交通事故で負った足(下肢)の傷跡は、醜状障害として自賠責保険で後遺障害に認定される可能性があります。足(下肢)の後遺障害には12級と14級があります。
本記事は、交通事故で受傷した足(下肢)の傷跡が、後遺障害に認定されるヒントとなるように作成しています。
最終更新日: 2024/9/8
Table of Contents
足の傷跡の醜状障害(後遺障害)とは
醜状とは、傷跡のことを指す自賠責保険の用語で、以下に記すいずれかの状態です。
- 交通事故による直接的なキズ
- 交通事故に伴う手術で残ったキズ
- 交通事故による熱傷
- 交通事故で耳や鼻、まぶたの一部が欠損して外貌を損なうもの
顔、くび、手足などの人目につく場所に残った目立つ傷跡は、自賠責保険では醜状障害として後遺障害に認定されます。
<参考>
【医師が解説】外貌醜状や醜状障害の後遺障害認定ポイント|交通事故
後遺障害に該当する足の傷跡(醜状)の種類
交通事故によって生じる足(下肢)の醜状には、主に以下に示すような種類があります。
- 外傷、熱傷に伴う皮膚瘢痕
- 外傷、熱傷に伴う色素沈着
足の傷跡(醜状)の治療法
瘢痕やケロイドの治療では、リザベンなどの抗アレルギー剤を服用したり、抗炎症作用のある軟膏やクリームなどを塗布します。
抗アレルギー剤や外用剤で効果が無い症例では、レーザーや放射線の照射療法を施行するケースもあります。
足の傷跡(醜状)は全治何ヶ月?
瘢痕やケロイドに対する治療期間は、一般的に長期化します。抗アレルギー剤を6ヵ月間服用することを考えると、1年以上の治療期間が必要なケースも少なくありません。
足の傷跡(醜状)の後遺障害認定基準
足の傷跡の後遺障害を決定する3つの要素
自賠責保険では、足(下肢)の醜状障害は以下の3つの要素で決定されます。
- 傷跡の部位(ビキニラインよりも下の脚の部分)
- 傷跡の面積(てのひら大以上)
- 傷跡の種類
後遺障害の手のひら大とは
後遺障害認定基準では「てのひら大」で判断されます。「てのひら大」とは非常にアバウトですが、被害者の手のひらの面積です。
上図で示したように、被害者の薬指のつけ根から手首までの長さと、親指のつけ根から手のひら小指側の端までの長さを掛け合わせた面積です。
傷跡の種類
後遺障害に認定される可能性がある足の傷跡の種類は、以下のとおりです。
- 外傷、熱傷に伴う皮膚瘢痕
- 外傷、熱傷に伴う色素沈着
足(下肢)の傷跡が後遺障害に認定される基準
12級相当
足(ビキニラインよりも下の脚部分)に手のひら大の3倍以上の瘢痕が残っていると、後遺障害12級に認定される可能性があります。
露出面に複数の病巣が残存する場合には合算可能ですが、少なくとも1つ手のひら大以上の病巣が残存している必要があります。
また、右下肢、左下肢などの各下肢毎の評価になります。右下肢が手のひら大の2倍、左下肢が手のひら大の2倍の例では、両下肢とも手のひら大の3倍以上に届かないため、それぞれ14級6号になります。
14級5号(下肢露出面の醜状)
足(下肢)に手のひら大以上の瘢痕がが残っていると、後遺障害14級5号に認定される可能性があります。
足の傷跡の範囲は自賠責保険と労災保険で異なる
自賠責保険における足の傷跡の範囲
足の傷跡の範囲は、ビキニライン(股関節)以遠です。
労災保険における足の傷跡の範囲
足の傷跡の範囲は、足背部をふくむ膝関節以下となります。
足の傷跡の後遺障害認定では面接審査がある
自賠責保険では後遺障害認定は書類審査が原則ですが、醜状障害に関しては面接審査が実施されるケースもあります。面接審査の施行要否は、自賠責保険が判断します。
調査員が、実際に傷跡の大きさを計測したり性状を確認します。調査員の主観による判断がなされる場合もあるため、事前に弁護士に相談することをお勧めします。
【弁護士必見】足の醜状が後遺障害認定されるポイント
形成外科や皮膚科での継続治療が望ましい
救急搬送された急性期病院では、メインの外傷に対して整形外科や脳神経外科で治療を受けます。
しかし、瘢痕やケロイドに関しては、整形外科や脳神経外科では治療されないケースが多いです。このため、受傷早期から形成外科や皮膚科も受診することが望ましいです。
受傷早期から形成外科や皮膚科を受診することは、治療および後遺障害認定の両方の観点で重要です。
整形外科や脳神経外科では、後遺障害診断書を作成する際に、大雑把な評価しかされない可能性があります。
このため、主治医に依頼して形成外科や皮膚科を紹介してもらい、定期的な治療を行うことが望ましいです。
創部の経時的な画像記録を残しておく
自賠責保険の実務では、初療を担当した急性期病院の医師と、後遺障害診断書を作成する医師が異なるケースが少なくありません。
紹介先の医師には、創が事故によって受傷したものか否かが分かりません。このため、後遺障害診断書への醜状記載を拒否されるケースを散見します。
このような事態を招かないように、受傷後早期から創部の画像記録を残しておくことが推奨されます。
分かりやすい図式資料の添付が重要
醜状障害における等級認定のポイントは、後遺障害診断書において醜状の大きさや程度を分かりやすく示すことです。
2016年に「交通事故受傷後の傷痕等に関する所見」という醜状障害に特化した書式が新設されています。
この書式には、体表図や頭頸部の模式図が含まれています。しかし、皮膚科や形成外科などの専門科以外の多くの医師は、この書式の存在を知りません。
この書式で提出することがベストですが、体表図や頭頸部の模式図で具体的な障害を図示することで代用可能です。実際の醜状を記録した画像も有効な資料となります。
四肢の醜状は自賠責と労災で認定基準が異なる
四肢の醜状障害は、自賠責保険と労災保険で認定基準が異なります。労災基準では対象となる部位は、上肢または下肢の露出面です。
具体的には上肢では手部をふくむ肘関節以下、下肢において足背部をふくむ膝関節以下となります。このため、労災基準では、遊離皮膚移植の際に大腿部から採皮しても採皮部が醜状障害に認定されません。
一方、自賠責基準では上肢では手部をふくむ肩関節以下、下肢において足背部をふくむ股関節以下が対象部位です。
下肢においてはビキニライン以遠なので、遊離皮膚移植の際に大腿部から採皮すると、採皮部は醜状障害に認定される可能性があります。
実臨床においては、遊離皮膚移植は大腿部もしくは腹部から採取されるため、自賠責保険と労災保険の認定基準の違いは重要です。
足(下肢)の醜状はそれぞれの足ごとで評価する
足(下肢)の醜状障害では、右下肢、左下肢など、それぞれの足ごとの評価になります。両下肢の括りではないことに注意が必要です。
右下肢が手のひら大の2倍、左下肢が手のひら大の2倍の例では、両下肢とも手のひら大の3倍以上に届かないため、それぞれ14級6号になります
醜状は労働能力喪失率が争点となるケースが多い
弊社に寄せられる相談で多いのは逸失利益の減額です。保険会社は、醜状障害を負っても身体能力は問題無いので労働能力は喪失しないと主張するケースが多いです。
職種に拠りますが、工場勤務などでは反論が難しいケースもあります。一方、営業職では労働能力喪失による逸失利益を主張することは可能です。
より現実的な解決法は、醜状に併発した痛みやしびれ(神経障害)の存在を主張することでしょう。実臨床では、瘢痕は痛みやしびれを伴うことが多いからです。
【14級5号】醜状の後遺障害認定事例
事案サマリー
- 被害者:40代男性
- 治療経過:足部のデグロービング損傷による皮膚欠損に対し、大腿部からの採皮による植皮術を施行
弊社の取り組み
症状固定前に医療相談を受けました。弊社で精査すると、足部の植皮部だけではなく大腿の採皮部にも瘢痕が存在しました。
足部だけでは手のひら大には至らなかったものの、大腿の採皮部は手のひら大を超えるサイズでした。
後遺障害診断書には採皮部が記載されていなかったため、サイズも含めた追記していただくよう助言を行った結果、14級5号の後遺障害が認定されました。
一般的に、医師は自賠責保険の後遺障害認定基準を知りません。したがって、弊社の指摘がなければ、醜状障害は認定されなかった可能性が高いです。
<参考>
【医師が解説】デグロービング損傷の後遺症|交通事故、労災事故
足傷跡の後遺障害認定で弊社ができること
弁護士の方へ
弊社では、交通事故による足傷跡の後遺症が後遺障害に認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。
等級スクリーニング
現在の状況で、後遺障害に認定されるために足りない要素を、後遺障害認定基準および医学的観点から、レポート形式でご報告するサービスです。
等級スクリーニングは、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。
等級スクリーニングの有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニングを承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定
医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。
医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。
弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
交通事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
交通事故による足傷跡の後遺症でお悩みの被害者の方へ
弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。
また、弊社では交通事故業務に精通している全国の弁護士を紹介することができます。
もし、後遺障害で弁護士紹介を希望される被害者の方がいらっしゃれば、こちらのリンク先からお問い合わせください。
尚、弁護士紹介サービスは、あくまでもボランティアで行っています。このため、電話での弊社への問い合わせは、固くお断りしております。
まとめ
足の傷跡は、後遺障害の12級と14級に認定される可能性があります。足の傷跡の後遺障害では、自賠責保険と労災保険で認定基準が異なります。
また、足の傷跡の後遺障害では、右下肢、左下肢など、それぞれの下肢ごとの評価になります。両下肢の括りではないことに注意が必要です。
足の傷跡(醜状障害)でお困りの場合はこちらからお問い合わせください。
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