交通事故によるむち打ちは、見た目に分かりにくいものの、首や肩の痛みが長引き、日常生活に支障をきたすことも少なくありません。
特に3ヶ月ほど通院を続けた場合、「慰謝料はいくらもらえるのか?」「相手の保険会社とどう交渉すればいいのか?」といった疑問を持つ方も多いでしょう。
また、慰謝料の計算にはいくつかの基準があり、交渉の進め方によって金額が変わることもあります。
ここでは、むち打ちで3ヶ月通院したケースを前提に、慰謝料の相場や計算方法、さらには交渉の注意点まで分かりやすく解説しています。
最終更新日: 2025/7/19
Table of Contents
後遺障害12級とは?
後遺障害等級12級の概要と主な認定基準
後遺障害12級は、交通事故や労災などで身体に一定の障害が残った場合に認定される等級の一つです。
14段階ある後遺障害等級の中で、比較的軽度とされますが、労働能力喪失率は14%とされ、賠償金や逸失利益の算定にも大きく影響します。
12級には1号から14号までの細かな分類があり、目や耳、骨、関節、神経、外貌などさまざまな部位の障害が対象です。認定には医学的根拠や客観的な所見が必要とされます。
どのような後遺症が12級に該当するのか
12級に該当する後遺症は多岐にわたります。主な例として、以下のようなものが挙げられます。
- 片目の調節機能障害やまぶたの運動障害
- 7本以上の歯の喪失
- 耳の軟骨の大部分の欠損
- 鎖骨や骨盤骨などの著しい変形
- 上肢や下肢の関節可動域制限
- 長管骨の変形
- 手足の指の一部の喪失や機能障害
- 医学的に証明された神経症状(痛み・しびれ)
- 頭部や顔面などの外貌に残る傷跡
12級に該当しやすい症状・事例
神経症状
骨折やむち打ちによる痛みやしびれが医学的に証明された場合(画像診断や神経学的検査で異常所見がある場合)は「12級13号」に該当しやすいです。
関節可動域制限
骨折後に関節の動きが著しく制限された(例:肘や膝が十分に曲がらないなど)。
外貌醜状
顔や頭部、首などに3cm以上の線状の傷や、10円玉以上の大きさの傷跡が残った。
骨の変形
鎖骨や骨盤骨などの著しい変形が残った。
指の障害
手や足の指の一部を失った、または機能を失った
実際の事例では、交通事故による骨折や神経損傷、顔の傷跡などで12級認定を受けたケースが多く見られます。
逸失利益の基本知識
逸失利益の基本的な考え方
逸失利益とは、交通事故などの不慮の事故がなければ将来得られたはずの収入や利益のことを指します。
被害者が事故によって労働能力を失い、収入が減少した場合、その損失分を補償するために認められる損害賠償項目です。
主に後遺障害や死亡事故において、将来の収入減を現在価値で計算して請求します。
逸失利益と慰謝料・治療費との違い
逸失利益は、将来的に得られたはずの収入の減少分を補償するものです。
慰謝料は、事故による精神的苦痛に対する賠償で、収入の有無や金額には左右されません。
治療費は、事故によって発生した医療費や通院費など、実際にかかった費用を補償します。
また、休業損害は事故による休業期間の減収に対する補償であり、逸失利益は症状固定後の将来の減収を補償する点で異なります。
逸失利益が認められるための条件
逸失利益が認められるには、以下の条件が必要です。
- 事故前に収入を得ていた、または将来収入を得る蓋然性が高いこと(学生や主婦も含む)
- 後遺障害等級が認定され、労働能力の喪失や制限が証明されている
- 実際に収入の減少が生じている、または減少する合理的な見込みがある
これらの条件が満たされない場合、逸失利益は認められない可能性があります。
後遺障害12級の逸失利益の計算方法
計算式
後遺障害12級の逸失利益は、次の計算式で算出されます。
基礎収入 × 労働能力喪失率(14%) × 労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
ここで基礎収入は事故前の年収や賃金センサスを基準とし、ライプニッツ係数は喪失期間に応じて決まる割引率を反映します。
労働能力喪失率や喪失期間の具体例
労働能力喪失率は、後遺障害12級の場合は原則14%とされています。
労働能力の喪失期間は、関節可動域制限などの障害では67歳まで認められることが多いです。
神経症状(12級13号など)の場合は、症状や職業、年齢によって10年程度に制限されることがありますが、67歳まで認められるケースもあります。
例:38歳会社員、年収460万円、喪失期間29年(67歳まで)の場合、ライプニッツ係数19.188を用いて計算します。
有職者・主婦・学生など立場別の計算ポイント
有職者
事故前年の年収や確定申告額を基礎収入とします。
主婦(主夫)
実収入がなくても、賃金センサス(女性全年齢平均など)を基礎収入として認められます。
学生・未就労者
将来の労働力喪失を考慮して、賃金センサスの学歴別平均賃金を基礎収入に用います。
いずれも喪失率14%を乗じ、喪失期間や年齢に応じたライプニッツ係数を掛けて算出します。
後遺障害12級における逸失利益の相場
過去の判例や事例紹介
後遺障害12級の逸失利益は、事例によって幅があります。たとえば、20代男性の大腿骨骨折で過失相殺後に約1200万円、会社員の手首骨折で約1800万円、主婦の鎖骨変形で約1100万円の補償が認められたケースがあります。
また、板前の手首機能障害では約1050万円、40代男性会社員で約1750万円の和解例も報告されています。
異なる職業別の相場
逸失利益は職業ごとに基礎収入が異なるため、相場も変動します。会社員の場合、年収を基に計算され、例として年収800万円の40歳男性では約2050万円、自営業の65歳男性で約107万円が認定された例があります。
専業主婦は賃金センサスを基準に約1200万円、10歳男児で約1380万円とされることもあります。職業ごとの基礎収入が計算の出発点となります。
年齢や性別による相場の違い
年齢が若いほど労働能力喪失期間が長くなるため、逸失利益は高額になりやすいです。
たとえば、30歳専業主婦で約1200万円、10歳男児で約1380万円、40歳会社員で約2050万円など、年齢が上がると喪失期間が短くなり、金額も減少します。
性別による基礎収入の違いもあり、賃金センサスの男女別平均賃金が用いられます。
裁判所での争点と対策
裁判では、労働能力喪失率や喪失期間が主な争点となります。
特に神経症状の場合、喪失期間を10年程度に制限されることが多いですが、骨の変形や関節可動域制限では67歳まで認められることもあります。
また、事故後に減収がなくても、努力による収入維持が認められれば逸失利益が認定される判例も存在します。
争点となった場合は、医学的証拠や職業・収入の実態を具体的に示すことが重要です。
弁護士の活用や専門医による医師意見書の提出が有効な対策となります。
保険会社との示談交渉で逸失利益を最大化する方法
主張すべきポイントとその理由
逸失利益を最大化するには、事故前の収入証明や後遺障害等級認定書、医師の診断書など客観的な証拠を揃え、賠償請求の根拠を明確に主張することが不可欠です。
保険会社は「相場」や「基準」を強調して低額提示を行うことが多いため、裁判基準や弁護士基準を根拠に、正当な金額を論理的に主張することが重要です。
有利な示談交渉を進めるテクニック
示談書への即サインを避ける
保険会社の早期解決の誘いに乗らず、内容を十分に精査し納得できるまで交渉します。
弁護士基準で計算して請求する
自賠責や任意保険基準よりも高い裁判基準(弁護士基準)で計算した金額を根拠に提示します。
証拠や判例を活用する
類似判例や医学的資料を示して、合理的な主張を展開します。
冷静な対応・記録の保持
交渉内容は書面や録音で記録して、感情的にならず冷静にやり取りを進めることが有効です。
保険会社からの提示金額が低い場合の対応策
提示金額の根拠を確認して再交渉
なぜその金額なのか説明を求めて、納得できなければ増額交渉を行います。
弁護士への相談・依頼
自分で交渉しても増額が難しい場合は、弁護士が介入することで、裁判基準による適正な賠償額が認められて、示談金が増額されるケースもあります。
異議申立てや裁判も視野に入れる
どうしても折り合いがつかない場合は、異議申立てや訴訟を検討して、正当な賠償を求める姿勢を示すことも有効です。
交通事故の後遺症で弊社ができること
弁護士の方へ
弊社では、交通事故で受傷したケガの後遺症が、後遺障害に認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。
等級スクリーニング®
現在の状況で、後遺障害に認定されるために足りない要素を、後遺障害認定基準および医学的観点から、レポート形式でご報告するサービスです。
等級スクリーニング®は、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。
等級スクリーニング®の有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニング®を承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング®】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定
医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。
医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。
弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
労災事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
交通事故の後遺障害認定でお悩みの患者さんへ
弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。
また、弊社では交通事故業務に精通している全国の弁護士を紹介することができます。
もし、後遺障害認定で弁護士紹介を希望される被害者の方がいらっしゃれば、こちらのリンク先からお問い合わせください。
尚、弁護士紹介サービスは、あくまでもボランティアで行っています。このため、電話での弊社への問い合わせは、固くお断りしております。
弊社は、電話代行サービスを利用しているため、お電話いただいても弁護士紹介サービスをご提供できません。ご理解いただけますよう宜しくお願い申し上げます。
後遺障害12級の逸失利益でよくある質問
後遺障害12級の逸失利益は何年で計算する?
後遺障害12級の逸失利益は、原則として「症状固定時の年齢から67歳まで」の年数で計算されます。
ただし、神経症状(12級13号など)の場合は、症状の改善が見込まれるとして労働能力喪失期間が10年程度に制限されることが多いです。
関節可動域制限や骨の変形などの場合は67歳まで認められる傾向があります。
後遺障害12級の労働能力喪失率は?
後遺障害12級の労働能力喪失率は「14%」が実務上の目安とされています。これは法律で定められたものではなく、判例や自賠責保険における運用基準に基づくものです。
例えば、基礎年収が500万円の場合、逸失利益の算定では500万円×14%で年70万円が労働能力喪失分として計算されます。
逸失利益が認められる具体的なケースは?
逸失利益は、交通事故前に働いて収入を得ていた人だけでなく、専業主婦や学生、未就労者でも将来の就労可能性が高い場合には認められます。
たとえば、関節可動域制限や骨の変形で仕事に支障が出る場合、または神経症状で業務に制限が生じる場合などが該当します。
現実に減収がなくても、労働能力の低下が医学的に証明されていれば認められるケースもあります。
逸失利益と他の損害賠償との関係は?
逸失利益は損害賠償の一項目であり、他には治療費、休業損害、慰謝料などがあります。
治療費や休業損害は実際に発生した費用や収入減を補償するのに対し、逸失利益は後遺障害や死亡によって将来得られなくなった収入を補償するものです。
慰謝料は精神的苦痛に対する賠償であり、逸失利益とは性質が異なります。
まとめ
後遺障害12級は、交通事故などで身体に残った軽度な障害に対して認定されるもので、労働能力喪失率は14%とされます。
認定には医学的証拠が必要で、関節の可動域制限や骨の変形、神経症状などが主な例です。
逸失利益とは、事故がなければ得られた将来の収入を補償するもので、後遺障害が認定されることで賠償対象になります。
算定は基礎収入に喪失率とライプニッツ係数をかけて計算します。職業や年齢により金額は大きく異なります。
交通事故による後遺障害の逸失利益に関する争いで、お困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。尚、初回の法律事務所様は無料で承ります。
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