交通事故で発生する末梢神経障害の診断や治療の選択に際して、臨床では神経伝導速度検査を施行することがあります。
本記事は、交通事故診療で実施される神経伝導速度検査を理解するヒントとなるように作成しています。
最終更新日: 2024/5/16
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神経伝導速度検査とは
神経伝導速度検査は、神経を電気で刺激した際の筋肉や神経の信号の伝わり方を記録する検査です。
具体的には、末梢神経が走行している皮膚上で電気刺激して、誘発された電位を記録します。
そして、誘発された電位から伝導速度や振幅を測定することで末梢神経疾患や脊髄疾患の病態を把握します。
運動神経を刺激することによって筋肉に誘発される電位を記録する運動神経伝導検査と、感覚神経を刺激して得られる電位を確認する感覚神経伝導検査があります。
神経伝導速度検査の記録を評価することによって、神経や筋肉に異常があるかを調べます。
【弁護士必見】後遺症があっても神経伝導速度検査が異常無し?
検査結果は綺麗な数字で出てくるので、CR, CT, MRIなどの画像検査と同等の客観性を期待できそうなイメージが持たれがちです。
しかし、実際の神経伝導速度検査は画像検査と異なり、かなり被験者の局所状態や検査技師の技量に左右されます。
検査をするたびに大きく結果が変動するため、私の感覚ではむしろ超音波検査に近い印象を抱いています。
筋萎縮のある明らかな腓骨神経麻痺の事案でさえも、ときどき神経伝導速度検査で異常所見を認めないことがあるほどです。
【弁護士必見】神経伝導速度検査の変動が大きい理由
検査そのものの変動が大きい原因として下記が挙げられます。
神経を直接見て受信電極を貼付するわけではない
神経の場所を類推して検査を施行するので、経験豊富な検査技師とそうでない技師との差が大きいです。
以前、明らかな腓骨神経麻痺にも関わらず神経伝導速度検査で有意所見無しの事案がありました。
あまりにおかしいので他院で再検したところ、完全な腓骨神経麻痺だったことがあります。
被験者の解剖学的特性に依存する
太っていたり筋肉質な被験者の場合は神経への刺激がうまくいかないケースが多いです。
理想は痩せていて軟部組織の少ない方なのですが、そのような方は少数派です。
測定する神経の解剖学的特徴に依存する
正中神経・尺骨神経などは容易ですが、脛骨神経・腓骨神経の知覚枝などの解剖学的破格が多く、細い神経では難しくなります。
特に腓骨神経知覚枝は高率に走行破格が存在するので、正確な測定が難しいです。
神経伝導速度検査は有意所見が出にくい?
確かに神経伝導速度で有意所見があれば等級獲得では有利になります。
しかし、検査をすれば必ず結果が出るものではなく、むしろ検査をしても有意所見が出ないことの方が多い印象です。
もし神経伝導速度検査の実施を検討するのであれば、 そのあたりの事情を考慮することをお勧めします。
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