交通事故コラム詳細

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遷延性意識障害患者の施設選びと費用詳細|交通事故の後遺障害

遷延性意識障害の患者を支える家族にとって、医療施設の選択や費用の問題は大きな関心事です。

 

交通事故や脳卒中などの後遺症として発症する遷延性意識障害(植物状態を含む)は、長期的な介護が必要となることが多く、その受け入れ先やかかる費用を正しく理解することが重要です。

 

本記事では、遷延性意識障害の患者が利用できる施設の種類や、専門施設の費用、さらに在宅介護との比較や長期的な費用の見積もりについて詳しく解説しています。

 

 

最終更新日: 2025/3/11

 

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Table of Contents

遷延性意識障害とは?基本的な理解と症状

遷延性意識障害の概要

遷延性意識障害(せんえんせいいしきしょうがい)は、いわゆる植物状態であり、脳死とは異なります。

 

日本脳神経外科学会の定義によれば、以下の6つの状態が、治療にもかかわらず3ヶ月以上続いた状態です。

 

  • 自力での移動が不可能
  • 自力での食事が不可能
  • 尿失禁や便失禁がある
  • 意味のある発語ができない
  • 簡単な命令には応じることもあるが、それ以上の意思疎通は不可能
  • 眼球は物を追うことがあっても、認識はできない

 

 

これらの症状のため、患者は自力での生活が困難となり、全面的な介護が必要となります。

 

<参考>
遷延性意識障害(植物状態)における医師意見書の有効性|医療鑑定

 

 

遷延性意識障害の後遺障害等級

交通事故などで遷延性意識障害が生じると、後遺障害等級として1級1号(要介護)が認定されるケースが多いです。

 

1級1号は、神経系統の機能または精神に著しい障害を残して、常に介護を要する状態です。1級1号が認定されると、被害者やその家族は、多額の慰謝料や逸失利益を請求することが可能です。

 

 

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遷延性意識障害の患者が利用できる施設の種類

 

遷延性意識障害の患者が利用できる施設は、医療的ケアの必要性や年齢、障害の程度によって異なります。主な施設としては、以下のようなものがあります。

 

療護施設

重度の障害を持つ方を対象として、医療的ケアや生活支援を提供します。

 

 

医療型障害児入所施設

18歳未満で発症した場合、重症心身障害児として認定されて、これらの施設を利用できる可能性があります。

 

 

医療型ショートステイ

在宅で生活する医療的ケアが必要な方が、短期間入所できる施設で、家族の負担軽減や地域生活への移行を支援します。

 

 

これらの施設の利用は、患者の状態や地域のサービス状況によって異なるため、各自治体の福祉窓口や専門機関に相談することが重要です。

 

 

遷延性意識障害で利用できる施設の費用について

 

治療費は1万円/日、施設費用は7000~18000円/日、医療費+介護費用の合計は1000~15000万円(平均8000万円程度)になるケースが多いです。

 

しかし、施設の種類や提供されるサービス内容、患者の状態によって大きく異なります。

 

例えば、医療型ショートステイの場合、医療的ケアを必要とする方が短期間入所する際の費用は、自治体の補助や保険適用の有無によって変動します。

 

また、療護施設や障害者支援施設などの長期入所施設では、入所者の所得や資産状況に応じて自己負担額が設定されることが一般的です。

 

 

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患者受け入れ施設の費用に影響を与える要因

 

患者受け入れ施設の費用に影響を与える要因は多岐にわたります。主な要因として、以下の点が挙げられます。

 

 

医療的ケアの必要性

人工呼吸器の使用や経管栄養など、高度な医療ケアが必要な場合、専門的なスタッフや設備が求められ、その分費用が高くなる傾向があります。

 

 

施設の種類と提供サービス

療護施設や医療型障害児入所施設など、施設の種類や提供されるサービス内容によって費用が異なります。

 

 

地域差

自治体ごとに設けられている支援制度や補助金の有無、施設の運営状況などにより、費用が変動することがあります。

 

 

入所者の所得や資産状況

公的支援を受ける際、入所者やその家族の所得や資産状況に応じて自己負担額が設定される場合があります。

 

 

遷延性意識障害患者の介護における長期的な費用見積もり

在宅介護と施設介護の費用比較

遷延性意識障害患者の介護における長期的な費用は、在宅介護と施設介護で大きく異なります。

 

在宅介護では、医療機器のレンタル費用や訪問看護、訪問介護などのサービス利用料が発生します。

 

これらの費用は介護保険や障害者総合支援法に基づくサービスを利用することで軽減されますが、家族の負担も大きくなります。

 

一方、施設介護では、入所費用や食費、居住費などが必要となりますが、専門スタッフによる24時間のケアが受けられます。費用は施設の種類やサービス内容によって異なります。

 

 

どちらの方が有利なのか

在宅介護と施設介護のどちらが有利かは、費用面だけでなく、家族の状況や患者の状態によって異なります。

 

在宅介護は、家庭での生活を維持できる利点がありますが、家族の負担が大きくなる可能性があります。

 

施設介護は、専門的なケアを受けられる反面、費用が高額になることがあります。

 

 

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遷延性意識障害の慰謝料

成年後見人が慰謝料請求する

遷延性意識障害の慰謝料請求は、成年後見人が行います。成年後見人は、認知症、精神発達遅滞などで判断能力が十分でない人の財産を保全して保護します。

 

成年後見人を選出するには、管轄の家庭裁判所に申し立てする必要があります。家庭裁判所が総合的に判断して、成年後見人を選出します。

 

なお、被害者が未成年の場合には法定代理人(両親)が慰謝料を請求できるため、成年後見人を選出する必要がありません。

 

 

遷延性意識障害における慰謝料の種類

傷害慰謝料

傷害慰謝料は、治療を受ける精神的苦痛に対して支払われます。傷害慰謝料は、傷害の程度、入院期間や通院期間をもとにして算出します。

 

後遺障害慰謝料

家族が遷延性意識障害になると、近親者(親、子供、配偶者等)は大きな精神的苦痛を受けます。このため、被害者だけではなく近親者にも、傷害慰謝料が認められます。

 

治療費

一般的に遷延性意識障害では任意一括対応になるため、被害者は自己負担せずに治療できます。

 

入通院慰謝料

遷延性意識障害は、長期間に渡る治療が必要です。自賠責保険では、実治療日数(実際に入院や通院した日数)×4,200円×2で算出します。

 

付添看護費

遷延性意識障害では、誰かが付き添って看護する必要があります。付添看護費用も損害賠償請求が認められています。

 

交通費

被害者だけではなく、付き添い人の交通費も、損害賠償請求が認められています。

 

家屋の改造費用や引っ越し費用

遷延性意識障害の被害者を介護するために必要と認められれば、家屋改修工事費用も、損害賠償請求が認められています。

 

自動車の改造費用

遷延性意識障害の被害者を介護するために必要と認められれば、自動車の改造費用も、損害賠償請求が認められています。

 

休業損害

本来なら得られるはずの収入に対する損害賠償請求も認められています。

 

逸失利益

逸失利益とは、遷延性意識障害のために得られなくなった収益です。遷延性意識障害では、生存期間中の労働能力が100%喪失したものとみなされます。

 

成年後見人の費用

成年後見人の選出などにかかる費用(申立手数料、登記費用、切手代、後見人報酬)も認められます。

 

 

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遷延性意識障害で争いになるポイント【弁護士必見】

症状固定のタイミング

遷延性意識障害(遷延性植物状態)は、受傷から3ヶ月以上経過すると診断されて、12ヶ月以上経過で「永続的」と判断されます。

 

医学的には3ヶ月以降で回復の見込みがなければ症状固定とすることも可能ですが、一般的には1年ほど経過観察することが多いです。

 

保険会社は賠償額を抑えるため、6ヶ月程度での症状固定を提案するケースがあります。

 

しかし、この時期はまだ回復の可能性が否定できないため、慎重な判断が求められます。被害者家族の立場では、少なくとも1年程度の経過観察が望ましいでしょう。

 

 

 

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平均余命が争点になる理由

遷延性意識障害の後遺障害等級は高く、賠償額も大きくなります。そのため、保険会社は被害者の既往症を理由に平均余命を短く見積もり、支払額を抑えようとする傾向があります。

 

賠償金額に直結するため、被害者側は一般的な平均余命を前提とした主張をする必要があります。この争点は医学的な判断が求められるため、脳神経外科専門医による医師意見書が重要です。

 

<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て

 

 

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在宅介護の可否と費用負担

遷延性意識障害の患者には24時間の介護が必要です。在宅介護を選択する場合、住宅の改修や医療機器の導入が必要になり、高額な費用が発生します。

 

そのため、保険会社は「在宅介護は困難」として、施設入所を前提とした対応を求めるケースがあります。

 

しかし、実際には在宅介護が可能なケースもあり、医師の診断や専門家の意見をもとに主張することが重要です。被害者家族の意向を尊重しながら、最適な介護環境を整えるためのサポートが求められます。

 

遷延性意識障害では、症状固定時期、平均余命期間、在宅介護の可否が争点になりやすいです。遷延性意識障害でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。

 

<参考>
【日経メディカル】遷延性意識障害では住宅改修費も補償の対象に?!

 

 

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医師意見書で遷延性意識障害の和解成立(在宅介護可能)

事案サマリー

  • 被害者:20歳
  • 後遺障害等級:1級1号
  • 訴訟の争点:自宅での介護可能性

 

交通事故で遷延性意識障害となった家族を、ご両親が自宅で介護できるか否かが争点になりました。

 

ご両親は、被害者の自宅での在宅介護を強く希望されています。一方、保険会社は介護施設入所を推奨したうえで、在宅介護は困難と主張しました。

 

 

弊社の取り組み

弊社の脳神経外科医が各種資料で被害者の状況を精査しました。すでに事故から数ヶ月経過しており安定期であり、これまで大きな内科的合併症を併発していませんでした。

 

これまでの実臨床での経験も加味して、医学的に考えて在宅介護は可能であるという医師意見書を作成しました。

 

裁判官が医師意見書の内容を踏まえて、在宅介護は可能との心証開示しました。その結果、交通事故被害者家族の意向に沿った和解案が成立しました。

 

 

<参考>
【日経メディカル】遷延性意識障害では住宅改修費も補償の対象に?!

 

 

 

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遷延性意識障害で弊社ができること

弁護士の方へ

弊社では、交通事故による遷延性意識障害が、後遺障害に等級認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。

 

 

等級スクリーニング

 

現在の状況で、後遺障害に認定されるために足りない要素を、後遺障害認定基準および医学的観点から、レポート形式でご報告するサービスです。

 

等級スクリーニングは、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。

 

等級スクリーニングの有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニングを承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。

 

<参考>
【等級スクリーニング】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定

 

 

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医師意見書

 

医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。

 

医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。

 

医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。

 

弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。

 

<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て

 

 

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画像鑑定報告書

 

交通事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。

 

画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。

 

画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。

 

弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。

 

<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て

 

 

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遷延性意識障害でお悩みの被害者の方へ

弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。

 

また、弊社では交通事故業務に精通している全国の弁護士を紹介することができます。

 

もし、後遺障害認定で弁護士紹介を希望される被害者の方がいらっしゃれば、こちらのリンク先からお問い合わせください。

 

 

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尚、弁護士紹介サービスは、あくまでもボランティアで行っています。このため、電話での弊社への問い合わせは、固くお断りしております。

 

弊社は、電話代行サービスを利用しているため、お電話いただいても弁護士紹介サービスをご提供できません。ご理解いただけますよう宜しくお願い申し上げます。

 

 

 

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遷延性意識障害の施設費用でよくある質問

遷延性意識障害の平均余命は?

遷延性意識障害の平均余命は、患者の年齢、全身状態、合併症の有無、提供される医療・介護の質など、多岐にわたる要因によって大きく異なります。

 

一般的には数ヶ月~5年程度でお亡くなりになるケースが多いですが、平均余命を示すことは困難です。

 

 

遷延性意識障害の治療費はいくらですか?

遷延性意識障害の治療費は、安定期になると1万円/日程度が多いです。しかし、入院期間、必要な医療処置、リハビリテーションの内容、使用する医療機器、在宅医療の有無などによって異なります。

 

 

介護保険と障害福祉サービスではどちらが優先されますか?

介護保険と障害福祉サービスの適用については、患者の年齢や障害の程度によって異なります。一般的に、65歳以上の方は介護保険が優先され、64歳以下の方は障害福祉サービスが適用されることが多いです。

 

 

遷延性意識障害は何ヶ月で症状固定しますか?

遷延性意識障害の症状固定の時期は、個々の患者の状態や原因となった疾患、受けている治療内容などによって異なります。

 

一般的には、発症から6ヶ月から1年程度で症状が安定するケースが多いとされていますが、個人差があります。

 

 

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まとめ

 

遷延性意識障害(せんえんせいいしきしょうがい)とは、3ヶ月以上続く重い意識障害です。自分で動くことや食事ができず、話すこともほとんどできません。

 

目を動かすことはあっても、物を認識するのは難しく、24時間の介護が必要です。

 

遷延性意識障害が交通事故で起きたら、後遺障害1級1号に認定され、多額の賠償金を請求できます。

 

介護には在宅と施設入所の選択肢があり、費用は1日1万円以上、総額で数千万円になることもあります。

 

遷延性意識障害では、症状固定時期、平均余命期間、在宅介護の可否が争点になりやすいです。遷延性意識障害でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。

 

 

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