関節機能障害は、日常生活に大きな影響を及ぼす深刻な問題です。交通事故によるケガで関節の動きが制限されたり、グラグラ感が残ると、日々の生活が一変します。
関節機能障害は、後遺障害に認定される可能性がありますが、等級によって受けられる補償や治療の範囲が大きく変わります。
本記事では、関節機能障害の等級分類や後遺障害認定基準について詳しく解説しています。さらに、交通事故を取り扱う弁護士が知っておくべき後遺障害認定のポイントまで幅広くカバーしています。
最終更新日: 2024/10/29
Table of Contents
関節機能障害とは
関節機能障害の定義
関節機能障害は、関節の機能が著しく低下して、日常生活や仕事に支障をきたす状態を指します。
交通事故などによるケガが原因で発生して、治療やリハビリにもかかわらず完全に回復しないと、関節機能障害は後遺障害に認定される可能性があります。
関節機能障害の原因
交通事故による関節機能障害は、主に骨折や脱臼、筋肉や靭帯、腱、神経の損傷が原因で発生します。これらの損傷により、関節の可動域が制限され、動きが悪くなった状態を「可動域制限」と呼びます。
肩、肘、手首、股関節、膝、足首などの関節で、可動域制限が残るケースが多いです。関節の可動域制限が残ると、日常生活や仕事に大きな影響を及ぼします。
関節可動域制限が起こる原因
関節可動域制限の原因は、痛み、皮膚の癒着、関節包の癒着、筋や腱の短縮、筋スパズム、関節包内運動の障害、腫張や浮腫、骨の衝突など多岐にわたります。
実臨床では、これらの要因が複合的に関与して、関節の可動域を制限するケースが多いです。
関節機能障害の主な症状
交通事故による関節機能障害は、関節の可動域制限が多いですが、これ以外にもさまざまな症状を併発します。
具体的には、関節の痛み、腫れ、関節の変形、そして関節の不安定性(グラグラ感)などが挙げられます。これらの症状のため、関節の動きが制限されて、基本的な動作が困難になるケースが多いです。
関節機能障害の診断方法
交通事故による関節機能障害の診断は、まず医師が患者の症状を確認して、関節の可動域や痛みの程度を評価します。
次に、レントゲン検査、CT検査、MRI検査などの画像検査を行い、関節の骨や軟部組織の損傷を確認します。
関節可動域の測定法
関節可動域の測定法は、日本整形外科学会ならびに日本リハビリテーション医学会が提唱する方法が基準となっています。具体的な各関節の関節可動域の測定法は以下のごとくです。
上肢の可動域
手指の可動域
下肢の可動域
※ 関節可動域表示ならびに測定法(2022年4月改訂) から転載
関節機能障害の後遺障害等級
関節機能障害の種類
関節機能障害は、関節の可動域や機能の制限度合いで決定されます。最も多いのは可動域制限ですが、以下のようにいくつかの種類があります。
- 関節が曲がらない(可動域制限)
- 関節が曲がらない(神経麻痺)
- 人工関節に置換した
- 関節が不安定になった(動揺関節)
関節が曲がらない(可動域制限)
可動域制限は、関節機能障害の一つです。可動域制限は、関節が正常に動かなくなる状態で、日常生活や仕事に大きな影響を与えます。
骨折、靭帯損傷、脱臼などで発症するケースが多いです。可動域制限の後遺障害認定基準は以下のごとくです。
8級(関節の用を廃したもの)
関節を全く動かせない状態です。肩、肘、手首、股関節、膝、足首など主要な関節の可動域が10%以下に制限されたら「関節の用を廃したもの」に該当します。
10級(関節の機能に著しい障害を残すもの)
関節の機能が著しく障害されている状態です。肩、肘、手首、股関節、膝、足首など主要な関節の可動域が事故前の半分以下に制限されたら「関節の機能に著しい障害を残すもの」に該当します。
12級(関節の機能に障害を残すもの)
肩、肘、手首などの上肢三大関節、または股関節、膝、足首などの下肢三大関節の可動域が正常範囲の4分の3以下に制限されたら「関節の機能に障害を残すもの」に該当します。
<参考>
【日経メディカル】関節可動域制限を治したい!その熱意が後遺障害評価で裏目に
関節が曲がらない(神腱損傷)
神経麻痺によって関節が曲がらない状態も、後遺障害として認定されます。例えば、坐骨神経麻痺や腓骨神経麻痺などが該当します。
骨折、靭帯損傷、脱臼などによる可動域制限と同様の後遺障害認定基準ですが、実務的には8級に該当する事案が多いです。
8級(関節の用を廃したもの)
関節が全く動かせない状態です。肩、肘、手首、股関節、膝、足首など主要な関節の可動域が10%以下に制限されたら「関節の用を廃したもの」に該当します。
10級(関節の機能に著しい障害を残すもの)
関節の機能が著しく障害されている状態です。肩、肘、手首、股関節、膝、足首など主要な関節の可動域が事故前の半分以下に制限されたら「関節の機能に著しい障害を残すもの」に該当します。
12級(関節の機能に障害を残すもの)
肩、肘、手首、股関節、膝、足首などの主要な関節の可動域が正常範囲の4分の3以下に制限されたら「関節の機能に障害を残すもの」に該当します。
人工関節に置換した
人工関節置換術を行った場合、それだけで後遺障害10級以上に認定されます。具体的な後遺障害認定基準は以下のごとくです。
8級(関節の用を廃したもの)
人工関節置換術や人工骨頭置換術を施行した関節の可動域が、事故前の半分以下に制限されたら「関節の用を廃したもの」に該当します。
10級(関節の機能に著しい障害を残すもの)
人工関節置換術や人工骨頭置換術が実施されたら「関節の機能に著しい障害を残すもの」に該当します。
関節が不安定になった(動揺関節)
動揺関節とは、関節が不安定で異常な動きをする状態を指します。交通事故による靭帯損傷が主な原因で、膝や肩、肘などに発症します。
10級
常に硬性補装具を必要とするものは、「3大関節中の1関節の用を廃したもの」として10級に認定されます。
12級
時々硬性補装具を必要とするものは、「3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの」として12級に認定されます。
肩関節の習慣性脱臼も12級に認定されますが、補装具処方がネックになります。また、膝蓋骨の習慣性脱臼や弾発膝も、12級に認定されます。
<参考>
【医師が解説】動揺関節の後遺症と後遺障害認定ポイント|医療鑑定
【弁護士必見】関節可動域制限の後遺障害認定ポイント
関節可動域は主要運動の他動値で測定する
自賠責保険の後遺障害認定基準では、関節の可動域を測るとき、①主要運動の ②他動運動での可動域測定値 が使われます。
①主要運動とは、各関節における日常動作にとって最も重要な動きのことを指します。例えば、肩関節の屈曲や外転、股関節の屈曲や伸展などが主要運動に該当します。
②他動運動の可動域測定値が採用される理由は、自動運動だと被害者が意図的に動かす可能性があるからです。
<参考>
【医師が解説】自動運動と他動運動の違いで後遺障害に差も|医療鑑定
関節機能障害では画像所見が必須
関節機能障害が認定されるためには、画像所見が重要な役割を果たします。関節可動域制限が後遺障害として認定されるためには、レントゲン検査やMRI検査などの画像検査で器質的変化が証明される必要があります。
例えば、骨折後の変形、靱帯損傷などが原因で関節の可動域が制限されている事案では、これらの画像所見が後遺障害で認定される条件となります。また、事故直後だけではなく、症状固定時点の画像所見も重要です。
動揺関節の後遺障害認定は難しい
動揺関節が後遺障害に認定されるためには、MRI検査で靭帯損傷が確認されることが必要です。更に、徒手検査やストレス撮影で関節の動揺性が証明されることが求められます。
動揺関節の後遺障害認定基準では、硬性補装具や軟性補装具の着用が条件ですが、単に処方されただけでは後遺障害に認定されません。
実臨床では動揺関節が放置される可能性はほとんど無いため、動揺関節が後遺障害に認定されるハードルは極めて高いのが実情です。
<参考>
【医師が解説】動揺関節の後遺症と後遺障害認定ポイント|医療鑑定
自動運動採用の主張法
通常、後遺障害認定基準は他動運動の測定値を原則としていますが、「がまんできない痛みがある」という理由で自動運動の測定値を採用するケースが稀にあります。
自動運動が痛みにより可動できないと判断されるのは、医学的に確認された場合に限られるため、自賠責保険で自動運動の測定値を認めてもらうのは簡単ではありません。
<参考>
【医師が解説】自動運動と他動運動の違いで後遺障害に差も|医療鑑定
関節機能障害の後遺障害認定で弊社ができること
弁護士の方へ
弊社では、関節機能障害の後遺障害認定を成功させるために、さまざまなサービスを提供しております。
等級スクリーニング
現在の状況で、後遺障害に認定されるために足りない要素を、後遺障害認定基準および医学的観点から、レポート形式でご報告するサービスです。
等級スクリーニングは、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。
等級スクリーニングの有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニングを承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定
医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。
医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。
弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
交通事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
関節機能障害の後遺障害認定でお悩みの被害者の方へ
弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。
また、弊社では交通事故業務に精通している全国の弁護士を紹介することができます。
もし、後遺障害で弁護士紹介を希望される被害者の方がいらっしゃれば、こちらのリンク先からお問い合わせください。
尚、弁護士紹介サービスは、あくまでもボランティアで行っています。このため、電話での弊社への問い合わせは、固くお断りしております。
まとめ
関節機能障害は、関節の動きが制限されたり、グラグラ感が残るなど、日常生活に大きな影響を与えます。
関節機能障害は後遺障害として認定される可能性があり、等級によって受けられる補償や治療の範囲が変わります。
後遺障害認定では、関節可動域の測定に主要運動の他動値を用います。関節機能障害が後遺障害に認定されるには画像所見が必須です。
動揺関節の後遺障害認定は難しく、MRIで靭帯損傷が確認され、徒手検査で動揺性が証明される必要があります。
関節機能障害の後遺障害認定でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
関連ページ
資料・サンプルを無料ダウンロード
以下のフォームに入力完了後、資料ダウンロード用ページに移動します。