交通事故に遭って治療に専念している最中に、保険会社から「治療の打ち切り」を連絡されると、多くの人が不安や困惑を感じることでしょう。
「なぜ治療が続けられないのか?」「どう対応すればいいのか?」といった疑問が頭をよぎるかもしれません。
このような状況では、保険会社の打ち切り理由やその根拠を正しく理解し、冷静に対処することが大切です。
本記事では、保険会社が治療の打ち切りを連絡してくる理由と対策、治療費打ち切り後の対応について具体的に解説しています。
最終更新日: 2025/1/3
Table of Contents
保険会社が治療の打ち切りを連絡する理由
任意一括対応は保険会社の義務ではない
保険会社による治療費の一括対応は、被害者へのサービスとして提供されているものであり、法的な義務ではありません。そのため、保険会社は自社の判断で治療費の支払いを終了することが可能です。
損害賠償(傷害慰謝料)の金額を少なくするため
治療期間が長引くと、入通院慰謝料、休業損害、通院交通費などの支払い額が増加します。保険会社は、これらの費用を抑制するために、早期に治療費の打ち切りを検討する傾向にあります。
特に、自賠責保険の支払い上限である120万円を超えると、超過分は保険会社の自己負担となるため、支出を最小限に抑えようとする傾向にあります。
治療費の払い過ぎを予防するため
必要以上に長期の治療を続けることで、保険金を多く受け取ろうとする不正行為が散見されます。
保険会社は、こうした不正や不必要な治療費の支払いを防ぐため、治療の進捗状況を監視して、打ち切りのタイミングを判断します。
保険会社が治療の打ち切りを連絡してきた時の対策
打ち切りの連絡を無視しない
保険会社から治療の打ち切りを連絡された場合、無視せずに対応することが重要です。
無視すると、保険会社は治療費の支払いを終了して、被害者にとって不利な状況になります。治療費支払いの延長交渉をする機会さえありません。
まずは主治医や弁護士に相談して、保険会社との治療費支払いの延長交渉を検討しましょう。
自己判断で治療を中断しない
保険会社からの打ち切り通知を受けても、自己判断で治療を中断するのは避けましょう。治療の必要性は医師が判断するものです。
また、治療を続けることは、症状の改善や後遺症の防止につながります。医師の指示に従い、必要な治療を継続することが大切です。
主治医に相談して治療継続の協力を依頼する
治療の打ち切りを連絡されたら、主治医に相談して、治療継続の協力を依頼しましょう。
主治医が治療の必要性を認める診断書を作成してくれたら、保険会社に対して治療の継続を主張することができます。
弁護士に相談して治療費支払い延長交渉を行う
保険会社との交渉に不安がある場合は、交通事故に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士は、保険会社との交渉を代行して、治療費支払いの延長や適切な賠償金の獲得に向けてサポートしてくれます。
弁護士などの専門家の力を借りることで、より有利な結果を得られる可能性があります。
治療費打ち切り後の対策
治療費打ち切り後は健康保険を利用する
治療を継続するために、ご自身の健康保険を利用する方法があります。健康保険を使用すれば、治療費の自己負担額を3割に抑えることができ、経済的負担を軽減できます。
ただし、交通事故で健康保険を使用する際は、保険者に「第三者行為による傷病届」などの必要書類を提出する必要があります。
人身傷害保険を利用する
ご自身が加入している自動車保険に人身傷害補償特約が付帯されている場合、この特約を利用して治療費を補填することが可能です。
人身傷害補償特約は、交通事故による治療費や慰謝料などを補償し、等級にも影響を与えません。まずは、ご自身の保険内容を確認し、適用可能かどうかを調べてみましょう。
自賠責保険から医療機関に直接支払ってもらう
相手方の自賠責保険に対して、被害者請求を行うことで、治療費を医療機関に直接支払ってもらうことができます。
自賠責保険の限度額である120万円の範囲内であれば、示談成立前に治療費の補填を受けられる可能性があります。
ただし、既に支払われた治療費や休業損害もこの限度額に含まれるため、注意が必要です。
示談交渉で立て替えた治療費を請求する
治療費の打ち切り後も治療を継続して、自己負担で支払った費用は、最終的な示談交渉で相手方に請求することが可能です。
適切な証拠や領収書を保管して、示談交渉時に提出することで、立て替えた治療費の回収を目指しましょう。
保険会社に治療の打ち切り連絡されない対策
毎日受診などの過度な通院を避ける
必要以上の頻繁な通院は、保険会社から過剰な治療と見なされて、治療費の打ち切りを招く可能性があります。医師の指示に従い、適切な通院頻度を守ることが大切です。
<参考>
【日経メディカル】むち打ちの通院、毎日でも2日に1回でも賠償金は同額
整骨院は避ける
整骨院に行くのは、保険会社に治療の必要性を疑われる可能性があります。保険会社は、整骨院への長期通院を認めないケースが多いため、整骨院は避ける方が望ましいです。
【日経メディカル】交通事故で接骨院通院が勧められない3つの理由
勝手に通院を中断しない
勝手に通院を中断することは避けましょう。通院を中断すると、治療の継続性が保たれず、保険会社に治療の必要性を疑われる可能性があります。
転院を繰り返さない
転院を繰り返すと、保険会社に治療の一貫性を疑われて、治療の必要性が認められにくくなります。できるだけ同じ医療機関で治療を続ける方が望ましいです。
保険会社から健康保険利用を打診されたら従う
保険会社から健康保険の利用を打診されたら、従う方が賢明です。健康保険を利用すると保険会社の負担が減るため、治療を打ち切りされにくくなります。
保険会社との良好な関係を保つためにも、打診されたら健康保険の利用を検討しましょう。
むちうちの後遺障害認定ポイント
むちうちの後遺症が後遺障害として認定されるためには、たくさんのチェックポイントをクリアする必要があります。
むちうちが後遺障害に認定される具体的なポイントを詳しく知りたい方は、コラム記事 1 およびコラム記事 2 を参照いただければ幸いです。
<参考>
むちうちの後遺障害認定で弊社ができること
弁護士の方へ
弊社では、むちうちによる後遺症が、後遺障害に等級認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。
等級スクリーニング
現在の状況で、後遺障害に認定されるために足りない要素を、後遺障害認定基準および医学的観点から、レポート形式でご報告するサービスです。
等級スクリーニングは、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。
等級スクリーニングの有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニングを承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定
医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。
医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。
弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
交通事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
むちうちの後遺障害認定でお悩みの被害者家族の方へ
弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。
また、弊社では交通事故業務に精通している全国の弁護士を紹介することができます。
もし、後遺障害認定で弁護士紹介を希望される被害者の方がいらっしゃれば、こちらのリンク先からお問い合わせください。
尚、弁護士紹介サービスは、あくまでもボランティアで行っています。このため、電話での弊社への問い合わせは、固くお断りしております。
弊社は、電話代行サービスを利用しているため、お電話いただいても弁護士紹介サービスをご提供できません。ご理解いただけますよう宜しくお願い申し上げます。
保険会社の治療打ち切り連絡でよくある質問
治療打ち切り連絡のタイミングは?
保険会社が治療打ち切りの連絡をしてくるタイミングは、一般的にケガの種類や治療の進行状況によります。
例えば、打撲は1ヵ月、むちうちは3ヵ月、骨折では6ヵ月程度が目安とされています。
この期間の根拠として、D(打撲)1ヵ月、M(むちうち)3ヵ月、K(骨折)6ヵ月で治療費の支払いを打ち切るという、DMK136という言葉があります。
保険会社は、DMK136の期間を目安にして、治療費の打ち切りを打診してくるケースが多いです。
事故で治療打ち切りの連絡を無視したらどうなる?
保険会社からの治療費打ち切りの連絡を無視すると、そのまま治療費の支払いが停止される可能性があります。治療費の支払いの延長交渉さえできません。
その結果、以降の治療費を自己負担しなければならなくなり、経済的な負担が増大してしまいます。
さらに、通院期間が短縮されることで、後遺障害認定に不利な影響を及ぼして、最終的な損害賠償額が減少するリスクもあります。
保険会社から打ち切りの連絡を受けた際は無視せずに、医師の判断を踏まえて治療継続の必要性を説明して、治療費の支払い延長の交渉を進めましょう。
むちうちでは治療打ち切りが多い?
むちうちは、治療打ち切りが多いです。むちうちの治療費が打ち切られやすい理由として、保険会社が形式的に治療期間を判断する点が挙げられます。
保険会社は、D(打撲)1ヵ月、M(むちうち)3ヵ月、K(骨折)6ヵ月などの治療期間を設定しており(DMK136)、その期間を過ぎると治療費の負担を終了する傾向にあります。
特に、むちうちや打撲などの画像所見に乏しい傷病では、形式的な治療期間に準ずるケースが多いです。
まとめ
保険会社は、治療費の支払い(任意一括対応)をサービスとして行っていますが、法的義務はありません。
このため、費用削減や不正防止を目的として、治療の打ち切りを判断します。保険会社から連絡を受けたら無視せず、主治医や弁護士に相談しましょう。
治療費打ち切り後は健康保険や自賠責保険を利用して、適切に対応することが重要です。また、過度な通院や整骨院の利用を避け、保険会社との信頼関係を保つことも効果的です。
むちうちでは、治療の打ち切りが問題になるケースが多いです。むちうちの後遺障害認定でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
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