手首骨折(橈骨遠位端骨折)後に、拘縮が治らなくて悩んでいる方は多いのではないでしょうか。手首が固まって動かしづらい状態が続くと、日常生活にも大きな影響が出てしまいます。
本記事では、手首骨折後の拘縮が治らない原因とその対策について詳しく解説しています。また、手首骨折後の拘縮が後遺障害として認定される可能性についても触れています。
最終更新日: 2025/3/2
Table of Contents
手首骨折後の拘縮とは?
拘縮は骨折後のむくみや動かしにくさ
手首骨折後のむくみや動かしにくさは、拘縮の初期症状として現れることが多いです。骨折部位の周囲にむくみが生じ、関節や軟部組織が硬くなって動かしにくくなります。
手首骨折後に拘縮が起こるメカニズム
手首骨折後に拘縮が起こるメカニズムは、長期間の不動や固定による関節周囲の組織の硬化と短縮が主な原因です。
筋肉や結合組織が硬化して弾力性を失うことで、関節の可動域が制限されます。また、瘢痕形成も拘縮の原因となります。
手首骨折後の拘縮が治らない原因
骨折後に関節が固まる原因
骨折後に関節が固まる原因は、長期間のギプス固定や安静による、筋肉や関節周囲の軟部組織の硬化です。
その結果、関節の可動域が狭くなり、動かすと痛みを感じるケースが多いです。また、骨折部位の変形や関節包の癒着も原因となります。
年齢や性別の影響
年齢や性別も、手首骨折後の拘縮に影響を与えます。高齢者は筋肉や関節の柔軟性が低下しやすく、拘縮が進行しやすいです。
また、女性と比べて男性は、もともと関節が固い人が多く、手首骨折後に拘縮をきたしやすいです。
手首骨折後の拘縮を治すのに有効なリハビリ
骨折後は早めにリハビリを開始する
骨折後のリハビリは、受傷後数日から始めることが理想的です。骨折部位の周囲の筋肉や関節が萎縮しないように、指や肩を動かす運動を行います。
これのリハビリによって筋力低下や可動域制限を防ぎ、手首骨折からの回復を早めることができます。
ギプス固定中に行うリハビリ
ギプス固定中でも、指や手の運動を行うことが重要です。手指のグーパー運動や、手首を心臓の高さより上に保持することで、むくみを軽減し、血行を促進します。
また、固定していない部位を積極的に動かすことで、筋肉の衰えや関節の拘縮を防ぎます。
ギプス固定が外れてからのリハビリ
ギプスが外れた後は、徐々に手首の可動域を広げる運動を行います。手のひらを胸の前で合わせて肘を上げる運動や、ゴムボールを握る運動などが効果的です。
温熱療法や電気療法の活用
温熱療法や電気療法は、リハビリの一環として有効です。温熱療法は血行を促進し、筋肉の緊張を和らげる効果があります。
電気療法は、筋肉の収縮を促して、筋力の回復を助けます。これらの療法を組み合わせることで、リハビリの効果を高めることができます
手首骨折後の拘縮が治らない時の後遺障害等級
手関節の機能障害
手関節の機能障害(可動域制限)は、橈骨遠位端関節面の不整が原因となる事案が多いです。
等級 | 認定基準 |
8級6号 | 上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの |
10級10号 | 1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの |
12級6号 | 1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの |
10級10号:一上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの
手関節の可動域が、健側の可動域の1/2以下に制限されているものをいいます。
12級6号:一上肢の三大関節の一関節の機能に障害を残すもの
手関節の可動域が、健側の可動域の3/4以下に制限されているものをいいます。
手関節の神経障害
手関節の神経障害(痛み)は、以下が原因となるケースが多いです。
- 橈骨遠位端関節面の不整
- TFCC損傷
- 尺骨茎状突起の偽関節
等級 | 認定基準 |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
12級13号:局部に頑固な神経症状を残すもの
この場合の神経症状とは痛みのことです。画像所見等で客観的に痛みの存在を証明できるものをいいます。
14級9号:局部に神経症状を残すもの
画像所見等で客観的に痛みの存在を証明できないものの、受傷時の態様や治療経過から痛みの存在が説明つくものをいいます。
長管骨の変形障害
12級8号:長管骨に変形を残すもの
手関節では、主に尺骨茎状突起に偽関節を残したものをいいます。稀に橈骨茎状突起に偽関節を残すものもあります。
手首骨折後の拘縮が後遺障害に認定されるポイント
橈骨関節面の不整が重要
手首の骨折後に可動域の制限や痛みが残る主な原因の1つは、橈骨遠位端の関節面が不整であることです。
後遺障害として認定されるためには、橈骨の関節面の不整を客観的に証明することが重要です。そのためには、CT検査とレントゲン検査が必要です。
CT検査では矢状断、前額断、冠状断の3方向での再構成像が用いられます。特に矢状断が重要で、関節面の不整を詳しく確認することができます。
レントゲン検査も欠かせません。一般的にはCTやMRI検査が重要だと考えられがちですが、実際にはレントゲン検査の方が外傷性関節症の証拠として有効なケースが多いです。
<参考>
手首の関節裂隙が狭くなる所見も重要
橈骨の関節面に不整が残っていると、症状固定時に外傷性変形性関節症の所見が現れることがあります。
具体的には、手首の関節裂隙が狭くなる所見です。この所見は微細なので、手外科専門医でなければ見逃してしまう可能性があります。
また、レントゲン検査を経時的に比較したり、健側と比較することも有効です。手首骨折の画像所見でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
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<参考>
【等級スクリーニング】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定
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<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
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<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
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手首骨折後の拘縮が後遺障害認定されると損害賠償金を請求できる
手首骨折(橈骨遠位端骨折)後の拘縮が後遺障害に認定されると、後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益を請求できます。
手首骨折後の拘縮の後遺障害慰謝料とは
手首骨折(橈骨遠位端骨折)で後遺障害が残ってしまった精神的苦痛に対する補償金です。後遺障害慰謝料は、下の表のように後遺障害等級によって異なります。
後遺障害等級 | 後遺障害慰謝料 |
1級 | 2800万円 |
2級 | 2370万円 |
3級 | 1990万円 |
4級 | 1670万円 |
5級 | 1400万円 |
6級 | 1180万円 |
7級 | 1000万円 |
8級 | 830万円 |
9級 | 690万円 |
10級 | 550万円 |
11級 | 420万円 |
12級 | 290万円 |
13級 | 180万円 |
14級 | 110万円 |
手首骨折後の拘縮の後遺障害逸失利益とは
手首骨折(橈骨遠位端骨折)の後遺障害が残ると、労働能力が低下してしまいます。労働能力が低下したために失うであろう収入の不足分に対する補償金です。
後遺障害逸失利益は、交通事故被害者の年収、年齢をベースにして、後遺障害等級に応じた労働能力喪失率と労働能力喪失期間で決まります。
後遺障害逸失利益の計算式
手首骨折(橈骨遠位端骨折)の後遺障害逸失利益は、以下の計算式で算出されます。
基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数
手首骨折後の拘縮でよくある質問
骨折後のリハビリテーションはいつから始める?
骨折後のリハビリテーションは、負傷後数日から始めることが理想的です。固定中でも、痛みを伴わない範囲で指や肩を動かす運動を行うことで、筋力低下や関節の拘縮を防ぎます。
ギプスが外れた後は、徐々に手首の可動域を広げる運動を行い、日常生活に支障がない状態を目指します。
骨折で拘縮するとどうなる?
骨折後に拘縮が生じると、関節の可動域が制限され、正常な動作ができなくなります。さらに、慢性的な痛みなどの合併症を引き起こす可能性もあります。
手首骨折が完治するまでにどれくらいの期間かかりますか?
手首骨折が完治するまでの期間は、骨折の種類や治療方法によりますが、一般的には3ヵ月程度かかります。
手術を行った場合、TFCCの修復を待機するため、固定期間は約2~3週間です。3ヵ月後にはほぼ問題のない日常生活を取り戻せるケースが多いです。
手首の骨折で後遺症は残りますか?
手首骨折は、適切な治療とリハビリを行わないと後遺症が残る可能性があります。後遺症としては、手首の可動域制限や痛みなどが挙げられます。特に関節内骨折は、後遺症が残る可能性が高いです。
拘縮は完治しますか?
拘縮は、適切なリハビリテーションを行うことで、ある程度改善することが可能です。ただし、拘縮の程度や原因によっては、完治しないケースも珍しくありません。
拘縮を治す方法はありますか?
拘縮を治すためには、運動療法や物理療法が有効です。関節可動域訓練やストレッチ、温熱療法、電気療法などを組み合わせることで、筋肉や関節の柔軟性を回復させることができます。
手首骨折後の拘縮が治らない時のまとめ
手首骨折(橈骨遠位端骨折)後の拘縮は、むくみや動かしにくさが初期症状として現れます。
主な原因は、ギプス固定や安静による関節周囲の筋肉や組織の硬化と短縮です。高齢者や男性は特にリスクが高く、拘縮が進行しやすいです。
早期リハビリが重要で、ギプス固定中は指や手を動かす運動、固定後は関節の可動域を広げる運動が効果的です。温熱療法や電気療法も回復を助けます。
交通事故で受傷した手首骨折の拘縮が治らないと、後遺障害に認定される可能性があります。手首骨折の後遺障害認定でお困りの事案があればこちらからお問い合わせください。
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