Table of Contents
日本整形外科学会の交通事故診療シンポジウム
多くの医師は専門医資格を取得しています。例えば、私の場合は、日本整形外科学会の専門医です。専門医に見合う知識を維持することを目的として、学術総会が年に1度開催されます。今年は新型コロナウイルス感染症のために史上初のオンラインでの学会開催となりました。
例年は4日間の日程で朝から夕方までぎっしりプログラムが組まれています。会場も10か所ほどあるので、聴講したくても物理的に不可能な講演も多いです。
しかし、今年はほとんどの講演がオンデマンドなので場所や時間の制約がありません。当初、オンラインでの学会開催には懐疑的でしたが、実際に参加してみると従来の学会よりも充実していることを実感しました。
さて、話を本題に戻しますが、今年の日本整形外科学会学術総会では、交通事故にかかわる後遺障害についてのシンポジウムがありました。4名のシンポジストによる発表および対談です。
一般的に整形外科医の間では、交通事故や後遺障害に対する注目度は低いです。自賠責の制度が実際にどうなっているのかを知らない医師が多いため、今回のシンポジウムでは啓蒙が目的のようでした。
シンポジストの選出は、開業医、肩関節専門医、損保側医師、弁護医師の4名でした。それぞれの立場から発表されているのですが、気になった点をピックアップします。
開業医からは、後遺障害診断書の追記依頼についての報告がありました。これは日整会会員のアンケート結果をまとめたものですが、目を引いたのが放射線科医師の画像鑑定報告書をもとに後遺障害診断書の書き直しを迫られるケースが多いことです。
この問題は以前から問題視されていますが、実臨床を知らない放射線科医師が作成した画像レポートを盾に被害者有利な後遺障害診断書への記載変更を迫るものです。私自身も類似ケースをたくさんみてきましたが、現場の臨床医が怒るのも理解できます。
実臨床を知らない者が作成した画像レポートは、主治医や審査側医師の視点では奇異に映ります。特に患者を診ていない者が作成した画像鑑定報告書をもって錦の御旗を振りかざす行為は、主治医の不興を買う確率が高いので注意が必要でしょう。
肩関節専門医のセッションで目を引いたのは受傷後3ヵ月以内に撮像したMRIであれば、事故との因果関係が証明できる可能性が高いとおっしゃられている点でした。ただし私の感覚では受傷後3ヵ月では、自賠責認定基準においては事故との因果関係を強く主張するのは難しいと感じています。
内容的には平易なシンポジウムでしたが、この程度のレベルのものが日本整形外科学会学術総会のシンポジウムに採択されること自体が、一般整形外科医の交通事故診療に対する関心の低さを物語っていると感じました。
交通事故の後遺障害はメディカルコンサルティングまで
メディカルコンサルティング合同会社は、医師が代表をつとめる会社としては業界最大手です。全国約130名の各科専門医と、年間約1000例の交通事故事案に取り組んでいます。
交通事故でお困りの事案があれば、こちらからメディカルコンサルティング合同会社までお問い合わせください。
関連ページ