医療現場は本来、私たちの健康と命を守る場所です。しかし、どんなに優れた医療機関でも、人の手によって行われる以上、ミスが起きる可能性はゼロではありません。
もし「医療ミスをされたかもしれない」と感じたとき、どう対処すればいいのか――。
そのとき適切な行動をとることが、今後の回復や補償、さらには心の整理にも大きく関わってきます。
本記事では、医療ミスが疑われる場面で取るべき初期対応から、相談先、損害賠償請求の流れ、注意点までをわかりやすく解説します。
被害者としての正当な権利を知り、冷静に行動するための第一歩として、ぜひご覧ください。
最終更新日: 2025/6/4
Table of Contents
医療ミスが発生した場合の初期対応
症状や体調の確認
医療ミスが疑われたら、まずは患者自身の症状や体調の変化を冷静に観察することが重要です。
痛みの増加、出血、発熱、意識の混濁など、通常とは異なる兆候が見られた場合は、速やかに医療機関に連絡して、適切な対応を求めましょう。
また、これらの症状を記録しておくことで、後の診断や対応に役立ちます。
医療機関への報告手順
医療ミスが発生したと感じたら、まずは担当医や看護師に状況を伝えて、説明を求めることが大切です。
その際、冷静に事実を伝えて、必要に応じてメモを取るなどして記録を残しましょう。
また、病院内の相談窓口や医療安全管理部門に相談することで、適切な対応や情報提供を受けることができます。
セカンドオピニオンを求める重要性
医療ミスが疑われたら、他の医師の意見を求める「セカンドオピニオン」は非常に有効です。
異なる視点からの診断や治療方針を知ることで、現在の状況を客観的に判断する手助けとなります。
また、セカンドオピニオンを受けることで、患者自身が納得のいく治療を選択できる可能性が高まります。
医療ミスが疑われる時の相談窓口
病院の相談窓口
まずは、受診した病院の相談窓口に連絡しましょう。多くの病院では、患者の意見や苦情を受け付ける窓口が設置されています。
医療安全管理部門や患者相談窓口などが対応して、問題解決に向けた助言や対応を行います。直接の対話が難しい場合でも、書面や電話での相談も可能です。
医療安全支援センター
医療安全支援センターは、全国の都道府県や保健所設置市に設置されており、医療に関する相談を受け付けています。
医療ミスが疑われる場合や、病院での対応に不満がある場合など、第三者の立場から助言を受けることができます。
中立的な立場での相談が可能であり、必要に応じて適切な機関への案内も行っています。
<参考>
医療安全支援センター総合事業
医療事故情報センター
医療事故情報センターは、医療事故被害者の支援を目的とした団体で、全国各地の弁護士が正会員となっています。
医療事故に関する情報提供や、被害者の相談に応じるなどの活動を行っています。また、各地域の相談窓口の情報も提供しており、適切な相談先を見つける手助けとなります。
<参考>
医療事故情報センター
日本医療安全調査機構(医療事故調査・支援センター)
日本医療安全調査機構は、医療事故調査制度に基づき設立された機関で、医療事故の調査や再発防止策の提言を行っています。
重大な医療事故が発生したら、医療機関からの報告を受けて調査を実施します。また、医療機関への支援や情報提供も行っており、医療の安全性向上に寄与しています。
<参考>
日本医療安全調査機構(医療事故調査・支援センター)
最寄りの弁護士会
医療ミスに関する法的な相談は、最寄りの弁護士会の法律相談センターで受け付けています。
医療過誤に詳しい弁護士が、状況の確認や今後の対応について助言を行います。相談は予約制で、電話やインターネットでの予約が可能です。
法的手続きが必要な場合や、病院との交渉が難航している場合には、早めの相談をおすすめします。
医療ミスされた時の注意点
結果が悪いだけで医療ミスでないケースが多い
医療の結果が期待通りでなかったとしても、それが必ずしも医療ミスとは限りません。
医療行為では、予期せぬ結果が生じることが珍しくなく、そのすべてが医療従事者の過失によるものではありません。
医療ミスと判断されるには、過失、損害、因果関係の3つを証明する必要があります。そのため、結果だけで判断せず、専門家の意見を求めることが重要です。
感情的にならない
医療ミスが疑われる状況では、怒りや悲しみなどの感情が湧き上がることがあります。しかし、感情的になってしまうと、冷静な判断や適切な対応が難しくなります。
まずは感情を整理し、事実関係を客観的に把握することが大切です。その上で、信頼できる第三者や専門家に相談して、適切な対応策を検討しましょう。
医療ミスの時効は意外と短い
医療ミスに関する損害賠償請求には時効があります。2020年4月1日以降に発生した事案では、損害および加害者を知った時から5年、または医療ミスがあった日から20年のいずれか早い方が時効となります。
そのため、医療ミスが疑われる場合は、できるだけ早く専門家に相談して、対応を進めることが重要です。
医療訴訟で勝てる確率は低い
医療訴訟において、原告が勝訴する確率は約20%とされています。医療行為の過失や因果関係を証明することは難しく、また、専門的な知識や証拠が必要となるため、訴訟のハードルは高いです。
そのため、医療訴訟を検討する際は、専門家の意見を参考にし、慎重に判断することが求められます。
示談や和解も考える
医療ミスの解決方法として、示談や裁判による和解も選択肢となります。示談や和解は、時間や費用を抑えて、双方の合意により早期解決が可能です。
また、裁判の判決では得られない謝罪や再発防止策の提示を受けることもあります。状況に応じて、示談や和解を検討することも有効な手段です。
医療ミスにおける損害賠償請求の流れ
弁護士に依頼する
医療ミスの損害賠償請求を検討する際は、まず医療過誤に詳しい弁護士に相談しましょう。早期の相談が、時効の問題や証拠収集の遅れを防ぐ鍵となります。
弁護士は、医療行為の過失や因果関係の有無、請求可能な損害賠償額の見込みなどを評価して、適切な対応策を提案します。
医療調査を行う
弁護士がカルテや診療記録の取得して、医療行為の適否を検証する医療調査を行います。場合によっては、専門医による医師意見書の作成も検討します。
この段階で、医療ミスの有無や損害との因果関係を明確にすることが、後の交渉や訴訟の基盤となります。
<参考>
医療事故における医療調査の基本内容とは?費用も解説|医師意見書
示談交渉
調査結果をもとに、病院側と示談交渉を行います。示談では、損害賠償額や謝罪、再発防止策などについて合意を目指します。
裁判に比べて時間や費用を抑えられるため、双方にとってメリットがあります。
調停もしくは医療ADR
示談が成立しない場合、裁判所の調停や、医療ADR(裁判外紛争解決手続)を利用することが検討されます。
これらの手続きでは、中立的な第三者が関与して、合意形成を支援します。裁判に比べて柔軟で迅速な解決が期待できます。
医療訴訟
調停やADRでも解決しない場合には、医療訴訟を提起します。訴訟では、医療行為の過失や因果関係、損害の程度などを立証する必要があります。
専門的な知識と証拠が求められるため、弁護士と連携して慎重に進めることが重要です。
和解もしくは判決
医療訴訟の過程で、裁判所の勧告により和解が成立することもあります。和解が成立しない場合は、判決により結論が下されます。判決に不服がある場合は、控訴することも可能です。
メディカルコンサルティングができること
医療ミスなのかについての医療調査
医療訴訟の多くは、単に治療結果が悪いだけで医療ミスではありません。単に治療結果が悪いだけでは、医療訴訟で勝てる確率は著しく低いです。
勝訴できる可能性の無い不毛な医療訴訟を防ぐためには、第三者による、医療ミスかどうかについての医療調査実施が望ましいです。
弊社では、ほぼすべての科の事案で医療ミスか否かの医療調査(意見書作成可否調査)が可能です。詳細は、以下のコラム記事をご確認ください。
<参考>
医療事故における医療調査の基本内容とは?費用も解説|医師意見書
医療調査できる診療科一覧
弊社では、以下のようにほぼ全科の医療調査を実施できます。
- 整形外科
- 脳神経外科
- 耳鼻咽喉科
- 眼科
- 消化器外科
- 呼吸器外科
- 心臓血管外科
- 産婦人科
- 泌尿器科
- 脳神経内科
- 循環器内科
- 消化器内科
- 呼吸器内科
- 腎臓内科
- 血液内科
- 小児科
- 放射線科
- 精神科
- 皮膚科
- 形成外科
- ⻭科
- 麻酔科
- 救急科
- 感染症科
- ペイン科
- 病理
医療訴訟で使用する医師意見書
意見書作成可否調査で医療ミスであることが判明した場合、各科の専門医による顕名の医師意見書を作成することが可能です。
医療ミスの可能性がある事案でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
尚、個人の方は、必ず弁護士を通じてご相談ください。個人の方からの直接のお問い合わせは、固くお断りしております。
<参考>
医療訴訟の医師意見書|160名の各科専門医による圧倒的実績
医師意見書の作成にかかる費用
医療調査(意見書作成可否調査)
医療訴訟用の医師意見書を作成できるのかを判断するために、医療調査(意見書作成可否調査)を必須とさせていただいています。
意見書作成可否調査では、各科の専門医が、診療録や画像検査などの膨大な資料を精査いたします。
概要 | 価格 |
基本料 | 140,000円 |
動画の長い事案 | 170,000円 |
追加質問 | 45,000円 / 回 |
※ すべて税抜き価格
※ 意見書作成には医療調査(意見書作成可否調査)が必須です
※ 意見書作成には別途で意見書作成費用がかかります
※ 意見書作成に至らなくても医療調査の返金は致しません
医師意見書
医療調査(意見書作成可否調査)の結果、医療ミスが判明して、医師意見書を作成する際には、別途で医師意見書作成費用がかかります。
概要 | 価格 |
一般の科 | 400,000円~ |
精神科 | 450,000円~ |
心臓血管外科 | 500,000円~ |
施設(老健、グループホームなど) | 350,000円~ |
弊社が医療訴訟で医師意見書を作成した実例
弊社には全国の法律事務所から医療訴訟の相談が寄せられます。これまで下記のような科の医師意見書を作成してきました。
- 脳神経外科
- 脳神経内科(神経内科)
- 整形外科
- 一般内科
- 消化器外科
- 消化器内科
- 呼吸器外科
- 心臓血管外科(成人)
- 心臓血管外科(小児)
- 循環器内科
- 産科
- 婦人科
- 泌尿器科
- 精神科
- 歯科
一方、眼科や美容整形外科に関しては相談件数が多いものの、実際に医療過誤である事案はほとんど無いです。このため弊社においても、医師意見書の作成実績がありません。
医療ミスされたらでよくある質問
医療ミスによる慰謝料の相場はいくらですか?
医療ミスによる慰謝料の相場は、被害の程度や後遺障害の等級によって異なります。軽度の後遺障害(14級)では約110万円、重度の後遺障害(1級)では約2,800万円が目安とされています。
また、死亡した場合の慰謝料は、被害者の属性により異なり、例えば一家の支柱であれば約2,800万円が相場です。具体的な金額は、個別の事情によって変動するため、専門家への相談が推奨されます。
医療ミスは誰が責任を負うのですか?
医療ミスが発生したら、基本的にはその行為を行った医師や看護師が責任を負います。しかし、勤務先の医療機関にも使用者責任が問われることがあります。
また、組織としての管理体制や教育体制に問題があれば、病院全体の責任となる可能性もあります。具体的な責任の所在は、事案の内容や関係者の立場によって異なります。
医療ミスは処罰されますか?
医療ミスが過失によるものであれば、民事上の損害賠償責任が問われることがあります。また、重大な過失や故意による場合、刑事責任が問われる可能性もあります。
ただし、医療行為の性質上、過失の立証は難しく、刑事事件として立件されるケースは稀です。処罰の有無は、ミスの内容や程度、結果の重大性などによって判断されます。
看護師個人を訴えられますか?
看護師個人が訴えられるケースも存在します。例えば、救急搬送された患者が死亡した事案で、看護師個人が訴えられた例があります。
ただし、多くの場合、看護師が医療機関の指示に従って業務を行っているため、医療機関が責任を負うことが一般的です。個人が訴えられるかどうかは、具体的な行為や責任の程度によります。
医療ミスの説明を録音してもいいですか?
医療ミスに関する説明を録音することは、患者の権利として認められています。
ただし、録音を行う際は、事前に医療機関や担当者に許可を得ることが望ましいとされています。
無断での録音は、信頼関係を損なう可能性があるため、注意が必要です。録音した内容は、後の証拠として利用されることもあります。
まとめ
医療ミスが疑われたら、まず自分の症状や体調の変化を冷静に確認して、異常があればすぐに医療機関へ連絡しましょう。
症状の記録や医師への報告も重要で、必要なら病院の相談窓口や医療安全支援センターにも相談します。客観的な判断のためにはセカンドオピニオンも有効です。
感情的にならず、時効の短さや医療訴訟の難しさを理解した上で、弁護士や専門機関と連携して、示談や和解も選択肢として考えることが大切です。
医療ミスの可能性がある事案でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
尚、個人の方は、必ず弁護士を通じてご相談ください。個人の方からの直接のお問い合わせは、固くお断りしております。
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