医療現場では、どの診療科でも医療ミスやトラブルが起こる可能性がありますが、特に訴訟リスクが高い診療科には共通する特徴があります。
実際に、患者からの損害賠償請求が多く寄せられる科には、治療内容が複雑であったり、予後に大きな影響を及ぼす医療行為が日常的に行われている傾向があります。
本記事では、「医療訴訟が多い科」に注目して、実際の訴訟件数や医師あたりのリスク、訴訟の背景にある要因を統計データとともにわかりやすく解説します。
特定の診療科におけるリスクを知ることで、医療事故への備えや、いざという時の対応にも役立てていただけるでしょう。
最終更新日: 2025/6/20
Table of Contents
医療訴訟が多い診療科はどこか?
訴訟件数の多い診療科のランキング
日本における医事関係訴訟の新受件数は、近年は年間600〜800件台で推移し、減少傾向にあります。
そのうち、令和3年度は「内科」が238件で最多、続いて「歯科」100件、「外科」98件という順でした。
過去10年の傾向でも、内科・外科・整形外科・産婦人科が上位を占めています。
内科、整形外科、産婦人科など主要な科の特徴
内科は患者数が多く、診療範囲も広いため、ヒヤリハットが訴訟につながりやすく、件数自体は年間200件前後と最多です。
一方、外科や整形外科、産婦人科は医師1,000人あたり訴訟率が高く、医療行為の侵襲性や予後への影響が大きいためリスクが高まっています。
特に、整形外科や産婦人科は、専門性の高さと手術リスクで訴訟リスクが顕著です。
医師1000人あたりの訴訟リスク比較
診療科ごとの訴訟リスク
厚労省や裁判所の資料より、医師1,000人あたりの訴訟件数は、形成外科が約7~11件、産婦人科が約4.8~5.7件、外科は4.1~7.4件、整形外科は3.4~4.5件、内科は約1.9~3件という順位です。
外科系は高水準で、特に形成外科と産婦人科の訴訟リスクが高いことが確認できます。
形成外科、産婦人科、整形外科、外科のリスクが高い理由
形成外科は、美容整形を含む自由診療が多く、患者の期待値が高いため、結果への不満が訴訟に直結しやすい傾向があります。
産婦人科は母子の生命に関わる医療でトラブルが重篤化しやすく、外科・整形外科は手術のミスや合併症による事故が多く報告されています。
いずれも侵襲性が高く、説明義務の不備が訴訟の原因になることが多いです。
医療訴訟の現状と推移
医療訴訟件数の減少傾向とその理由
2022年の医療訴訟受付件数は前年比647件で13.7%減少、コロナ前の2019年比でも約20%減少しています。
2004年のピーク1,110件に比べ、近年は800件前後から下降傾向にあります。
減少背景にはADRの普及、産科補償制度導入、医療事故調査制度開始などが挙げられ、訴訟よりも裁判外での早期解決が進んでいます。
裁判外紛争処理(医療ADR)や制度の影響
医療ADR制度は2001年に導入され、2023年度には全国で1,007件受理、343件が解決されています。
医療ADRは、訴訟より迅速かつ柔軟な解決を目指す「対話自律型」と、法的見地を重視する「裁判準拠型」の2タイプがあります。
特に、対話自律型は医師と患者の信頼関係を重視して、和解を促進しています。これが訴訟件数の抑制と早期解決に寄与しています。
医療訴訟の審理期間・認容率
平均審理期間の長さと患者側の勝訴率
医療訴訟(第1審)の平均審理期間は約26か月で、通常民事訴訟の3倍程度と長期化する傾向にあります。
判決に至った場合の認容率(患者側勝訴率)はおおむね20〜22%で、全体の約半数は和解により解決が図られています。
訴訟の流れと判決の傾向
医療訴訟は、証拠収集・争点整理・鑑定などの専門的手続きが多く、口頭弁論、鑑定人や第三者医師による意見聴取もあります。
和解が50%以上を占め、最終的に判決に至るのは約30%程度です。判決では棄却されるケースが多く、原告認容となるのは判決事例のうち2割程度とされています
医療事故が疑われた時にすべきこと
原因追究や証拠保全のポイント
医療事故が疑われたら、まずカルテや検査画像など診療記録を速やかに確保することが重要です。
病院に対する直接請求(カルテ開示)または裁判所による証拠保全手続きを通じて、改ざんや漏れが起こる前に保存しましょう。
弁護士を通じて進めることで法的な信頼性が高まり、訴訟準備として非常に有効です。
損害賠償請求までの流れ
損害賠償請求には「過失」「損害」「因果関係」の3要件が必要です。まず弁護士に相談し、証拠の収集・評価を実施します。
収集した証拠をもとにして、医療調査を行います。医療調査は、集めた診療記録を第三者の協力医が分析して、医学的妥当性や過失の有無を判断するプロセスです。
この調査が示談交渉や訴訟の基盤となり、医師の説明内容を補強する医師意見書作成や争点整理にも直結します。
次いで病院との交渉(示談)を図り、合意に至らない場合は訴訟を提起します。示談段階では、慰謝料や逸失利益などを含めた適切な金額交渉が行われます。
訴訟に進んだケースでは、法廷審理で裁判所が判断します。訴訟に至った場合でも、途中で和解するケースが少なくありません。
<参考>
メディカルコンサルティングができること
医療ミスなのかについての医療調査
医療訴訟の多くは、単に治療結果が悪いだけで医療ミスではありません。単に治療結果が悪いだけでは、医療訴訟で勝てる確率は著しく低いです。
勝訴できる可能性の無い不毛な医療訴訟を防ぐためには、第三者による、医療ミスかどうかについての医療調査の実施が望ましいです。
弊社では、ほぼすべての科の事案で医療ミスか否かの医療調査(意見書作成可否調査)が可能です。詳細は、以下のコラム記事をご確認ください。
<参考>
医療事故における医療調査の基本内容とは?費用も解説|医師意見書
医療調査できる診療科一覧
弊社では、以下のようにほぼ全科の医療調査を実施できます。
- 整形外科
- 脳神経外科
- 耳鼻咽喉科
- 眼科
- 消化器外科
- 呼吸器外科
- 心臓血管外科
- 産婦人科
- 泌尿器科
- 脳神経内科
- 循環器内科
- 消化器内科
- 呼吸器内科
- 腎臓内科
- 血液内科
- 小児科
- 放射線科
- 精神科
- 皮膚科
- 形成外科
- ⻭科
- 麻酔科
- 救急科
- 感染症科
- ペイン科
- 病理
医療訴訟で使用する医師意見書
意見書作成可否調査で医療ミスであることが判明した場合、各科の専門医による顕名の医師意見書を作成することが可能です。
医療ミスの可能性がある事案で、お困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
尚、個人の方は、必ず弁護士を通じてご相談ください。個人の方からの直接のお問い合わせは、固くお断りしております。
<参考>
医療訴訟の医師意見書|160名の各科専門医による圧倒的実績
医師意見書の作成にかかる費用
医療調査(意見書作成可否調査)
医療訴訟用の医師意見書を作成できるのかを判断するために、医療調査(意見書作成可否調査)を必須とさせていただいています。
意見書作成可否調査では、各科の専門医が、診療録や画像検査などの膨大な資料を精査いたします。
概要 | 価格 |
基本料 | 140,000円 |
動画の長い事案 | 170,000円 |
追加質問 | 45,000円 / 回 |
※ すべて税抜き価格
※ 意見書作成には医療調査(意見書作成可否調査)が必須です
※ 意見書作成には別途で意見書作成費用がかかります
※ 意見書作成に至らなくても医療調査の返金は致しません
医師意見書
医療調査(意見書作成可否調査)の結果、医療ミスが判明して、医師意見書を作成する際には、別途で医師意見書作成費用がかかります。
概要 | 価格 |
一般の科 | 400,000円~ |
精神科 | 450,000円~ |
心臓血管外科 | 500,000円~ |
施設(老健、グループホームなど) | 350,000円~ |
弊社が医療訴訟で医師意見書を作成した実例
弊社には全国の法律事務所から医療訴訟の相談が寄せられます。これまで下記のような科の医師意見書を作成してきました。
- 脳神経外科
- 脳神経内科(神経内科)
- 整形外科
- 一般内科
- 消化器外科
- 消化器内科
- 呼吸器外科
- 心臓血管外科(成人)
- 心臓血管外科(小児)
- 循環器内科
- 産科
- 婦人科
- 泌尿器科
- 精神科
- 歯科
一方、眼科や美容整形外科の相談は多いものの、医療過誤と認められるケースは少なく、弊社においても医師意見書の作成実績は限られています。
医療訴訟の多い科でよくある質問
医療事故が多い科は?
形成外科(美容整形含む)は医師1000人あたり約7.1件でトップです。手術侵襲性や患者の期待値の高さが原因とされています。
次いで産婦人科4.8件、外科4.1件、整形外科3.4件、精神科2.0件、内科1.9件と、外科系が上位を占める結果です。
医療訴訟の勝訴率は?
令和5年の医療訴訟(認容率)は約20%前後です。通常の民事訴訟(約85%)に比べ圧倒的に低く、原告・患者が裁判で勝訴するのは20%程度にとどまっています。
ただし示談・和解で解決される件数はこれに含まれず、賠償を得るケースは認容率以上に存在します。
医療事故で最も多いものは何ですか?
診断ミス・遅れ、術後合併症、説明不足が多いです。特に手術系では、インフォームドコンセント不備や手術侵襲による事故、内科では見落としや判断遅延による訴訟が目立ちます。
まとめ
医療訴訟は内科・外科・整形外科・産婦人科で多く、形成外科では医師1,000人あたりの訴訟率が最も高くなっています。
これらの科は手術のリスクが高く、結果への不満や説明不足が訴訟につながりやすいのが特徴です。
訴訟全体の件数は減少傾向で、医療ADRなど裁判外での解決が進んでいます。
患者側が勝訴する割合は2割前後と低く、訴訟準備には診療記録の確保や医師意見書の取得が重要です。
医療訴訟で、お困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
尚、個人の方は、必ず弁護士を通じてご相談ください。個人の方からの直接のお問い合わせは、固くお断りしております。
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