慢性期の外傷性頚部症候群(WAD)のMRI

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WADは画像診断など客観的に評価できないことが診断(立証)の難しさと思われます。WADに対しMRI検査を行う意義があるかどうかは今も医学的には意見の分かれるところですが、慢性期のWADに特徴的な所見の報告もあります。

 

慢性期のWAD患者では健常者と比較し、特に上位頚椎の深層伸筋群で脂肪変性が有意に高かったとの報告があります。また同じ報告者が多裂筋の断面積が有意に高かったと述べており、その一因として筋肉内への脂肪浸潤をあげています。

事故後、頚部痛などにより頚椎の運動が低下し、その結果筋萎縮が起こり、脂肪変性が増えるというところまでは理解できます。ただ筋萎縮と筋面積の増加というのは相反する結果であり、それを脂肪浸潤により筋肉の断面積が増えたというロジックで説明することには同意できません。

 

また慢性期WADでalar ligamentなど上位頚椎の靭帯損傷が健常者と比較し、有意に多かったとの報告があります。これに対しては別の研究では頻度差がなかったとの報告もあり、議論の多いところです。

alar ligamentに注目して普段MRIを見ることはあまりないのですが、評価のためには通常の撮像法(横断像、矢状断像)に加え、冠状断像での撮影が望ましいと思われます。こうした異常を見つけるためには読影の際に漠然と見るのではなく、見つけるつもりで見ることが重要です。

 

これらの報告は健常者との比較なので、実際臨床の場では、同一患者での受傷前(普通はありませんが)もしくは受傷直後と慢性期に撮影したMRIでの比較になります。

全てのWAD患者で急性期と慢性期にMRIを撮影し、撮像方法も工夫し、注意深く読影をすることで、画像での変化を診断できるかもしれません。

ただ毎回たくさんの外来患者を効率よく診ることが実際の外来では求められますので、一般の整形外科医がそこまで診断に注力することは困難です。WADの病態がいまだに解明されないのは、そういう背景もあるのだと思います。

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