CRPSは、交通事故後の後遺障害として争いになりやすい傷病です。争いになりやすい原因は、自賠責等級認定実務と整形外科実臨床の乖離が大きいためです。
自賠責保険では公平な補償業務遂行のために、CRPSではない事案を可能なかぎり排除します(感度が高い)。一方、実臨床ではCRPSの症例を見逃さないように診断基準を下げています(特異度が低い)。
CRPSは初期治療が重要です。このためCRPSを見逃すと取り返しのつかないことになるからです。双方の目的がここまで異なる傷病も珍しいでしょう。
周知のように、自賠責認定基準では関節拘縮、皮膚所見、骨萎縮の3徴候をすべて満たさない限り、CRPSとしての等級認定されません。しかし実臨床のCRPS診断基準では、3徴候は必須ではありません。
このため、自賠責保険で等級認定を受けるためには、3徴候を客観的に証明できる医証を収集する必要があります。具体的には下記の検査や資料が必要です。
- 関節拘縮: 関節拘縮を明記した後遺障害診断書
- 皮膚所見: 両側の患部を同時撮影したカラー写真、もしくはサーモグラフィ
- 骨萎縮: 両側の単純X線像
上記の医証のひとつでも欠けると等級認定されません。また、すべての検査や医証で有意所見が存在することが必須です。さらに臨床経過も重要で、きっちりとCRPSの治療が施行されている必要があります。
弊社で取り扱いした事案では、3徴候がそろわないことが意外なほど多いです。診療録や画像所見をみるとCRPSである可能性が高い事案でも、すべての有意所見を満たしているわけではないのです。
尚、必要な検査を取り寄せる際には「両側を比較している」ことがポイントになります。よくあるのは延々と患側の単純X線像のみ撮影され続けている事案です。このような事案では本当に有意所見なのか判断できないことが多いです。
このため、CRPSにおいても両側の医証であることを確認しておく必要があります。また、皮膚所見の存在を証明するために患部のカラー写真が必要ですが、判然としないことが珍しくありません。このような事案ではサーモグラフィが必要となります。