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【医師が解説】JCSとGCSは高次脳機能障害のポイント|交通事故

交通事故で発生する頭部外傷で最も問題になるのは、高次脳機能障害です。高次脳機能障害は重い後遺症を残しやすく、交通事故被害者とその家族を苦しめます。

 

高次脳機能障害が等級認定されるためには、いくつかの条件を満たす必要がありますが、意識障害の程度もそのひとつです。

 

意識障害の評価指標には、JCS(ジャパン・コーマ・スケール)とGCS(グラスゴー・コーマ・スケール)があります。

 

本記事は、JCSとGCSを理解することで、高次脳機能障害が等級認定されるヒントとなるように作成しています。

 

 

最終更新日:2024/4/25

 

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JCS(ジャパン・コーマ・スケール)とは

 

JCS(ジャパン・コーマ・スケール)は、意識障害をきたしている患者さんの意識レベルを評価する指標のひとつです。

 

世界的に使用されているのは、後述するGCS(グラスゴー・コーマ・スケール)ですが、日本ではJCS(ジャパン・コーマ・スケール)の方が使用頻度が高いです。

 

 

JCSで分かること

 

JCSは、頭部外傷の急性期における意識レベルの推移を、客観的に評価することができます。

 

頭部外傷では、受傷時に意識が保たれていても、脳出血によって脳実質の圧迫が進行すると、意識レベルが低下するケースが多いです。意識障害をそのまま放置すると、患者さんの生命予後にかかわります。

 

意識障害をきたしている患者さんに適切な治療を行うために、患者さんにかかわる全員が、意識障害の程度を同じ基準で評価できるように開発されたのがJCSなのです。

 

もし、JCSなどの意識障害レベルを客観的に評価する指標が無いと、意識状態を「返答内容があやふや」「何だか少しおかしい」としか表現できません。

 

JCSたGCSなどのように数字で評価できる指標を用いることで、誰が聞いても正確に患者さんの意識障害レベルを把握することが可能となります。

 

 

<参考>
【高次脳機能障害】頭部外傷後の意識障害についての所見|交通事故

 

 

JCSの実際

 

JCSでは、最初に
Ⅲ:刺激しても覚醒しない状態
Ⅱ:刺激すると覚醒する状態(刺激しないと目を閉じる)
Ⅰ:刺激しないでも覚醒している状態
の3つに分けます。

 

Ⅰ~Ⅲのそれぞれに対して、さらに3段階の状態が決められています。

 

 

Ⅲ:刺激しても覚醒しない状態

300.痛み刺激に全く反応しない
200.痛み刺激で少し手足を動かしたり顔をしかめる
100.痛み刺激に対し、払いのけるような動作をする

 

Ⅱ:刺激すると覚醒する状態(刺激しないと目を閉じる)

30.痛み刺激を加えつつ呼びかけを繰り返すと辛うじて開眼する
20.大きな声または体を揺さぶることにより開眼する
10.普通の呼びかけで容易に開眼する

 

Ⅰ:刺激しないでも覚醒している状態

3.自分の名前、生年月日が言えない
2.見当識障害がある
1.意識清明とは言えない

 

 

その他の表記方法

  • 意識が清明な状態:JCS 0
  • 不穏状態:R(restlessness)
  • 失禁状態:I(incontinence)
  • 無動性無言症:A(akinetic mutism)

 

 

JCSの具体例

事例1

大きな声または体を揺さぶることにより開眼する状態は「JCS 20」となります。

 

 

事例2

大きな声または体を揺さぶることにより開眼する状態で、不穏状態かつ失禁していると「JCS 20RI」となります。

 

 

GCS(グラスゴー・コーマ・スケール)とは

 

GCS(グラスゴー・コーマ・スケール)も、意識障害をきたしている患者さんの意識レベルを評価する指標のひとつです。

 

日本ではJCS(ジャパン・コーマ・スケール)の方が使用頻度が高いですが、世界的に使用されているのは、GCS(グラスゴー・コーマ・スケール)です。

 

 

GCSで分かること

 

GCSはJCSと同様に、頭部外傷の急性期における意識レベルの推移を、客観的に評価することができます。

 

 

GCSの実際

 

GCSでは、

  • 開眼(eye opening、E)
  • 発語:最良言語反応(best verbal response、V)
  • 運動:最良運動反応(best motor response、M)

 
に対して、それぞれの状態を評価して点数をつけます。

 

そして、その合計点(正常の15点~最重症の3点)で評価します。

 

 

開眼(eye opening、E)

4.自発的に開眼
3.呼びかけにより開眼
2.痛み刺激により開眼
1.なし

 

最良言語反応(best verbal response、V)

5.見当識あり
4.混乱した会話
3.不適当な発語
2.理解不明の音声
1.なし

 

最良運動反応(best motor response、M)

6.命令に応じて可
5.疼痛部へ
4.逃避反応として
3.異常な屈曲運動
2.伸展反応(除脳姿勢)
1.なし

 

 

GCSの具体例

  • 大声で呼びかけると開眼
  • 質問には答えず、う~とうなり声を上げている
  • 痛み刺激に対して手で払いのける

 

この状態は「E3 V2 M5, GCS 10」となります。

 

 

 

 

【弁護士必見】高次脳機能障害の等級認定ポイント

高次脳機能障害ではGCSが問題になる事案が多い

弊社のこれまでの経験では、高次脳機能障害の意識障害レベルの評価ではGCSが問題になるケースが多いです。

 

その理由は、JCSと比較してGCSの評価法がやや難しいことが考えられます。特に運動(最良運動反応、M)の評価は、救急対応に参加する初期研修医や経験年数の浅い看護師にとって難しい場面もあります。

 

弊社に相談のあった高次脳機能障害事案の中でも、搬送時の意識障害レベルの評価に疑問符の付くものを散見します。

 

医証として残ってしまった正確性に欠ける意識障害の評価が、高次脳機能障害の後遺障害等級認定のボトルネックになるのです。

 

このような事案では、異議申し立てにおいて脳神経外科医による医師意見書が有効なケースもあります。

 

<参考>
【医師が解説】高次脳機能障害が後遺症認定されるポイント|交通事故

 

 

高次脳機能障害の意識障害評価でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。

 

 

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まとめ

 

JCSとGCSは、頭部外傷の急性期における意識レベルの推移を、客観的に評価することができます。患者さんにかかわる全員が意識レベルを同じ基準で評価することで、適切な治療を行うことができます。

 

一方、高次脳機能障害の意識障害レベルの評価ではGCSが問題になるケースが多いです。その理由は、JCSと比較してGCSの評価法がやや難しいことが考えられます。

 

 

 

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