交通事故で圧迫骨折と診断されたのに、「事故前からある陳旧性の骨折」とされて、後遺障害が非該当になるケースは少なくありません。
圧迫骨折は高齢者に多く、骨粗鬆症などの既往があると、事故との因果関係を否定されやすいのが現実です。
しかし、医学的な画像所見や受傷機序を丁寧に立証することで、事故との因果関係を裏付けて、後遺障害に認定される可能性は十分にあります。
本記事では、なぜ因果関係が否定されるのか、どのような証拠を集めれば認定されるのかを、具体的な方法や実例を交えながら解説しています。
最終更新日: 2025/11/24
Table of Contents
交通事故と圧迫骨折の因果関係を否定される例とは
圧迫骨折が陳旧性骨折とみなされる
圧迫骨折が交通事故前から存在していたと判断されると、後遺障害に認定されません。
高齢者の場合、加齢性の変形が圧迫骨折のように見えることがあり、保険会社は「陳旧性骨折」だと主張してくることがあります。
レントゲンやCT検査で骨皮質の連続性が保たれている場合は、古い骨折である可能性が高く、交通事故との因果関係が否定されやすくなります。
特に、骨粗鬆症を患っている方は、日常生活の軽い尻もちでも圧迫骨折を起こす可能性があるため、事故との因果関係を疑われやすいのです。
<参考>
圧迫骨折の後遺症が後遺障害認定されるポイント|交通事故の医療鑑定
受傷機序が不明確
交通事故の態様が、圧迫骨折を起こすほどの衝撃ではなかったと判断されると、因果関係を否定されやすいです。
圧迫骨折は、脊柱に垂直方向の外力が加わった場合に生じるため、典型的には自転車からの転倒や車両の横転といった事故態様で発生します。
停車中の追突事故は、圧迫骨折が生じにくいとされており、因果関係が不明確だと保険会社から指摘されることがあります。
また、事故直後の痛みが弱くて、後から圧迫骨折が発見された場合も、因果関係を疑われやすくなります。
Modic変性を圧迫骨折と診断した
Modic変性は、椎体終板の加齢性変化で、MRI検査で圧迫骨折と間違われやすい所見です。
特に、Type1とType2のModic変性は、T2強調画像で椎体終板が高信号になるため、「圧迫骨折」と誤診されるケースが後を絶ちません。
保険会社はこうした誤診を要注意チェックポイントとしており、Modic変性を圧迫骨折と診断した事案は否認される可能性が高くなります。
Modic変性と圧迫骨折の鑑別には、MRI検査だけでは不十分で、レントゲン検査やCT検査の経時的所見が鍵となります。
<参考>
Modic変性は圧迫骨折との鑑別が難しい|交通事故の後遺障害

交通事故と圧迫骨折の因果関係を立証する方法
MRI検査で新鮮骨折を証明する
MRI検査は、圧迫骨折が新鮮か陳旧性かを判別する最も有効な検査です。受傷後早期にMRI検査を受けると、新鮮骨折が認められやすいです。
新鮮骨折では、骨髄浮腫を反映してT1強調画像で低信号となり、T2強調画像やSTIRで椎体が高信号(明るく)になります。
一方、陳旧性骨折では、T1強調画像やT2強調画像とも信号変化がありません。MRI検査の所見で、新鮮骨折と陳旧性骨折を判別できるのです。
経時的なレントゲン検査の確認
事故直後のレントゲン画像と、しばらく後のレントゲン画像を比較検討することで、骨折が新鮮かどうかを判断できます。
骨折部分の圧潰が進んでいるような場合は、それが新鮮な骨折だったと考えられます。
一方、椎体の圧潰の進行がなく形状に変化が認められない場合は、古い陳旧性の骨折で、既に骨は変形した状態で癒合していたと考えられます。
レントゲン検査では、骨折の急性期には診断が困難なことがありますが、時間をおいて再検査すると椎体変形が明らかになることがあります。
経時的なレントゲン所見の変化を追うことで、事故との因果関係を立証しやすくなります。
初診時のカルテを取り寄せる
初診時のカルテには、事故直後の症状や医師の所見が記載されており、因果関係を立証する重要な証拠となります。
特に、事故直後から強い痛みや炎症があったことがカルテに記載されていれば、新鮮な圧迫骨折による症状だったことを示す根拠になります。
医師意見書や画像鑑定を依頼する
後遺障害診断書だけでは因果関係が認められない場合、脊椎外科の専門医による医師意見書や画像鑑定を依頼することが効果的です。
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査結果をもとに、骨折と後遺症の因果関係を医学的に解説します。
画像鑑定では、レントゲン、CT、MRIなどの画像所見を精査したうえで、事故との因果関係や椎体の圧壊程度を客観的に評価します。
これらの専門的な医学文書は、異議申し立てや裁判において重要な証拠資料となり、保険会社の主張を覆す強力な武器となります。
<参考>
【日経メディカル】医療鑑定の後遺障害認定における位置付けは?
圧迫骨折の後遺障害認定で弊社が支援できること
弁護士向けのサービス一覧
弊社では、交通事故で受傷した圧迫骨折の後遺症が、後遺障害に認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。
等級スクリーニング®
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<参考>
【等級スクリーニング®】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定

医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。
医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。
弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
被害者向けの弁護士無料紹介サービス
弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。
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交通事故と圧迫骨折の因果関係でよくある質問
軽い追突事故でも圧迫骨折は起こり得る?
軽い追突事故でも圧迫骨折は起こり得ます。特に、高齢者などの骨が脆い方は骨折しやすく、軽い衝突でも怪我を負う可能性が十分にあります。
ノーブレーキでの追突では、衝撃が強く被害者の身体が前後に大きく揺さぶられるため、その際に圧迫骨折を受傷する可能性があります。
車は何十キロもの速度で走行していますので、人体への衝撃はかなりのものがあり、健康な人でも圧迫骨折をすることは珍しくありません。
事故直後は痛みが弱くても、後から圧迫骨折が見つかることはある?
多発外傷では、事故直後にはあまり痛みがなくても、後から圧迫骨折が判明することはあります。
また、事故直後だと、まだ外見上は腰椎の形が保たれてレントゲンにうつることがありますが、時間をおいて再検査して発覚することもあります。
痛みには個人差があり、さほど痛くないという人もいますが、その場合でも圧迫骨折の程度が軽いとは限りません。
レントゲン検査は圧迫骨折の急性期には診断が困難なことがあり、MRI検査を行うことで初めて圧迫骨折が判明するケースもあります。
既存の骨粗鬆症があると、事故との因果関係は否定されやすい?
既存の骨粗鬆症があると、保険会社から交通事故との因果関係を否定される可能性が高まります。
骨粗鬆症を患っている方は、日常生活の軽い尻もちでも圧迫骨折を起こす可能性があるため、交通事故との関連性を疑われやすいからです。
事故前からの椎体変形(古い圧迫骨折)がある場合、新しい骨折との区別はできる?
事故前からの椎体変形がある場合でも、MRI検査によって新しい骨折との区別は可能です。
新鮮骨折はT1強調画像で低信号、T2強調画像やSTIRで高信号を示すのに対して、陳旧性骨折では信号変化がありません。
また、経時的なレントゲン所見の比較によって、骨折部分の圧潰が進行しているかどうかを確認することでも区別できます。
MRI検査などによって、ある程度は「陳旧性」(古いもの)か「新鮮」かの診断が可能なので、医師に相談することをお勧めします。
画像検査(MRI・CT)で新鮮骨折が確認できれば、因果関係は認められやすい?
画像検査(MRI・CT検査など)で新鮮骨折が確認できれば、因果関係は認められやすくなります。
特に、MRI検査は、受傷後2週間以内はレントゲン検査よりも診断率が高く、新鮮骨折の診断に有用です。
高齢者が転倒なしの事故だけで圧迫骨折を起こすケースは?
骨粗鬆症によって骨がもろくなっている高齢者は、転倒なしの軽微な衝撃でも圧迫骨折することがあります。
また、追突事故でも、ノーブレーキでの追突など衝撃が強いと、被害者の身体が前後に大きく揺さぶられて圧迫骨折を受傷する可能性があります。
事故後に徐々に圧痛や変形が悪化し、後になって圧迫骨折と診断されるケースは?
事故後に徐々に圧痛や変形が悪化して、後になって圧迫骨折と診断されるケースは珍しくありません。
骨折直後だと外見上は腰椎の形が保たれてレントゲンにうつることがあり、時間をおいて再検査すると発見されることがあります。
自覚症状が強くても画像にはっきり写らない圧迫骨折は存在する?
自覚症状が強くても画像にはっきり写らない圧迫骨折は存在します。レントゲン検査では、受傷直後は圧迫骨折が分からないことがよくあります。
また、骨密度の低下が強い場合、レントゲン検査では小さな変化を見落とす可能性があり、MRIやCT検査の方が骨の状態を詳しく調べられます。
そのため、自覚症状が強い場合は、レントゲン検査だけでなくMRI検査を追加することが推奨されます。
まとめ
交通事故による圧迫骨折は、衝撃の強さや骨の状態によって因果関係が疑われることがあります。
また、事故の衝撃が弱い、痛みの発現が遅い、あるいは転倒など典型的な受傷機序がないと、事故との因果関係が否定されることもあります。
さらに、MRIやCT検査で見られるModic変性は圧迫骨折と紛らわしく、誤診として因果関係を否定されるケースもあります。
因果関係を立証するには、事故直後のMRI検査で新鮮骨折の所見を示すこと、経時的なレントゲンの変化、初診時カルテの症状記録が重要です。
必要に応じて、脊椎外科専門医による医師意見書や画像鑑定を用いることで、医学的根拠に基づき因果関係を強く主張できます。
圧迫骨折の因果関係でお困りであれば、こちらからお問い合わせください。尚、初回の法律事務所様は無料で等級スクリーニングを承ります。
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