膝関節の半月板損傷は、スポーツをしている時に受傷するケースが多いものの、交通事故でもしばしば発生する外傷です。
半月板損傷と言えば「膝が痛い」を思い浮かべますが、その他にもいろいろな症状があります。
本記事では、半月板損傷の症状を自分でチェックするポイントと、初期症状はどのようなものかを解説しています。
最終更新日: 2024/5/13
Table of Contents
半月板損傷とは
半月板とは、大腿骨と脛骨の間にある「半月のような形」をした組織です。半月板は、膝関節の安定化と、膝にかかる衝撃を吸収するクッションの役割を果たしています。
半月板損傷は、スポーツ時などに膝を激しく捻じったり、大きな外力が加わることで受傷します。しかし、加齢に伴って半月板の強度が低下すると、小さな外力でも半月板損傷をきたすことがあります。
また、膝関節にかかる衝撃を吸収する機能が失われると、膝関節に大きなストレスがかかります。その結果、関節軟骨のすり減りが早まり、変形性膝関節症の発症リスクが大きくなります。
交通事故での半月板損傷の受傷機序
バイクや自転車事故での受傷機転
交通事故では、バイクや自転車乗車中の事故と、自動車に乗っている際の衝突事故では受傷機転が異なります。
まず、バイクや自転車乗車中の事故では、転倒しそうになって踏ん張ることで、半月板損傷を受傷するケースが多いです。
自動車事故での受傷機転
自動車乗車中の追突事故では、フットレストやフロアに対して足を踏ん張ることで、半月板損傷を受傷するケースがあります。
半月板損傷の初期症状は?
動作時の膝関節痛や、膝関節の曲げ伸ばした時の引っ掛かり感、関節が腫れるなどが、半月板損傷の代表的な症状です。
半月板の断裂部が大きいケースでは、断裂した半月板が大腿骨と脛骨に挟まって膝が動かせなくなる状態(ロッキング)に陥ることもあります。
半月板損傷の症状チェックをしよう!
以下のような自覚症状があると、半月板損傷である可能性があります。
- 歩くときや階段昇降時の膝の痛み
- 膝の引っかかり感
- 膝を曲げ伸ばししづらい
- 膝が腫れている
- 膝に熱感がある
- 何かが挟まって膝が急に動かなくなる
半月板損傷の診断
身体所見
医師が外来で行う徒手検査として、McMurray test、Watson-Jones test、Apley’s testなどが挙げられます。
MRI検査
半月板損傷を診断するために、最も有効性の高い検査はMRI検査です。しかし、その診断率は80~90%にとどまります。症例によっては、関節鏡検査でようやく半月板損傷が判明することもあります。
半月板損傷の治療
半月板損傷の保存療法
軽い半月板損傷では、筋力トレーニングを行い膝関節にかかる負担を減らします。また、痛み止めの内服や、ヒアルロン酸の関節注射などで治療します。
半月板損傷の手術療法
保存的治療では膝関節の症状が残ってしまい、日常生活、仕事、スポーツに支障をきたすケースは、関節鏡視下手術の適応となります。
最近では、できるだけ半月板の機能を温存するため、半月板縫合術が一般的になっています。
しかし、半月板損傷が比較的小さかったり、逆にひどい半月板損傷で修復が困難であれば、半月板切除術が選択されます。
半月板損傷は全治何ヶ月?
半月板の断裂形態や範囲によっても異なりますが、おおむね以下のケースが多いです。
- 半月板切除術:約3ヵ月
- 半月板縫合術:約6ヵ月
半月板縫合術で約6ヵ月かかる理由は、半月板を縫合してからしばらくの間は、膝にかかる負担を減らすために免荷が必要だからです。
半月板損傷で後遺障害に認定されると損害賠償金を請求できる
半月板損傷で後遺障害に認定されると、後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益を請求できます。
後遺障害慰謝料とは
交通事故で後遺障害が残ってしまった精神的苦痛に対する補償金です。後遺障害慰謝料は、下の表のように後遺障害等級によって異なります。
後遺障害等級 | 後遺障害慰謝料 |
1級 | 2800万円 |
2級 | 2370万円 |
3級 | 1990万円 |
4級 | 1670万円 |
5級 | 1400万円 |
6級 | 1180万円 |
7級 | 1000万円 |
8級 | 830万円 |
9級 | 690万円 |
10級 | 550万円 |
11級 | 420万円 |
12級 | 290万円 |
13級 | 180万円 |
14級 | 110万円 |
後遺障害逸失利益とは
後遺障害が残ると、労働能力が低下してしまいます。労働能力が低下したために失うであろう収入の不足分に対する補償金です。
後遺障害逸失利益は、交通事故被害者の年収、年齢をベースにして、後遺障害等級に応じた労働能力喪失率と労働能力喪失期間で決まります。
後遺障害逸失利益の計算式
後遺障害逸失利益は、以下の計算式で算出されます。
基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数
半月板損傷で考えられる後遺障害
交通事故で半月板損傷を受傷した場合、後遺障害に認定される可能性のある症状は、痛み(神経障害)と膝の可動域制限(機能障害)です。
神経障害(膝の痛み)
12級13号:局部に頑固な神経症状を残すもの
半月板損傷で後遺障害12級13号に認定される可能性があるのは以下のようなケースです。
- MRI検査や関節鏡検査で、痛みの原因となるタイプの半月板損傷を認める
- 半月板切除術が施行されたために、半月板が著しく小さくなっている
14級9号:局部に神経症状を残すもの
半月板損傷で後遺障害14級9号に認定される可能性があるのは以下のようなケースです。
- MRI検査や関節鏡検査で、新鮮な半月板損傷の所見を認める
- 半月板縫合術後にも、MRI検査で半月板の形状変化や信号変化を確認できる
機能障害(膝関節の可動域制限)
12級7号:一下肢の三大関節の一関節の機能に障害を残すもの
半月板損傷は膝関節可動域制限の原因となるので、後遺障害12級7号に認定される可能性があります。しかし一般的には、半月板損傷では大きな可動域制限を伴いません。
膝関節の機能障害で後遺障害が認定されるには、半月板損傷が治療されていないなどの特殊な事案に限られます。
現実的には、適切な治療を受けた半月板損傷では、機能障害が後遺障害に認定される可能性は極めて低いでしょう。
【弁護士必見】半月板損傷の後遺障害認定ポイント
半月板損傷が等級認定される3つのポイント
半月板損傷が後遺障害に認定される確率を上げるためには、以下の3つのポイントを満たす必要があります。
- 定期的な通院歴や手術歴がある
- 受傷機序、事故規模、MRI検査で、事故との因果関係を証明できる
- MRI検査で痛みを引き起こす損傷形態の画像所見がある
中高年では事故との因果関係を否定されやすい
40歳以降になると、加齢に伴って半月板が変性して弱くなっているケースが多いです。自賠責保険はその点を理解しているので、中高年の被害者では、事故との因果関係を否定される事案が多いです。
特に、MRI検査での内側半月板後節の水平断裂は、加齢に伴う半月板の変性所見だと言われています。
半月板後節水平断裂の12級13号認定事案
前述のように、内側半月板後節の水平断裂は、加齢に伴う半月板の変性所見です。このため、半月板の水平断裂では、後遺障害が認定される可能性は低いです。
しかし、弊社の取扱い事例の中には、医師意見書を添付して異議申し立てしたところ、中高年の半月板後節の水平断裂にもかかわらず、12級13号が認定された事案も存在します。
内側半月板後節の水平断裂であっても、12級13号に認定される可能性は全くのゼロではなさそうです。14級9号の自賠責認定基準を満たす事案であれば、異議申し立てする価値はあると考えます。
<参考>
日経メディカル|半月板損傷と交通事故の不都合な真実
【12級13号】半月板損傷の後遺障害認定事例
事案サマリー(50代女性)
- 受傷機序:バイク走行中に対向車との接触して、転倒をこらえるため足を踏ん張って受傷
- 自覚症状:右膝内側の疼痛(立ちしゃがみ動作で増強)
- 身体所見:McMurray test陽性、関節水腫あり、可動域制限なし
初回審査は非該当でしたが、医師意見書を添付して異議申し立てしたところ、12級13号が認定されました。
弊社の取り組み
画像所見および関節鏡所見
- 受傷直後のMRI検査で内側半月板中節〜後節に信号変化あり
- 関節鏡手術で同部の損傷を認め、半月板切除術+半月板縫合術を施行
- 術後MRI検査では内側半月板の形態変化(サイズの縮小)と信号変化あり
医師意見書の効果
自賠責保険の見解は「画像所見上本件事故による骨折や脱臼等の明らかな外傷性の異常所見は認められず、他覚的に神経系統の障害が証明されるものとは捉えられない」でした。
医師意見書において以下の主張した結果、異議申し立てで12級13号の後遺障害が認定されました。
- 交通事故後より症状が出現したという診療録記載を引用
- 受傷直後および手術後の画像所見の提示
- 関節鏡手術記録を提示して事故との因果関係や症状を医学的に説明
意見書での主張内容と各種検査所見の医学的整合性が評価されたことが認定要因と考えています。
まとめ
半月板損傷の症状チェックでは、以下のような自覚症状があるかを確認します。
- 歩くときや階段昇降時の膝の痛み
- 膝の引っかかり感
- 膝を曲げ伸ばししづらい
- 膝が腫れている
- 膝に熱感がある
- 何かが挟まって膝が急に動かなくなる
交通事故で半月板損傷を受傷した場合、後遺障害に認定される可能性のある症状は、痛み(神経障害)と膝の可動域制限(機能障害)です。
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