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脊椎固定術後の症状固定時期
近年、脊椎外科の技術の進歩には目覚ましいものがあります。20年ほど前には考えられなかったような技術革新があり、術式自体が大きく変化しました。
脊椎外科の進歩のおかげで患者さんは多大な利益を得ていますが、自賠責認定基準との乖離が大きくなってきた印象を受けます。そのうちのひとつが脊椎固定術です。
20年ほど前まで、脊椎固定術と言えば前方椎体間固定術や後側方固定術でした。しかし近年では経皮的椎弓根スクリュー(PPS; percutaneous pedicle screw)を用いた脊椎後方手術がメジャーになってきています。
この術式の利点は身体に対する侵襲の低さです。ところが、PPSでは椎体間に骨移植をしないため、抜釘すると椎体間固定が解除されることになります。脊椎の生理的な動きのためには望ましいことですが、等級認定基準上は11級7号に認定されなくなることを意味します。
脊椎の生理的な動きが温存されるのであればそれに越したことはないという考え方もあるかもしれません。しかし、交通事故や労災事故の実務では、大きな外力が加わった結果としての脊椎外傷が治療対象となります。
つまり、いくら低侵襲な術式であっても、事故の際に巨大な外力が加わっているため組織に対するダメージは極めて大きいのです。本来であれば、等級認定は術式ではなく身体へのダメージで考えられなければいけません。
しかし、現状の11級7号に関しては、術式で決定されている事案が多いです。このため、実際の身体に対するダメージと等級の乖離が生じているケースが多い印象を受けます。本来11級7号に該当してしかるべき事案にも関わらず、脊椎固定術が抜釘によって解除されたという理由だけで非該当になるのです。
特に、麻痺の無い腰椎脱臼骨折などでは、脊椎固定術によって画像上は変形がわずかな状態までもっていくことは可能です。それでも椎間板変性は不可避である症例が多く、その症状は症状固定後に出現することが多いです。
ところが、実際よりも低い等級しか認定されていないので、泣き寝入りするしかないことが多いです。このことを避けるには、抜釘前に等級認定されることが望ましい印象を受けます。杓子定規な自賠責認定基準では微妙な論点もありますが、実際に即した等級を認定されるには、症状固定時期と抜釘時期を慎重に見極める必要があります。
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