交通事故や労災で腕神経叢損傷を負った場合、後遺障害認定や示談交渉を進めるうえで有用なのが「医師意見書」です。
しかし、診断書とは何が違うのか、どんな内容が書かれるのか、どうすれば取得できるのか…。多くの方が最初につまずくポイントでもあります。
腕神経叢損傷は、画像検査で異常が写らなかったり、症状が長引くケースも多く、医学的な説明が難しいため、医師意見書の質が重要になります。
本記事では、腕神経叢損傷の医師意見書で記載される項目、後遺障害認定のポイント、異議申し立てや訴訟での活用方法まで解説しています。
最終更新日: 2025/11/21
Table of Contents
- 1 腕神経叢損傷の医師意見書を理解するための基本
- 2 腕神経叢損傷で医師意見書が不可欠となる理由
- 3 腕神経叢損傷の医師意見書を効果的に使う方法
- 4 腕神経叢損傷の医師意見書を入手する手順
- 5 腕神経叢損傷の医師意見書を入手する手順
- 6 腕神経叢損傷の後遺障害認定で当社が支援できること
- 7 腕神経叢損傷の医師意見書でよくある質問
- 7.1 なぜ画像検査で異常が見つからない場合、「非該当」になることが多いのですか?
- 7.2 どの検査結果や診断書を添付すれば、後遺障害認定が有利になりますか?
- 7.3 腕神経叢損傷では、どの等級(5級~12級)が認定されやすいですか?
- 7.4 担当医への意見書依頼時の注意点はありますか?
- 7.5 腕神経叢損傷では神経伝導速度検査や筋電図は必須ですか?
- 7.6 異議申し立て時に新たな検査資料が必要になるのはどのケースですか?
- 7.7 腕神経叢損傷ではMRI所見がなくても認定が受けられる可能性はありますか?
- 7.8 腕神経叢損傷の回復見込みや再手術の可能性についても意見書に書いてもらえますか?
- 7.9 治療経過や症状が変わった場合、意見書を再度依頼すべきですか?
- 8 まとめ
- 9 関連ページ
- 10 資料・サンプルを無料ダウンロード
腕神経叢損傷の医師意見書を理解するための基本
腕神経叢損傷とは何が起こるケガか
腕神経叢損傷は、首から肩にかけて走る神経の束(神経根)が、交通事故やバイク事故などの強い外力により損傷される状態です。
首の第5頸神経から第1胸神経まで複雑に交差して網目様になっている構造が傷ついて、肩から手にかけての運動や感覚に深刻な障害が生じます。
腕神経叢損傷の程度や位置により、腕全体が動かなくなる場合から部分的な麻痺まで、様々な症状が現れます。
<参考>
腕神経叢損傷の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
医師意見書の役割と意義
医師意見書とは、後遺障害認定基準に精通した専門医が、診療録や画像検査、診断書などを総合的に分析して作成する詳細な医学文書です。
診断書が医学的事実を簡潔に記載するのに対して、医師意見書は医学的見解を詳しく論述して、後遺障害認定基準への適合性を主張します。
異議申し立てや示談交渉、裁判などの医学的根拠として、当方の主張を補強する極めて重要な役割を果たします。
腕神経叢損傷の医師意見書に盛り込まれる重要項目
腕神経叢損傷に関する医師意見書には、主に以下のような内容が記載されるケースが多いです。
- 傷病名
- 治療経過
- 後遺症の種類や重症度
- 症状固定時期
- 画像検査の結果
- 事故と後遺症の因果関係
これら以外にも、腕神経叢損傷の後遺障害認定基準を満たしていることを、医学論文なども引用して解説します。
診断書と医師意見書の違いを整理する
診断書は、医師が患者を診察した結果を証明する公式な医療書類で、病名や治療内容を簡潔に記載します。
一方、医師意見書は、医学的見解を詳述する専門的な文書で、後遺障害認定基準に基づいた客観的な分析を提供します。
診断書は行政機関や保険会社への申請に広く使用されるのに対して、医師意見書は主に異議申し立てや訴訟で活用されます。

腕神経叢損傷で医師意見書が不可欠となる理由
腕神経叢損傷で残りやすい後遺症の医学的証明には?
腕神経叢損傷では、運動麻痺(肩が上がらない、肘が曲がらないなど)、感覚障害(しびれ、痛み)、筋力低下が生じます。
後遺症の程度によって、5級から14級まで様々な後遺障害等級が認定される可能性があります。
これらの複雑な症状を医学的に証明するには、画像検査と生理機能検査(筋電図・神経伝導速度検査)の客観的根拠が欠かせません。
後遺障害等級との関連性を示す医師意見書の重要性
腕神経叢の完全麻痺の場合は後遺障害等級5級、部分的な機能障害は7級~12級が想定されます。
しかし、画像検査で異常が見つからない場合や、診断書の記載が不十分な場合は、非該当になることが多いです。
医師意見書では、画像所見や生理機能検査と身体所見の一致を詳述することで、後遺障害認定基準への適合性を強く主張できます。
異議申立て・訴訟で評価される医学的論拠
前回審査で非該当や想定よりも低い等級になった場合でも、医師意見書によって不足していた医学的根拠を補完できます。
異議申し立てや紛争処理機構への申し立てでは、医学的に説得力のある医師意見書が逆転認定を実現する鍵となります。
腕神経叢損傷の医師意見書を効果的に使う方法
後遺障害認定で判断材料を補強する
病態が複雑な腕神経叢損傷において、医師意見書は診断書だけでは不足している医学的根拠を補強します。
特に、MRIと臨床所見の相関性、生理機能検査(筋電図・神経伝導速度検査)結果を詳細に記載することで、後遺障害認定の確率が高まります。
示談交渉を有利にするための意見書活用術
保険会社との示談交渉では、医師意見書により被害者の後遺症が医学的に重いことを立証できます。
手外科専門医による医学的見解として意見書を提示することで、保険会社は軽視できず、賠償金査定の見直しに繋がる可能性が高まります。
裁判・調停で医療的根拠資料として提示するポイント
裁判では、画像所見、身体所見、事故態様、症状発現時期を総合的に記載した医師意見書が、医学的証拠として重視されます。
手外科専門医によって作成された医師意見書は、医学文献を添付して論理構成を補強することで、裁判官の判断に大きな影響を与えます。
腕神経叢損傷の医師意見書を入手する手順
医師意見書を依頼して受け取るまでの流れ
腕神経叢損傷の医師意見書の取得は、まず相談書、診断書、画像検査、診療報酬明細などの必要資料を準備して、医療鑑定会社に依頼します。
見積金額の了承後、医師意見書の骨子案(検討項目)が提案されます。骨子案に問題が無ければ、約4週間で初稿(医師意見書案)が提出されます。
医師意見書案に問題が無ければ、費用を支払います。入金確認後に医師意見書の原本が発送される流れが一般的です。
医師に提出すべき資料・情報
腕神経叢損傷の異議申し立てで使用する医師意見書の作成には、以下のような書類や資料が必要です。
- 相談書(依頼時にお渡しします)
- 画像検査
- 生理機能検査(筋電図・神経伝導速度検査)
- 後遺障害診断書
- 診断書
- 診療報酬明細(レセプト)
- 損害確認報告書 / 事故現場実況見分調書 / 車の損傷写真 など
- 後遺障害等級結果連絡書
- 診療録(カルテ)
症状や治療経過、日常生活の支障程度が分かる資料が多いほど、医師意見書の信頼性が高まります。
意見書作成の料金の目安
概要 | 価格 |
整形外科 | 23万円 |
脳神経外科、脳神経内科 | 29万円 |
耳鼻科、眼科、歯科など | 29万円 |
精神科 | 31万円 |
訴訟加算(整形外科) | 4万円 |
訴訟加算(その他の科) | 1万円 |
多部位加算(3部位以上) | 3万円/数 |
特急対応加算 | 2万円 |
難事案加算 | 6万円~ |
反論意見書 | -5万円 |
医師意見書の作成に必要な料金は、基本料金をベースとして以下の要素で変動します。
- 診療科目
- 訴訟事案
- 顧問契約の有無
- 弁護士特約の有無
- 納品時期
整形外科領域における一般的な事案では、20万円台の料金負担で各領域の専門医による医師意見書の作成が可能です。
弊社の医師意見書作成にかかる、加算や割引などの詳細は、こちらをご確認ください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
作成までに必要な期間の一般的な目安
腕神経叢損傷の医師意見書を取得するまでの期間は依頼内容によります。一般的には4週間ほどで初稿(医師意見書案)が納品されます。
医師意見書案への修正依頼に、手外科専門医が対応するのにかかる期間は、1~2週間のケースが多いです。
腕神経叢損傷の医師意見書を入手する手順
腕神経叢損傷が、適切な後遺障害等級に認定されるには、以下のような後遺障害認定基準をすべて満たす必要があります。
- 事故と症状に整合性がある
- 後遺症と各種検査が一致している
- 事故後から症状固定まで症状が続いている
- 常に後遺症が存在している
シンプルに見えますが、すべてをクリアしている事案は少ないです。また、これら以外にも、たくさんの後遺障害認定基準が存在します。
医師意見書の価値は、腕神経叢損傷の後遺障害認定基準に足りていない要素を補強して、後遺障害の蓋然性を主張する点にあります。
この目的を達成するためには、医師意見書を受任する医療鑑定会社が、腕神経叢損傷の後遺障害認定基準を知り尽くしている必要があります。
腕神経叢損傷が後遺障害認定されるポイントは、こちらのコラム記事で詳しく紹介しています。是非、参照していただきたいと思います。
<参考>
腕神経叢損傷の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
腕神経叢損傷の後遺障害認定で当社が支援できること
弁護士向けサポートメニュー
弊社では、交通事故で受傷した腕神経叢損傷の後遺症が、後遺障害に認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。
等級スクリーニング®
現在の状況で、後遺障害に認定されるために足りない要素を、後遺障害認定基準および医学的観点から、レポート形式でご報告するサービスです。
等級スクリーニング®は、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。
等級スクリーニング®の有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニング®を承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング®】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定

医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。
医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。
弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
被害者への弁護士紹介サービス
弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。
また、弊社では交通事故業務に精通している全国の弁護士を紹介することができます。
もし、腕神経叢損傷の後遺障害認定で弁護士紹介を希望される被害者の方がいらっしゃれば、こちらのリンク先からお問い合わせください。
尚、弁護士紹介サービスは、あくまでもボランティアで行っています。このため、電話での弊社への問い合わせは、固くお断りしております。
弊社は、電話代行サービスを利用しているため、お電話いただいても弁護士紹介サービスをご提供できません。ご理解いただけますよう宜しくお願い申し上げます。

腕神経叢損傷の医師意見書でよくある質問
なぜ画像検査で異常が見つからない場合、「非該当」になることが多いのですか?
神経根の引き抜き損傷の場合は、脊髄造影やMRI検査で捉えられますが、末梢神経の損傷自体は画像検査で視覚的に捉えられません。
このため、MRI検査で異常が見つからない場合、筋電図検査や神経伝導速度検査などの生理機能検査が必須となります。
医師意見書で、これらの検査結果が後遺障害認定基準をどのように満たすかを詳述することが重要です。
どの検査結果や診断書を添付すれば、後遺障害認定が有利になりますか?
頚椎MRIで、外傷性髄膜瘤が見られることが最も有利な画像所見です。加えて、神経伝導速度検査と筋電図検査の異常所見、肩・肘・手関節の可動域測定、筋力検査(徒手筋力テスト)の結果が有効です。
これらの客観的検査データを医師意見書に記載してもらうことで、後遺障害に認定される確率が格段に高まります。
腕神経叢損傷では、どの等級(5級~12級)が認定されやすいですか?
腕神経叢の完全麻痺は5級、上肢の機能に著しい障害がある場合は8級~10級、部分的な機能障害や神経症状は12級~14級が想定されます。
C5~C6の上位型麻痺では肩・肘関節の機能障害が、C8~T1の下位型では指の機能障害が認定される傾向にあります。
担当医への意見書依頼時の注意点はありますか?
意見書作成の依頼では、後遺障害認定基準との整合性を意識した質問を準備することが重要です。
後遺障害診断書に記載漏れがある場合は、その部分の補完を依頼して、医学的説得力を高めてください。
尚、弊社に医師意見書を依頼いただく場合には、上記の業務を弊社の管理医師(手外科専門医)がアシストいたします。
腕神経叢損傷では神経伝導速度検査や筋電図は必須ですか?
神経伝導速度検査で損傷神経を特定して、筋電図検査で損傷の程度を確認することが極めて重要です。
特に、MRI検査で異常が見つからない場合や、診断に疑義がある場合は、これらの検査実施を強く推奨する必要があります。
異議申し立て時に新たな検査資料が必要になるのはどのケースですか?
初回審査で非該当や想定よりも低い等級になった原因が「検査不足」である場合、追加検査が必要です。
特に、生理機能検査が実施されていない場合、これらの検査を新たに実施して、医師意見書に添付することで逆転認定の可能性が高まります。
腕神経叢損傷ではMRI所見がなくても認定が受けられる可能性はありますか?
画像所見が軽微でも、事故態様から相当な外力が上肢に加わったことが推定でき、生理機能検査で客観的所見があれば認定可能性があります。
生理機能検査によって神経障害が立証されることで、後遺障害に認定されるケースが増えています。
腕神経叢損傷の回復見込みや再手術の可能性についても意見書に書いてもらえますか?
医師意見書には、治療経過や症状固定時期に加えて、将来の回復見込みや再手術の必要性についても記載してもらえます。
これらの情報は、逸失利益の計算やリハビリテーション費用の請求根拠となり、賠償額に大きく影響します。
治療経過や症状が変わった場合、意見書を再度依頼すべきですか?
症状が著しく変化した場合や、異議申し立てで新たな後遺障害認定を目指す場合は、医師意見書の再作成を依頼することが推奨されます。
最新の医学情報と検査結果を反映した意見書によって、より説得力のある医学的主張ができます。
まとめ
腕神経叢損傷は、交通事故などの強い衝撃で首から腕へ伸びる神経が傷つき、運動麻痺やしびれなど深刻な後遺症を残すことがあります。
これらを客観的に示すには、診断書だけでなく医学的見解を詳しく補強する「医師意見書」が重要です。
医師意見書では症状の推移、検査結果、後遺障害との因果関係などが整理され、後遺障害認定基準への適合性を医学的に説明します。
画像検査で異常が見えにくい場合でも、手外科専門医が作成した意見書は異議申し立て、示談交渉、訴訟で強力な根拠となります。
腕神経叢損傷の後遺障害認定でお困りなら、こちらからお問い合わせください。尚、初回の法律事務所様は無料で等級スクリーニングを承ります。
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