交通事故や労災事故による肩の傷病の中でも、腱板断裂は後遺障害認定をめぐって争いになりやすいケガの一つです。
腱板断裂では「事故が原因かどうか」が争点になりやすいです。そこで重要になるのが医師意見書です。
医師意見書は、画像所見や治療経過を踏まえて腱板断裂の状態を評価します。異議申し立て、示談交渉、裁判で医学的根拠として活用されます。
本記事では、腱板断裂に関する医師意見書の基礎知識から、活用される場面、取得方法や費用などを分かりやすく解説しています。
最終更新日: 2025/10/11
Table of Contents
腱板断裂と医師意見書を理解するための基本知識
肩の腱板断裂とはどのような傷病か
腱板断裂とは、肩の回旋運動を支える腱板という軟部組織が損傷するケガです。症状には、肩の痛みや筋力低下があります。
交通事故や転倒などの外傷で起こる場合と、加齢による変性が原因で自然に断裂する場合があります。
腱板断裂では、肩の痛みや筋力低下、可動域制限が強く、日常生活や仕事に影響することも多いです。
<参考>
肩腱板断裂の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
医師意見書とは何か
医師意見書は、カルテや画像検査などの医証や臨床経過を基にして、後遺症や労働能力の制限について、医師が医学的な見解をまとめた文書です。
後遺症について詳細に検討されているので、異議申し立て(後遺障害認定)、示談交渉、裁判において医学的根拠を補強する役割を持ちます。
腱板断裂に関する医師意見書の主な記載項目
腱板断裂に関する医師意見書には、主に以下のような内容が記載されるケースが多いです。
- 傷病名
- 治療経過
- 後遺症の種類や重症度
- 症状固定時期
- 画像検査の結果
- 事故と後遺症の因果関係
これら以外にも、腱板断裂の後遺障害認定基準を満たしていることを、医学論文なども引用して解説します。
医師意見書と診断書の実務上の違い
診断書は、病名や受傷部位、治療経過を簡潔に証明する文書です。受傷直後に、警察や職場、保険会社に提出するケースが多いです。
一方、医師意見書は「事故と腱板断裂との因果関係」「症状がどれほど機能制限を残すか」などを詳しく説明します。
特に、後遺障害が非該当になった事案では、後遺障害に認定される蓋然性を主張するために、医師意見書が必要になるケースが多いです。
腱板断裂において医師意見書が重要とされる理由
腱板断裂による後遺症の医学的根拠を示す
腱板断裂では、肩関節を上げる動作や日常の細かな動きが難しくなり、慢性的な痛みを伴う場合もあります。
医師意見書では、腱板断裂によって肩関節の痛みや可動域制限が残る蓋然性を医学的に詳述します。
後遺障害等級認定に医師意見書が与える影響
後遺障害の認定では、腱板断裂による後遺症が、後遺障害認定基準を満たしているかについて審査されます。
医師意見書は、医学的なエビデンスを提示しながら、腱板断裂の後遺症が後遺障害認定基準を満たしていることを解説します。
異議申し立てや訴訟での証拠資料としての意義
後遺障害認定で非該当になった場合でも、医師意見書を添付して異議申し立てを行うことで、認定結果を覆す可能性があります。
また、訴訟や保険会社との示談交渉でも、肩関節外科医による医師意見書は、医学的証拠として高い効力を発揮します。
腱板断裂の医師意見書を有効に活用する方法
異議申し立てで後遺障害認定の根拠を補強する
腱板断裂の後遺症が残ったにもかかわらず、非該当や低い等級認定になった場合、異議申し立てで再審査申請できます。
しかし、自賠責保険への異議申し立てでは、新たな医証を添付しなければ後遺障害に認定されません。
医師意見書は、腱板断裂による後遺症が、後遺障害認定基準を満たしていることを、医学的に詳述して当方の主張を補強します。
保険会社との示談交渉を優位に進めるための活用
示談交渉において、後遺障害診断書などの医証だけでは、保険会社は補償額を低く見積もる傾向にあります。
医師意見書があれば、後遺症の程度や長期的影響を医学的に示すことができるため、交渉を進める上での根拠となります。
裁判での医学的証拠
医師意見書は、MRI検査や身体所見を基にして、後遺症の程度や事故との因果関係を医学的に解説します。
裁判では、当方の主張が医学的に妥当かどうかが重要視されます。このため、説得力を持つ医師意見書は、証拠として採用されやすいです。
腱板断裂の医師意見書を取得するための実務ガイド
医師意見書取得の具体的な流れ
腱板断裂の医師意見書の取得は、まず相談書、診断書、画像検査、診療報酬明細などの必要資料を準備して、医療鑑定会社に依頼します。
見積金額の了承後、医師意見書の骨子案(検討項目)が提案されます。骨子案に問題が無ければ、約4週間で初稿(医師意見書案)が提出されます。
医師意見書案に問題が無ければ、費用を支払います。入金確認後に医師意見書の原本が発送される流れが一般的です。
腱板断裂の医師意見書作成に必要な書類
腱板断裂の異議申し立てで使用する医師意見書の作成には、以下のような書類や資料が必要です。
- 相談書(依頼時にお渡しします)
- 画像検査
- 後遺障害診断書
- 診断書
- 診療報酬明細(レセプト)
- 損害確認報告書 / 事故現場実況見分調書 / 車の損傷写真 など
- 後遺障害等級結果連絡書
- 診療録(カルテ)
症状や治療経過、日常生活の支障程度が分かる資料が多いほど、医師意見書の信頼性が高まります。
腱板断裂の医師意見書作成の費用相場
概要 | 価格 |
整形外科 | 23万円 |
脳神経外科、脳神経内科 | 29万円 |
耳鼻科、眼科、歯科など | 29万円 |
精神科 | 31万円 |
訴訟加算(整形外科) | 4万円 |
訴訟加算(その他の科) | 1万円 |
多部位加算(3部位以上) | 3万円/数 |
特急対応加算 | 2万円 |
難事案加算 | 6万円~ |
反論意見書 | -5万円 |
腱板断裂の医師意見書の作成に必要な料金は、基本料金をベースとして以下の要素で変動します。
- 診療科目
- 訴訟事案
- 顧問契約の有無
- 弁護士特約の有無
- 納品時期
整形外科領域における一般的な事案では、20万円台の料金負担で各領域の専門医による医師意見書の作成が可能です。
弊社の医師意見書作成にかかる、加算や割引などの詳細は、こちらをご確認ください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
腱板断裂の医師意見書取得までに必要な期間の目安
腱板断裂の医師意見書を取得するまでの期間は依頼内容によります。一般的には4週間ほどで初稿(医師意見書案)が納品されます。
医師意見書案への修正依頼に、専門医が対応するのにかかる期間は、1~2週間のケースが多いです。
腱板断裂による後遺障害認定の重要ポイント【弁護士必見】
腱板断裂が、適切な後遺障害等級に認定されるには、以下のような後遺障害認定基準をすべて満たす必要があります。
- 事故と腱板断裂に因果関係がある
- 後遺症と各種検査が一致している
- 事故後から症状固定まで症状が続いている
- 常に後遺症が存在している
シンプルに見えますが、すべてをクリアしている事案は少ないです。また、これら以外にも、たくさんの後遺障害認定基準が存在します。
医師意見書の価値は、後遺障害認定基準に足りていない要素を補強して、後遺障害の蓋然性を主張する点にあります。
この目的を達成するためには、医師意見書を受任する医療鑑定会社が、後遺障害認定基準を知り尽くしている必要があります。
腱板断裂が後遺障害認定されるポイントは、こちらのコラム記事で詳しく紹介しています。是非、参照していただきたいと思います。
<参考>
肩腱板断裂の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
腱板断裂の後遺障害認定サポートにおける弊社の支援内容
弁護士の皆様へのサポート体制
弊社では、交通事故で受傷した、腱板断裂の後遺症が、後遺障害に認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。
等級スクリーニング®
現在の状況で、後遺障害に認定されるために足りない要素を、後遺障害認定基準および医学的観点から、レポート形式でご報告するサービスです。
等級スクリーニング®は、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。
等級スクリーニング®の有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニング®を承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング®】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定
医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。
医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。
弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
腱板断裂で後遺障害認定に悩む患者様への支援
弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。
また、弊社では交通事故業務に精通している全国の弁護士を紹介することができます。
もし、後遺障害認定で弁護士紹介を希望される被害者の方がいらっしゃれば、こちらのリンク先からお問い合わせください。
尚、弁護士紹介サービスは、あくまでもボランティアで行っています。このため、電話での弊社への問い合わせは、固くお断りしております。
弊社は、電話代行サービスを利用しているため、お電話いただいても弁護士紹介サービスをご提供できません。ご理解いただけますよう宜しくお願い申し上げます。
腱板断裂の医師意見書でよくある質問
腱板断裂は交通事故によるものか、加齢性変化かの判断は可能ですか?
医師意見書では、受傷時の状況や画像所見を検討して、事故による外傷性断裂か、加齢性変化による断裂かを説明することが可能です。
医師意見書は、腱板断裂で争点になりやすい事故と腱板断裂の因果関係を立証する際の重要な資料となります。
腱板断裂のMRIやエコーなどの画像所見は意見書にどのように反映されますか?
MRIやエコーなどの画像所見は、腱板断裂の範囲、部位、進行度を医学的に示す重要な根拠です。
医師意見書は、これらの画像所見を引用しつつ、具体的な症状や機能障害との関連性を詳細に解説します。
腱板断裂が部分断裂か完全断裂かによって意見書の内容は変わりますか?
腱板断裂が部分断裂か完全断裂かによって、意見書に記載される内容は異なります。
腱板の部分断裂では痛みの残存に重点が置かれ、完全断裂では可動域制限が回復困難であることを説明するケースが多いです。
交通事故後の肩の可動域制限は後遺障害等級認定にどう影響しますか?
肩の可動域制限は、後遺障害等級認定に影響を及ぼす最も重要な要素の一つです。
医師意見書では、MRI検査での腱板断裂の状態を検討したうえで、可動域制限が残る蓋然性を解説します。
保存療法(リハビリ、注射など)と手術療法の治療経過は意見書でどう記載されますか?
医師意見書では、保存療法で改善が見られなかった経過や、手術後も残存する可動域制限や痛みについて詳細に記載されます。
治療の過程を詳細に解説することで、後遺症の存在や回復困難性を医学的に示すことが可能です。
腱板断裂後の労働能力への影響について、意見書に記載できますか?
医師意見書では、重い物を持つ作業、反復的な肩の動作などの労働に、どのような制限が生じるかを明確に示すことができます。
労働能力喪失率に関する示談交渉や訴訟において、医師意見書は当方の主張を裏付ける医証となります。
画像や診断書だけでは不十分で、医師意見書が必要とされるケースはどんな場合ですか?
診断書は客観的事実の記載が中心であり、交通事故と腱板断裂との因果関係や労働能力喪失率については十分ではありません。
そのため、異議申し立てや保険会社との示談交渉を行う際には、医師意見書が必要になるケースが多いです。
まとめ
腱板断裂は、交通事故や加齢によって発生して、痛みや可動域制限が強く残ることがあります。後遺症の有無や程度を医学的に示すのが医師意見書です。
医師意見書は、事故との因果関係や後遺症の程度を詳しく説明するため、異議申し立て、示談交渉、裁判で重要な証拠となります。
腱板断裂の後遺障害認定でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。尚、初回の法律事務所様は無料で承ります。
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