交通事故で手足の長管骨を骨折して治癒しなかったら、「変形障害」として後遺障害に認定される可能性があります。
変形障害は、骨の形状や機能に影響を及ぼして、日常生活や仕事に支障をきたすケースも少なくありません。
しかし、後遺障害の認定基準や検査方法は専門的で、適切な知識がなければ見落とされるケースも珍しくありません。
本記事では、変形障害の概要から後遺障害認定のポイント、長管骨に与える影響、さらには損害賠償の考え方まで詳しく解説しています。
最終更新日: 2025/2/26
Table of Contents
変形障害をきたす長管骨
変形障害とは何ですか?
変形障害とは、交通事故によって骨折や脱臼などを負って、治療後も骨の変形が残ってしまった状態です。
骨の変形が、外貌を著しく損なったり、関節の機能に障害を残すと、後遺障害認定の対象となります。
上肢の長管骨
上肢の長管骨は、上腕骨、橈骨、尺骨です。これらの骨に変形障害が生じると、腕の動きや力に影響を及ぼして、物を持つ、書くなどの日常動作が困難になる可能性があります。
下肢の長管骨
下肢の長管骨は、大腿骨、脛骨、腓骨です。これらの骨の変形障害は、歩行や立位保持に影響を与えて、移動能力の低下や痛みを引き起こす可能性があります。
変形障害の後遺障害認定基準
自賠責保険における変形障害では、上肢の長管骨(上腕骨、橈骨、尺骨)と下肢の長管骨(大腿骨、脛骨、腓骨)が、後遺障害認定の対象となります。
上肢と下肢のそれぞれに分けて、自賠責保険における後遺障害認定基準をご紹介します。
上肢の長管骨の変形障害
等級 | 認定基準 |
7級9号 | 偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの |
8級8号 | 偽関節を残すもの |
12級8号 | 長管骨に変形を残すもの |
7級9号:偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
- 上腕骨の骨幹部または骨幹端部に癒合不全を残すもの
- 橈骨および尺骨の両方の骨幹部または骨幹端部に癒合不全を残すもの
著しい運動障害を残すものに該当するのは、硬性補装具を常時使用している状態です。
8級8号:偽関節を残すもの
- 上腕骨の骨幹部または骨幹端部に癒合不全を残すもので、常に硬性補装具を必要としないもの
- 橈骨および尺骨の両方の骨幹部または骨幹端部に癒合不全を残すもので、常に硬性補装具を必要としないもの
- 橈骨または尺骨のいずれか一方の骨幹部または骨幹端部に癒合不全を残すもので、時々硬性補装具を必要とするもの
上記のいずれかの条件に該当すれば、8級8号になります。
12級8号:長管骨に変形を残すもの
7級9号や8級8号に該当しない事案でも、直径が2/3以下になっている等で変形が残っていると判断されれば、12級8号に認定される可能性があります。
下肢の長管骨の変形障害
等級 | 認定基準 |
7級10号 | 偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの |
8級9号 | 偽関節を残すもの |
12級8号 | 長管骨に変形を残すもの |
7級10号:偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
- 大腿骨の骨幹部または骨幹端部に癒合不全を残すもの
- 脛骨及び腓骨の両方の骨幹部または骨幹端部に癒合不全を残すもの
- 脛骨の骨幹部または骨幹端部に癒合不全を残すもの
著しい運動障害を残すものに該当するのは、硬性補装具を常時使用している状態です。
8級9号:偽関節を残すもの
- 大腿骨の骨幹部または骨幹端部に癒合不全を残すもので、常に硬性補装具を必要としないもの
- 脛骨及び腓骨の骨幹部または骨幹端部に癒合不全を残すもので、常に硬性補装具を必要としないもの
- 脛骨の骨幹部または骨幹端部に癒合不全を残すもので、常に硬性補装具を必要としないもの
上記のいずれかの条件に該当すれば、8級9号になります。
12級8号:長管骨に変形を残すもの
7級10号や8級9号に該当しない事案でも、直径が2/3以下になっている等で変形が残っていると判断されれば、12級8号に認定される可能性があります。
長管骨の変形障害の後遺障害認定ポイント【弁護士必見】
医師の多くは長管骨変形障害の認定基準を知らない
多くの医師は、自賠責保険の後遺障害認定基準に詳しくありません。特に、長管骨の変形障害は頻度が少なく、詳細な後遺障害認定基準は知っている臨床医はほぼ皆無と言えます。
変形障害に関する後遺障害認定基準を知らないため、後遺障害診断書の作成時にポイントとなる情報の記載漏れが多発しているのが実情です。
変形障害の見落としを防ぐには?
主治医は後遺障害認定基準を知らないため、変形障害に該当することに気付かないケースが後を絶ちません。
変形障害の見落としを防ぐためには、被害者側の専門家が、画像検査を精査して変形障害に該当しないかを確認する必要があります。
被害者側の専門家として弁護士が最有力ですが、残念ながら頚椎捻挫や関節内骨折レベルの医学知識では対応不可能な事案が多いです。
その理由は、長管骨の変形障害では、解剖学的な骨の形態だけではなく、上肢や下肢全体のアライメントも理解していなければならないからです。
追加検査で変形障害が認定されるケースもある
特に、上腕骨や大腿骨で回旋転位などが残った事案では、一見した時の「違和感」で、変形障害の存在に気付くか否かが決まります。
そして、変形障害の存在を疑った際には、証明するための画像検査を検討して、主治医に依頼する必要があります。
この思考作業は、実臨床と後遺障害認定基準の両方を、高レベルで体得している専門医でしか難しいのが現実です。
長管骨で変形障害が認定されずにお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
長管骨の変形障害で弊社ができること
弁護士の方へ
弊社では、交通事故で受傷した大腿骨骨折や上腕骨骨折による変形障害が認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。
等級スクリーニング
現在の状況で、後遺障害に認定されるために足りない要素を、後遺障害認定基準および医学的観点から、レポート形式でご報告するサービスです。
等級スクリーニングは、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。
等級スクリーニングの有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニングを承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定
医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。
医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。
弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
交通事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
長管骨の変形障害でお悩みの被害者の方へ
弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。
また、弊社では交通事故業務に精通している全国の弁護士を紹介することができます。
もし、後遺障害認定で弁護士紹介を希望される被害者の方がいらっしゃれば、こちらのリンク先からお問い合わせください。
尚、弁護士紹介サービスは、あくまでもボランティアで行っています。このため、電話での弊社への問い合わせは、固くお断りしております。
弊社は、電話代行サービスを利用しているため、お電話いただいても弁護士紹介サービスをご提供できません。ご理解いただけますよう宜しくお願い申し上げます。
長管骨の変形障害でもらえる賠償金
後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料とは、事故によって生じた後遺障害により被った精神的・肉体的苦痛に対する賠償金です。
この金額は、認定された後遺障害等級に応じて異なります。例えば、1級が最も高額で、等級が下がるにつれて金額も減少します。
具体的な金額は、自賠責保険や任意保険の基準、裁判所の基準などによって異なります。
後遺障害逸失利益
後遺障害逸失利益とは、事故による後遺障害が原因で労働能力が低下して、将来的に得られるはずだった収入が減少することに対する補償です。
計算方法は、基礎収入に労働能力喪失率と喪失期間に対応するライプニッツ係数を掛け合わせて算出します。
労働能力喪失率は、認定された後遺障害等級に応じて定められており、等級が高いほど喪失率も高くなります。
長管骨の変形障害でよくある質問
長管骨とは何ですか?
長管骨とは、四肢に存在する細長い骨で、骨幹と呼ばれる中央部と、骨端と呼ばれる両端部から構成されています。
主に上肢の上腕骨、橈骨、尺骨、下肢の大腿骨、脛骨、腓骨などが該当します。これらの骨は、身体の支持や運動機能において重要な役割を果たしています。
偽関節が生じやすい骨折は?
偽関節とは、骨折部位が適切に癒合せず、異常な関節のような状態になることを指します。
特に、上腕骨や大腿骨の骨折では、血流が乏しい部位や負荷がかかりやすい部位で偽関節が生じやすいとされています。
また、骨折後の固定不足や過度な早期運動も、偽関節のリスクを高める要因となります。
<参考>
偽関節・遷延治癒の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
偽関節を放置するとどうなる?
偽関節を放置すると、持続的な痛みや腫れ、患部の変形、機能障害などが生じる可能性があります。
特に、下肢の偽関節は歩行困難を引き起こして、日常生活に大きな支障をきたす可能性があります。
適切な治療を受けずに放置すると、症状が悪化して、治療がより困難になる場合もあるため、早期の医療介入が重要です。
まとめ
長管骨の変形障害とは、交通事故などで骨折や脱臼が起こり、治療後も骨が元の形に戻らない状態です。腕や脚の骨に発生して、動作や歩行に影響を与えます。
長管骨の変形障害は後遺障害の対象となり、偽関節の有無や運動障害の程度によって後遺障害等級が異なります。
多くの医師は後遺障害認定基準を詳しく知らないため、後遺障害診断書の記載漏れが起こることも珍しくありません。
適正な後遺障害認定を受けるためには、追加の画像検査や専門医の意見が必要となるケースもあります。
交通事故後で受傷した大腿骨骨折や上腕骨骨折などの変形障害でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
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