関節可動域が診療録と後遺障害診断書で異なる理由

投稿日:2021年11月20日 更新日:

関節機能障害で10級が認定された事案では、比較的高確率に等級認定の妥当性で争われる印象を抱いています。やはり12級と比較して10級では労働能力喪失率が大きくなるからでしょう。

 

このような事案では、診療録に記載されている関節可動域と後遺障害診断書に記載されている関節可動域の差異が争いになることが多いです。

 

特に医師が計測した関節可動域と理学療法士の計測した関節可動域は解離する傾向にあります。なぜこのようなことが発生するのでしょうか? 主に下記のような理由があります。

 

  • 理学療法士はリハビリテーションを実施した直後に(その日の成果として)関節可動域を記録するため、治療効果で普段よりも関節可動域が大幅に改善している
  • 医師は診療中に計測するため普段の関節可動域が記載される

 

 

熟練した理学療法士であるほど、リハビリテーション直後の関節可動域の改善度は大きいです。このため理学療法士が記載している関節可動域は普段よりも大幅に嵩上げされていることが多いです。

 

しかし、一時的に改善した関節可動域も一晩経つとほとんど元の状態に戻ってしまいます。実臨床ではこのサイクルを繰り返しながら、少しずつ可動域を改善させていくのです。

 

一方、訴訟では理学療法士が記載したリハビリテーション直後の関節可動域が独り歩きします。つまり診療録ではこれだけ可動域が改善しているのに、後遺障害診断書で可動域制限が残存しているのはおかしいと...。

 

このような争いが発生する一因に、医師は診療中にあまり関節可動域を計測しないことがあります。医師にとって関節可動域は治療成果をはかる要素のひとつに過ぎません。どちらかというと画像所見や疼痛の方に注意が行きがちになります。

 

このため経過の中で診療録には医師による関節可動域計測がほとんどみられず、症状固定で後遺障害診断書を作成する段階になって初めて診療録に記載するといったことが多発します。

 

このようなカラクリで、理学療法士が記載したリハビリテーション直後の関節可動域と医師が後遺障害診断書に記載する関節可動域の差異が発生するのです。

 

実情に近いのは後遺障害診断書に記載されている角度なのですが、このあたりの感覚を裁判官に納得してもらうためには、整形外科専門医による意見書が必要となるケースが多いです。

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