病院での治療が思わぬ結果に終わったとき、「これは医療ミスでは?」と疑問を持つ方は少なくありません。
しかし、病院を相手に訴訟を起こすのは、精神的にも手続き的にも大きな負担がかかるものです。
とはいえ、明らかな過失があった場合には、損害賠償を求める正当な権利があります。
本記事では、病院に対する訴訟の流れや必要な準備、成功事例や注意点について、わかりやすく解説しています。
訴訟を検討している方や、法的な支援を探している方にとって、信頼できる判断材料となる情報をお届けします。
最終更新日: 2025/6/23
Table of Contents
病院に対する訴訟の概要
医療訴訟で勝てる確率は?
令和5年の数字では、医療訴訟(患者側の主張が一部または全部認められる「認容」)の勝訴率は約20%です。
一般的な民事事件に比べてかなり低く、医療訴訟の難しさが浮き彫りになります。
しかしこの数字には、訴訟に至らない示談や調停、和解などの解決件数は含まれていません。
実際に金銭的な補償を受けるケースは認容率以上に多い可能性があり、示談や和解を含めた全体の成功率を見ることも重要です。
医療訴訟は勝てないと言われる原因は?
医療訴訟が勝ちにくい主な理由は以下の通りです。
1. 証拠収集の難しさ
医療行為の経緯を裏付けるカルテや画像データなどを集めるには、専門的で厳格な手続き(カルテ開示・証拠保全)が必要です。
2. 専門知識の必要性
医療専門知識なしに過失や因果関係を立証するのは極めて困難で、協力医による意見書も必須です。
3. 弁護士の力量
患者側の弁護士でも、医療事件に特化した経験が少なく、適切な戦略を設計できないケースがあります。
4. 構造的なハードル
病院側は豊富な専門医と資料を揃えた体制で臨むことが多く、対抗するのは容易ではありません。
これらの理由が複合的に重なることで、医療訴訟は一般的な民事訴訟よりも断念されやすく、「勝てない」と言われる背景となっています。
病院を訴訟する主なケース
医療過誤
医療過誤とは、診断、手術、投薬、治療手順など医療行為のいずれかで医師・病院が注意義務を怠り、結果として患者が傷害や死亡などの損害を受けた事例です。
絞扼性イレウスや椎間板ヘルニア手術など多様な場面で訴訟が提起されており、裁判では注意義務の有無や因果関係が焦点となります。
誤診
誤診による医療過誤訴訟では、診断ミスや問診不足が主要な問題となります。
誤診により症状の悪化や適切な治療タイミングを逸したケースが多く、損害賠償請求には「過失」「因果関係」「損害」の三要件が不可欠とされています。
説明不足
医師や病院による説明不足とは、治療内容やリスク、副作用などについて十分な説明をせず、患者が自己決定できない状態です。
例えば、説明文書や同意書の副本を患者に交付しない実態や、リスク説明が抽象的であったケースなどがあり、不十分な説明が原因で損害賠償が認められる可能性があります。
病院を訴訟するための3つの要件
過失(医療側の注意義務違反)
過失とは、医師や病院が診療契約や注意義務を怠り、通常求められる水準を下回る医療行為です。
たとえば、検査ミスや処置の誤りにより患者に不利益が生じたケースです。
患者側は、当時の医療水準に照らして注意義務が果たされていなかったことを証明する必要があります。
損害(実際の被害の発生)
損害とは、患者が受けた身体的・精神的な被害や費用的損失です。たとえば、入院費や後遺症による収入減、精神的苦痛に対する慰謝料などが含まれます。
請求可能であるためには、これらの損害が金銭に換算できる形で存在する必要があります。
因果関係(過失と損害の直接的な繋がり)
因果関係では、過失がなければその損害が発生しなかったことを示す必要があります。
「医療ミスによって症状が悪化した」「後遺症が残った」など、過失と損害の間に因果の橋渡しがあるかが争点になります。
裁判では、協力医による医師意見書などで、医学的な裏付けが重要です。
<参考>
病院への訴訟に必要な資料と情報
医療記録の取得方法
医療記録(カルテ・看護記録・画像・検査結果など)は、患者または家族が病院に「任意開示請求」するか、裁判所が関与する「証拠保全手続」により取得します。
任意開示は比較的簡便かつ安価ですが、開示漏れや改ざんリスクがあるため、重要記録を正確に押さえたい場合は、費用がかかっても証拠保全の検討が必要となります。
訴訟に必要な証拠書類
証拠書類は、診療記録や同意書、検査報告書、領収書など多岐にわたります。
裁判所には「相手方+1部」のコピーを整理して提出して、「甲第1号証」のような通し番号と簡潔な説明(証拠説明書)を付けるのが正式です。
協力医による医療調査
医療訴訟には、専門性のある協力医の関与が必須です。協力医は診療記録や画像を分析して、訴訟に有利な医学的根拠を整理します。
弁護士ネットワーク、医療コンサルタント会社を通じて適切な専門医を探して、医療調査から意見書の手配まで進めます。
<参考>
病院への損害賠償請求の流れ
弁護士の選び方と相談のポイント
医療過誤訴訟を成功に導くには、まず専門性の高い弁護士を選ぶことが重要です。
相談は早い段階が望ましく、専門知識や実績、協力医との連携体制も確認しましょう。
また、報酬体系や対応エリアの透明性もポイントです。初回無料相談を利用して、比較検討すると安心です。
示談交渉
示談交渉はまず患者・病院間で始まり、弁護士が間に入る場合もあります。示談金は、後遺症・慰謝料・治療費の見通しをベースに交渉します。
解決が難しい医師側の過失争いがある場合、示談は必ずしも成立しませんが、成立すれば迅速かつ低コストで解決できます。
調停と医療ADR
示談が成立しない場合は、法外・裁判所外の調停や医療ADRへ移行します。医療ADRでは弁護士同士や第三者が関与して、対話による解決を目指します。
一方、調停は簡易裁判所で医師を含む調停委員による話し合いが行われ、比較的費用・時間が抑えられるのが特徴です。
訴訟
調停・医療ADRでも解決に至らなければ、最終手段として訴訟に進みます。まず訴状を提出して、審理では証拠提出や証人尋問、医師鑑定が行われます。
裁判の途中でも和解提案があり、多くの医療訴訟が判決前に和解で決着します。判決に至るケースは少数派ですが、明確な争点整理につながります
病院を訴訟する際の4つの注意点
結果が悪いだけで医療過誤ではないことが多い
医療は生物を相手にする行為であるため、予後が悪いからといって即「医療過誤」にはなりません。
治療結果が望ましくないだけでは、注意義務違反とは判断されず、損害賠償請求には過失・因果関係・損害の立証が必要です。
医療訴訟は立証が難しい
医療訴訟では、「医師の過失」があったこと、「その過失が損害を引き起こしたこと」を証明しなければなりません。
高度な医学的判断が必要であり、専門医による医師意見書や協力医の存在が不可欠なうえ、病院側の資料整備力を上回るのは容易ではありません。
<参考>
医療訴訟は長期にわたり費用もかかる
調停・ADR・訴訟などのステップを経て、判決まで数年を要するケースが多く、弁護士費用や鑑定費、裁判費用など膨大な費用が発生します。
単なる着手金以外にも協力医謝礼、書類作成費用、印紙代など多岐にわたる実費がかかるため、事前にしっかりと試算と資金計画を立てる必要があります。
示談や和解での解決も念頭におく
多くの医療訴訟は裁判に進むことなく、示談や和解で解決へ向かいます。和解ならば迅速かつ柔軟に、非公開で条件を調整できる利点があるからです。
また、心理的・経済的負担の軽減にもつながるため、訴訟の全過程を視野に入れつつも、代替解決策を前向きに検討する姿勢が肝要です。
メディカルコンサルティングができること
医療ミスなのかについての医療調査
医療訴訟の多くは、単に治療結果が悪いだけで医療ミスではありません。単に治療結果が悪いだけでは、医療訴訟で勝てる確率は著しく低いです。
勝訴できる可能性の無い不毛な医療訴訟を防ぐためには、第三者による、医療ミスかどうかについての医療調査の実施が望ましいです。
弊社では、ほぼすべての科の事案で医療ミスか否かの医療調査(意見書作成可否調査)が可能です。詳細は、以下のコラム記事をご確認ください。
<参考>
医療事故における医療調査の基本内容とは?費用も解説|医師意見書
医療調査できる診療科一覧
弊社では、以下のようにほぼ全科の医療調査を実施できます。
- 整形外科
- 脳神経外科
- 耳鼻咽喉科
- 眼科
- 消化器外科
- 呼吸器外科
- 心臓血管外科
- 産婦人科
- 泌尿器科
- 脳神経内科
- 循環器内科
- 消化器内科
- 呼吸器内科
- 腎臓内科
- 血液内科
- 小児科
- 放射線科
- 精神科
- 皮膚科
- 形成外科
- ⻭科
- 麻酔科
- 救急科
- 感染症科
- ペイン科
- 病理
医療訴訟で使用する医師意見書
意見書作成可否調査で医療ミスであることが判明した場合、各科の専門医による顕名の医師意見書を作成することが可能です。
医療ミスの可能性がある事案で、お困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
尚、個人の方は、必ず弁護士を通じてご相談ください。個人の方からの直接のお問い合わせは、固くお断りしております。
<参考>
医療訴訟の医師意見書|160名の各科専門医による圧倒的実績
医師意見書の作成にかかる費用
医療調査(意見書作成可否調査)
医療訴訟用の医師意見書を作成できるのかを判断するために、医療調査(意見書作成可否調査)を必須とさせていただいています。
意見書作成可否調査では、各科の専門医が、診療録や画像検査などの膨大な資料を精査いたします。
概要 | 価格 |
基本料 | 140,000円 |
動画の長い事案 | 170,000円 |
追加質問 | 45,000円 / 回 |
※ すべて税抜き価格
※ 意見書作成には医療調査(意見書作成可否調査)が必須です
※ 意見書作成には別途で意見書作成費用がかかります
※ 意見書作成に至らなくても医療調査の返金は致しません
医師意見書
医療調査(意見書作成可否調査)の結果、医療ミスが判明して、医師意見書を作成する際には、別途で医師意見書作成費用がかかります。
概要 | 価格 |
一般の科 | 400,000円~ |
精神科 | 450,000円~ |
心臓血管外科 | 500,000円~ |
施設(老健、グループホームなど) | 350,000円~ |
弊社が医療訴訟で医師意見書を作成した実例
弊社には全国の法律事務所から医療訴訟の相談が寄せられます。これまで下記のような科の医師意見書を作成してきました。
- 脳神経外科
- 脳神経内科(神経内科)
- 整形外科
- 一般内科
- 消化器外科
- 消化器内科
- 呼吸器外科
- 心臓血管外科(成人)
- 心臓血管外科(小児)
- 循環器内科
- 産科
- 婦人科
- 泌尿器科
- 精神科
- 歯科
一方、眼科や美容整形外科の相談は多いものの、医療過誤と認められるケースは少なく、弊社においても医師意見書の作成実績は限られています。
病院への訴訟でよくある質問
病院を訴える費用はいくらですか?
病院を訴える際の総費用は、弁護士費用と実費を含めて数十万円〜数百万円程度になります。
弁護士費用には相談料・着手金・報酬金・日当が含まれ、実費には申立手数料、カルテ開示費用、協力医謝礼などが含まれます。
案件の複雑さや進行状況により上下するため、事前に費用見積もりを取ることが重要です。
医療訴訟が多い科は?
訴訟リスクが高い診療科としては、内科、外科、産婦人科、整形外科などが挙げられます。
ただし、医師数を考慮すると、外科・産婦人科・整形外科・形成外科等が訴訟リスクが高い科目に分類されています。
これらの科は専門性と緊急対応という特徴から、誤診・合併症などによる訴訟リスクが大きいとされています。
医療訴訟で示談に至る割合は?
医療訴訟は判決に至らず、示談や和解で終わるケースが多く、実際には過半数がこのような形で解決しています。
判決による終局は約36%で、判決に至らず示談や調停で解決するケースが多数です。
示談による解決は、費用・時間の面でメリットが大きく、プライバシー保護の観点からも選択されやすい手段です。
まとめ
医療訴訟は、患者側の勝訴率が約20%と低く、証拠収集や専門知識の壁、病院側の体制など多くのハードルがあります。
主な訴訟理由は医療過誤、誤診、説明不足で、いずれも過失・損害・因果関係の3要件の立証が不可欠です。
訴訟には医療記録や意見書などの資料が必要で、費用や期間も長期化します。
実際には多くが示談や和解で解決されるため、訴訟以外の解決方法も視野に入れることが重要です。
病院に対する医療訴訟で、お困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
尚、個人の方は、必ず弁護士を通じてご相談ください。個人の方からの直接のお問い合わせは、固くお断りしております。
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