むちうち、腰椎捻挫、打撲の治療では、整形外科に通院するのが王道です。しかし、通いやすさから整骨院(接骨院)を選択する人も少なくありません。しかし、交通事故治療では、保険会社が整骨院への通院を認めないケースがあります。
本記事は、交通事故治療において、保険会社が整骨院を認めない理由と、整骨院が認められない場合の対処法を知るヒントとなるように作成しています。
最終更新日: 2024/5/13
Table of Contents
そもそも整骨院とは何?
整骨院(接骨院)では、柔道整復師が捻挫や打撲などの急性外傷に対処して、温熱療法、マッサージ、物理療法などを行います。
柔道整復師は医師ではありません。あん摩・マッサージ、はり・灸師と同じ医業類似行為の資格です。整骨院は医療機関ではないので、業務内容は急性外傷の施術や骨折・脱臼の応急処置に限られます。
整骨院と整形外科の違い
整形外科(クリニックや病院)は、医師が診療する医療機関です。整形外科が取り扱うのは、主に手足や背骨の傷病です。関節リウマチのような慢性疾患も整形外科が治療します。
医師になるには、大学の医学部に合格した後に最低でも6年間の厳しい勉強と臨床実習が必要です。厳しい試験に合格した医師には、すべての医療行為を行うことが法律で許可されています。
整骨院は、柔道整復師が施術する施設です。整骨院が取り扱うのは、捻挫・打撲・肉離れ・骨折や脱臼に限られます。
柔道整復師になるには、高校卒業後に専門学校で3年間勉強する必要があります。柔道整復師国家試験に合格すると施術できるようになります。
整形外科と整骨院は、手足や背骨を扱うため混同しがちですが、実施できる内容は全く異なります。このため、交通事故治療において、整形外科と整骨院を混同すると思わぬ不利益を被る可能性があります。
保険会社が整骨院を認めない理由
前述のように、整形外科と整骨院の実態は全く異なります。そもそも整骨院では検査も治療もできないため、根本的な解決になりません(整骨院は治療ではなく施術)。
したがって、通院できる整形外科が無いなどの特別な理由が無ければ、保険会社は整骨院での施術を認めない傾向にあります。
また、同じ期間通った場合、整形外科の治療費よりも、整骨院の施術費用の方が有意に高いというデータがあります。
このような経済的な理由も相まって、整骨院に通うことを保険会社が認めなかったり、早期に任意一括対応を打ち切るケースが多いです。
保険会社に整骨院を認めてもらうポイント
整骨院は、数が多くて夜遅くまで営業しているため、通いやすいメリットがあります。このため、保険会社が整骨院に行くことを認めるケースも少なくありません。
ただし、本来は整形外科できっちり治療するべきなので、保険会社は以下のようなポイントを検討したうえで整骨院通院の可否を判断します。
- 施術の必要性
- 施術の有効性
- 施術の妥当性
整骨院での施術の必要性に関しては、交通事故が原因で発症したことを医学的に証明する必要があります。このため、整形外科で医師に診断してもらわない限り、整骨院には通えません。
施術の有効性や妥当性に関しても、医師による評価が必要です。よくありがちなのは、初診だけ整形外科を受診した後は、整骨院にしか行かないケースです。
定期的に整形外科で症状の推移を診察してもらっていないと、整骨院での施術の有効性や妥当性が判断できないため、早期に任意一括対応が打ち切られる原因になります。
保険会社が整骨院を認めない場合の対処法
保険会社に整骨院を認めない理由を確認する
保険会社が整骨院に行くことを認めない理由を、担当者に直接確認しましょう。何らかの手がかりを掴める可能性があります。
弁護士に依頼する
交通事故の賠償実務に精通した弁護士に依頼するのも一法です。弁護士が保険会社と交渉すると、整骨院に行くことを認められる可能性があります。
自費で整骨院に通う
後遺症が残った場合、後遺障害に認定されるためには、整骨院に行った回数もある程度考慮されます。このため、保険会社から任意一括対応を打ち切られた後も、自費で通うのも選択肢の1つでしょう。
ただし、後遺障害認定基準は公開されていないため、交通事故の賠償実務に精通した弁護士への相談が望ましいでしょう。
整形外科と整骨院のどちらに通うべきなのか
整骨院でも後遺障害に認定される可能性はある
弊社の年間1000事案ペースの経験では、整形外科医院と比較して、整骨院の方が後遺障害に認定される可能性が低いです。
しかし、整骨院に行くと後遺障害に認定されないわけではありません。一方、整形外科にも通院してないと、後遺障害に認定される可能性は無いでしょう。
整形外科が後遺障害認定にはベスト
整形外科と整骨院では後遺障害に認定される確率が全く異なります。このため、近くに整形外科がある場合には、整形外科に通院することが望ましいでしょう。
近くに整形外科が無いケースでは整骨院でもやむを得ませんが、2週に1回程度の整形外科通院は必須です。
<参考>
【日経メディカル】交通事故で接骨院通院が勧められない3つの理由
【医師が解説】交通事故で診断書が極めて重要な理由|提出先や期限も
【弁護士必見】後遺障害認定の観点では整骨院はお勧めできない
交通事故治療で整骨院に通うメリットとして、むちうちや腰椎捻挫の後遺障害認定基準の一部をクリアできる可能性があります。
しかし、特に交通事故治療では、整骨院は整形外科と比べて保険会社への請求金額が高くなりがちなので、任意一括対応を打ち切られるリスクが高まります。
このため、近くに整形外科がある場合には、できるだけ整形外科での治療を勧めるべきでしょう。
まとめ
交通事故治療において、保険会社が整骨院を認めない理由は、整骨院では検査も治療もできないため根本的な治療にならないからです。
また、同じ期間通った場合、整形外科の治療費よりも、整骨院の施術費用の方が有意に高いというデータがあるため、整骨院に通うことを保険会社が認めないケースもあります。
保険会社に整骨院を認めてもらうためには、施術に必要性、有効性、妥当性があることが必要です。
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