Table of Contents
画像鑑定報告書で誤解されやすいポイント
外傷性頚部症候群(WAD)の画像鑑定報告書を受けることが多いですが、急性期所見を認めることはほとんどありません。多くの事案では変性に伴う 椎体骨棘、椎間板変性、椎間板ヘルニアを認めるのみです。
このような事案の場合、これらの所見に伴い頚部痛や腰痛の原因となる可能性はあると考える、といった鑑定内容になります。
しかし、依頼者の心情としては「 頚部痛や腰痛の 原因となる可能性がある」という程度ではなく、もう少し踏み込んだ記載が欲しいと考えるのが自然です。つまり、「これらの所見から頚部痛や腰痛が発生していると考えられる 」 や「これらの所見から交通事故のために頚部痛や腰痛が残存していることは十分考えられる」という記載です。
私どもの気持ちとしても、記載できるのであれば記載したいところなのですが、 そこまで踏み込んだ表現にすると画像鑑定報告書の信憑性が無くなってしまいます。医師の目にとまったら一発アウトの鑑定内容なのです。 被害者の不利益になることが目に見えているので苦慮しています。
一般的に、椎間板変性やヘルニアで疼痛が発生すると言われていますが、椎間板変性やヘルニア=疼痛 ではありません。50歳以上では、画像上での異常所見(椎体骨棘、椎間板変性、椎間板ヘルニア) の有病率はほぼ100%です。
一方、50歳以上の全員に頚部痛や腰痛があるわけではありません。そして、頚部痛や腰痛の原因は筋膜や椎間関節由来のものが多いと言われています。このように、画像での異常所見(椎体骨棘、椎間板変性、椎間板ヘルニア)=疼痛 ではないのです。
また、四肢しびれに関しても同様です。臨床的には、四肢のしびれや疼痛をきたしているのに、MRIで椎間孔狭窄や椎間板ヘルニアが明確ではない症例は頻回にみかけます。
実臨床では、画像所見=症状 ではない症例が多いのです。治療の観点では画像所見が無くても症状が軽快すれば問題ないのですが、交通事故では画像所見の有無が問われるので悩ましいところです。