交通事故や労災をきっかけに耳鳴りが続いても、そのつらさを客観的に証明するのは容易ではありません。
耳鳴りは他覚的な検査で結果が出にくいため、後遺障害認定や補償の現場では「本当に事故が原因なのか」と疑われてしまいがちです。
そこで重要になるのが「医師意見書」です。医師意見書には、事故との因果関係や症状の持続性などが、医学的な観点から詳細に記載されます。
本記事では、耳鳴りの医師意見書の基本的な内容や書式、取得方法、交通事故での活用法を分かりやすく解説しています。
最終更新日: 2025/10/21
Table of Contents
医師意見書が耳鳴りの後遺障害認定を左右する
耳鳴りとはどのような傷病なのか
耳鳴りは、交通事故などの外傷や騒音曝露、ストレスによって生じる「耳の中で音が聞こえる感覚障害」です。
交通事故では、衝撃による内耳や聴神経の損傷が、耳鳴りの原因となる場合があります。
耳鳴りは難聴を伴うことも多く、日常生活への支障が大きいものの、他覚的検査で結果が出にくいのが特徴です。
<参考>
交通事故の耳鳴りは後から出る?原因や後遺障害認定ポイントも解説
診断書を超える、医師意見書の役割
医師意見書とは、耳鳴りの原因や程度、交通事故との因果関係を、耳鼻咽喉科専門医が専門的見地から述べる文書です。
耳鳴りの医師意見書は、後遺障害認定基準を満たす蓋然性を、医学的に解説する医証になります。
耳鳴りの医師意見書に記載される内容
耳鳴りに関する医師意見書には、主に以下のような内容が記載されるケースが多いです。
- 傷病名
- 治療経過
- 耳鳴りや重症度
- 検査結果(ピッチマッチ検査、ラウドネスバランス検査)
- 事故と耳鳴りの因果関係
これら以外にも、耳鳴りの後遺障害認定基準を満たしていることを、医学論文なども引用して解説します。
なぜ診断書だけでは不十分なのか
診断書は「診断名や治療見込み」を簡潔に示す文書で、警察・職場・任意保険会社などに提出されるケースが多いです。
一方、医師意見書は「医学的見解」を詳細に記載する医証です。耳鳴りと事故との因果関係を解説して、医学的に裏づける役割を果たします。
医師意見書が必要とされる3つの理由
目に見えない症状を医学的に証明する
耳鳴りは、神経や内耳の機能障害によって引き起こされ、慢性化すると不眠や集中力低下などの二次的な健康問題に発展します。
交通事故後で発症した耳鳴りの存在を証明するためには、医学的な裏付け資料が必要です。
耳鼻咽喉科専門医によって作成された医師意見書は、後遺症としての耳鳴りを医学的に解説します。
後遺障害認定基準をクリアするための医学的根拠
自賠責保険や労災保険では、耳鳴りが「持続的かつ他覚的所見がある場合」に後遺障害として認められます。
医師意見書では、各種検査や神経学的所見をもとに、被害者の症状が後遺障害認定基準に該当することを具体的に解説します。
異議申し立てや訴訟での証拠としての有用性
認定結果に不服がある場合、異議申し立てや訴訟提起をせざるを得ません。その際に、医師意見書は医学的な証拠となります。
特に「事故後一貫して耳鳴りが続いている」ことを医学的に立証できる内容が含まれていれば、異議申し立てや訴訟で大きな効果を発揮します。
医師意見書を使いこなす実践的活用術
【異議申立て】非該当からの逆転を狙う
前回審査で耳鳴りが否定された場合でも、耳鼻咽喉科専門医による医師意見書を提出することで、因果関係や症状の一貫性を補強できます。
異議申し立て時には、前回審査で非該当もしくは低い等級になった原因を分析して、それを補う内容の医師意見書を作成することが重要です。
【示談交渉】保険会社との対等な交渉を実現する
保険会社との示談交渉では、耳鳴りの存在や程度、事故との因果関係を客観的に説明できる資料が重要です。
耳鼻咽喉科専門医による医師意見書は、当方の主張の裏付けになるため、保険会社との示談交渉において有利に働く可能性があります。
【裁判】法的な場で医学的優位性を確立する
裁判では、耳鳴りという主観的症状の医学的裏づけの有無が、争点になる傾向にあります。
耳鼻咽喉科専門医による医師意見書によって、耳鳴りの持続性や事故起因性を説明でき、当方の主張を裏付ける重要な証拠となります。
医師意見書を手に入れるための実践マニュアル
耳鳴りの医師意見書を取得する手順
耳鳴りの医師意見書の取得は、まず相談書、診断書、各種検査、診療報酬明細などの必要資料を準備して、医療鑑定会社に依頼します。
見積金額の了承後、医師意見書の骨子案(検討項目)が提案されます。骨子案に問題が無ければ、約4週間で初稿(医師意見書案)が提出されます。
医師意見書案に問題が無ければ、費用を支払います。入金確認後に医師意見書の原本が発送される流れが一般的です。
医師に渡すべき資料リスト
耳鳴りの異議申し立てで使用する医師意見書の作成には、以下のような書類や資料が必要です。
- 相談書(依頼時にお渡しします)
- 画像検査
- 検査結果(ピッチマッチ検査、ラウドネスバランス検査)
- 後遺障害診断書
- 診断書
- 診療報酬明細(レセプト)
- 損害確認報告書 / 事故現場実況見分調書 / 車の損傷写真 など
- 後遺障害等級結果連絡書
- 診療録(カルテ)
症状や治療経過、日常生活の支障程度が分かる資料が多いほど、医師意見書の信頼性が高まります。
医師意見書の費用
概要 | 価格 |
整形外科 | 23万円 |
脳神経外科、脳神経内科 | 29万円 |
耳鼻科、眼科、歯科など | 29万円 |
精神科 | 31万円 |
訴訟加算(整形外科) | 4万円 |
訴訟加算(その他の科) | 1万円 |
多部位加算(3部位以上) | 3万円/数 |
特急対応加算 | 2万円 |
難事案加算 | 6万円~ |
反論意見書 | -5万円 |
医師意見書の作成に必要な料金は、基本料金をベースとして以下の要素で変動します。
- 診療科目
- 訴訟事案
- 顧問契約の有無
- 弁護士特約の有無
- 納品時期
耳鼻咽喉科領域における一般的な事案では、30万円前後の料金負担で各領域の専門医による医師意見書の作成が可能です。
弊社の医師意見書作成にかかる、加算や割引などの詳細は、こちらをご確認ください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
医師意見書完成までの目安期間
耳鳴りの医師意見書を取得するまでの期間は依頼内容によります。一般的には4週間ほどで初稿(医師意見書案)が納品されます。
医師意見書案への修正依頼に、耳鼻咽喉科専門医が対応するのにかかる期間は、1~2週間のケースが多いです。
【弁護士向け】耳鳴りの後遺障害認定を成功に導く着眼点
耳鳴りが、適切な後遺障害等級に認定されるには、以下のような後遺障害認定基準をすべて満たす必要があります。
- 事故と症状に整合性がある
- 耳鳴りと各種検査が一致している
- 事故後から症状固定まで耳鳴りが続いている
- 常に耳鳴りが存在している
シンプルに見えますが、すべてをクリアしている事案は少ないです。また、これら以外にも、たくさんの後遺障害認定基準が存在します。
医師意見書の価値は、後遺障害認定基準に足りていない要素を補強して、後遺障害の蓋然性を主張する点にあります。
この目的を達成するためには、医師意見書を受任する医療鑑定会社が、後遺障害認定基準を知り尽くしている必要があります。
耳鳴りが後遺障害認定されるポイントは、こちらのコラム記事で詳しく紹介しています。是非、参照していただきたいと思います。
<参考>
交通事故の耳鳴りは後から出る?原因や後遺障害認定ポイントも解説
弊社が提供する後遺障害認定サポート
【弁護士の方へ】先生方の主張を医学的見地から支えます
弊社では、交通事故で受傷した、耳鳴りが、後遺障害に認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。
等級スクリーニング®
現在の状況で、後遺障害に認定されるために足りない要素を、後遺障害認定基準および医学的観点から、レポート形式でご報告するサービスです。
等級スクリーニング®は、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。
等級スクリーニング®の有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニング®を承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング®】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定
医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。
医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。
弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
【患者さんへ】あきらめる前にご相談ください
弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。
また、弊社では交通事故業務に精通している全国の弁護士を紹介することができます。
もし、後遺障害認定で弁護士紹介を希望される被害者の方がいらっしゃれば、こちらのリンク先からお問い合わせください。
尚、弁護士紹介サービスは、あくまでもボランティアで行っています。このため、電話での弊社への問い合わせは、固くお断りしております。
弊社は、電話代行サービスを利用しているため、お電話いただいても弁護士紹介サービスをご提供できません。ご理解いただけますよう宜しくお願い申し上げます。
耳鳴りの医師意見書でよくある質問
耳鳴りが後遺障害として認定されるために必要な医学的根拠は何ですか?
ピッチマッチ検査とラウドネスバランス検査での異常所見、交通事故直後からの一貫した耳鳴りの訴えが、後遺障害認定の鍵です。
耳鳴りの訴えが事故によるものか、加齢や既往症によるものかをどう区別しますか?
事故後に新たに発症したことを示す診療記録や各種の聴力検査結果が、加齢や既往症によるものかを区別する医学的判断のポイントです。
耳鳴りが他覚的に証明できない場合、認定されにくいのですか?
耳鳴りの存在を他覚的検査(ピッチマッチ検査、ラウドネスバランス検査)で証明できなければ、後遺障害に認定される可能性はありません。
どのような検査結果が意見書に添付されていると有利ですか?
耳鳴りの医師意見書に添付する検査結果として、ピッチマッチ検査とラウドネスバランス検査などが重要です。
耳鳴りが難聴を伴わない場合でも後遺障害に該当しますか?
難聴を伴わない耳鳴りでも、ピッチマッチ検査とラウドネスバランス検査で有意所見があれば、後遺障害に認定される可能性があります。
耳鳴りの訴えが心理的要因によると指摘された場合、どう対処すべきですか?
耳鳴りの検査で有意所見が無いために心理的要因とされた場合には、後遺障害に認定される可能性は極めて低いと言わざるを得ません。
まとめ
耳鳴りは、事故の衝撃やストレスなどが原因で起こる感覚障害で、他覚的検査で証明しにくいのが特徴です。
交通事故後の耳鳴りが後遺障害認定されるには、事故との因果関係を医学的に裏づける必要があります。その際に重要となるのが医師意見書です。
医師意見書には、治療経過や検査結果などが詳しく記載されて、事故と耳鳴りの関連を専門的に解説します。
耳鼻咽喉科専門医による医師意見書は、異議申し立てや訴訟、示談交渉でも有力な証拠となるケースが多いです。
耳鳴りの後遺障害認定でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。尚、初回の法律事務所様は無料で承ります。
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