交通事故で負ったケガのために、人工関節手術を施行するケースは珍しくありません。手術後の生活や補償額に関する不安を抱えている方も多いでしょう。
本記事では、交通事故による人工関節手術が後遺障害に認定される基準や、等級による補償額の違いについて詳しく解説します。さらに、弁護士が知っておくべき逸失利益の対応方法についても詳述しています。
最終更新日: 2024/11/6
Table of Contents
人工関節の後遺障害等級
人工関節で認定される後遺障害等級
等級 | 認定基準 |
8級7号 | 下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの |
10級11号 | 1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの |
12級7号 | 1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの |
人工関節置換術を受けた場合、後遺障害等級は主に10級、8級、6級が認定されます。具体的には、関節の可動域が通常の1/2以下になった場合は8級、関節が全く動かない場合は6級が認定されます。
10級に関しては、関節可動域制限が無くても、人工関節手術を受けただけで後遺障害に認定されます。
<参考>
【医師が解説】股関節骨折の後遺症と後遺障害認定ポイント|医療鑑定
後遺障害等級による補償額の違い
後遺障害等級 | 後遺障害慰謝料 |
1級 | 2800万円 |
2級 | 2370万円 |
3級 | 1990万円 |
4級 | 1670万円 |
5級 | 1400万円 |
6級 | 1180万円 |
7級 | 1000万円 |
8級 | 830万円 |
9級 | 690万円 |
10級 | 550万円 |
11級 | 420万円 |
12級 | 290万円 |
13級 | 180万円 |
14級 | 110万円 |
後遺障害等級による補償額は、自賠責基準と弁護士基準で異なります。例えば、10級の場合、弁護士基準では550万円が支払われます(自賠責基準では190万円)。
8級は830万円、6級になると1180万円といったように、補償額は高くなっていきます。
人工関節の後遺障害が最低でも10級になる理由
人工関節手術を施行すると、痛みはほぼ消失して、可動域が広がるケースが多いです。客観的には、後遺症がほとんど認められないケースが多いです。
それにもかかわらず、人工関節手術を受けると最低でも10級になる理由として、以下が挙げられます。
- 人工関節手術後は関節への過度の負荷が制限される
- 股関節では脱臼肢位をとらないように注意する必要がある
- インプラントのゆるみや摩耗のため再手術する可能性がある
これらの理由のため、交通事故前と同じような労働や日常生活が送れないことが後遺障害認定の大きな理由です。
【弁護士必見】人工関節の逸失利益が否定された時の対応
人工関節手術では、被害者に痛みや可動域制限動がほとんどありません。このため、損害保険会社が示談や訴訟の際に、後遺障害や逸失利益を認めないケースがあります。
損害保険会社の主張にも、もっともな部分があるため、前述のように人工関節は最低でも10級が認定される理由を挙げて対応するしかありません。
具体的には、被害者の行動制限(しゃがむ作業ができない、重い物を持てないなど)を陳述書として提示します。
また、将来的な再手術の可能性についての股関節外科医による医師意見書を提出して、逸失利益が認められるべきと主張します。
<参考>
人工関節の後遺障害認定で弊社ができること
弁護士の方へ
弊社では、交通事故のために施行した人工関節手術が後遺障害に認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。
等級スクリーニング
現在の状況で、後遺障害に認定されるために足りない要素を、後遺障害認定基準および医学的観点から、レポート形式でご報告するサービスです。
等級スクリーニングは、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。
等級スクリーニングの有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニングを承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定
医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。
医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。
弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
交通事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
人工関節の後遺障害認定でお悩みの被害者の方へ
弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。
また、弊社では交通事故業務に精通している全国の弁護士を紹介することができます。
もし、後遺障害認定で弁護士紹介を希望される被害者の方がいらっしゃれば、こちらのリンク先からお問い合わせください。
尚、弁護士紹介サービスは、あくまでもボランティアで行っています。このため、電話での弊社への問い合わせは、固くお断りしております。
弊社は、電話代行サービスを利用しているため、お電話いただいても弁護士紹介サービスをご提供できません。ご理解いただけますよう宜しくお願い申し上げます。
交通事故と人工関節の関連性
人工関節が必要な傷病は?
人工関節が必要となる主な傷病には、変形性関節症、関節リウマチ、大腿骨頭壊死などがあります。
これらの病気は関節の軟骨がすり減ったり、骨が壊死したりすることで、関節の機能が著しく低下します。
特に、高齢者に多く見られ、日常生活に支障をきたすため、人工関節置換術が行われるケースが多いです。
交通事故で人工関節が必要なケースとは?
交通事故による重度の骨折や関節の損傷が原因で、人工関節が必要となるケースがあります。
特に大腿骨や膝関節の関節内骨折では、最終的に人工関節置換術が選択されるケースが珍しくありません。
<参考>
【医師が解説】関節内骨折の後遺症と後遺障害認定ポイント|医療鑑定
股関節と膝関節以外に人工関節はある?
股関節と膝関節以外にも、肩関節、肘関節、手指関節、足関節などに人工関節が使用されます。
これらの関節も、変形性関節症や関節リウマチ、外傷によって損傷して、人工関節置換術が必要となることがあります。
しかし、交通事故などの外傷後に、股関節と膝関節以外の人工関節手術が施行されるケースはほとんどありません。
人工関節を検討中の方へのアドバイス
手術のメリットとデメリットを考える
人工関節手術のメリットには、痛みの大幅な軽減や歩行能力の改善が挙げられます。これにより、日常生活の質が向上し、活動範囲が広がります。
一方で、手術には感染症や血栓症などのリスクが伴い、術後のリハビリが必要です。また、人工関節の耐用年数があり、再手術が必要になることもあります。
術後のリハビリと生活の変化
術後のリハビリは、人工関節の機能を最大限に引き出すために欠かせません。入院中は理学療法士の指導のもと、歩行訓練や筋力強化を行います。
退院後も自宅での運動が重要で、適切なリハビリを続けることで、日常生活への早期復帰が可能です。また、術後は関節に負担をかけない生活習慣を心がける必要があります。
手術前に知っておきたい保険情報
人工関節置換術は保険適用の手術であり、手術費用や入院費用の一部がカバーされます。
手術前には、保険の適用範囲や自己負担額を確認し、必要な手続きを行うことが重要です。
また、手術後のリハビリテーション費用や、定期検診の費用も考慮しておくと安心でしょう。
人工関節の後遺障害でよくある質問
人工関節で障害者手帳は受け取れる?
人工関節を置換した場合、身体障害者手帳を受け取ることが可能です。ただし、手帳の交付には一定の条件があります。例えば、関節の機能が著しく低下し、日常生活に支障をきたす場合などが該当します。
具体的には、人工関節手術を受けたにもかかわらず、関節がほとんど動かない場合などです。手続きには医師の診断書が必要となります。
交通事故の人工関節でも健康保険を使える?
交通事故による人工関節の置換手術でも、健康保険を使用することが可能です。治療機関によっては健康保険の使用を拒否されることもありますが、適切な手続きを行えば使用できます。
具体的には「第三者行為による傷病届」を健康保険に提出する必要があります。これにより、治療費の負担を軽減することができます。また、仮渡金制度を利用することで、示談成立前でも治療費の前払いを受けることができます。
まとめ
人工関節手術を受けると後遺障害10級、8級、6級のいずれかに認定されます。8級は関節の可動域が1/2以下、6級は関節が全く動かない場合に認定されます。10級は手術を受けた時点で認定され、弁護士基準では550万円の補償が支払われます。
人工関節手術後は関節への過度の負荷が制限され、再手術の可能性もあるため、労働や日常生活に制限が生じます。
損害保険会社が後遺障害や逸失利益を認めない場合は、被害者の行動制限を陳述書として提示した上で、再手術の可能性を股関節外科医による医師意見書を添付して主張します。
交通事故で負った外傷で人工関節手術を受けた被害者の後遺障害認定に関してお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
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