交通事故によって後遺障害14級と認定されたものの、受け取れる「逸失利益」がどれほどの金額になるのか、具体的にイメージできない方も多いのではないでしょうか。
実は、後遺障害14級でも適切な資料と根拠をそろえることで、将来的な減収分として逸失利益を請求できる可能性があります。
ただし、計算には年収や職業、年齢などが大きく影響し、証明の仕方次第で金額が大きく変わることもあります。
本記事では、逸失利益の計算方法を年収別・職業別に詳しく紹介しています。また、適切に損害を補償してもらうための重要なポイントも解説します。
最終更新日: 2025/7/4
Table of Contents
後遺障害14級の逸失利益の計算例【年収別】
基礎収入200万円のケース
基礎収入200万円のケースでは、逸失利益の計算式「200万円 × 労働能力喪失率5% × ライプニッツ係数(4.5797、5年を想定)」により、約45万8千円となります。
ただし、労働能力喪失期間は症状や年齢、職業によって5年より長く認められる場合もあります。
基礎収入400万円のケース
基礎収入400万円では同じ計算式を用い、「400万円 × 5% × 4.5797 ≒ 約91万6千円」が逸失利益の目安です。
基礎収入800万円のケース
基礎収入800万円の場合は、「800万円 × 5% × 4.5797 ≒ 約183万円」が算出されます(弁護士基準想定)。
高年収の方ほど逸失利益は大きくなり、証拠提出やライプニッツ係数期間の立証がポイントです。
保険会社提示額との差額を埋めるために、弁護士介入が効果的です。
後遺障害14級の逸失利益の計算例【職業別】
会社員(基礎収入400万円)
会社員の場合、事故前の基本給や手当・賞与を含む年収を基礎に計算します。
14級の労働能力喪失率5%を適用して、ライプニッツ係数(年齢や症状に応じて5年分が目安ですが、より長期間が認められる場合もあります)を掛けて算出します。
配置転換や昇格見送りといった実質的な減収を立証することで、保険会社提示額からの増額が狙えます。
自営業者・個人事業主
自営業者は、確定申告書に基づく所得額を基礎収入とします。事故により店舗休業や営業機会損失が発生すると、逸失利益が高くなる可能性があります。
収入実績を証明できない場合は、賃金センサス等の平均値を根拠に基礎収入を算定する場合があります。
専業主婦
専業主婦でも、家事労働を労働とみなして、逸失利益が認められます。
賃金センサスの女子労働者全年齢平均を基礎収入として、5%の労働能力喪失率とライプニッツ係数を掛けて計算します。
パート労働がある場合は、実収入か賃金センサスの高い方を基準とします。
高齢者
高齢者は、就労可能性があるかが重要です。労働意欲と能力があれば、年齢別賃金センサスを基礎収入として、5%の喪失率とライプニッツ係数を掛けて逸失利益を計算します。
就労が難しいと見なされれば、請求自体が認められにくくなります。
18歳未満の子供
18歳未満の子供は、賃金センサスの全年齢平均を基礎収入とし、就労可能年数として18〜67歳までとみなします。
計算上は「67歳までのライプニッツ係数-18歳までのライプニッツ係数」を用いるのが一般的です。
将来の就労期間が長いため、逸失利益額も相対的に大きくなります。
失業中の人
失業中でも、労働意欲と就業可能性が認められれば逸失利益を請求できます。
事故前の収入または平均賃金センサスを基礎収入として用いて、喪失率5%と係数計算をします。再就職見込みや過去の収入実績が立証要素となります。
逸失利益とは?
事故が無ければ本来得られたはずの利益
逸失利益とは、交通事故が無ければ将来にわたって得られたはずの収入や利益を補償するものです。
後遺障害や死亡によって失われた将来の収入は、加害者への請求が可能で、損害賠償の中でも高額になりやすい重要項目です。
逸失利益の計算に必要な要素①|基礎収入
基礎収入は、事故前に獲得していた年収や職業別統計(賃金センサスなど)を元に算出します。
会社員なら源泉徴収票、自営業なら確定申告書、専業主婦や学生は統計値を用いるのが通常です。
逸失利益の計算に必要な要素②|労働能力喪失率
労働能力喪失率は、後遺障害によって失われた労働能力の程度をパーセントで示したものです。後遺障害14級は約5%とされています。
逸失利益の計算に必要な要素③|ライプニッツ係数
ライプニッツ係数は、中間利息(将来の収入を前倒し請求する利息相当)を控除して現在価値に割り引くための数値です。
被害者の年齢や就労年数、法定利率3%を基に設定され、年齢によって係数が異なります。
逸失利益の計算式
逸失利益の基本計算式は以下の通りです。
- 逸失利益 = 基礎収入 × 労働能力喪失率 × ライプニッツ係数
この3要素を掛け合わせることで、事故による将来収入損失額を総合的に評価します。
逸失利益計算の3つの基準
交通事故の逸失利益の計算には、主に3つの基準があります。
まず、「自賠責基準」は、自賠責保険による最低限の補償を目的としており、最も低額です。
次に「任意保険基準」は、各任意保険会社が独自に定める基準で、自賠責基準よりは高いものの、後述の基準よりは低い傾向にあります。
そして、「弁護士基準(裁判所基準)」は、過去の裁判例に基づいて算出される、最も高額な賠償額が期待できる基準です。
同じ逸失利益でも、どの基準で計算するかによって受け取れる金額は大きく異なります。
逸失利益をアップするポイント
診断書・等級認定の精度を高める
医師に後遺症の症状や生活影響を詳しく伝えて、後遺障害診断書に正確な記載をしてもらうことが重要です。
後遺障害14級認定の有無や認定等級の差で、逸失利益率や期間が大きく変わります。
労働能力喪失期間の拡張を主張する
14級では通常「5年」が喪失期間の目安とされますが、症状の重さや将来への影響を資料で証明することで、それ以上の期間に拡張できる場合があります。
弁護士(裁判所)基準で交渉する
自賠責・任意保険基準よりも高額な弁護士基準を適用して請求することで、逸失利益や慰謝料全体を高く評価してもらえる可能性が高まります。
時効前に手続きを進める
逸失利益請求権は「損害及び加害者を知った日」から3年が時効です。早めに後遺障害認定・示談交渉を進めることで、大きな損失を防ぎます。
証拠を豊富に揃える
治療経過、通院頻度、生活への影響記録、職場や家族の証言等、労働能力低下を裏づける証拠が多いほど、保険会社や裁判所の評価が高まります。
後遺障害14級の等級認定で弊社ができること
弁護士の方へ
弊社では、交通事故で受傷した、むち打ちなどの後遺症が、後遺障害に認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。
等級スクリーニング®
現在の状況で、後遺障害に認定されるために足りない要素を、後遺障害認定基準および医学的観点から、レポート形式でご報告するサービスです。
等級スクリーニング®は、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。
等級スクリーニング®の有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニング®を承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング®】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定
医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。
医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。
弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
労災事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
後遺障害14級の等級認定でお悩みの患者さんへ
弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。
また、弊社では労災事故業務に精通している全国の弁護士を紹介することができます。
もし、後遺障害認定で弁護士紹介を希望される被害者の方がいらっしゃれば、こちらのリンク先からお問い合わせください。
尚、弁護士紹介サービスは、あくまでもボランティアで行っています。このため、電話での弊社への問い合わせは、固くお断りしております。
弊社は、電話代行サービスを利用しているため、お電話いただいても弁護士紹介サービスをご提供できません。ご理解いただけますよう宜しくお願い申し上げます。
後遺障害14級の逸失利益でよくある質問
逸失利益がもらえない原因は?
逸失利益が認められない原因は、①後遺障害の等級認定を受けていない、②事故前収入が全くなかった、③実際に減収していない、④労働能力低下が認められない、といったケースです。
しかし医師の診断書や職場証言などを用いて、将来の昇進や収入機会の喪失などを立証できれば、支給される可能性は十分あります。
逸失利益と損害賠償金はどう違うのか?
逸失利益は「将来得られるはずだった収入の補償」であり、医療費や慰謝料などの損害賠償金とは異なります。
損害賠償金が過去の支出や損害に対する清算だとすれば、逸失利益は事故後の収入機会を金銭化したもので、その構成・立証方法や税務上の取り扱いにも違いがあります。
逸失利益の税金は?
逸失利益は「損失補填金」とみなされる場合、所得税法上非課税となるのが原則です。
ただし、事業所得の収入補填等、例外的に課税対象となる場合もあります
国税庁の判例では、「収入補償に係る非課税除外規定」が適用されるかどうかが争点となり、実務上は正確な判断が求められます。
計算結果に不満がある場合の対処法
保険会社の提示額に納得できない場合、まずは交通事故に詳しい弁護士に相談するのが有効です。
異議申立て・再認定請求や、裁判基準に基づく再交渉で請求額を引き上げる戦略がとれます。
特に、後遺障害14級では、証拠の逸失利益立証と資料の質が結果を左右します。
後遺障害14級とは?
後遺障害14級は、自働・生活への支障が軽微ながら一定の制限が認められた状態です。たとえば軽度の神経症状や関節可動域の制限が該当します。
逸失利益では、おおよそ5%の労働能力喪失率が認められ、通常5年程度の喪失期間で換算されます。状況により期間や率を争って増額も可能です。
<参考>
まとめ
逸失利益は、将来の収入の喪失分を補う重要な補償です。計算基準には自賠責・任意保険・弁護士基準があり、弁護士基準が最も高額になります。
後遺障害14級の逸失利益は、基礎収入・労働能力喪失率・ライプニッツ係数の3つで計算されます。
たとえば年収400万円なら約91万6千円が目安です。専業主婦や高齢者、失業中の人も、条件次第で請求可能です。
後遺障害14級の逸失利益でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。尚、初回の法律事務所様は無料で承ります。
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