半月板損傷は膝関節に起こる代表的な障害で、年齢や生活習慣、交通事故などの外傷、特定の動作やスポーツ活動など、さまざまな原因によって引き起こされる可能性があります。
多くの人が膝の痛みを感じたとき、最初に疑うのが半月板損傷ですが、その原因やメカニズムについてはあまり知られていないことが多いです。
本記事では、半月板損傷がどのようにして発生するのか、日常生活の中でどのようなリスクファクターが影響するのか、また特定の動作が損傷にどのように関わるのかを詳しく解説していきます。
最終更新日: 2025/2/5
Table of Contents
半月板損傷とは
半月板の役割と構造
半月板は、膝関節内で大腿骨と脛骨の間に位置するC字形の軟骨組織で、内側と外側に一つずつ存在します。
その主な役割は、関節にかかる体重を分散させるクッション機能と、関節の安定性を保つことです。
半月板は線維軟骨で構成されており、関節軟骨とは異なる硬さと構造を持っています。
どのようにして半月板は損傷するのか
半月板損傷は、膝をひねるなどの動作で大きな力や衝撃が加わることで発生します。
スポーツ活動中のジャンプの着地や、サッカーやバスケットボールでの急な方向転換などが典型的な原因です。
また、前十字靭帯や内側側副靭帯の損傷に伴い、半月板も同時に損傷することがあります。
断裂部が大きい場合には、断裂した半月板が大腿骨と脛骨に挟まって膝が動かせなくなる状態(ロッキング)に陥ることもあります。
半月板損傷の主な原因
外部からの衝撃や怪我
外部からの強い衝撃や怪我も、半月板損傷の主な原因の1つです。交通事故や転倒などで膝に直接的な力が加わると、半月板が損傷するリスクが高まります。
特に、膝をひねったり、強い衝撃を受けたりする状況では、注意が必要です。
スポーツ活動による損傷
スポーツ活動は、半月板損傷の大きなリスク要因です。特に、バレーボールやバスケットボール、陸上競技など、膝に継続的な負担がかかるスポーツはリスクが高いです。
また、ラグビー、アメリカンフットボールのように他の選手との接触が頻繁に起こるスポーツでは、半月板損傷のリスクが高まります
加齢変化と日常の動作
加齢に伴い、半月板は変性しやすくなります。そのため、40代以降では、激しい動作や大きな力が加わらなくても、日常のちょっとした動作で半月板損傷が起こることがあります。
特に、変形性膝関節症を持つ中高年では、内側半月板の損傷が見られることが多いです。
<参考>
【日経メディカル】半月板損傷と交通事故の不都合な真実
日常生活でのリスクファクター
立ち仕事や重い物の持ち運び
長時間の立ち仕事や頻繁な重い物の持ち運びは、膝関節に過度な負担をかけて、半月板損傷のリスクを高める可能性があります。
特に、適切な姿勢や動作を怠ると、膝へのストレスが増大し、損傷のリスクが増します。
運動不足と生活習慣
運動不足により、膝周辺の筋力が低下すると、関節の安定性が損なわれて、半月板に過度な負担がかかることがあります。
また、肥満などの生活習慣も膝への負担を増加させて、損傷のリスクを高める要因となります。
既往症や家族歴
過去に膝の靱帯損傷などを経験していると、半月板損傷のリスクが高まる可能性があります。
半月板損傷が起こるメカニズム
繰り返しの動作による疲労破壊
繰り返しの動作による疲労破壊は、半月板損傷の一因です。日常的な動作やスポーツ活動で膝に繰り返し負荷がかかると、半月板に微小な亀裂が生じて、徐々に進行して損傷に至ります。
外部からの急激な力の加わり方
外部からの急激な力が膝に加わると、半月板が損傷することがあります。例えば、転倒や衝突などの外力が膝に直接作用すると、半月板に過度な圧力がかかり、損傷が発生します。
特定の動作や活動の影響
ジャンプのランディング
ジャンプのランディング時には、膝に大きな衝撃が加わります。この衝撃が半月板に負担をかけて、損傷を引き起こすことがあります。特に不適切な着地姿勢や過度な反復が原因となります。
膝のひねり動作
膝のひねり動作は、半月板損傷のリスクを高めます。膝をひねることで、半月板に異常なストレスがかかり、損傷が発生しやすくなります。特にスポーツや日常生活での急な動きが原因となります。
急な方向転換
急な方向転換は、膝に大きな負担をかける動作です。方向転換時に膝にかかる力が不均一になることで、半月板に過度なストレスがかかり、損傷が発生する可能性があります。
半月板損傷で考えられる後遺障害
交通事故で受傷した半月板損傷で残った後遺症のうち、後遺障害に認定される可能性があるのは、痛み(神経障害)と可動域制限(機能障害)です。
機能障害(膝関節の可動域制限)
等級 | 認定基準 |
8級7号 | 1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの |
10級11号 | 1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの |
12級7号 | 1下肢の3大関節の1関節の機能に障害を残すもの |
8級7号:1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの
膝関節が全く動かない、または可動域が10分の1以下に制限されている状態です。
10級11号:1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
膝関節の可動域が1/2以下に制限されている状態です。
12級7号:1下肢の3大関節の1関節の機能に障害を残すもの
膝関節の可動域が3/4以下に制限されている状態です。
半月板損傷は、膝関節の可動域制限の原因となるため、12級7号に認定される可能性があります。しかし、一般的には、半月板損傷に伴う膝関節の可動域制限は軽微な症例が多いです。
機能障害で後遺障害が認定されるケースは、半月板損傷がバケツ柄断裂かつロッキングの状態であり、外科的手術によって整復されていないなどの特殊な事案に限られます。
通常、このような状況では外科的手術を施行することから、現実的には機能障害が認定される可能性は極めて低いと言えます。
神経障害(膝関節の痛み)
等級 | 認定基準 |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
12級13号:局部に頑固な神経症状を残すもの
半月板損傷の後遺症で、後遺障害に認定される可能性があるのは以下のようなケースです。
- MRI検査や関節鏡検査で、痛みの原因となるタイプの半月板損傷(弁状断裂やバケツ柄断裂)やロッキングを認める
- 半月板切除術が施行され、MRI検査で半月板の形が大きく変化するとともに半月板の体積が著しく減少している
<参考>
半月板損傷で12級に後遺障害認定されるポイント|交通事故の医療鑑定
14級9号:局部に神経症状を残すもの
半月板損傷の後遺症で、後遺障害に認定される可能性があるのは以下のようなケースです。
- MRI検査や関節鏡検査で、外傷発症と考えられる新鮮な半月板損傷を認めた
- 半月板縫合術が施行され、MRI検査で半月板の形状変化や信号変化などの異常所見を確認できる
半月板損傷が後遺障害認定されるポイント【弁護士必見】
交通事故で半月板損傷を受傷しても、後遺障害に認定されるハードルは高いです。その理由は、交通事故で多い追突事故では、受傷機序から半月板損傷を受傷しにくいからです。
また、半月板損傷では、加齢による変性断裂が多いです。このため、交通事故との因果関係を否定されて非該当になりやすいです。
<参考>
【日経メディカル】半月板損傷と交通事故の不都合な真実
特に、MRI検査で内側半月後節の水平断裂が認められる事案では、多くの事案で加齢による変性断裂とみなされて非該当になります。
半月板損傷で想定していた後遺障害等級が認定されずにお困りの事案があれば、こちらのコラム記事を参照してください。
<参考>
半月板損傷の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
半月板損傷の後遺障害認定で弊社ができること
弁護士の方へ
弊社では、半月板損傷の後遺症が後遺障害に認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。
等級スクリーニング
現在の状況で、後遺障害に認定されるために足りない要素を、後遺障害認定基準および医学的観点から、レポート形式でご報告するサービスです。
等級スクリーニングは、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。
等級スクリーニングの有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニングを承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定
医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。
医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。
弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
交通事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
半月板損傷の後遺障害認定でお悩みの被害者の方へ
弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。
また、弊社では交通事故業務に精通している全国の弁護士を紹介することができます。
もし、後遺障害認定で弁護士紹介を希望される被害者の方がいらっしゃれば、こちらのリンク先からお問い合わせください。
尚、弁護士紹介サービスは、あくまでもボランティアで行っています。このため、電話での弊社への問い合わせは、固くお断りしております。
弊社は、電話代行サービスを利用しているため、お電話いただいても弁護士紹介サービスをご提供できません。ご理解いただけますよう宜しくお願い申し上げます。
半月板損傷の後遺障害認定で請求できる損害賠償金
半月板損傷で後遺障害に認定されると、後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益を請求できます。
後遺障害慰謝料とは
交通事故で後遺障害が残ってしまった精神的苦痛に対する補償金です。後遺障害慰謝料は、下の表のように後遺障害等級によって異なります。
後遺障害等級 | 後遺障害慰謝料 |
1級 | 2800万円 |
2級 | 2370万円 |
3級 | 1990万円 |
4級 | 1670万円 |
5級 | 1400万円 |
6級 | 1180万円 |
7級 | 1000万円 |
8級 | 830万円 |
9級 | 690万円 |
10級 | 550万円 |
11級 | 420万円 |
12級 | 290万円 |
13級 | 180万円 |
14級 | 110万円 |
半月板損傷の後遺障害慰謝料の相場は?
半月板損傷の後遺障害慰謝料の相場は、損傷の程度や後遺症の種類によって異なります。
可動域制限による機能障害では12級7号に、神経症状では12級13号や14級9号に認定される可能性があります。
慰謝料の相場は、可動域制限では290万円、神経症状では110万円〜290万円です。
後遺障害逸失利益とは
後遺障害が残ると、労働能力が低下してしまいます。労働能力が低下したために失うであろう収入の不足分に対する補償金です。
後遺障害逸失利益は、交通事故被害者の年収、年齢をベースにして、後遺障害等級に応じた労働能力喪失率と労働能力喪失期間で決まります。
後遺障害逸失利益は、以下の計算式で算出されます。
基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数
半月板損傷の後遺障害逸失利益の相場は?
半月板損傷による後遺障害の逸失利益の相場は、損傷の程度や影響、職種、年齢などによって異なるため、詳細な金額提示は難しいです。
非常にざっくりした数字で言うと、軽度の損傷であれば数十万円から、重度の損傷であれば数百万円に達する可能性もあります。
半月板損傷の原因でよくある質問
半月板損傷になりやすい人は?
半月板損傷は、スポーツ活動中に膝をひねる動作や衝撃を受けることで発生しやすいため、アスリートや運動愛好家に多く見られます。
また、加齢に伴い半月板が劣化するため、中高年層でも日常生活の些細な動作で損傷することがあります。特に、変形性膝関節症を持つ人はリスクが高まります。
半月板損傷は自然回復しますか?
半月板損傷の自然回復は難しいとされています。特に、血流が乏しい部分の損傷は自己修復能力が低いため、適切な治療が必要です。
放置すると症状が悪化して、変形性膝関節症などの合併症を引き起こす可能性があります。早期に医療機関を受診し、適切な治療を受けることが重要です。
半月板損傷の完治までどのくらいかかりますか?
半月板損傷の治療期間は、損傷の程度や治療方法によって異なります。軽度の損傷で保存療法を行う場合、数週間から数ヶ月で症状が改善することがあります。
一方、手術が必要な場合、術後のリハビリテーションを含めて回復までに数ヶ月を要することがあります。
まとめ
半月板は膝のクッションとなる軟骨で、衝撃を吸収し関節を安定させる役割を持ちます。スポーツ時のジャンプや急な動き、膝のひねり、加齢による劣化、交通事故や転倒などが損傷の原因です。
立ち仕事や運動不足、肥満もリスクを高めます。損傷が重いと膝が動かしにくくなり、痛みが続くこともあります。早期発見と治療が重要で、膝に負担をかけない生活習慣を心がけることが予防につながります。
交通事故が原因で受傷した半月板損傷の後遺障害が非該当になりやすい理由は、加齢による無症候性の変性断裂が多いためです。
特に、MRI検査で内側半月後節の水平断裂が認められる事案では、加齢による変性断裂とみなされて非該当になる傾向にあります。
半月板損傷で想定していた後遺障害等級が認定されずにお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
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