骨盤骨折を負った直後は、歩けるようになるまでの道のりが見えず、不安を感じる方も多いことでしょう。
特に交通事故などで突然ケガをすると、いつ頃から歩行が可能なのか、どんなリハビリが必要なのか、仕事や日常生活への復帰時期など、知りたいことが次々に出てくるものです。
本コラムでは、骨盤骨折の基本的な知識から、一般的な回復までの期間、リハビリの進め方、後遺障害のリスクまでを分かりやすく解説しています。
骨盤骨折の回復の見通しや対処法を知ることで、今後の生活への不安が少しでも軽くなるはずです。
最終更新日: 2025/7/7
Table of Contents
骨盤骨折から歩けるまでの一般的な回復期間
骨盤骨折の概要
骨盤骨折は、安定型と不安定型に大別され、前者は軽傷で自然治癒が期待されます。
一方、後者は手術や創外固定が必要となり、出血や神経損傷のリスクが高い重症例です。
骨盤輪の構造やその損傷具合により、日常生活への影響や治療方針は大きく異なります。
回復にかかる期間の目安
骨盤骨折の回復期間は、骨の癒合や全身状態によって異なりますが、一般的には2週間程度の安静後、徐々にリハビリを開始して、3~6ヶ月で通常歩行が目指します。
手術を行った場合でも、術後1~2週間で松葉杖歩行を開始することが多いです。
ウォーキング再開のタイミング
ウォーキング再開は、骨の癒合が進み、医師の許可が出てからです。部分荷重から始め、徐々に全荷重へと移行します。
多くの場合、骨折から4~8週間で歩行練習が本格化して、6ヶ月程度で日常的な歩行が可能となります。
運転や職場復帰のタイミング
運転や職場復帰は、歩行が安定し、痛みや可動域制限が改善してからとなります。個人差はありますが、軽症例で3ヶ月、重症例では6ヶ月以上かかる場合もあります。
骨盤骨折後のリハビリと歩行再開までのステップ
歩行の再開までの段階
骨盤骨折のリハビリは、安静期(0~2週間)のベッド上安静から始まり、2~10週間目には車椅子や松葉杖を使った移動練習に移行します。
骨の癒合が進むと、部分荷重から全荷重へと段階的に進み、3~6ヶ月程度で通常歩行を目指します。各段階で筋力トレーニングやバランス訓練も並行して行われます
リハビリ開始のタイミングと目安
リハビリは全身状態が安定して、命の危険がなくなった時点から開始されます。初期はベッド上で関節を動かす練習や筋力維持を目的とした運動が中心です。
骨の癒合が確認できれば、医師の指示のもと徐々に車椅子移動や荷重練習を始めます。早期から筋力強化を行うことで、歩行能力の早期回復が期待できます。
ベッド上安静から車椅子移動、歩行訓練へ
骨盤骨折直後はベッド上安静が基本ですが、痛みや骨の状態を見ながら車椅子移動の練習を始めます。
骨が癒合してくると、部分的に体重をかける練習や松葉杖を使った歩行訓練へと進みます。
リハビリスタッフが状態を見ながら段階的にサポートし、筋力やバランスの回復を目指します。
歩行補助具(松葉杖・歩行器)の活用
歩行再開時には、松葉杖や歩行器などの補助具を活用して、骨や筋肉への負担を減らします。最初は体重をかけずに移動し、徐々に荷重を増やしていきます。
補助具は安全に歩行を始めるために不可欠であり、バランスや筋力が十分に戻るまで継続して使用されます。
骨盤骨折の後遺症と日常生活への影響
痛みや可動域制限、歩行障害のリスク
骨盤骨折後は、痛みや股関節の可動域制限が残ることがあり、歩行障害や長距離歩行の困難さが続く場合があります。
下肢の筋力低下や歩行時のバランス障害も生じやすく、日常生活や仕事に支障をきたす可能性があります。
排尿・排便障害や神経障害の可能性
骨盤骨折は骨盤内の神経や臓器を損傷するリスクがあり、排尿・排便障害や下肢のしびれ・筋力低下などの神経障害が後遺症として残る可能性があります。
特に仙骨や腸骨の骨折では神経損傷のリスクがあり、泌尿器科や消化器外科の治療が必要になるケースもあります。
骨盤骨折の後遺症で考えられる後遺障害
交通事故や労災事故で受傷した骨盤骨折に後遺症が残れば、以下のような後遺障害に認定される可能性があります。
股関節の機能障害
等級 | 認定基準 |
8級7号 | 下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの |
10級11号 | 1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの |
12級7号 | 1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの |
8級7号:下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの
下記のいずれかの条件を満たすと、8級7号に該当することになります。
- 関節が強直したもの
- 関節の完全弛緩性麻痺又はこれに近い状態にあるもの
- 人工関節・人工骨頭をそう入置換した関節のうち、その可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもの
10級11号:1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
関節の可動域が健側の可動域の1/2以下に制限されているものです。
12級7号:1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの
関節の可動域が健側の可動域の3/4以下に制限されているものです。
神経障害
等級 | 認定基準 |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
12級13号:局部に頑固な神経症状を残すもの
寛骨臼骨折後の股関節部痛や坐骨神経損傷による麻痺症状を、画像検査や神経伝導速度検査で他覚的所見に証明できる事案が該当します。
14級9号:局部に神経症状を残すもの
画像検査で変形性股関節症の所見や、神経伝導速度検査で坐骨神経損傷の所見を認めないものの、治療経過から神経症状の存在が推認される事案が該当します。
変形障害
12級5号:骨盤骨に著しい変形を残すもの
骨盤骨折は変形を残しやすい骨折です。しかし自賠責認定基準で変形障害に該当するためには「裸体になったときに外部から見てその変形が明らかに分かる程度」という条件をクリアする必要があります。
胸腹部臓器の機能障害
11級10号:胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの
骨盤骨折は変形を残しやすい骨折なので、小骨盤腔が変形すると経腟分娩が不可能になることもあります。交通事故被害者が若年女性の場合には、産婦人科医師の診察も必要でしょう。
骨盤骨折の後遺障害認定ポイント
骨盤骨折に伴う後遺症は非常に多様であり、整形外科の枠を超えて、泌尿器科や婦人科、さらには消化器外科など複数の診療科との連携が求められるケースも少なくありません。
そのため、特定の専門領域の後遺障害だけに注目してしまうと、他の重要な障害を見落としてしまい、結果として適切な補償を受け損ねるリスクがあります。後遺障害の評価では多角的な視点が不可欠です。
さらに、整形外科医の中でも特に寛骨臼骨折に関しては、股関節外科の専門医の意見を取り入れることが重要です。
なぜなら、実際に寛骨臼骨折の手術経験がある医師とそうでない医師とでは、損傷の捉え方や診断の精度に大きな差が生じるためです。
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骨盤骨折の後遺障害認定で弊社ができること
弁護士の方へ
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等級スクリーニング
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等級スクリーニングは、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。
等級スクリーニングの有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニングを承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定
医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。
医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。
弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
交通事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
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骨盤骨折で歩けるまででよくある質問
骨盤骨折になると何が危険ですか?
骨盤骨折は大量出血や内臓損傷を伴うリスクが高く、命に関わることもあります。特に高齢者や重症例では全身状態の管理が最優先となり、合併症予防が重要です。
骨盤骨折はどれくらい回復しますか?
骨盤骨折の回復は個人差がありますが、軽症例で3ヶ月、重症例で6ヶ月以上かかることもあります。
リハビリを継続することで、ほとんどの方が歩行や日常生活に復帰できますが、後遺症が残るケースもあります。
骨盤骨折の安静期間はどれくらいですか?
安静期間は骨折の部位や重症度によりますが、一般的には2週間程度のベッド上安静が推奨されます。その後、骨の癒合状態を見ながら徐々にリハビリを開始します。
骨盤骨折のリハビリ期間はどのくらいですか?
リハビリ期間は骨折の程度や個人の体力によって異なりますが、3~6ヶ月が一般的な目安です。退院後も外来リハビリを継続して、社会復帰を目指します。
まとめ
骨盤骨折の回復には、骨の状態や全身の健康状態に応じた長期的な治療とリハビリが必要です。軽症なら約3ヶ月、重症例では6ヶ月以上かかることもあります。
初期はベッド上安静を経て、車椅子や歩行補助具を用いた訓練を行い、徐々に通常の歩行を目指します。
後遺症には痛みや可動域制限、排尿・排便障害などがあり、後遺障害認定では多診療科の評価が重要です。適切な医療と専門的な支援により、回復と補償の両立が可能となります。
骨盤骨折の後遺障害認定でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。尚、初回の法律事務所様は無料で承ります。
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