交通事故による「むちうち」は、一見すると軽傷に思われがちですが、適切な治療を受けても痛みやしびれなどの症状が長引くことがあります。
後遺症が残ったら、後遺障害に認定されるかは補償に大きく影響します。しかし、後遺障害の認定基準は複雑で、症状があっても認定されないケースも少なくありません。
本記事では、むちうちが後遺障害として認定されるポイントを詳しく解説して、12級や14級の認定基準、認定されにくい理由、そして認定事例についてもご紹介します。
最終更新日: 2025/2/17
Table of Contents
むちうちの後遺障害は12級か14級
等級 | 認定基準 |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
むちうちは、後遺障害の12級13号または14級9号に認定される可能性があります。これらの等級は、症状の程度や医学的証拠に基づいて判断されます。以下に、それぞれの認定基準について詳しく説明します。
12級13号の認定基準
12級13号は「局部に頑固な神経症状を残すもの」と定義されています。具体的には、MRI検査などの画像所見と身体所見が完全に一致しており、持続的な痛みやしびれが客観的に証明される場合に該当します。
むちうちの後遺障害認定基準は極めて厳格なので、12級13号に認定される事案はほんとどないのが現実です。
14級9号の認定基準
14級9号は、局部に神経症状を残すものとされており、12級13号と比較して後遺障害に認定されやすいのが特徴です。
具体的には、MRI検査などの画像検査で明確な異常が確認できなくても、後遺症の存在を説明可能な場合に認定される可能性があります。
14級9号では、画像所見と身体所見の完全な一致は必須ではなく、通院頻度や症状の一貫性が重視されます。
むちうちで後遺障害に認定される後遺症
むちうちは、首や手にさまざまな症状を引き起こします。これらの症状が長期化して、日常生活や仕事に支障をきたすと、後遺障害に認定される可能性があります。
首の痛み
むちうちの主な症状の1つが首の痛みです。事故直後だけでなく、数時間後や翌日に症状が現れるケースもあります。
首の痛みが慢性化して、医学的検査で神経学的異常が確認されると、12級13号や14級9号に認定される可能性があります。
手の痛みやしびれ
むちうちを受傷すると、首の痛みだけではなく、手や腕に痛みやしびれが生じるケースがあります。
手の痛みやしびれは、MRI検査で神経根の圧迫所見を認めると、後遺障害に認定される可能性があります。
耳鳴りや難聴
むちうちで発症した耳鳴りや難聴が、後遺障害に認定されるハードルは極めて高いです。事故直後に耳鳴りや難聴で医療機関を受診したことが必須です。
また、ピッチマッチ検査やラウドネス・バランス検査で、耳鳴りの存在を証明できる必要があります。
<参考>
認定されない後遺症は?
むちうちの後遺症の中でも、以下のような症状は、自賠責保険では後遺障害の対象になりません。
- 肩こり
- 上肢の脱力感
- 頭痛
- 下肢のしびれ
- 動悸
- 全身倦怠感
<参考>
【日経メディカル】あなどれない「むち打ち」の後遺症、首にとどまらない驚きの症状とは
むちうちが後遺障害に認定されない7つの理由
事故の規模が小さい
事故の衝撃が軽微で車両の損傷が少ないと、首への負荷も小さいと判断されて、後遺障害が認定されにくくなります。
通院頻度が少ない
定期的な通院が行われていないと、症状の継続性や深刻さが証明しづらく、後遺障害認定が難しくなります。
通院期間が6ヶ月に満たない
むちうちの症状固定には通常6ヶ月以上の治療が必要とされており、これ未満の通院期間では後遺障害に認められにくいです。
症状が常時痛ではない
痛みやしびれが一時的であったり、日常生活に大きな支障をきたさないと、後遺障害に認定されません。
症状に一貫性がない
診察時ごとに症状の訴えが変わると、信憑性を疑われて、後遺障害に認定されません。
画像所見が無い
MRI検査やCT検査などの画像検査で異常が確認できないと、後遺障害に認定されにくいです。
後遺障害診断書の記載内容
後遺障害診断書に記載された内容が不十分であったり、禁忌ワードが記載されていると、後遺障害に認定されません。
<参考>
効果的な後遺障害診断書のもらい方|交通事故の医療鑑定
むちうちの後遺障害認定ポイント【弁護士必見】
MRI検査の実施が望ましい
むちうちの症状は、レントゲン検査では異常が説明できないケースが多いです。そのため、MRI検査で症状の原因を明らかにすることで、後遺障害認定に有利に働きます。
<参考>
【日経メディカル】むち打ちが後遺障害に認定される必須の3条件
症状固定後も後遺障害認定まで通院を続ける
症状固定後も、後遺障害認定結果が確定するまで、週1回程度は定期的に通院を継続することが重要です。
通院を続けることで、症状の持続性や深刻さを医療記録に残すことができ、非該当になって異議申し立てする際に、有利な証拠となります。
後遺障害診断書の記載内容を確認する
後遺障害診断書は、認定審査において最も重要な書類です。症状の詳細や検査結果などが具体的に記載されていることを確認する必要があります。
また、確実に非該当になる禁忌ワードが記載されていれば、記載内容の修正を依頼する必要があります。
後遺障害診断書の記載内容で、不明点やお困りの事案があれば、こちらからお気軽にご相談下さい。
むちうちの後遺障害認定でお困りの事案で弊社ができること
弁護士の方へ
弊社では、交通事故後に発症した「むちうち」の後遺障害認定でお困りの事案に対応するため、さまざまなサービスを提供しております。
等級スクリーニング
現在の状況で、後遺障害に認定されるために足りない要素を、後遺障害認定基準および医学的観点から、レポート形式でご報告するサービスです。
等級スクリーニングは、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。
等級スクリーニングの有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニングを承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定
医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。
医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。
弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
交通事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
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むちうちで後遺障害に認定されると損害賠償金を請求できる
むちうちで後遺障害に認定されると、後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益を請求できます。
後遺障害慰謝料とは
交通事故で後遺障害が残ってしまった精神的苦痛に対する補償金です。後遺障害慰謝料は、下の表のように後遺障害等級によって異なります。
後遺障害等級 | 後遺障害慰謝料 |
1級 | 2800万円 |
2級 | 2370万円 |
3級 | 1990万円 |
4級 | 1670万円 |
5級 | 1400万円 |
6級 | 1180万円 |
7級 | 1000万円 |
8級 | 830万円 |
9級 | 690万円 |
10級 | 550万円 |
11級 | 420万円 |
12級 | 290万円 |
13級 | 180万円 |
14級 | 110万円 |
後遺障害慰謝料の相場は?
むちうちによる後遺障害慰謝料の相場は、後遺障害等級によって異なります。例えば、12級13号の場合、慰謝料の相場は約290万円、14級9号の場合は約110万円です。
等級が高いほど慰謝料の金額も高くなります。また、弁護士基準を用いることで、より高額な慰謝料を受け取ることができる場合もあります。
後遺障害逸失利益とは
後遺障害が残ると、労働能力が低下してしまいます。労働能力が低下したために失うであろう収入の不足分に対する補償金です。
後遺障害逸失利益は、交通事故被害者の年収、年齢をベースにして、後遺障害等級に応じた労働能力喪失率と労働能力喪失期間で決まります。後遺障害逸失利益は、以下の計算式で算出されます。
基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数
後遺障害慰謝料の相場は?
むちうちによる後遺障害逸失利益の相場は、後遺障害等級や被害者の年収によって異なります。一般的には、年収または平均賃金の5%から14%を数年から最大10年分として計算されます。
例えば、12級13号の場合、労働能力喪失率は14%、14級9号の場合は5%とされています。
むちうちの後遺障害でよくある質問
むち打ちで後遺症認定される確率は?
損害保険料率算出機構は、「自動車保険の概況」という統計資料を公表しています。2021年度(2020年度統計)によると、損害調査の受付件数は1,041,737件でした。
そのうち、後遺障害として認定された事案は49,267件で、認定率は約4.7%となっています。これはむちうちに限定した数字ではありませんが、概ね近い割合と考えられます。
14級9号に該当すれば、首の痛みのみで後遺障害に認定される可能性はありますが、実際には認定のハードルが高いのが現状です。
<参考>
むちうち後遺症が首の痛みだけで後遺障害認定される?|交通事故の医療鑑定
むちうちの後遺症は残りますか?
むちうちの症状は、多くの場合、適切な治療とリハビリテーションによって数週間から数ヶ月で改善します。しかし、一部のケースでは、痛みやしびれなどの症状が長期間続き、後遺症として残ることがあります。
特に、早期に適切な治療を受けなかったり、症状が重度だと後遺症が残るリスクが高まります。そのため、事故後は速やかに医療機関を受診して、適切な治療を受けることが重要です。
まとめ
むちうちの後遺症は、後遺障害として12級13号または14級9号に認定される可能性があります。
12級13号は「頑固な神経症状が残る場合」に該当して、MRI検査などで明確な異常が証明されることが必要ですが、認定のハードルは非常に高いのが現実です。
一方、14級9号は「神経症状が残る場合」とされ、画像検査で異常が確認できなくても、症状の一貫性や通院状況が認められれば認定される可能性があります。
後遺障害の認定には、適切な診断や検査を受けることに加えて、後遺障害診断書の記載内容をしっかり確認することが重要です。
むちうちの後遺障害認定で、お困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
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