脳脊髄液減少症は存在するのか?

投稿日:2017年9月23日 更新日:

外傷性頚部症候群との関連で、ときどき脳脊髄液減少症が問題となることがあります。脳脊髄液減少症は、脳脊髄液が脳脊髄液腔から漏出することで減少し、頭痛・めまい・耳鳴り・倦怠感などの様々な症状を呈すると言われている疾患です。

 

2002年に、平塚共済病院・脳神経外科部長であった篠永医師によって初めて提唱されました。しばらく注目を集めることは無かったのですが、2005年に交通事故で脳脊髄液減少症を発症したとされる患者と損害保険会社との間で訴訟が提起され、2006年に脳脊髄液減少症を事故の後遺障害として認める司法判断が下されました。

 

むち打ち症=脳脊髄液減少症という報道がなされた結果、世間の関心が一気に高まりました。しかし、脳脊髄液減少症は国際疾病分類には記載されておらず、現状では保険病名でさえもありません。つまり、脳脊髄液減少症と言われている患者は、日本にしか存在しないのが現状です。統一的な診断基準が存在せず、混乱に拍車がかかっています。

 

脳脊髄液減少症は、特発性と外傷性に分類されます。臨床的には脳脊髄を収納している硬膜は、比較的強靱な組織です。このため、追突事故等の軽微な外力で硬膜が破綻することは少し考えにくいです。

 

また、多くの脳脊髄液減少症といわれている症例で、客観的な画像所見が無いことも、その疾患の存在を疑問視する一因となっています。実際、大きな外力が加わるスポーツ外傷後において、脳脊髄液減少症と診断されることはほとんどありません。

 

なぜか、交通事故や労災事故でしか発生しないことも問題を複雑にしています。このようなことが背景にあるため、多くの脳神経外科医は、外傷性の脳脊髄液減少症に対しては、その存在自体を疑問視しています。

 

このため、脳脊髄液減少症が主病名となっている場合には、客観的な画像所見を認めず医学的なエビデンスに乏しいことも多いため、対応が難しくなると言わざるを得ないのが実情です。

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