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交通事故診療では接骨院の存在が問題になる
整形外科の日常診療を行っていて、時として困るのが接骨院の存在です。病院、診療所と接骨院、医師と柔道整復師(柔整師)の違いを知らない患者さんがたくさんおられます。そういう方は医師と柔整師を対等に扱われますので、接骨院で言われたことを信じて、こちらが提案する治療になかなか同意をされないことがあります。
例えば、“膝の水(関節液)は抜いたら癖になるので、抜かない方がいいと言われた”、“体にメスを入れたら駄目だと言われた”などです。患者さんを離さないがための“セールストーク”が、我々の医学的な根拠に基づく治療の邪魔をする、つまり営業妨害をするのです。
接骨院では健康保険、労災保険、自賠責保険が急性期(概ね受傷後1ヶ月以内)の打撲、捻挫に適応されます。骨折と脱臼は応急手当、つまり患部に添え木をあてるなどの処置だけが認められます(医師の同意があればこの限りではありません)。しかし骨折があるかないか判断するためにはレントゲン検査が必要です。
当然のことながら医師でない柔整師はレントゲン検査を行うことができないので、その診断は正確なものではありません。また本来保険の適応外である慢性腰痛、五十肩などの慢性疾患に“捻挫”という病名をつけ漫然と施術を行っていることも問題として挙げられます。
また一部の接骨院による通院回数の水増しなど不正請求が度々報道されていますが、氷山の一角とも言われており、正確に実態を把握することは今のところ困難のようです。これらの不正請求の背景には柔道整復師が増え過ぎたことが原因の1つとして考えられます。
柔道整復師は高校卒業後3年間養成施設に通い、国家試験に合格すれば即開業が可能です。平成10年に当時の厚生省が養成施設の設置を認可制にしていたことが福岡地裁で違法と判断され、それ以降許可制になりました。
当時全国に14しかなかった施設が雨後の筍のように乱立し、平成22年には100を超え、平成25年以降毎年6000人以上の柔道整復師が誕生しています。近年毎年8000人前後の医師国家試験合格者数、2000人前後の歯科医師数と比較しても少し多過ぎる感じがします。
需要と供給の不均衡が様々な問題を引き起こすことは周知の通りです。整形外科医と柔整師が良好な関係を保つためには、柔整師が適応を厳格に守って施術を行ってもらうことが最低限必要ですが、現状ではなかなか困難なようです。
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