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頚部痛が前駆せずに上肢症状で発症する事案は存在するのか?

 

頚部痛が前駆せずに上肢症状で発症する事案

 

損保側から提出される意見書の中には、上肢症状の発症時期について下記のような見解を述べている医師を散見します。損保側の顧問医師が主張するように、たしかにこのような経過をとる症例は多いです。

外力によって、脊髄症状か神経根症状が発症したとすれば、神経組織の挫傷や循環障害を介するにせよ、受傷48~72時間以内に発症するか、増悪し、以降は可逆性部分については軽快傾向をとる。このことは外傷性の病態についての医学的常識といえる。

 

一方、一般的な外傷の経過としてはそのとおりなのですが、外傷性頚部症候群でありがちな頚部痛と上肢症状の発症時期に関しては、そうとも言えないというのが臨床での実感です。

 

実際、中下位頚椎の神経根症や脊髄症関係の文献を渉猟すると、下記のように記載されているものがありました。

頚部痛が前駆せず、上肢痛あるいは趣旨のしびれで発症した例はなかった。頚部痛での発症後に、上肢痛あるいは手指のしびれが出現するまでの期間は0~180日(平均30日)であった。

 

つまり、事故初診時に頚部痛は存在したとすれば、上肢痛やしびれの出現が30日以内であれば、医学的にも十分あり得る期間である、と言えると思います。

 

この論文の結果は、実臨床の感覚にもしっくりきます。外傷性頚部症候群は病態自体に不明な部分もあるため、一般的な外傷セオリーとでは説明困難な経過をたどる事案もあるのでしょう。

 

 

 

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