交通事故や労災事故に遭って、手足の麻痺やしびれが出現したために検査をすると、後縦靭帯骨化症(OPLL)が見つかった…。
このケースでは、「事故と症状との因果関係」「後縦靭帯骨化症の寄与度」が大きな争点になります。その際に重要なのが「医師意見書」です。
医師意見書は、医学的見地から事故との因果関係や既往症の影響などを詳細に説明する文書で、後遺障害認定や裁判で大きな影響力を持ちます。
特に、後縦靭帯骨化症は、既往症としての骨化と事故による影響の線引きが難しいため、脊椎外科専門医による丁寧な医師意見書が重要です。
本記事では、後縦靭帯骨化症に関する医師意見書の内容や取得方法、活用法まで、専門的な視点から分かりやすく解説しています。
最終更新日: 2025/10/20
Table of Contents
後縦靭帯骨化症の医師意見書|まず押さえるべき基本
難病「後縦靭帯骨化症」の症状と原因
後縦靭帯骨化症(OPLL)は、脊柱の後縦靭帯が骨化することで脊髄や神経根を圧迫して、手足のしびれや麻痺、運動障害を起こす傷病です。
発症部位は頚椎に多く、進行すると痙性四肢麻痺となることもあります。原因は加齢、遺伝、代謝異常が考えられ、難病に指定されています。
<参考>
後縦靭帯骨化症(OPLL)の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故
医師意見書の目的と重要性
医師意見書は、病態、神経学的所見、画像所見などを精査して、事故との因果関係や既往症の寄与度を、詳細に解説する文書です。
交通事故の後遺障害認定や示談交渉、裁判の際に、医学的根拠として重視され、賠償金額にも影響を与える重要な資料となります。
後縦靭帯骨化症(OPLL)の医師意見書で記載される項目
後縦靭帯骨化症に関する医師意見書には、主に以下のような内容が記載されるケースが多いです。
- 傷病名
- 治療経過
- 後遺症の種類や重症度
- 症状固定時期
- 画像検査の結果
- 事故と後遺症の因果関係
- 事故と手術の因果関係
- 後縦靭帯骨化症の寄与度
賠償実務では、既往症である後縦靭帯骨化症の後遺症への寄与度が争点になりやすいです。
画像検査や身体所見の推移などから、脊椎外科専門医が、後縦靭帯骨化症の後遺症への寄与度を分かりやすく解説します。
「医師意見書」と「診断書」は似て非なるもの
診断書は病名や治療見込みを簡潔に示すのに対して、医師意見書は傷病の発症機序・現在の機能障害・事故との因果関係などを詳細に解説します。
そのため、後遺障害認定や裁判で高い証拠価値を持ち、当方の主張を医学的に裏付ける補強資料として活用されます。
後縦靭帯骨化症(OPLL)に医師意見書が不可欠な理由
後縦靭帯骨化症による神経症状とその医学的背景
後縦靭帯骨化症では、後縦靭帯の骨化が進行して、脊髄を圧迫することで運動障害・感覚障害・膀胱直腸障害などの神経症状が出ます。
これらの脊髄症状は、事故などの外的要因によって急激に悪化するケースがあります。
既往症と事故との切り分けが難しく争いになりやすいため、医師意見書で事故の寄与度を立証するケースが多いです。
後遺障害認定基準を満たす客観的根拠
後遺障害認定では、MRIやCT検査による脊髄圧迫の程度や骨化巣の占拠率、神経学的検査の結果、症状の推移などを評価します。
医師意見書は、これらの医証を体系的に整理して、自賠責保険の後遺障害認定基準(例えば9級または12級)に該当する合理的理由を提示します。
示談交渉や訴訟で信頼される医学証拠
示談交渉や訴訟では、交通事故と脊髄症状悪化の因果関係や、後遺症に対する後縦靭帯骨化症の寄与度が争点になりやすいです。
医師意見書では脊椎外科専門医が、画像検査や神経学的所見、治療経過などを評価して、医学論文も引用して争点に対する見解を述べます。
脊椎外科専門医によって客観的に作成された医師意見書は、裁判所や保険会社に対して、当方の主張を裏付ける重要な医学証拠となります。
後縦靭帯骨化症(OPLL)の医師意見書を効果的に使うには
【異議申立】認定結果を覆すための追加資料
自賠責保険で非該当や低い等級とされた場合、医師意見書は異議申し立てにおける新規医証として有効です。
事故後の画像所見の変化や、症状経過を専門的に評価して補足説明することで、後遺障害認定を実現する補強資料となります。
【示談交渉】賠償額の増額を目指す交渉材料
医師意見書をもとに、交通事故と後遺症の因果関係や、後縦靭帯骨化症の寄与度を主張することで、保険会社との示談交渉を有利に進められます。
【裁判】事故との因果関係や寄与度を証明する強力な証拠
裁判では、後縦靭帯骨化症の病態や、事故との因果関係を詳細に解説した医師意見書が、重要視されます。
後縦靭帯骨化症は、骨化巣の大きさや脊髄圧迫の程度などの、単なる画像所見だけでは評価できない複雑な病態です。
このため、脊椎外科専門医によって作成された医師意見書は、当方の主張を医学的に裏付ける強力な証拠となります。
後縦靭帯骨化症の医師意見書をスムーズに取得する手順
依頼から受け取りまでのステップ
後縦靭帯骨化症の医師意見書の取得は、まず相談書、診断書、画像検査、診療報酬明細などの必要資料を準備して、医療鑑定会社に依頼します。
見積金額の了承後、医師意見書の骨子案(検討項目)が提案されます。骨子案に問題が無ければ、約4週間で初稿(医師意見書案)が提出されます。
医師意見書案に問題が無ければ、費用を支払います。入金確認後に医師意見書の原本が発送される流れが一般的です。
医師に渡すべき資料一覧
後縦靭帯骨化症の医師意見書の作成には、以下のような書類や資料が必要です。
- 相談書(依頼時にお渡しします)
- 画像検査
- 後遺障害診断書
- 診断書
- 神経学的所見の推移について
- 診療報酬明細(レセプト)
- 損害確認報告書 / 事故現場実況見分調書 / 車の損傷写真 など
- 後遺障害等級結果連絡書
- 診療録(カルテ)
症状や治療経過、日常生活の支障程度が分かる資料が多いほど、医師意見書の信頼性が高まります。
医師意見書作成にかかる費用の目安
概要 | 価格 |
整形外科 | 23万円 |
脳神経外科、脳神経内科 | 29万円 |
耳鼻科、眼科、歯科など | 29万円 |
精神科 | 31万円 |
訴訟加算(整形外科) | 4万円 |
訴訟加算(その他の科) | 1万円 |
多部位加算(3部位以上) | 3万円/数 |
特急対応加算 | 2万円 |
難事案加算 | 6万円~ |
反論意見書 | -5万円 |
医師意見書の作成に必要な料金は、基本料金をベースとして以下の要素で変動します。
- 診療科目
- 訴訟事案
- 顧問契約の有無
- 弁護士特約の有無
- 納品時期
整形外科領域における一般的な事案では、20万円台の料金負担で各領域の専門医による医師意見書の作成が可能です。
弊社の医師意見書作成にかかる、加算や割引などの詳細は、こちらをご確認ください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
後縦靭帯骨化症の医師意見書の完成までに見込むべき期間
後縦靭帯骨化症の医師意見書を取得するまでの期間は依頼内容によります。一般的には4週間ほどで初稿(医師意見書案)が納品されます。
医師意見書案への修正依頼に、専門医が対応するのにかかる期間は、1~2週間のケースが多いです。
後縦靭帯骨化症の争点に対応するポイント【弁護士必見】
事故と後遺症(麻痺症状)の因果関係
後縦靭帯骨化症が既往症にあると、軽い追突などの軽微な外傷であっても、重い麻痺症状が残る可能性があります。
このようなケースでは、事故と後遺症の因果関係が争点になりやすいです。医学的な根拠に基づいて、当方の主張をする必要があります。
後縦靭帯骨化症の寄与度(素因減額)
後縦靭帯骨化症が原因で後遺障害が認定されたとしても、その後に問題となるのが素因減額です。
素因減額とは、既往症である後縦靭帯骨化症があったため、後遺症が重くなった時に、賠償額を減額する仕組みです。
後縦靭帯骨化症のために、交通事故の損害を拡大したと判断されると、賠償金が減額されます。
後縦靭帯骨化症の後遺症に対する寄与度を主張するには、脊椎外科専門医による医師意見書が必要になるケースが少なくありません。
後縦靭帯骨化症の争点に対応するポイントは、こちらのコラム記事で詳しく紹介しています。是非、参照していただきたいと思います。
<参考>
後縦靭帯骨化症(OPLL)の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故
後縦靭帯骨化症(OPLL)で悩んだら法務医療の専門家へ
弁護士の方へのサービス一覧
弊社では、交通事故で受傷した、後縦靭帯骨化症の後遺症が、後遺障害に認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。
等級スクリーニング®
現在の状況で、後遺障害に認定されるために足りない要素を、後遺障害認定基準および医学的観点から、レポート形式でご報告するサービスです。
等級スクリーニング®は、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。
等級スクリーニング®の有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニング®を承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング®】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定
医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。
医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。
弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
被害者向け|無料の弁護士紹介サービス
弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。
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もし、後遺障害認定で弁護士紹介を希望される被害者の方がいらっしゃれば、こちらのリンク先からお問い合わせください。
尚、弁護士紹介サービスは、あくまでもボランティアで行っています。このため、電話での弊社への問い合わせは、固くお断りしております。
弊社は、電話代行サービスを利用しているため、お電話いただいても弁護士紹介サービスをご提供できません。ご理解いただけますよう宜しくお願い申し上げます。
後縦靭帯骨化症(OPLL)の医師意見書でよくある質問
OPLLがあっても、交通事故が原因で症状が悪化したと認められることはありますか?
無症状または軽度症状で経過していた後縦靭帯骨化症が、事故の衝撃で急激に症状が出現した事案では、因果関係が肯定される可能性があります。
医師意見書では、どのように因果関係を説明するのですか?
画像検査(MRI・CT)における脊髄の圧迫部位と身体所見の関係を、時間経過に沿って論理的に記載します。
事故後に、明確な増悪が認められた場合、事故との因果関係が「相当程度ある」として説明可能です。
加齢性変化と事故の影響を区別するには、どんなポイントが重視されますか?
加齢性変化と事故の影響を区別するには、画像所見や臨床経過、症状の変化の大きさが重要です。
加齢性変化では徐々に進行するのに対して、事故後に急激な症状出現があれば、外傷の影響が大きいと判断されます。
OPLLの意見書にはどのような内容を盛り込むと説得力が高まりますか?
画像所見、神経学的所見、事故態様、症状発現時期などを記載することで、医学的説得力が向上します。医学文献を添付することも有効です。
事故の衝撃が軽度だった場合でも、因果関係は認められますか?
軽度な衝撃であっても、骨化のため脊柱管が高度に狭窄していると、軽度の外力でも脊髄症状が顕在化する可能性があります。
このため、事故の衝撃度だけではなく、麻痺やしびれなどの臨床症状の変化率が重視されます。
事故前の画像がない場合、因果関係の立証は難しくなりますか?
事故直後からの症状発現や、MRI検査で脊髄内に高信号領域を認める場合には、事故との因果関係を主張可能です。
また、事故前の無症状であった旨の本人上申書も、症状と事故との因果関係を補強する材料となります。
手術(除圧や固定)を受けた場合、意見書ではどう評価しますか?
手術の必要性・実施理由・術前後の経過を踏まえて、事故が後縦靭帯骨化症の症状増悪にどの程度寄与したかを分析します。
事故のために手術が必要になるまで症状が悪化したと判断されれば、事故との因果関係を強く主張できます。
まとめ
後縦靭帯骨化症(OPLL)は、脊柱の靭帯が骨化して脊髄を圧迫して、しびれや麻痺を引き起こす難病です。
交通事故などで症状が急激に悪化することがあり、事故との因果関係を立証するには「医師意見書」が重要です。
医師意見書は、画像所見や神経学的検査をもとに、症状経過と因果関係を専門的に説明する文書です。
医師意見書は、後遺障害認定や異議申立て、裁判で強力な医学証拠となり、賠償金額にも影響します。
後縦靭帯骨化症の後遺障害認定でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。尚、初回の法律事務所様は無料で承ります。
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