交通事故で手指骨折を負った被害者が、適切な後遺障害認定を受けるには、画像診断による医学的証拠の確保が欠かせません。
本記事では、手指骨折と画像鑑定をテーマにして、後遺障害認定を有利に進めるための実践的な方法をご紹介します。
最終更新日: 2025/11/16
Table of Contents
手指骨折の画像鑑定で何がわかる?
なぜ手指骨折が後遺障害に認定されにくいのか
手指骨折で後遺障害認定を受けるには、レントゲン、CT、MRIなどの画像検査で異常所見を確認できることが必要です。
しかし、骨折や軟部組織の損傷は、受傷してから時間が経つと、画像検査で写らなくなることがあります。
さらに、レントゲン検査だけでは骨の癒合状態や靭帯損傷の詳細が不明確で、画像所見が不十分とされるケースも少なくありません。
手指骨折は小さな骨折なので、CT検査が後遺症を証明するのに適しています。しかし、専門医以外ではそこまで実施しないことも珍しくありません。
<参考>
手や指の骨折の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
画像鑑定の目的と評価ポイント
画像鑑定とは、整形外科や脳神経外科の専門医が、レントゲン、CT、MRIなどの画像検査を精査して評価する報告書です。
手指骨折の場合、事故による骨折とその後の痛み、骨癒合不全、関節可動域制限などを、画像的に証明します。
画像鑑定の目的は、診断書の記載内容だけでは後遺障害認定基準を満たさない事案で、詳細な医学的根拠を示すことにあります。
手指骨折では、整形外科の中でも、手外科専門医による画像鑑定が望ましいとされています。
手指骨折の後遺障害認定における画像鑑定の意義
手指骨折の後遺障害認定では、後遺症の存在を画像所見で証明できるかが重要なポイントになります。
画像鑑定は、後遺障害診断書も参考にして、後遺症を画像所見で裏づけるため、後遺障害に認定される可能性が高まります。
特に、CT検査で後遺症の内容と画像所見が一致すると、「後遺症が残る蓋然性」を医学的に主張できます。
画像所見によって、手指の器質的変化が証明されると、後遺障害認定の可能性が高まり、等級が覆る例もあります。
画像鑑定に含まれる情報
手指骨折の画像鑑定には、主に以下のような内容が記載されるケースが多いです。
- 傷病名
- ポイントとなる画像
- レントゲン、CT、MRIなどの所見
- 画像所見と後遺症の関連性
- 手外科専門医による総括
これら以外にも、画像所見が手指骨折の後遺障害認定基準を満たしていることをコメントするケースもあります。

手指骨折の画像鑑定を効果的に使う方法
異議申し立てで後遺症の存在を医学的に立証する
前回審査で非該当とされた場合、異議申し立てで画像鑑定を提出すると、後遺障害に認定される確率が上がります。
画像鑑定は新たな医証とみなされるため、異議申し立てで当方の主張を補強する証拠となります。
特に、CT検査で後遺症の内容と画像所見が一致すると、「後遺症が残る蓋然性」を医学的に主張できます。
画像鑑定では、レントゲン、CT、MRIなどの画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
実際の事例では、弊社の鑑定医師が担当した画像鑑定によって、14級9号から12級13号に後遺障害等級が変更されたケースも多数あります。
裁判での画像鑑定の証拠価値と活用事例
裁判では、手外科専門医によって作成された画像鑑定を提出することで、当方の主張を補強できます。
裁判所は、手外科専門医の見解を重視する傾向があり、画像鑑定があることで、医学的争点に対する説得力が格段に増します。
画像鑑定は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案で、大きな効果を発揮します。
画像鑑定では、画像上での関節面の不整像や外傷性変化などを示して、後遺症の存在や程度を証明できます。
画像所見と後遺症の因果関係が詳細に解説されるため、裁判官の判断を左右する重要な役割を果たします。
<参考>
【日経メディカル】医療鑑定の後遺障害認定における位置付けは?
手指骨折の画像鑑定を依頼する流れと準備
画像鑑定を依頼するまでの具体的ステップ
手指骨折の画像鑑定の取得には、まず相談書、診断書、画像検査、診療報酬明細などの必要資料を準備して、医療鑑定会社に依頼します。
尚、弊社では、画像所見の有無を無料で判定する簡易読影を実施しています。画像所見が無い可能性があっても、安心してご依頼いただけます。
ただし、無料の簡易読影で所見があっても、そのまま画像鑑定に進むことはお勧めできません。画像所見は認定基準の一部に過ぎないからです。
画像鑑定が有効かを判断するために、等級スクリーニング®で後遺障害に認定される可能性について分析することをお勧めしています。
無料簡易読影や等級スクリーニングの結果で画像鑑定に進む場合には、見積金額の了承から約3週間で初稿(画像鑑定報告書案)が提出されます。
手指骨折の画像鑑定報告書案に問題が無ければ、費用を支払います。入金確認後に画像鑑定の原本が発送される流れが一般的です。
依頼時に提出するべき資料のチェックポイント
手指骨折の異議申し立てで使用する画像鑑定の作成には、以下のような書類や資料が必要です。
- 相談書(依頼時にお渡しします)
- 画像検査
- 後遺障害診断書
- 診断書
- 診療報酬明細(レセプト)
- 損害確認報告書 / 事故現場実況見分調書 / 交通事故証明書 / 車の損傷写真 など
- 後遺障害等級結果連絡書
画像鑑定の作成に必要な資料の受け渡しは、オンラインストレージ(無料)もしくは郵送となります。
弊社では、安全性や利便性から、オンラインストレージの利用を強く推奨しています。
ご依頼の際には、無料で利用できるオンラインストレージの使用方法を、簡単にご説明させていただきます。
画像鑑定の費用の目安
概要 | 価格 |
基本料金(通常) | 8.8万円 |
基本料金(単純) | 7万円 |
基本料金(複雑) | 12.8万円 |
訴訟加算 | 2万円 |
多部位加算(3部位以上) | 1万円/数 |
特急対応加算 | 2万円 |
電子化加算 | 5,000円 |
顧問契約有り | -1万円 |
画像鑑定報告書の作成にかかる費用は、基本料金をベースとして以下の要素で変動します。
- 画像検査の分量
- 訴訟事案
- 顧問契約の有無
- 納品時期
- 電子データではない事案
整形外科領域における一般的な事案では、7~8万円台の料金負担で、各領域の専門医による画像鑑定報告書の作成が可能です。
弊社の画像鑑定作成にかかる、加算や割引などの詳細は、こちらをご確認ください。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定の取得にかかる期間は?
手指骨折の画像鑑定を取得するまでの期間は依頼内容によります。一般的には3週間ほどで初稿(画像鑑定報告書案)が納品されます。
画像鑑定報告書案への修正依頼に、手外科専門医が対応するのにかかる期間は、1~2週間のケースが多いです。
手指骨折の後遺障害認定で画像鑑定を活かすコツ
手指骨折の後遺障害認定を左右する画像鑑定の着眼点
手指骨折で後遺障害認定を目指すには、自覚症状だけでなく、客観的な医学的な裏づけが不可欠です。
画像鑑定によって後遺症の客観的証拠が補強されると、後遺障害認定の審査が有利に働きやすいです。
一方、後遺障害に認定されるためには、画像所見だけではなく、以下の後遺障害認定基準を全て満たす必要があります。
- 手指骨折と症状に整合性がある
- 後遺症と各種検査が一致している
- 事故後から症状固定まで症状が続いている
- 常に後遺症が存在している
すべての後遺障害認定基準を満たしている手指骨折の事案は少ないです。また、これら以外にも、たくさんの認定基準が存在します。
画像鑑定の価値は、手指骨折の後遺障害認定基準に足りていない要素を補強して、後遺障害の蓋然性を主張する点にあります。
この目的を達成するためには、画像鑑定を受任する医療鑑定会社が、手指骨折の後遺障害認定基準を知り尽くしている必要があります。
手指骨折が後遺障害認定されるポイントは、こちらのコラム記事で詳しく紹介しています。是非、参照していただきたいと思います。
<参考>
手や指の骨折の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
医師意見書と画像鑑定の違いと使い分け方
画像鑑定は「画像検査に基づく後遺症の評価」であるのに対して、医師意見書は「画像検査も含めた総合的な後遺症の評価」を実施します。
手指骨折の後遺障害が非該当になった原因が、画像所見の乏しさであれば、画像鑑定が有効になる可能性があります。
一方、手指骨折と後遺症の因果関係や、医学論文を引用した医学的な解説が必要な事案では、医師意見書が望ましいでしょう。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
手指骨折の後遺障害認定サポートと支援内容
弁護士向けサポートサービス
弊社では、交通事故で受傷した、手指骨折の後遺症が、後遺障害に認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。
等級スクリーニング®
現在の状況で、後遺障害に認定されるために足りない要素を、後遺障害認定基準および医学的観点から、レポート形式でご報告するサービスです。
等級スクリーニング®は、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。
等級スクリーニング®の有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニング®を承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング®】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定

医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。
医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。
弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
事故で残った手指骨折の後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
交通事故被害者への取り組み
弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。
また、弊社では交通事故業務に精通している全国の弁護士を紹介することができます。
もし、手指骨折の後遺障害認定で弁護士紹介を希望される被害者の方がいらっしゃれば、こちらのリンク先からお問い合わせください。
尚、弁護士紹介サービスは、あくまでもボランティアで行っています。このため、電話での弊社への問い合わせは、固くお断りしております。
弊社は、電話代行サービスを利用しているため、お電話いただいても弁護士紹介サービスをご提供できません。ご理解いただけますよう宜しくお願い申し上げます。

手指骨折の画像鑑定でよくある質問
画像鑑定では、どのような点を分析してもらえるのですか?
画像鑑定では、骨折の有無、骨癒合の状態、骨の連続性の途絶、硬化像、骨片の位置変化、関節面の適合性などが分析されます。
主に、画像上の病変の位置と、後遺障害診断書に記載されている自覚症状や神経学的所見が一致しているかを重視して鑑定します。
例えば、手指のしびれがあれば、当該領域を支配する神経根の圧迫所見があるかを鑑定します。
また、骨癒合の有無だけでなく、ズレ(転位)や関節面の適合性などの画像所見を、詳細に解説します。
画像所見と症状の間に整合性が認められれば、後遺障害に認定される可能性が上がります。
レントゲン画像だけで鑑定できますか?CTやMRIは必要ですか?
手指骨折の診断では、ほとんどのケースはレントゲン検査だけで骨折を診断できます。
しかし、レントゲン検査に写らないような関節面の転位の確認には、3次元的な画像再構成が可能なCT検査が適しています。
MRI検査は、骨だけではなく、骨周囲の軟部組織を鑑別するのに優れており、骨の内部変化や軟部組織損傷を確認できます。
事故との因果関係は画像から判断できますか?
交通事故と手指骨折の後遺症との因果関係を証明するには、事故直後からの画像所見の推移を評価することが重要です。
画像所見や治療経過で、事故との因果関係が医学的に認められる場合は、「事故との因果関係あり」と明記できます。
事故以前の画像がなくても、事故直後のMRI検査の画像所見や臨床経過をもとに、医師の見解を添えることで因果関係を証明しやすくなります。
事故後に明確な症状の増悪が認められた場合、事故との因果関係が「相当程度ある」として説明可能です。
骨癒合が遅れているのは後遺障害に関係しますか?
骨癒合が遅れている状態は、後遺障害に関係します。骨癒合の遅れは、骨癒合しにくい部位の骨折、喫煙、糖尿病などが原因となります。
骨折後3ヵ月経っても骨がくっついていなければ遷延癒合といい、6ヵ月経過しても骨癒合していないと偽関節と呼ばれます。
遷延癒合や偽関節は、後遺障害等級上「変形障害」という類型に該当します。CT検査で骨連続性途絶や髄腔閉塞を示すことが鍵となります。
画像鑑定で変形や可動域制限の証明はできますか?
画像鑑定では、変形や可動域制限の原因となりうる画像所見を評価することで、後遺症の存在を補強します。
可動域制限について後遺障害に認定されるには、可動域制限の原因を医学的に証明する必要があります。
可動域制限が器質的のものだと判断できる画像所見が重要で、関節面の不整像や関節裂隙の狭小化があれば、可動域制限の原因とみなされます。
過去の骨折や既往歴との区別はつきますか?
画像鑑定では、画像検査の経時的な比較を行い、受傷からの癒合過程・骨片の位置変化・部分的に癒合しているかなどを評価します。
経時的な変化を追うことで、骨癒合の停滞が客観的に示されれば、交通事故による後遺障害の立証に役立ちます。
また、前回の後遺症と現在の症状が異なることを医学的に証明できれば、同一系列であっても後遺障害が認定される可能性があります。
既存障害と現在の症状が異なることを証明するには、前回事故の画像検査や後遺障害診断書を精査して、現状との差異を主張する必要があります。
整形外科医以外の放射線科専門医が鑑定しても問題ありませんか?
画像検査を施行した患者を実際に診察する放射線科医師はほとんどいないため、実臨床に即した画像鑑定は難しいと言われています。
異議申し立てにおいて、審査側医師は放射線科医師ではなく、整形外科や脳神経外科の医師なので、実臨床にそぐわない鑑定内容は採用されません。
このため、肌感覚で実臨床を理解している整形外科や脳神経外科の専門医による画像鑑定が望ましいとされています。
整形外科や脳神経外科の専門医による画像鑑定では、画像診断のみに限らない臨床的な鑑定も行われます。
画像鑑定で後遺障害等級が上がることはありますか?
画像鑑定を証拠として異議申し立てをすることで、後遺障害等級が上がることがあります。
弊社の実例では、鑑定医師作成の画像鑑定によって、14級9号から12級13号への等級変更が認められたケースが多数あります。
画像所見によって「身体の器質的変化」が証明されると、後遺障害認定の可能性が高まります。
撮影方法(方向や技術)で結果が変わることはないか?
撮影方法や撮影方向によって、骨折の発見のしやすさや後遺障害認定結果が変わることはあります。
例えば、有鈎骨骨折はレントゲン検査の2方向では診断できないため、手根管撮影が必要で、確定診断のためにCTやMRIが必要なケースも多いです。
CT検査は骨の断面を詳細に撮影でき、複雑な骨折や骨片の移動・偏位、関節面への骨折の広がりを正確に評価するのに適しています。
画像鑑定を依頼する際には、DICOM形式などの撮影データが必要で、適切な撮影方法で取得されたデータであることが重要です。
鑑定画像と症状が一致しない場合はどうなるか?
画像鑑定では、画像上の病変の位置と自覚症状・神経所見が一致しているかを重視して鑑定します。
画像所見と症状の間に整合性が認められれば、後遺障害認定の審査での評価が高まります。
一方、画像所見と症状が一致しない場合は、後遺障害認定が難しくなる可能性があります。
画像鑑定は、あくまでも画像所見のみで後遺症の原因を証明できる事案に限られます。
画像所見が乏しい場合や、事故と後遺症の因果関係、医学論文を引用した医学的な解説が必要な事案では、医師意見書が望ましいとされています。
まとめ
手外科専門医による手指骨折の画像鑑定は、交通事故による後遺障害認定で重要な役割を果たします。
レントゲンやCT、MRIなどの画像検査を精査して、骨癒合の状態や関節面の不整などを分析して、後遺症の存在や程度を医学的に裏づけます。
手指の骨は小さく、レントゲンだけでは損傷が不明確な場合もあるため、CT検査による詳細な画像解析が有効です。
後遺障害診断書だけでは非該当とされた事案でも、画像鑑定によって後遺症の蓋然性を立証して、異議申し立てで等級が覆る例もあります。
手外科専門医による画像鑑定は、医学的な客観性を補強して、後遺障害認定の可能性を高めるための有力な証拠となります。
手指骨折の後遺障害認定でお困りであれば、こちらからお問い合わせください。尚、初回の法律事務所様は無料で等級スクリーニングを承ります。
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