交通事故で圧迫骨折を負うと、治療が長期化して、後遺障害が残ることも少なくありません。
しかし損害賠償では、「骨粗鬆症があった」などの理由から、加害者側が“素因減額”を主張して、賠償額が減らされるケースが多く見られます。
事故が原因で明らかに骨折したのに、本来受け取れるはずの賠償が減額されるのは納得できない…。多くの被害者がこの壁に直面します。
素因減額は医学と法律の両方を理解していないと反論が難しく、適切な対応を知らないと、不当に低い賠償金額で終わってしまう危険があります。
本記事では、圧迫骨折で素因減額がどのように判断されるのか、その仕組みと回避のポイントを分かりやすく解説しています。
最終更新日: 2025/11/23
Table of Contents
圧迫骨折と素因減額の基礎知識
圧迫骨折が起きる仕組みと主な症状
圧迫骨折とは、背骨を構成する椎体という部位が押しつぶされるように変形する骨折です。
交通事故では、追突や衝突の衝撃によって、胸椎や腰椎に強い力が加わることで発生します。
主な症状としては、腰や背中の激しい痛み、寝返りや起き上がる際の痛みの増強、体動時の痛みなどが挙げられます。
骨折が重度の場合、足のしびれや筋力低下を伴うこともあります。また、複数の椎体が骨折すると、背中が丸くなり身長が縮む変形も生じます。
圧迫骨折の原因として最も多いのが骨粗鬆症です。骨密度が低下して骨がもろくなった状態では、軽微な外力でも椎体が潰れやすくなります。
高齢者や閉経後の女性に多く見られ、交通事故との因果関係が争点になりやすい傾向があります。
<参考>
圧迫骨折の後遺症が後遺障害認定されるポイント|交通事故の医療鑑定
素因減額の仕組みを法律的に理解する
素因減額とは、被害者が持っていた既往症や体質が原因で、交通事故による損害が通常より拡大した場合に、損害賠償額を減額する仕組みです。
民法722条2項の過失相殺の規定を類推適用して、損害の公平な分担を図るために認められています。
素因減額には「身体的素因」と「心因的素因」の2種類があります。身体的素因には、骨粗鬆症、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症などが含まれます。
心因的素因には、うつ病やPTSDなどの精神疾患、特異な性格が該当します。ただし、既往症があれば必ず素因減額されるわけではありません。
その素因が「疾患」に該当して、損害の発生・拡大に具体的に寄与していることを加害者側が立証する必要があります。
単なる身体的特徴や年齢相応の変化であれば、素因減額の対象にならない場合が多いです。

圧迫骨折で素因減額が問題となるケース
交通事故で圧迫骨折を負った際に素因減額が適用される要件
交通事故で圧迫骨折を負った場合、素因減額が適用されるには一定の要件を満たす必要があります。
まず、事故前から骨粗鬆症などの素因が存在していたこと、そしてその素因が損害の発生や拡大に寄与していることが必要です。
裁判実務では、事故の態様や衝撃の程度、被害者の年齢、骨粗鬆症の発症時期や程度などが総合的に考慮されます。
特に、衝撃が軽微なのに骨折した場合や、事故前から骨粗鬆症の診断を受けて治療していた場合には、素因減額される可能性が高くなります。
一方、加齢による骨密度低下は自然な現象であるため、病的に骨粗鬆症が進行していない限り、素因減額は認められにくい傾向があります。
つまり、被害者の年齢に照らして著しく不相当に骨密度が減少している場合に、減額が認められやすいといえます。
<参考>
交通事故で悪化した既往症について回る「素因減額」とは?
素因減額の主張を最小限に抑えるためのポイント
素因減額を最小限に抑えるためには、交通事故と圧迫骨折の因果関係を明確に立証することが重要です。
事故の衝撃が大きさや、車両の損傷が激しさを証明できれば、交通事故による影響が重視され、素因の寄与度が低く評価される可能性があります。
さらに、事故前に症状がなく治療歴もない場合や、骨塩定量が年齢相応であれば、素因減額の対象とならないケースが多いです。
事故前の無症状状態や骨粗鬆症の程度を証明するため、本人の医療記録を準備しておくことが効果的です。
交通事故で受傷した圧迫骨折で提供できる支援
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<参考>
【等級スクリーニング®】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定

医師意見書
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<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
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<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
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圧迫骨折の素因減額でよくある質問
圧迫骨折では素因減額が認められる可能性は高いの?
圧迫骨折で素因減額が認められる可能性は、事故の状況や被害者の年齢、既往症の程度によって異なります。
骨粗鬆症があるだけで直ちに減額されるわけではなく、骨粗鬆症が疾患と認められる程度であり、損害の拡大に寄与していることが必要です。
骨粗鬆症があると素因減額される確率は?
骨粗鬆症があっても、必ずしも素因減額されるわけではありません。年齢より著しく骨密度が低下している場合は減額される可能性が高いです。
しかし、通常の加齢範囲内の骨密度低下であれば、素因減額されにくい傾向があります。
高齢であるだけで素因減額される可能性は?
高齢だけで素因減額されることは原則としてありません。加齢は自然な現象であり、すべての高齢者に減額を適用すると不公平になるためです。
年齢相応の範囲を超えて、病的に骨粗鬆症が進行している場合に限り、減額が検討されます。
事故前から背骨の変形(圧迫変形)があった場合の減額確率は?
事故前から圧迫変形が存在していた場合、基礎疾患として治療を要する骨粗鬆症が存在するとされて、素因減額される可能性が高まります。
交通事故の衝撃が軽い場合、素因減額されやすい?
事故の衝撃が軽微なのに圧迫骨折が生じた場合、骨粗鬆症などの素因が骨折の主な原因と判断されて、素因減額される可能性が高くなります。
衝撃の程度と損害の大きさのバランスが考慮されるため、事故状況を詳細に記録しておくことが重要です。
事故後の治療遅れがあると素因減額につながる?
事故後すぐに病院を受診しなかった場合、交通事故と圧迫骨折の因果関係が疑われ、素因減額以前に因果関係自体が否定される可能性があります。
痛みが軽度であっても、事故直後に必ず医療機関を受診して、診断書を作成してもらうことが大切です。
MRIで明確に新鮮骨折が写っていれば減額は避けられる?
MRI検査で新鮮骨折が明確に証明されれば、交通事故との因果関係は認められやすくなります。
ただし、因果関係が認められても、骨粗鬆症などの素因が損害の拡大に寄与していると判断されれば、素因減額される可能性はあります。
既往歴がない”初めての骨折”でも減額される?
既往歴がなく初めての骨折であっても、画像検査で高度な骨粗鬆症が確認されれば、素因減額が主張される可能性があります。
ただし、事故前に無症状で治療歴もない場合は、素因減額が否定されるケースも多く見られます。
後遺障害等級が認定される場合、素因減額はされやすい?
後遺障害が認定されても、素因減額は別の問題として検討されます。損害賠償請求の段階で、保険会社から素因減額が主張されることがあります。
後遺障害認定と素因減額は独立した問題であり、後遺障害に認定されたからといって、素因減額されないわけではありません。
医師意見書を提出すると減額を避けられる?
医師意見書は、交通事故と圧迫骨折の因果関係や、素因の寄与度について専門的な見解を示す重要な証拠となります。
脊椎外科専門医の医師意見書で、事故の影響が大きいことを医学的に証明して、素因減額を回避または減額割合を抑えられる可能性はあります。
まとめ
圧迫骨折は、交通事故の衝撃で背骨の椎体が押しつぶされるように変形する怪我で、強い背中や腰の痛みを引き起こします。
特に骨粗鬆症のある高齢者では軽い衝撃でも骨折しやすいため、事故との因果関係が争われやすく、損害賠償で「素因減額」が問題になります。
素因減額は、既往症が損害の拡大に影響した場合に賠償額を減らす制度で、骨粗鬆症や背骨の変形があると適用される可能性が高まります。
ただし、単なる加齢による骨密度低下は対象にならないことが多く、事故前に無症状だったことは減額回避に有利です。
事故状況や医療記録の整理、医師意見書や画像鑑定の活用によって、素因減額を最小限に抑えることができます。
圧迫骨折の素因減額でお困りであれば、こちらからお問い合わせください。尚、初回の法律事務所様は無料で等級スクリーニングを承ります。
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