交通事故で残った後遺症の後遺障害認定を受けるためには、主治医に後遺障害診断書を作成してもらう必要があります。
自賠責保険の後遺障害認定では後遺障害診断書の記載内容が極めて重要です。後遺障害診断書の記載内容で、後遺障害に認定されるか否かが決まると言っても過言ではありません。
本記事は、おそらく日本で最もたくさんの後遺障害診断書を見てきた整形外科医が、後遺障害診断書で自覚症状を伝えるポイントを説明しています。
最終更新日: 2024/5/16
Table of Contents
交通事故の後遺障害診断書とは
後遺障害診断書は審査に必須の書類
後遺障害診断書は、自賠責保険の後遺障害審査で必須の書類です。後遺障害診断書が無いと、後遺障害の審査が行われません。
そして、自賠責保険が後遺障害の審査をする際に、最も重視するのが後遺障害診断書の記載内容です。
後遺障害診断書は症状固定後に作成される
後遺障害診断書は、交通事故における他の診断書とは異なり、症状固定後に作成されます。
後遺障害診断書を作成するのは主治医
後遺障害診断書は医師が作成します。整骨院(接骨院)の柔道整復師は医師ではないため、後遺障害診断書を作成できません。医師の中でも、主治医が作成するケースがほとんどです。
<参考>
【医師が解説】整骨院に行かない方がいいのか|交通事故の後遺障害
後遺障害診断書の費用と作成期間
医療機関によって異なりますが、おおむね5000円~10000円程度のケースが多いです。
一方、後遺障害診断書の作成期間ですが、1週間~1ヶ月程度と差があります。各々の医療機関の診断書を処理するシステム(内部状況)によって大きく左右されます。
<参考>
【医師が解説】交通事故で診断書が極めて重要な理由|提出先や期限も
後遺障害診断書の記入内容が後遺障害認定で重要な理由
自賠責保険の後遺障害は書類審査です。具体的には、後遺障害診断書の記入内容、画像検査、診断書、診療報酬明細書(レセプト)、交通事故証明書、車両の修理費用明細等で判断します。
この中でも、後遺障害診断書は、画像検査と並んで最も重視される資料です。後遺障害診断書の記載内容によって、後遺障害に該当するか否かが判断されます。
後遺障害診断書で自覚症状の伝え方が重要な理由
後遺障害診断書に記入されていない症状は審査されない
治療をしっかり受けても、患者さんの中には症状が残ってしまう方がいます。その場合には、自賠責保険から後遺障害に認定される可能性があります。
しかし、残っている症状を正確に医師に伝えていないと、自賠責保険から後遺障害が認定されない可能性が高まります。
何故なら、自賠責保険は書類審査しか実施しないからです。交通事故による外傷で症状が残っていても、医師に伝わっていなければ診断書に反映されません。
診断書に症状が記入されていないと、自賠責保険は「その症状は無い」ものと判断します。これでは適切な後遺障害認定を受けることができないのは明らかですね。
具体的にどのような症状かも重要
症状の存在を主治医に伝えても、それだけでは十分ではありません。何故なら、どのような症状であるかも自賠責保険の後遺障害審査で考慮されるからです。
例えば「天気が悪い時に痛む」等では、後遺障害に認定される可能性は低いです。自賠責保険は、ときどき痛むのではなく、常に痛い症状を後遺障害とみなすからです。
後遺障害診断書で自覚症状を伝える3つのポイント
交通事故で負ったケガには、さまざまな症状があります。例えば、むちうちでは首や肩です。それぞれのケガに応じた症状をしっかり主治医に伝えましょう。伝え方のポイントは以下の3点です。
- いつ症状があるのか
- どこに症状があるのか
- どのような症状なのか
いつ症状があるのか
症状がどのような時にあるのかは、とても重要です。例えば、むちうちの場合には、いつも痛い人もいれば、天気の悪い日だけ痛い人もいらっしゃいます。
特に、いつも痛み場合には、その旨をしっかり主治医に伝えましょう。
どこに症状があるのか
どこに症状があるのかも重要です。例えば、首の痛みだけではなく、手にも痛みやしびれがあれば、しっかり主治医に伝えましょう。
どのような症状なのか
どのような症状なのかも重要です。例えばむちうちでは、痛みやしびれ以外にも、めまいや頭痛が出現する可能性があります。
後遺障害診断書で自覚症状を上手に伝えるコツ
症状を記載したメモを活用
医師は極めて多忙です。このため、限られた診察時間内に正確に症状を伝える必要があります。
私が患者さんから感銘を受けた症状の伝え方のひとつに、症状を簡潔に記載したメモがあります。
後遺障害診断書で自覚症状を伝える3つのポイントについて、簡潔に箇条書きしたメモを作成して医師に渡すのです。医師の立場では問診の手間を省けて非常に助かります。
症状を記載したメモを渡す時の注意点
メモを渡すときにも注意点があります。それは、分量をできるだけ絞ることです。医師に対して訴えたいことが山ほどあるのは理解できます。
しかし何度も言うように医師は極めて多忙です。長過ぎたり、まとまっていないメモでは十分に要点を伝えられません。
また、文字は大きく、綺麗に書くのは論を俟たないでしょう。
後遺障害診断書で自覚症状を伝える時の注意点
後遺障害診断書で自覚症状を伝える時には、いくつかの注意点があります。
- 症状で嘘をつく
- 症状を大袈裟に訴える
- 症状を細大漏らさず伝えすぎる
症状で嘘をつく
交通事故で負ったケガの症状が強いことをアピールするために、嘘をつく人を散見します。整形外科医は日常的にたくさんの患者さんを診察しているため経験豊富です。
また医学的知識もたくさんあるため、嘘をつくとバレる可能性が高いと考えておくべきでしょう。
もちろん、主治医は表立って患者さんに「嘘をついている」とは言いません。しかし、カルテの行間にそれとなく詐病の疑いを記す可能性があります。
後遺障害が争いになって訴訟に至るとカルテが開示されます。その際に、そのような記載があると致命的な結果を引き起こす可能性があります。
症状を大袈裟に訴える
嘘をつくまでは行かないものの、症状を大げさに伝えるのも考えものです。医師は身体所見と症状が合わないと違和感を覚えます。
大袈裟な訴えは詐病を想起させるため、医師に警戒感を抱かせます。いったんこのような状態になると、後遺障害認定にかなり不利になるので注意が必要でしょう。
症状を細大漏らさず伝えすぎる
大袈裟な訴えとも重なりますが、症状を細大漏らさず伝えようとするあまり、全身いたる所の痛みを訴える人がいます。
このようなケースでは、主治医、自賠責保険とも、心因性の症状とみなす可能性が高いです。心因性の場合には後遺障害に認定される可能性が著しく低くなるので注意が必要です。
【弁護士必見】後遺障害診断書のポイント
症状固定時に自覚症状を伝えるのでは遅すぎる
医師は、症状固定時の診療記録だけをみて、後遺障害診断書を作成するわけではありません。必ずこれまでの経過を確認します。
このため、普段は主治医に対して自覚症状を伝え切れていないにもかかわらず、症状固定時にのみしっかり伝えるのでは効果不充分と言えます。
極論すると、症状固定時までに大方の勝負はついていると考えた方が良いでしょう。
普段から自覚症状を正確に伝えるべき理由
むちうち12級では「神経学的所見の推移について」と「症状の推移について」が重要視されます。これらの書類には、普段の症状が記載されます。
したがって、付け焼刃的に症状固定時のみ、自覚症状をしっかり伝えても時すでに遅しなのです。
<参考>
【医師が解説】むちうち症状の伝え方3つのポイント|交通事故
後遺障害診断書のチェックポイントは20ヶ所以上ある
弊社ではこれまで数千例におよぶ事案を精査してきましたが、完璧な内容の後遺障害診断書はほとんど見たことがありません。
その理由は、弊社が把握しているだけでも20ヶ所以上のチェックポイントがあり、しかも事案毎に外傷や症状の状況が全く異なるため、画一的な判断ができないためです。
後遺障害12級以上では、審査側にも医師のチェックが入るため、実臨床の経験の無い弁護士だけで、12級以上の後遺障害認定に臨むのは無理があります。
12級以上の後遺障害認定では、後遺障害診断書で大きな地雷を踏んでいないことに関して運を天に任せるのではなく、自賠責認定基準に精通した専門医のチェックを受けることをお勧めします。
このような弁護士のニーズに対して、弊社では顧問サービスを通じて、細かい点まで後遺障害診断書のチェックをしています。また一般の法律事務所様には、等級認定サポートをご準備しています。
等級認定サポートは、1事案あたり整形外科8万円+税、脳神経外科10万円+税で、受任から症状固定まで弊社が弁護士と交通事故被害者に伴走します。
顧問サービスや等級認定サポートについてご質問があれば、こちらからお問い合わせください。
まとめ
交通事故で負ったケガの症状は多彩です。しかし、自覚症状を医師に正確に伝えられなければ、後遺障害の認定に極めて不利です。症状を正確に医師に伝えることが後遺障害認定のキモと言えるでしょう。
症状固定時に、自覚症状を上手に伝える方法は、以下の3点について簡易なメモ書きを作成して、主治医に手渡すことでしょう。
- いつ症状があるのか
- どこに症状があるのか
- どのような症状なのか
症状固定時に初めて、主治医に自覚症状を詳細に伝えるのでは遅すぎます。普段から継続的に自覚症状を伝えるべきでしょう。
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