の発生・拡大に影響したと判断されると、賠償額が減らされる制度で、後縦靭帯骨化症は対象となります。

 

素因減額の適用には、疾患として医学的に認められること、事故との相互作用、公平性などの条件が必要です。

 

減額を抑えるには、事故前の無症状を示す資料、医師意見書、事故衝撃の立証などが重要で、専門家の支援により有利な主張が可能になります。

 

後縦靭帯骨化症の素因減額でお困りなら、こちらからお問い合わせください。尚、初回の法律事務所様は無料で等級スクリーニングを承ります。

 

 

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