交通事故で肩鎖関節脱臼と診断されたのに、後遺障害が非該当になったり低い等級に認定されるケースは少なくありません。
こうした時には、異議申し立てや訴訟を提起せざるを得ませんが、重要な役割を果たすのが「医師意見書」です。
医師意見書は、診断書よりも詳しく医学的な所見や後遺症を説明するもので、異議申し立てや示談交渉、裁判などで有用な証拠となります。
しかし、「医師意見書にどんな内容を記載してもらえばよいのか」「どうやって依頼すればよいのか」と迷う方も多いことでしょう。
本記事では、肩鎖関節脱臼に関する医師意見書の基本知識から、活用法・取得方法・費用の目安までを分かりやすく解説しています。
最終更新日: 2025/10/29
Table of Contents
肩鎖関節脱臼と医師意見書の基礎知識
肩鎖関節脱臼の主な後遺症と後遺障害認定の難しさ
肩鎖関節脱臼は、鎖骨と肩甲骨の連結が外れる外傷で、外観上の変形や鈍い痛みが残りやすいのが特徴です。
一方、肩関節の痛みや可動域制限が残っても、画像上の変化が軽度だと後遺障害に認定されない場合があります。
そのため、肩関節の疼痛や可動域制限が続く原因について解説した、医師意見書が重要となります。
<参考>
肩鎖関節脱臼の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
医師意見書の役割と作成目的を解説
医師意見書は、診断書よりも詳細に、被害者の症状や後遺症の医学的根拠を解説する文書です。
交通事故の異議申し立てなどで、診断書や画像検査だけでは伝わらない後遺症の病態や原因を補足する役割を担います。
肩鎖関節脱臼の医師意見書に記載すべき医学的ポイント
肩鎖関節脱臼に関する医師意見書には、主に以下のような内容が記載されるケースが多いです。
- 傷病名
- 治療経過
- 後遺症の種類や重症度
- 症状固定時期
- 画像検査の結果
- 脱臼と後遺症の因果関係
これら以外にも、肩鎖関節脱臼の後遺障害認定基準を満たしていることを、医学論文なども引用して解説します。
医師意見書と診断書の違い
診断書は、傷病名、病状、治療期間などを簡潔に記載する文書で、一般的に保険請求や雇用上の証明に使われます。
これに対して医師意見書は、症状の原因や後遺症の程度について、専門医の見解を詳述して、第三者に解説する役割を果たします。
医師意見書は、特に後遺障害等級を争う訴訟や異議申し立ての場面で、当方の主張を裏付ける証拠として重視されています。

肩鎖関節脱臼の後遺障害認定で医師意見書が重要な理由
医師意見書が認定結果を左右するケースとは
肩鎖関節脱臼は、脱臼の程度が軽い事案(Rockwood分類でType 1やType 2)では、変形障害が認定されないケースが多いです。
一方、肩より上に上肢を挙上する際に、鈍痛を訴える人が多いです。疼痛を残した事案では、神経障害の14級9号に認定される可能性があります。
ただし、異議申し立てするだけでは、後遺障害に認定される可能性は低いです。医師意見書などで、痛みの原因を詳細に解説する必要があります。
肩鎖関節脱臼が後遺障害認定基準を満たすことを主張
肩鎖関節脱臼では、画像検査や身体所見で後遺障害が審査されます。医師意見書では、後遺症が認定基準を満たしていることを主張できます。
異議申し立てや裁判で医学的証拠として使われる
医師意見書は、異議申し立てで当方の主張を裏付ける重要な証拠書類です。医師意見書を添えることで、等級が変更されることがあります。
また、裁判においても、整形外科専門医が作成した医師意見書は、証拠能力が高いとされています。
医師意見書を用いた3つの活用法
異議申し立て:非該当・低い等級の結果を覆す
異議申し立てでは、新たな画像検査や診断書、そして医師意見書を提出して、後遺障害の再審査を求めます。
医師意見書で、前回申請時に認められなかった後遺症の根拠を明確に解説することで、等級が変更される可能性があります。
示談交渉:保険会社に医学的根拠を提示して交渉を有利に
保険会社との示談交渉では、医師意見書を提出することで、被害者の後遺症が医学的に重いことを示せます。
単なる主張ではなく、整形外科専門医の見解として提示することで、保険会社は軽視できず、賠償金の査定を見直すきっかけになります。
裁判:専門医の見解を証拠として活用する
裁判において、医師意見書は医学的証拠として採用されやすく、後遺障害や労働能力への影響を立証するのに役立ちます。
特に、整形外科専門医の見解は裁判官に与える影響も大きいため、当方の主張を裏付ける重要な証拠資料となります。
医師意見書の作成依頼|費用・期間・依頼時の注意点
依頼から入手までのスムーズな手順
肩鎖関節脱臼の医師意見書の取得は、まず相談書、診断書、画像検査、診療報酬明細などの必要資料を準備して、医療鑑定会社に依頼します。
見積金額の了承後、医師意見書の骨子案(検討項目)が提案されます。骨子案に問題が無ければ、約4週間で初稿(医師意見書案)が提出されます。
医師意見書案に問題が無ければ、費用を支払います。入金確認後に医師意見書の原本が発送される流れが一般的です。
主治医に提供すべき資料と伝えるべき情報
肩鎖関節脱臼の異議申し立てで使用する医師意見書の作成には、以下のような書類や資料が必要です。
- 相談書(依頼時にお渡しします)
- 画像検査
- 後遺障害診断書
- 診断書
- 診療報酬明細(レセプト)
- 損害確認報告書 / 事故現場実況見分調書 / 車の損傷写真 など
- 後遺障害等級結果連絡書
- 診療録(カルテ)
症状や治療経過、日常生活の支障程度が分かる資料が多いほど、医師意見書の信頼性が高まります。
医師意見書の費用
| 概要 | 価格 | 
| 整形外科 | 23万円 | 
| 脳神経外科、脳神経内科 | 29万円 | 
| 耳鼻科、眼科、歯科など | 29万円 | 
| 精神科 | 31万円 | 
| 訴訟加算(整形外科) | 4万円 | 
| 訴訟加算(その他の科) | 1万円 | 
| 多部位加算(3部位以上) | 3万円/数 | 
| 特急対応加算 | 2万円 | 
| 難事案加算 | 6万円~ | 
| 反論意見書 | -5万円 | 
医師意見書の作成に必要な料金は、基本料金をベースとして以下の要素で変動します。
- 診療科目
- 訴訟事案
- 顧問契約の有無
- 弁護士特約の有無
- 納品時期
整形外科領域における一般的な事案では、20万円台の料金負担で各領域の専門医による医師意見書の作成が可能です。
弊社の医師意見書作成にかかる、加算や割引などの詳細は、こちらをご確認ください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
肩鎖関節脱臼の医師意見書取得にかかる期間
肩鎖関節脱臼の医師意見書を取得するまでの期間は依頼内容によります。一般的には4週間ほどで初稿(医師意見書案)が納品されます。
医師意見書案への修正依頼に、専門医が対応するのにかかる期間は、1~2週間のケースが多いです。
肩鎖関節脱臼の後遺障害認定ポイント【弁護士必見】
肩鎖関節脱臼が、適切な後遺障害等級に認定されるには、以下のような後遺障害認定基準をすべて満たす必要があります。
- 肩鎖関節脱臼と症状に整合性がある
- 後遺症と各種検査が一致している
- 事故後から症状固定まで症状が続いている
- 常に後遺症が存在している
シンプルに見えますが、すべてをクリアしている事案は少ないです。また、これら以外にも、たくさんの後遺障害認定基準が存在します。
医師意見書の価値は、後遺障害認定基準に足りていない要素を補強して、後遺障害の蓋然性を主張する点にあります。
この目的を達成するためには、医師意見書を受任する医療鑑定会社が、後遺障害認定基準を知り尽くしている必要があります。
肩鎖関節脱臼が後遺障害認定されるポイントは、こちらのコラム記事で詳しく紹介しています。是非、参照していただきたいと思います。
<参考>
肩鎖関節脱臼の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
【弁護士の方へ】肩鎖関節脱臼の医学的立証サポート
弁護士向けサービスのご案内
弊社では、交通事故で受傷した、肩鎖関節脱臼の後遺症が、後遺障害に認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。
等級スクリーニング®
現在の状況で、後遺障害に認定されるために足りない要素を、後遺障害認定基準および医学的観点から、レポート形式でご報告するサービスです。
等級スクリーニング®は、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。
等級スクリーニング®の有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニング®を承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング®】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定

医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。
医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。
弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
被害者向けの弁護士紹介サービス
弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。
また、弊社では交通事故業務に精通している全国の弁護士を紹介することができます。
もし、後遺障害認定で弁護士紹介を希望される被害者の方がいらっしゃれば、こちらのリンク先からお問い合わせください。
尚、弁護士紹介サービスは、あくまでもボランティアで行っています。このため、電話での弊社への問い合わせは、固くお断りしております。
弊社は、電話代行サービスを利用しているため、お電話いただいても弁護士紹介サービスをご提供できません。ご理解いただけますよう宜しくお願い申し上げます。

肩鎖関節脱臼の医師意見書でよくある質問
受傷機転と肩鎖関節脱臼との因果関係は説明できますか?
肩に加わる外力の方向や肩鎖関節への負荷を説明することで、受傷機転と肩鎖関節脱臼との因果関係を明確にできます。
また、診療録の記載内容や治療経過を精査することで、交通事故との因果関係を、より医学的に証明できます。
鎖骨の変位(転位)や靱帯損傷の程度はどのように評価されていますか?
肩鎖関節脱臼において、鎖骨の上方転位や靱帯損傷の程度は、レントゲン検査での評価が基本です。
鎖骨肩峰間距離の数値を比較して、正常側との差が明確であれば、損傷の重症度を判断できます。
医師意見書には、Rockwood分類を引用して、客観的な脱臼の程度と臨床所見の両方を記載することが重要です。
肩関節の可動域制限は肩鎖関節脱臼の後遺症として医学的に妥当ですか?
肩鎖関節脱臼には、肩関節の可動域制限は併発しにくいです。しかし、疼痛性の肩関節拘縮をきたす症例も存在します。
このため、肩関節の可動域制限は、肩鎖関節脱臼の後遺症として医学的に妥当と言えます。
日常生活や仕事への具体的な支障は、医学的にどのように説明できますか?
肩鎖関節脱臼では、腕の挙上や重い物を持ち上げる動作で痛みが再発しやすく、肩の安定性が損なわれることがあります。
医師意見書では、画像所見や肩関節の可動域などの客観的な指標も用いて、日常生活や仕事への具体的な支障を説明します。
肩鎖関節脱臼後の痛みの原因について医学的説明は可能ですか?
肩鎖関節脱臼後の痛みは、靭帯や関節包の損傷、瘢痕形成により神経が刺激されることが主因と考えられています。
また、鎖骨の上方転位が残ると周囲筋群への負担が増大して痛みを残すケースもあります。医師意見書では、これらの要因を医学的に説明します。
まとめ
肩鎖関節脱臼は、鎖骨と肩甲骨の連結が外れる外傷で、外見上の変形、痛み、肩関節の可動域制限を残すことがあります。
肩鎖関節脱臼後に肩の可動域制限や疼痛が残っても、後遺障害認定は難しいのが実情です。
非該当になった場合には、医師意見書で後遺症の医学的根拠や因果関係を詳しく説明することが重要です。
医師意見書は、診断書より詳細に後遺症の原因や重症度を示して、異議申し立てや裁判で強い証拠となります。
肩鎖関節脱臼の後遺障害認定でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。尚、初回の法律事務所様は無料で承ります。
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