交通事故でケガすると、必ずと言って良いほどお世話になるのがリハビリテーション(リハビリ)です。リハビリには理学療法、運動療法、物理療法など、さまざまな呼称があります。
本記事は、理学療法、運動療法、物理療法の違いを理解するヒントとなるように作成しています。
最終更新日: 2024/5/13
Table of Contents
理学療法とは
理学療法とは、リハビリテーションのことです。理学療法は、身体機能が低下した人の回復を目的として行われます。
理学療法は、大きく分けて運動療法と物理療法に分けられます。運動療法の補助として、マッサージを実施することもあります。
運動療法とは
運動療法の目的は、身体機能の回復、早期の離床、生活の自立などです。運動療法には、関節可動域訓練、筋力トレーニング、日常生活基本動作訓練、持久力強化訓練などがあります。
物理療法とは
物理療法には、温熱療法、電気刺激療法、牽引(けんいん)、低周波療法などがあります。運動療法の補助的な治療として実施されるケースが多いです。
温熱療法には、ホットパック、赤外線、超音波、マイクロ波などがあります。いずれも身体を温めて血行を促進します。
理学療法(リハビリテーション)の対象疾患
理学療法の対象疾患には、以下のようなものがあります。
- 中枢疾患:頭部外傷(高次脳機能障害を含む)、脳卒中、脊髄損傷
- 運動器疾患:関節疾患、脊椎疾患、骨折などの外傷
- 吸器疾患:慢性閉塞性肺疾患
- 心大血管疾患:心筋梗塞、心不全
- 廃用症候群
理学療法と物理療法の違い
物理療法は理学療法の一種です。このため、理学療法と物理療法の違いは、理学療法=運動療法+物理療法だと覚えておくとすっきりすると思います。
尚、理学療法=リハビリテーションです。以上をまとめると、理学療法=リハビリテーション=運動療法+物理療法という等式が成り立ちます。
【弁護士必見】後遺障害認定のポイント
理学療法(物理療法)は通院回数にカウントされるのか
交通事故の実務上で、理学療法(リハビリテーション)が問題になるのは、通院回数に関してでしょう。牽引やホットパックなどの物理療法だけの通院でも、通院頻度にカウントされるのでしょうか。
結論的には、理学療法のみの通院でも通院回数にカウントされます。その理由は、建前上は医師による診察と理学療法がセットになっているからです。
実際には、医師の診察がほぼ無くて物理療法だけであっても、どこかで医師が関与する建付けになっています。
理学療法後は関節可動域が一過性に改善する
通院回数と並んで弁護士が頭を悩ますことが多いのは、リハビリテーション記録と後遺障害診断書の関節可動域が大きく異なるケースです。
当然の話ですが、理学療法後には、傷害された関節は一過性に改善します。改善しなければ理学療法を実施する意味がありませんね。
しかし、一過性に良くなる現象を逆手にとって、リハビリテーション後の計測値と後遺障害診断書の計測値が異なるという主張を散見します。
このようなパターンは訴訟事案で多いですが、医師意見書で論理的に反論する必要があります。
理学療法でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
【解決事例】リハビリ記録と後遺障害診断書の関節可動域が異なる
事例サマリー
- 被害者:30歳代 男性
- 傷病名:鎖骨遠位端骨折
- 事前認定:10級10号(1上肢の3大関節中の1関節の用に著しい障害を残すもの)
鎖骨遠位端骨折に対して、クラビクルフックプレートを用いた手術を施行されました。術後は肩関節外転80度の可動域制限が残りました。
自賠責保険では、10級10号(1上肢の3大関節中の1関節の用に著しい障害を残すもの)に事前認定されました。
しかし、加害者側保険会社から、リハビリ記録と後遺障害診断書の関節可動域が大きく異なることを理由にして、10級10号には該当しない旨の訴訟提起されました。
弊社の取り組み
診療録でリハビリ記録の関節可動域が理学療法実施後であることを確認したうえで、理学療法直後の関節可動域は普段の可動域よりも一過性に大幅に改善していることを医師意見書で主張しました。
訴訟では、医師意見書の主張が取り入れられて、10級10号が維持される和解が成立して解決に至りました。
まとめ
理学療法とは、リハビリテーションのことです。理学療法は、大きく分けて運動療法と物理療法に分けられます。運動療法の補助として、マッサージを実施することもあります。
理学療法後は関節可動域が一過性に改善します。これを逆手に取って後遺障害に該当しないと主張されるケースを散見します。このような事案では医師意見書が有効です。
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