交通事故などによって発生する骨盤骨折は、外見では重症に見えなくても、内部で大量の出血を引き起こして、命に関わる出血性ショックを招くことがあります。
なぜ、骨盤骨折がこれほど危険なのでしょうか。その背景には、骨盤の解剖学的な特徴や、損傷の起きやすい血管の存在など、いくつもの要因が関係しています。
本記事では、骨盤骨折によって出血性ショックが起きる理由や、その症状、診断・治療法、後遺症や障害認定のポイントまでを分かりやすく解説しています。
最終更新日: 2025/4/24
Table of Contents
骨盤骨折で出血性ショックが起きる理由
広範囲な骨盤静脈叢
骨盤内には広範囲にわたる静脈叢が存在しており、骨折時にはこれらの静脈が損傷されやすいです。
特に骨盤骨折では、静脈からの出血は動脈に比べて止血が難しく、出血性ショックを引き起こす原因となります。
骨に近接して大血管が存在する
骨盤には内腸骨動脈などの大血管が近接しており、骨折時にこれらの血管が損傷されると大量出血を引き起こす可能性があります。
高エネルギー外傷が多い
骨盤骨折は交通事故や高所からの転落など、高エネルギー外傷によって発生することが多いです。
これらの外傷では、骨折だけでなく周囲の血管や臓器にも損傷が及びやすく、大量出血や出血性ショックを引き起こすリスクが高まります。
骨盤骨折を知ろう
骨盤骨折の原因
骨盤骨折は、交通事故や高所からの転落などの高エネルギー外傷が主な原因です。一方、高齢者では骨粗鬆症により、軽微な転倒でも骨折することがあります。
骨盤骨折の症状
骨盤骨折の主な症状は、強い痛みや腫れ、歩行困難です。膀胱や尿道の損傷により排尿障害が起こることもあります。
また、骨盤内には多くの血管や神経が通っており、損傷により出血や神経障害が生じることがあります。
骨盤骨折の診断
骨盤骨折の診断には、身体的診察と画像検査が用いられます。レントゲン検査で骨折の有無を確認して、CT検査では骨折の詳細や内臓損傷の有無を評価します。
内臓損傷の有無を確認するために、必要に応じて超音波検査も行われます。このように、骨盤骨折は総合的に診断されます。
骨盤骨折の治療法
骨盤骨折の治療は、骨折の重症度や安定性に応じて異なります。安定型骨折では保存療法が選択されて、安静や鎮痛薬、リハビリテーションが行われます。
不安定型骨折や重度の損傷では、手術による骨の固定や血管損傷の修復、内臓損傷の治療が必要となります。
骨盤骨折の予後と後遺症
骨盤骨折の死亡率は?
骨盤骨折の死亡率は、骨折の種類や患者の状態によって異なります。安定型骨折では予後が良好です。
一方、不安定型骨折では、約15%の死亡リスクがあります。特に、低血圧の患者では、死亡率が50%に上昇する可能性があります。
骨盤骨折の後遺症
骨盤骨折後には、神経症状(痛みやしびれ)、変形障害、運動障害、下肢の短縮障害、正常分娩困難などの後遺症が残る可能性があります。
これらの後遺症は、日常生活や労働能力に影響を及ぼすことがあり、交通事故で受傷した場合には、後遺障害に認定される可能性があります。
交通事故で受傷した骨盤骨折の後遺障害等級
交通事故で受傷した骨盤骨折の後遺症は、自賠責保険から後遺障害に認定される可能性があります。後遺障害等級の詳細は、以下のコラム記事を参照してください。
<参考>
骨盤骨折の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
骨盤骨折の後遺障害認定ポイント【弁護士必見】
交通事故で受傷した骨盤骨折の後遺障害認定ポイントは、以下のコラム記事を参照いただければ幸いです。
<参考>
骨盤骨折の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
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<参考>
【等級スクリーニング®】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定
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<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
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<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
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骨盤骨折が後遺障害認定されると損害賠償金を請求できる
交通事故による骨盤骨折が、後遺障害に認定されると、後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益を請求できます。
交通事故による骨盤骨折の後遺障害慰謝料とは
交通事故による骨盤骨折の後遺症が残った精神的苦痛に対する補償金です。後遺障害慰謝料は、下の表のように後遺障害等級によって異なります。
後遺障害等級 | 後遺障害慰謝料 |
1級 | 2800万円 |
2級 | 2370万円 |
3級 | 1990万円 |
4級 | 1670万円 |
5級 | 1400万円 |
6級 | 1180万円 |
7級 | 1000万円 |
8級 | 830万円 |
9級 | 690万円 |
10級 | 550万円 |
11級 | 420万円 |
12級 | 290万円 |
13級 | 180万円 |
14級 | 110万円 |
骨盤骨折の後遺障害逸失利益とは
交通事故による骨盤骨折の後遺症が残ると、労働能力が低下してしまいます。労働能力が低下したために失うであろう収入の不足分に対する補償金です。
後遺障害逸失利益は、交通事故被害者の年収、年齢をベースにして、後遺障害等級に応じた労働能力喪失率と労働能力喪失期間で決まります。後遺障害逸失利益は、以下の計算式で算出されます。
基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数
骨盤骨折の出血性ショックでよくある質問
骨盤骨折はなぜ危ないのでしょうか?
骨盤骨折は、骨盤内に多数の血管や神経が存在するため、損傷時に大量出血や神経障害を引き起こす可能性があります。
特に不安定型骨折では、骨のずれにより血管や神経が損傷されやすく、出血性ショックや下肢の運動麻痺などの重篤な合併症を伴うことがあります。
骨盤骨折の合併症は?
出血性ショック
骨盤内の血管損傷により出血性ショックを引き起こす可能性があります。
神経損傷
坐骨神経などの損傷により、下肢のしびれや運動障害が生じることがあります。
泌尿生殖器系の損傷
膀胱や尿道の損傷により、排尿障害や感染症のリスクが高まります。
消化管損傷
直腸などの損傷により、感染や腹膜炎を引き起こす可能性があります。
出血性ショックで起こることは何ですか?
出血性ショックは、大量出血により循環血液量が減少して、全身の臓器に十分な酸素や栄養が供給されなくなる状態です。
初期症状としては、皮膚の冷感、頻脈、呼吸の速まりなどが見られます。進行すると、血圧低下、意識障害、多臓器不全などを引き起こして、生命の危険が高まります。
まとめ
骨盤骨折は、交通事故や転落などの強い衝撃によって起こり、骨盤内に広がる静脈叢や大血管が傷つくことで大量出血を引き起こします。
特に静脈からの出血は止まりにくく、出血性ショックを招きやすいのが特徴です。
出血性ショックでは、全身の臓器に酸素が届かず、血圧低下や意識障害、多臓器不全など重篤な状態に進行します。
高齢者では軽い転倒でも骨折することがあり、後遺症や死亡のリスクもあるため注意が必要です。
交通事故で受傷した腰椎捻挫の後遺障害認定で、お困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
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