交通事故に遭って医療機関で治療を受けたら、病院所定の診断書を警察に提出する必要があります。警察に提出しないと物損事故と見なされてしまい、賠償金額に影響が出ます。
また、保険会社も自賠責様式の診断書を確認して賠償金の支払いを判断します。仮に軽傷の場合でも、診断書がないと適切な賠償金を受け取れません。診断書は賠償金を受けるためにも不可欠なのです。
後遺障害診断書は、交通事故の診断書の中で最も重要です。後遺障害診断書の記載内容によって、後遺障害に該当するか否かが判断されると言っても過言ではありません。
本記事は、交通事故の際に発行される3種類の診断書の重要性を理解するヒントとなるように作成しています。
最終更新日: 2024/6/23
Table of Contents
交通事故で診断書が極めて重要な3つの理由
交通事故で診断書が重要な理由として、以下の3つが挙げられます。
- 人身事故として処理するために必要
- 治療費の支払いに必要
- 後遺障害認定に必要
人身事故として処理するために必要
人身事故として取り扱ってもらうためには、医療機関の診断書を速やかに警察署に提出する必要があります。
警察に診断書を提出しないと物損事故と見なされて、賠償金額が減額されてしまいます。
治療費の支払いに必要
保険会社が治療費を支払うためには、治療を行った医師による診断書が必要です。
また、慰謝料や賠償金額はケガの状態や通院期間によって変動します。診断書の記載内容が、賠償金額に大きな影響を与えます。
後遺障害認定に必要
後遺障害が認定されるためには、後遺障害診断書と呼ばれる特別な書式の診断書を、自賠責保険に提出する必要があります。
交通事故で必要な診断書には3種類ある
交通事故で医療機関が作成する診断書には、以下の3つが挙げられます。
- 警察用の診断書
- 自賠責様式の診断書
- 後遺障害診断書
いずれの診断書も、交通事故では必須です。3種類の診断書のうち、警察用の診断書だけ医療機関所定の診断書です。
警察用の診断書
医療機関所定の診断書を提出する
交通事故に遭って医療機関を受診したら、診断書を作成してもらいます。医療機関所定の診断書なので、交通事故被害者が準備する必要はありません。
警察用の診断書は人身事故に必須
警察に診断書を提出すると、交通事故が人身事故として扱われる可能性が高まります。
人身事故と物損事故では、警察の対応が異なります。物損事故では、後遺障害が残っても適正な賠償金を受けられない可能性があります。
警察用の診断書は速やかに提出する
警察への診断書は、提出する期限が定められていません。しかし、交通事故から時間が経つと、警察が人身事故への切り替えに難色を示すケースがあります。
このため、警察用の診断書は、できる限り速やかに提出するようにしましょう。
警察用の診断書の記載内容
警察用の診断書には以下の情報が記載されます。
- 傷病名
- 治療を要する日数の見込み
交通事故に遭った直後は判断材料が少ないため、医師も詳細な内容の診断書を作成できません。
<参考>
【医師が解説】診断書の「加療を要する見込み」期間の意義|交通事故
自賠責様式の診断書
保険会社が自賠責様式の診断書を取得する
保険会社が治療費を一括で支払う場合、被害者は診断書を取得する必要はありません。保険会社に「医療照会の同意書」を提出すると、保険会社が医療機関から診断書を取得します。
診断書の作成費用も保険会社が負担するため、交通事故被害者が自賠責様式の診断書を目にする機会はありません。
自賠責様式の診断書の記載内容
保険会社は、自賠責様式の診断書の内容を確認して、治療費の支払いや治療期間を判断します。診断書には以下の情報が記載されます。
- 傷病名
- 治療開始日
- 症状の経過・治療の内容および今後の見通し
- 主たる検査所見
- 初診時の意識障害
- 後遺障害の有無について
- 入院期間
- 通院期間
- ギプス固定期間
- 診断日と転帰
自賠責認定基準を熟知した実臨床家としての目線では、
① 傷病名
② 治療開始日
③ 症状の経過・治療の内容および今後の見通し
④ 主たる検査所見
⑧ 通院期間
の5つの項目が、自賠責保険の後遺障害認定に大きな影響を与えます。
後遺障害診断書
後遺障害診断書は後遺障害認定に必須
後遺障害診断書は、自賠責保険の後遺障害審査で必須の書類です。自賠責保険が最も重視するのは、後遺障害診断書の記載内容です。
後遺障害診断書は症状固定後に作成される
他の診断書と異なり、後遺障害診断書は症状固定後に作成されます。
主治医が後遺障害診断書を作成する
ほとんどの事案では、主治医が後遺障害診断書を作成します。尚、整骨院(接骨院)の柔道整復師は医師ではないため、後遺障害診断書を作成できません。
<参考>
【医師が解説】整骨院に行かない方がいいのか|交通事故の後遺障害
後遺障害診断書の費用と作成期間
医療機関によって異なりますが、おおむね5000円~10000円程度のケースが多いです。
一方、後遺障害診断書の作成期間ですが、1週間~1ヶ月程度と差があります。医療機関毎に、診断書を作成するフローが異なるからです。
後遺障害診断書が最も重要
自賠責保険の後遺障害認定は書類審査です。具体的には以下の内容で判断されます。
- 後遺障害診断書の記載内容
- 画像検査
- 自賠責様式診断書の記載内容
- 診療報酬明細書(レセプト)
- 交通事故証明書、車両の修理費用明細等
この中でも、後遺障害診断書は、画像検査と並んで最も重視される資料です。後遺障害診断書の記載内容によって、後遺障害に該当するか否かが判断されると言っても過言ではありません。
【弁護士必見】結果を出す後遺障害診断書の記載内容
後遺障害診断書には傷病毎に異なるポイントがある
前述のように自賠責保険の後遺障害認定には、後遺障害診断書の記載内容が極めて大きな影響を及ぼします。
そして、後遺障害診断書は限られた紙面にもかかわらず、多くの情報が記載される様式になっています。
私たちが把握しているだけでも、平均すると各傷病毎に20項目程度のチェックポイントがあります。
例えば、「むちうち」と脛骨高原骨折では、チェックするポイントが全く異なるのが特徴です。
このため、どのような傷病でも後遺障害が認定される「理想的」な記載内容は存在しないと言ってよいでしょう。
<参考>
【医師が解説】後遺障害診断書の等級認定に有利な記入例|交通事故
【医師が解説】効果的な後遺障害診断書のもらい方|交通事故
後遺障害診断書と画像所見や治療経過の整合性が重要
後遺障害診断書の記載内容は、画像検査の所見と一致する必要があります。注意するべき点は、主治医が記載した画像所見が必ずしも採用されるわけではないことです。
特に専門外の医師(例:外科医や内科医)が、整形外科領域の傷病の後遺障害診断書を記載する際には、放射線科医師の読影レポートを転記するケースが多いです。
ところが、ほとんどの放射線科医師は、実際に患者さんを診察した経験が無いため過剰診断が多いです。
一方、12級以上の事案では、各エリアの大学病院教員や基幹病院部長クラス以上の専門医が読影して意見を述べます。
このため、放射線科医師による過剰診断レポートが転記された診断書は、信頼性されずに非該当になりやすいです。
真に有効な後遺障害診断書の記載内容か否かを見極めるためには、専門医レベルの画像読影能力と実臨床の豊富な経験が必要です。
<参考>
【日経メディカル】画像鑑定が一人歩き?!交通事故でトラブルが多発する3つの理由
まとめ
交通事故で医療機関が作成する診断書には、以下の3つが挙げられます。
- 警察用の診断書:人身事故として処理するために必要
- 自賠責様式の診断書:治療費の支払いに必要
- 後遺障害診断書:後遺障害認定に必要
いずれの診断書も、交通事故では必須です。3種類の診断書のうち、警察用の診断書だけ医療機関所定の診断書です。
このうち、後遺障害診断書が最も重要です。後遺障害診断書の記載内容によって、後遺障害に該当するか否かが判断されると言っても過言ではありません。
交通事故でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。尚、一般の方は、必ず弁護士を通してお問い合わせ下さい。
関連ページ
資料・サンプルを無料ダウンロード
以下のフォームに入力完了後、資料ダウンロード用ページに移動します。