交通事故後、外傷性頚部症候群の痛みが続いているにもかかわらず、後遺障害が「非該当」と判断されてしまうケースは少なくありません。
しかし、その結果が妥当でないと感じた場合は、異議申し立てによって後遺障害の認定結果が覆る可能性があります。
とはいえ、「どんな理由で非該当になるのか」「どんな資料を揃えればよいのか」など、具体的な方法が分からず不安を抱く方も多いはずです。
本記事では、外傷性頚部症候群が非該当になりやすい背景から、異議申し立ての仕組み、必要書類、成功に向けたポイントまで解説しています。
最終更新日: 2025/11/26
Table of Contents
- 1 外傷性頚部症候群が後遺障害に認定されにくい背景
- 2 異議申立ての仕組みと提出に必要な準備
- 3 外傷性頚部症候群の非該当を覆すためのポイント
- 4 外傷性頚部症候群の異議申し立てで当社が提供できる支援
- 5 外傷性頚部症候群の医師意見書でよくある質問
- 5.1 非該当と言われたが、本当に異議申立てで覆る可能性はあるのか?
- 5.2 痛みが残っているのに画像で異常がないと言われた。どう評価されるのか?
- 5.3 主治医が協力的でないが、意見書や診断書を書いてもらえなかったらどうなる?
- 5.4 異議申立てで提出すべき資料は何があるのか?
- 5.5 通院実績が少ないと言われたが、もう取り返せないのか?
- 5.6 事故から時間が経っているけど、今からでも異議申立ては可能?
- 5.7 後遺障害12級と14級の違いは何?自分の症状はどちらに近い?
- 5.8 整骨院中心の通院だと不利になるのか?
- 5.9 保険会社が『症状固定』と言ってきたが従わないと不利?
- 5.10 医師の意見書はどの程度重要?内容が弱いと結果に影響する?
- 6 まとめ
- 7 関連ページ
- 8 資料・サンプルを無料ダウンロード
外傷性頚部症候群が後遺障害に認定されにくい背景
後遺障害認定基準から見る外傷性頚部症候群の評価方法
外傷性頚部症候群の後遺障害認定では、客観的な医学的証拠の有無が重視されます。
自賠責保険は、MRIやCTなどの画像検査で、神経の圧迫や損傷が確認できるかどうかを判断基準としています。
12級13号は「局部に頑固な神経症状を残すもの」として、画像所見で医学的に証明できる場合に認定されます。
一方、14級9号は、画像所見がなくても症状の一貫性や医学的な説明が認められれば、後遺障害に認定される可能性があります。
しかし、外傷性頚部症候群は骨折を伴わない病態のため、レントゲン検査では異常が映らないことが多く、認定のハードルは高いのが実情です。
等級 | 認定基準 |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
「非該当」になりやすい5つのケース
非該当となる主な理由は複数あります。第一に、画像所見で外傷性の明らかな異常が認められない場合です。
第二に、神経学的検査(ジャクソンテストやスパーリングテストなど)で異常所見が乏しい場合です。
第三に、通院頻度が少なく症状の一貫性が認められない場合です。特に通院が1ヶ月以上空くと、症状が軽いと判断されて非該当になりやすいです。
第四に、整骨院中心の治療で整形外科への通院が少ない場合も不利になることがあります。
第五に、事故の規模が軽微で車両の損傷が小さい場合、重症の後遺症が残るとは考えにくいと判断されやすいです。

異議申立ての仕組みと提出に必要な準備
そもそも異議申し立てとは何をする手続きか
異議申し立てとは、後遺障害等級に不服がある場合に、再度の審査を求める手続きです。
非該当や想定より低い後遺障害等級に認定された場合に利用できます。異議申し立てには回数制限がなく、何度でも申し立てることが可能です。
審査期間は通常2~3ヶ月程度ですが、複雑な事案では6ヶ月程度かかることもあります。
手続に不可欠な書類と提出すべき窓口
異議申し立てには必ず「異議申立書」の提出が必要です。異議申立書には、認定結果に納得できない理由を論理的・医学的に記載します。
その他に任意で提出する書類として、新たに作成した後遺障害診断書、カルテ、画像検査、神経学的検査、医師意見書、画像鑑定などがあります。
提出先は、事前認定の場合は加害者側の任意保険会社、被害者請求の場合は自賠責保険会社です。
新たな医学的証拠がない場合、異議申し立てをしても結果が変わる可能性はほとんどありません。
準備期間と実際にかかる費用の目安
異議申し立て自体に手数料はかからず、無料で行えます。ただし、新たな画像検査や診断書、医師意見書などを取得する際には実費が必要です。
弁護士に依頼する場合は弁護士費用がかかりますが、弁護士費用特約に加入していれば自己負担なく依頼できます。
準備期間は、必要な書類の収集や医師との調整にかかる時間によって異なりますが、できるだけ早期に対応することが推奨されます。
外傷性頚部症候群の非該当を覆すためのポイント
非該当理由をどう読み解くか
自賠責保険から送付される等級通知書には、非該当理由が記載されています。この理由を詳細に分析することが異議申し立て成功の鍵となります。
典型的な非該当理由は3つあります。第一に「外傷性の異常所見がない」です。しかし、画像所見がなくても14級が認められる可能性はあります。
第二に「治療経過、症状の推移等を勘案した結果、将来においても回復が困難と見込まれる障害とは捉えがたい」という理由です。
第三に「自覚症状を裏付ける神経学的所見に乏しい」という理由です。これらの理由を読み解き、不足している医証を補完することが重要です。
後遺障害認定条件を満たすための要点整理
後遺障害が認定されるためには、約20項目近くある後遺障害認定基準の多くを満たす必要があります。主な要点は以下の通りです。
- 事故と症状に整合性がある
- 後遺症と各種検査結果が一致している
- 事故直後から症状固定まで症状が一貫して続いている
- 常に後遺症が存在している
- 通院頻度が適切である
- 画像検査で症状と整合する所見が認められる
週3日程度の通院が推奨され、1ヶ月以上通院が空くと認定が困難になります。これらの条件を整理して、不足している部分を補うことが重要です。
医師意見書など”追加医証”の提出が重要な理由
異議申し立てでは、新規医証の提出が必須です。以前と同じ資料のみでは、再審査で結果が覆る可能性は無いためです。
医師意見書は、カルテや診断書を基に、症状の経過や治療内容、事故と後遺症との因果関係を医学的に解説する文書です。
専門医による医師意見書は、前回審査で見落とされた医学的事実を解説して、後遺障害認定基準に合致することを伝える役割を果たします。
画像鑑定では、MRIなどの画像検査を専門医が精査して、椎間板変性、椎間孔狭窄、神経根圧迫所見などの異常を発見できる可能性があります。
主治医が意見書作成に非協力的な場合でも、第三者の専門医による医師意見書を取得することで、異議申し立ての成功率を高めることができます。
<参考>
12級13号・14級9号に該当しやすいパターン
12級13号に該当しやすいパターンは、MRI検査などの画像所見で神経圧迫が明確に認められ、神経学的検査でも異常所見が得られている場合です。
14級9号に該当しやすいパターンは、頚椎椎間板の膨隆等などの画像所見があり、神経症状を示す異常所見が得られている場合です。
また、受傷時の状態や治療の経過から連続性・一貫性が認められ、症状が医学的に説明可能な場合も該当します。
外傷性頚部症候群で後遺障害認定されるポイントは、こちらのコラム記事でも紹介しています。是非、参照していただきたいと思います。
<参考>
外傷性頚部症候群の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
外傷性頚部症候群の異議申し立てで当社が提供できる支援
弁護士向けサポート内容
弊社では、交通事故で受傷した外傷性頚部症候群の後遺症が、後遺障害に認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。
等級スクリーニング®
現在の状況で、後遺障害に認定されるために足りない要素を、後遺障害認定基準および医学的観点から、レポート形式でご報告するサービスです。
等級スクリーニング®は、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。
等級スクリーニング®の有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニング®を承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング®】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定

医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。
医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。
弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
外傷性頚部症候群の異議申し立てで悩む被害者へのサポート内容
弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。
また、弊社では交通事故業務に精通している全国の弁護士を紹介することができます。
もし、後遺障害認定で弁護士紹介を希望される被害者の方がいらっしゃれば、こちらのリンク先からお問い合わせください。
尚、弁護士紹介サービスは、あくまでもボランティアで行っています。このため、電話での弊社への問い合わせは、固くお断りしております。
弊社は、電話代行サービスを利用しているため、お電話いただいても弁護士紹介サービスをご提供できません。ご理解いただけますよう宜しくお願い申し上げます。

外傷性頚部症候群の医師意見書でよくある質問
非該当と言われたが、本当に異議申立てで覆る可能性はあるのか?
異議申し立てで結果が覆る可能性は十分にあります。2021年度の統計では、異議申し立ての成功率は約13%とされています。
しかし、後遺障害に詳しい専門医が見込みがあると判断した案件に限れば、50%程度は成功するという実感があります。
重要なのは、前回審査で不足していた医学的証拠を追加して、非該当理由に対して適切に反論することです。
痛みが残っているのに画像で異常がないと言われた。どう評価されるのか?
画像所見で異常が認められなくても、後遺障害14級9号が認定される可能性はあります。
外傷性頚部症候群は基本的に骨傷のない病態であり、レントゲン検査やMRI検査で明確な異常が映らないことが一般的です。
そのため、自賠責保険では、通院頻度や症状の一貫性、神経学的検査の結果などを総合的に評価して後遺障害を審査します。
医師意見書で症状の経過や治療内容を詳細に解説することで、後遺障害認定の可能性を高めることができます。
主治医が協力的でないが、意見書や診断書を書いてもらえなかったらどうなる?
主治医が意見書や診断書の作成に協力的でない場合、まずは弁護士から医師に交渉することで作成してもらえる可能性があります。
弁護士が依頼しても協力が得られない場合は、転院して別の医師に意見書や診断書を書いてもらう方法もあります。
意見書に関しては、弊社のような医療鑑定会社への依頼も有効です。成功率を高めるためには、取扱事案数の多い経験豊富な会社が望ましいです。
異議申立てで提出すべき資料は何があるのか?
異議申し立てでは、必ず「異議申立書」を提出する必要があります。それ以外にも、以下のような資料が挙げられます。
- 新たに作成した後遺障害診断書
- 医師意見書、画像鑑定
- カルテ
- MRIやCTなどの新たな画像検査
- 新たな神経学的検査
医療照会回答書も有効で、通院していた複数の病院に対して医師に医学的所見を記載してもらうことで、症状の一貫性を証明できます。
通院実績が少ないと言われたが、もう取り返せないのか?
通院実績が少ないことは後遺障害認定で極めて不利になりますが、完全に取り返せないわけではありません。
異議申し立ての段階では、症状固定後も自費で治療を続けていることを報告書で示すことで、症状の残存を証明できる可能性があります。
また、通院頻度が少なくても、症状の一貫性が他の資料で証明できれば、認定される可能性はあります。
ただし、通院が1ヶ月以上空いている場合や、整骨院中心で整形外科への通院が極端に少ない場合は、後遺障害認定が非常に困難になります。
症状固定前の段階であれば、適切な通院頻度(週3日程度)を維持することが重要です。
事故から時間が経っているけど、今からでも異議申立ては可能?
異議申し立てには自賠責法上の明確な期限は設けられていないため、事故から時間が経過していても申し立ては可能です。
ただし、損害賠償請求権の消滅時効(原則3年)や診断書等の有効性を考慮すると、できるだけ早期に対応すべきです。
時間が経過すると、医療記録の入手が困難になったり、症状の一貫性を証明しにくくなる可能性があります。
また、主治医が異動していたり、カルテの保存期間が経過している場合もあります。
それでも、現在も症状が残存していることを証明できる資料があれば、異議申し立て成功の可能性はあります。
弁護士や専門家に早めに相談して、残存している資料を確認することが重要でしょう。
後遺障害12級と14級の違いは何?自分の症状はどちらに近い?
12級13号と14級9号の違いは、神経症状の明確さです。12級13号は、MRIやCTなどで他覚的に証明される異常所見が認められる場合に該当します。
具体的には、画像所見で明らかな神経圧迫の存在が確認されて、神経学的検査でも異常所見が得られている場合です。
14級9号は、画像所見で明確な異常は認められないが、症状の一貫性や医学的な説明可能性が認められる場合に該当します。
外傷性頚部症候群では、画像所見で異常が映らないことが多いため、14級9号に認定されることが大多数です。
自分の症状がどちらに近いかは、MRI検査の結果と神経学的検査の結果を総合的に判断する必要があります。
整骨院中心の通院だと不利になるのか?
整骨院中心の通院でも後遺障害が認定されないわけではありませんが、不利になる可能性があります。
後遺障害診断書は医師しか作成できないため、整形外科への通院も必要です。
整骨院のみで治療していると、医師による診断や検査が不十分になり、医学的証拠が乏しくなる可能性があります。
どうしても整骨院に通いたいなら、整形外科で定期的に医師の診察と検査を受けながら、整骨院でリハビリを受けるという併用が望ましいです。
整骨院への通院頻度は週3日程度が推奨され、それに加えて整形外科にも定期的に通院することで、後遺障害認定の可能性を高めることができます。
整骨院での治療を受ける際は、事前に医師の同意を得て、保険会社に通院計画を報告することが重要です。
保険会社が『症状固定』と言ってきたが従わないと不利?
保険会社が症状固定を求めてきても、従う必要はありません。症状固定は医学的な判断であり、原則的に医師が行うものです。
保険会社が症状固定を求めるのは、治療費の支払いを早期に打ち切りたいという理由からです。
症状が残っており、医師も治療継続の必要性を認めている場合は、保険会社に治療継続の意向を伝えることができます。
弁護士に依頼して、保険会社と治療費継続の交渉をしてもらうことも可能です。
ただし、一般的な治療期間を過ぎており、治療内容がリハビリ中心で症状に大きな変化がないと、症状固定していると判断されやすいです。
症状固定のタイミングは後遺障害認定に影響するため、医師とよく相談して適切な時期を判断することが重要です。
医師の意見書はどの程度重要?内容が弱いと結果に影響する?
医師の意見書は異議申し立てで非常に重要な役割を果たします。一方、医師意見書の内容が弱いと、認定結果に影響する可能性があります。
整形外科専門医による医師意見書は、後遺症の存在を医学的に証明して、後遺障害認定基準に合致することを正確に伝える効果があります。
医学意見書を添付して異議申し立てをした結果、後遺障害が認定された事例が多数報告されています。
重要なのは、画像所見、治療経過の一貫性、症状の医学的説明を総合的に記載して、後遺障害認定基準に準拠して証明や反論を行うことです。
まとめ
外傷性頚部症候群は画像異常が出にくいため非該当になりやすく、12級13号や14級9号の基準を満たすには医学的証拠や症状の一貫性が重要です。
非該当になる主な理由は、画像所見の不足、神経学的検査の異常の乏しさ、通院間隔の空き、整骨院中心の治療、事故規模の小ささなどです。
認定結果に不服がある場合は異議申し立てが可能で、異議申立書のほか、医師意見書や画像鑑定など新たな医証が成功の鍵となります。
整形外科専門医による医師意見書は、認定基準を満たす証拠補強に有効で、評価が覆る可能性を高めます。
外傷性頚部症候群の異議申し立てでお困りなら、こちらからお問い合わせください。初回の法律事務所様は無料で等級スクリーニングを承ります。
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