もし過去の交通事故で後遺障害を認定された人が、新たな交通事故に遭って後遺症が残ってしまった場合、二度目はダメなのでしょうか?
本記事は、過去に後遺障害を一度認定された人が、二度目の後遺障害認定を受けるためのヒントとなるように作成しています。
最終更新日: 2024/5/13
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同一部位の二度目の後遺障害は認められない
交通事故に2回以上巻き込まれることは珍しくありません。そして、1回目の交通事故で後遺障害として認定された部位を、2回目の交通事故で再び受傷することもあります。
自賠責保険の後遺障害では、これ以上治療を続けても回復せずに一生残る後遺症に対して、等級認定が行われます。
そのため、一度後遺障害認定を受けたら、交通事故で再び同じ部位を受傷しても、新たに後遺障害の認定を受けることはありません。
例えば、むちうちで後遺障害14級9号が認定された人が、2回目の事故で再びむちうちになっても、原則的に自賠責保険から補償されません。
2回も交通事故に巻き込まれているのに、補償を受けられないことは納得いかないですね。しかし、自賠責保険実務の決まりなので仕方ありません。
前回より重い等級なら一度認定されても二度目も認定される
自賠責保険では、同じ部位に2回の後遺障害を認定することはありません。
ただし、2回目の交通事故で、その部位の障害が重くなった場合は、新たな等級に応じて後遺障害が認定されます。
例えば、むちうちの後遺障害として14級9号の認定を受けた被害者が、2回目の事故でむちうちの後遺障害等級12級13号に認定される可能性はあります。
このようなケースでは、12級の損害額から14級の損害額を差し引いた金額が支払われます。14級の後遺障害部分をすでに支払い済みであるという考え方です。
訴訟なら二度目の後遺障害が認定される可能性あり
自賠責保険は、後遺障害は永続するという立場です。一方、訴訟では実際の被害者の状況を勘案されます。
必ずしも後遺障害は永続しない前提なので、前回の事故からそれなりの期間が空いている場合には、後遺障害が認定される可能性があります。
例えば、むちうちの場合、労働能力喪失期間は3~5年程度とされています。つまり、前回事故が5年以上前なら、後遺障害に認定される可能性があるのです。
自賠責保険では認められませんが、訴訟なら一度目の事故から労働能力喪失期間を経過していれば後遺障害に認定される可能性があるのは知っておいて損は無いでしょう。
自賠責保険でも症状が異なれば二度目の認定可能性あり
一度目の交通事故で、むちうち14級9号が認定された事案であっても、二度目の交通事故で再び14級9号に認定される可能性もゼロではありません。
例えば、一度目の交通事故で後頚部~右上肢の痛みやしびれであった症状が、二度目の交通事故では後頚部~左上肢の痛みやしびれの症状が残ったケースです。
たしかに傷病名は、同じ頚椎捻挫(むちうち、外傷性頚部症候群)ですが、症状が異なる場合には新たな後遺症が残ったと判断されます。
もちろん、自賠責保険で後遺障害認定されるハードルは高いですが、全くのノーチャンスというわけではありません。
【弁護士必見】同一部位で二度目の後遺障害認定ポイント
まずは一度目の後遺障害の詳細確認
最も問題になるのは頚椎や腰椎の同一部位での二度目の受傷でしょう。一度目の後遺障害認定について、以下の資料を収集する必要があります。
- 後遺障害診断書
- 後遺障害等級認定のご連絡
- 一度目事故の画像検査
1. 後遺障害診断書
後遺障害診断書では、傷病名と症状を確認します。傷病名は、頚椎捻挫=外傷性頚部症候群=頚部挫傷=頚部打撲です。
二度目の後遺障害診断書と同じ傷病名である場合には、後遺障害認定へのハードルは上がります。
次に確認するべき点は、一度目の後遺障害診断書の症状です。後頚部痛は共通でしょうが、上肢の症状は左右別を確認します。
一度目の症状と二度目の症状の左右が異なる場合には、自賠責保険においても二度目の交通事故でも後遺障害認定可能性は存在します。
2. 後遺障害等級認定のご連絡
後遺障害等級認定のご連絡で確認するべき点は、一度目の交通事故で後遺障害認定された症状です。
後遺障害診断書でも確認できますが、後遺障害等級認定のご連絡の方が精度が高いです。症状の性状や左右別を確認しましょう。
3. 一度目事故の画像検査
入手困難なケースが多いですが、一度目事故の画像検査は重要な資料です。もし一度目と二度目で画像所見が異なれば、後遺障害認定可能性が高まります。
同一部位の同一症状なら二度目のむちうちは訴訟前提となる
頚椎や腰椎では、一度目の後遺障害等級は14級9号が多いので、二度目の後遺障害は12級13号に認定される必要があります。
しかし実務上、むちうちで12級13号認定は極めて困難なので、同一部位の同一症状なら二度目のむちうちは訴訟前提となります。
本人上申書+医師意見書
自賠責保険での異議申し立て、訴訟のいずれにおいても、被害者本人の上申書(状況説明書)が必須です。
自賠責保険での異議申し立てであれば、一度目の交通事故と症状の部位や性状が異なることを記載します。
訴訟であれば、一度目の交通事故で負った後遺症は、二度目の交通事故直前には消失していたことを記載します。
これらの被害者本人の上申書に加えて、同一部位での二度目の後遺障害認定であれば医師意見書の添付が望ましいでしょう。
二度目の交通事故で後遺障害に認定されずにお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
まとめ
一度、後遺障害が認定されたら、同一部位で二度目の後遺障害は認められないケースが多いです。
しかし、二度目の後遺障害が全く認められないわけではありません。以下のケースでは、二度目の後遺障害が認められる可能性があります。
- 前回より重い後遺障害等級なら一度認定されても二度目も認定される
- 訴訟なら二度目の後遺障害が認定される可能性がある
- 症状が異なれば二度目の後遺障害認定可能性がある
二度目の後遺障害が認定されるためには、一度目の交通事故の後遺障害診断書、後遺障害等級認定のご連絡、画像検査の精査が必要です。
これらの資料に加えて、被害者本人の上申書および医師意見書の添付が望ましいでしょう。
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