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2019.7.6

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抜釘術は後遺障害等級に影響を与える可能性がある

抜釘術とは

四肢骨折の手術治療では、プレートや髄内釘などの内固定材料を使用することが多いです。これらは人間の身体にとって異物なので、用が済めば抜去することが望ましいです。このため骨癒合が完成した時点で、内固定材料を抜去する「抜釘術」が施行されます。

抜釘術は上肢に関しては術後6ヵ月 ~12ヵ月、下肢に関しては術後12ヵ月以降に施行します。上肢と下肢で抜釘するべき時期が異なる理由は、荷重による骨への負荷のかかり方の違いのためです。歩行時に常に体重の負荷がかかる下肢の骨折では、抜釘しても良い状態になるまで時間がかかるのです。

一方、内固定材料を用いた手術を施行すると必ず抜釘術を施行するのかというと、必ずしもそういうわけではありません。その理由は、抜釘しても患者さんに短期的なメリットはあまり無いからです。むしろ、抜釘してからしばらくは再骨折する危険性が高まるため、不利益となることさえあります。

訴訟大国の米国では、抜釘による不利益が問題視されているため、よほど大きな問題が無い限りは抜釘術を施行しないと言われています。一方、米国ほど訴訟の多くない日本では、積極的に抜釘術を施行する傾向にあります。しかし高齢者では、デメリットの方が大きいので抜釘しないことが多いです。

交通事故での抜釘時期

交通事故や労災事故において、抜釘術の時期は症状固定時期と関連があります。一般的には抜釘後に症状固定とすることが多いです。このため、下肢の骨折に対して手術を施行した事案では、症状固定まで1年ほど要します。しかし臨床医の立場では、抜釘術を施行するまで症状固定しないことには少し違和感を感じます。

何故なら、抜釘のはるか以前に外観上の機能は平衡状態に達しているからです。いわゆる症状固定の概念では、抜釘時期よりもかなり前の段階で症状固定と判断してもおかしくありません。それをわざわざ抜釘時期まで待機するのは、医療機関が医療費請求をする事務手続き上の問題が影響しているのかもしれません。

症状固定は医学ではなく賠償額的な概念です。このため、臨床医は症状固定時期についてあまり深く考えない傾向にあります。そしてこのことは交通事故の現場では大きな問題を引き起こす原因となりがちです。症状固定時期が争いになる理由は、症状固定は医学的概念ではないことが大きな要因でしょう。

抜釘すると非該当になることもある

そして、抜釘術は後遺障害に大きな影響を及ぼす可能性があります。例えば脊椎の破裂骨折などでは、脊椎インストゥルメンテーション手術を施行するケースが多いです。脊椎インストゥルメンテーション手術では、不安定な脊椎をスクリューやロッドで内固定します。

自賠責保険では、脊椎固定術が施行されると自動的に11級7号に認定されます。しかし、脊椎のインストゥルメンテーションを抜釘するとどうなるのでしょうか? もし破裂骨折が完全に整復されている場合には11級7号に認定されず、14級9号や非該当になってしまいます。

脊椎に骨折を負うほどの重度の外傷であったにもかかわらず、手術がうまく行き過ぎたがために11級7号に認定されないのでは、被害者の立場ではたまったものではありません。そしてこのような事案は若年者を中心に比較的多くみかけます。その理由は、若年者ではインストゥルメンテーションを抜釘することが多いからです。

最近は脊椎でも低侵襲手術が主流です。このため経皮的にインストゥルメンテーションを設置することが多いです。このような手術では脊椎後方に骨移植は行いません。このため抜釘すると、脊椎固定が解除されるのです。身体の機能面から考えると、脊椎を固定しないに越したことはありません。

このため臨床的には、脊椎後方に骨移植しないことには何の問題もありません。しかし賠償の観点から考えると、脊椎固定が解消されてしまうことは大きな問題を引き起こしてしまいます。そして主治医はこのような問題が発生することをまず知らないと考えるべきでしょう。

脊椎の手術後に抜釘するべきか否か、また抜釘するとすればいつ抜釘するべきなのかをよく考えて治療方針を決定したいものですね。

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